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NTTドコモの2023年度通期決算は増収増益、コンシューマー事業は前年よりやや減少

 NTTドコモは、2023年度通期の決算を発表した。営業収益は6兆1400億円(前年比+810億円、+1.3%)、営業利益は1兆1444億円(+505億円、+4.6%)、当期利益は7951億円(+233億円、+3.0%)の増収増益となった。

 事業別に見ると、コンシューマー事業の営業収益は3兆4248億円(前年比-26億円、-0.1%)、営業利益は6158億円(-2億円、-0.0%)と前年より減少した一方、法人事業の営業収益は1兆8817億円(+760億円、+4.2%)、営業利益は3242億円(+416億円、+14.7%)、スマートライフ事業の営業収益は1兆908億円(+163億円、+1.5%)、営業利益は2044億円(+92億円、+4.7%)と増収増益を達成している。

 利益増減要因として、法人部門はソリューションの拡大による成長や、アセットを売却など活用し大幅な増益、スマートライフ事業は新規領域への取り組み分を上回る金融サービスなどの成長で増益した。コンシューマー通信では、モバイル通信サービスの収入減のマイナスと、システム改善やコスト効率かによるプラスが相殺されるかたちとなった。

dポイントクラブ会員は1億会員を突破

井伊基之代表取締役社長

 dポイントクラブの会員数は、23年度に1億会員を突破。90万社、300万店舗のdポイント提携先があり、ドコモ経済圏が着実に拡大している。

 また、dカードやd払いなど金融決済取扱高は、13兆1200億円と対前年成長率が+18%となった。2016年度の2兆6100億円から7年間で5倍の成長を遂げている。dカード契約数も1775万契約で、そのうち6割の1065万契約が年会費がかかるdカードGOLDとなっており、契約数以上にクレジットカード利益が成長している。

5G契約数は2974万契約

 通信サービスについて、5G契約数は、前年+44%の2974万契約となり、モジュールを除いた全体の約4割が5G契約だという。

 ユーザーあたりの単価を示すモバイル通信ARPUは年間実績で3980円となり、YoYで-70円となった。一方で、他社と比較するとARPUの増減率は緩やかで「相対的には堅調に推移している」(同社の井伊基之代表取締役社長)と評価している。

底打ちとできなかった23年度

 コンシューマー事業の収益改善が進まなかった要因として、井伊社長は「まだまだ、通信の低価格競争が市場で続いている」と指摘。

 具体的には、これまでの「中~大容量」プランに加え「安い方(低容量)」の競争が続いているといい、この層のユーザーの奪い合いが一番激しくなっているという。

井伊社長

 これを踏まえドコモでは、新料金「irumo」を投入し、低価格帯の弱点を補強した。「irumo」自体は好評だというものの、井伊社長は「予想以上に売れており、ARPUが下がってしまう」と分析。一方で、顧客基盤の獲得にはつながっているとし、そのユーザーに対してサービスミックスの提案や、高い容量のサービスへ移行する機会が生まれていくとコメント。

 現在の市場では、まずユーザーを獲得し、アップグレードしていく(ARPUを上げていく)やり方が必須だとし、あと1~2年はARPUの低調が続くのではないかとした。

 「irumo」の好調にあたっては、旧プランからの移行も進んでいるとし、このまま進めば低料金の部分は収まっていくのではないかと期待しているとしたものの、市場競争では何が起こるかわからないとし、通信に加えスマートライフサービスを拡大していき、全体の売上利益を伸ばす作戦で行くしかないという考えを示した。

2024年度の取り組み

 2024年度の取り組みについて井伊社長は「ユーザー起点でマーケティングを強化していきたい」とコメント。

 サービスの追加投入や磨き込みは引き続き取り組むほか、店頭、オンライン、メディアなどマルチチャネルでユーザーとコミュニケーションし、ユーザー1人1人に寄り添ってニーズに合わせたサービスミックスを提案していくと説明。ドコモ以外のキャリアを利用するユーザーも含めた顧客基盤の拡大を実施していくとした。

 エンターティメントと金融について、動画配信プラットフォームのLeminoが月間アクティブユーザー数(MAU)600万を超えたほか、dアニメストアも300万契約を超えている。金融サービスについては、マネックス証券やオリックスクレジットとの連携により、dカードやdポイント、ドコモのメディアなどとかけ合わせたサービスの展開を進める。

 dポイントやd払いについては、加盟店拡大により会員のアクティブ化を進める。また、さまざまな業種のパートナーとユーザーをつなぐ「マーケティングDX」を広げ、パートナーのビジネス拡大やドコモ経済圏の魅力度向上を目指す。

 このほか、ドコモの「通信と映像」や「通信と決済」などサービスミックスの提案を強化し、利益と顧客基盤の拡大を進める。

ポイント圏競争の激化について

 ほかのキャリアなどポイント経済圏の競争が過激になってきている。

 井伊氏は「本当に今ポイント競争がすごく激化している」とし、ユーザーがお得にいろんなものを購入したい、使いたいというニーズが強いと分析。また、1人のユーザーが複数のポイントプログラムを上手に使い分けているのが現実だと指摘。

 ドコモとしても、選ばれるのがdポイントとなるよう、ポイント施策へ取り組んでおり、サービスミックスの取り組みの中でも、ポイントを魅力にユーザーをドコモの経済圏の中に誘う戦略を進めているという。

 なお、ポイ活プランについては、「ahamo ポイ活」が非常に好評とコメント。「いつも先頭を切れずに、後から追いかけていっている」と口にしながらも「ポイントとサービスの掛け合わせは、これからどんどん激化すると理解している」とコメントした。

コンシューマーサービスカンパニーを設立

 先述のコンシューマーサービスの拡大を進めるには、ユーザーへサービスミックスを提案することが重要とし、7月にコンシューマーサービスカンパニーを設立し、社内のコンシューマー向け組織を集約し、一体的に運営する。

 これにより、ユーザー体験向上や事業運営の効率化が図られ、コンシューマー事業のさらなる拡大を目指していく。

ネットワークの強化

 井伊社長は「ネットワークは事業の重要な柱」とし、24年度も引き続きユーザーの体感品質強化に取り組むという。

 時々刻々と環境が変わる都市部を中心に、スマートフォンアプリでユーザーの体感の把握や予兆検知を強化する。

 また、マルチユーザーMassive MIMOの導入を進めており、環境の変化に強いネットワークの構築を進めている。都市部の高トラフィックエリアについては、従来よりも厚みのあるネットワーク網を先行して構築していく。

 都市部だけでなく、災害に強いネットワークと被災時の迅速な復旧体制の強化を進める。

【追記 2024/05/10 20:26】
決算の詳細を追記しました。