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今後の「Xperia」シリーズはどうなる? ソニーのキーパーソンとの一問一答
2024年9月10日 15:26
ソニーは10日、スマートフォン「Xperia」シリーズに関する説明会を報道陣向けに開催した。今年は「Xperia 5」シリーズの次期モデルが出ないことやその理由、新規キャンペーンの意図などが語られた。
本稿では、ソニーマーケティング モバイルビジネス本部モバイルビジネス部 統括部長の水野雅夫氏、統括課長の湯原真司氏による質疑応答の様子を中心にお届けする。
国内ビジネスの状況とキャンペーン
今年発表された新商品「Xperia 1 VI」「Xperia 10 VI」は、ともに発売後“ロケットスタート”を記録したという。売れ行きは好調を維持しており、Xperia 1 VIで前年比128%、Xperia 10 VIで前年比130%という数字が示された。
カメラアプリが統合されたり画面比率が変更されたりしたXperia 1 VIについてユーザーは好意的で、全国のソニーストアにおけるイベントなど、「体験」を軸としたマーケティング活動も好調な初動販売を後押ししたという。
Xperia 1 VIの購入者層で特筆すべき点が、既存の「Xperia 5」シリーズや他社製スマートフォンからの移行が多いこと。ソニーでは、クリエイターの意見を取り入れて商品を最適化した結果、下位モデルや他メーカーからのユーザーを獲得できたとアピールする。
そうした動きやユーザーニーズの変化を踏まえ、今期は「Xperia 5」シリーズの新モデルを展開せず、「Xperia 1 VI」「Xperia 10 VI」に「Xperia 5 V」を加えたラインアップを継続する。
また、本日9月10日からは、Xperia 1 VIへの買い替えをサポートするキャンペーンとして「Go to 1キャンペーン」が始まった。期間は10月31日まで。既存のXperiaユーザーを対象として1万円のキャッシュバックを用意するほか、ソニーストアやWebサイトで比較体験の機会を設け、買い替えを促進していく。
質疑応答
――「Xperia 5」シリーズの次期モデルは出ないということだが、いつ判断したのか。
水野氏
具体的な判断タイミングをお伝えするのは難しいところもあります。ただ、Xperia 1 VIの発売より以前の、我々の今年度のラインアップの計画の中で判断しています。
販売状況を見てというわけではなく、我々がお客さまのニーズの変化などを踏まえたとき、どういう商品ラインアップでお客さまに提案していくかという中で判断させていただいています。
――次期モデルが海外で発売されるようなことはないのか。日本だけの判断なのか。
水野氏
基本的には、今年度のラインアップの想定は、国内だけではなく全世界において、今回ご紹介した考え方で進めています。
――Xperia 5のラインアップは継続する考えなのか。
水野氏
基本的に今期に関してはXperia 5 Vを継続するため、「Xperia 5」シリーズの後継機の発売予定はありません。
来期以降については、具体的な話はお答えできることがまだありません。
――小型のスマートフォンを打ち切るトレンドも見られる。そのあたりの考えは。
水野氏
今回、お客さまのニーズの変化を踏まえて、我々の中でいろいろ整理した結果が今回のラインアップです。
やはり、大画面に対するニーズが強くなってきているのは感じています。
過去の「Xperia 5」シリーズの販売状況なども踏まえたとき、小型(端末)に対する一定のニーズはあると思っています。
ですが、画面サイズについては大きいものを求める方が増えてきていて、我々が今回「Xperia 1」シリーズの価格を見直したり、「Xperia 5」シリーズのラインアップの考え方を少し変えたりしたポイントのひとつにはなっています。
――「Xperia 1」シリーズと「Xperia 10」シリーズには間があるように思える。そこをカバーする製品の必要性をどう見ているのか。
湯原氏
そこの間は、ニーズとしてあるとは思っています。それがなくなったとは思っていません。
ただ、大型化へのニーズの拡大というトレンドもあって、今は「Xperia 1」シリーズが、そういったニーズをカバーできる率が上がってきています。
それから、お客さまの購入タイミングが新商品によらなくなっている点も、トレンドとして感じています。
したがって、「Xperia 1」シリーズと「Xperia 10」シリーズの間のラインは、現行のXperia 5 Vを今期は継続することでニーズをカバーできると判断しました。
――市場環境について、Xperiaの販売、あるいはスマートフォンの販売に影響を与えるような要素を教えてほしい。
湯原氏
為替はビジネスに影響があるところですし、円安のトレンドが部材費へ影響することもありますので、常に注視して我々もビジネスを行っています。
それから、総務省の(端末販売に関する)ガイドラインが昨年変更されました。今年度もそういう議論があるということについては、非常に重要なファクターだと思っています。
あとは人々の関心ごとの変化を注視していて、昨今では「AI」がキーワードになっていると思います。
各社、いろんなかたちでAIを取り入れて、ユーザーにとっての利便性を作る活動をしています。私たちXperiaも、グーグルを中心に進めている生成AI機能は、グーグルと協業するかたちで取り入れていきます。Google フォトのAI機能も、8月のタイミングでXperia全機種に取り入れました。
加えて、ソニー独自の機能として、カメラやオーディオビジュアルの品質を上げていくAIで、ユニークな価値を作ってお客さまに伝えることに取り組んでいます。
――現在のラインアップで次の春まで行くことになる。「このような要素を期待してほしい」というメッセージはあるか。
湯原氏
当然、OSアップデートなどはタイミングが来たらそこで行います。質問の意図に沿っていない回答になりますが、具体的な機能は本日時点で申し上げられることがありません。
――「Xperia 5」シリーズからXperia 1 VIに移行している人が多いという話だった。以前の「Xperia 5」シリーズと比べ、Xperia 5 Vが「Xperia 1」シリーズ寄りではなくなったことにユーザーが失望しているということはないのか。
湯原氏
当然、Xperia 5 Vのお客さまの声やユーザーデータ、アンケートは調査しています。購入しなかった方も含めて確認していますが、そのような声はそこまではっきり出ていません。
Xperia 5 Vも最先端のチップセットを使用していて、ディスプレイの技術やカメラセンサーなどにも、Xperia 1のラインで使っていたものは惜しみなく投入しています。そこは高い評価を得ていますので、「Xperia 1」シリーズよりもカジュアル路線に行ったから(移行が増えた)とは捉えていません。
水野氏
もう一点補足すると、「Xperia 5」シリーズを結果的に購入されなかった方の声を調査で見ると、価格を要因に挙げられる方が非常に多くなっています。
年々、我々の商品ラインアップも含めてスマートフォン全体の価格が上がってきています。我々が「Xperia 5」シリーズで狙っていた、最先端のスペックかつ画面サイズがひと回りコンパクトであり、「Xperia 1」シリーズよりも手ごろな価格で購入できるというところについて、お客さまの求める位置と実際の価格ラインが合わなくなってきていました。
そこで総合的にラインアップの検討をして、今回の判断に至っています。
ですから、プロモーションをカジュアル路線に振ったことでお客さまが選択されなかったというよりは、全体の商品のポジションが少しずつ難しくなってきたり、大画面に対するニーズが高まってきたりする中で、「Xperia 5」シリーズのポジションを少し見直す必要があったというのが大きなポイントです。
――そうなると、「Xperia 10」シリーズに流れるのでは。
水野氏
コンパクトさを理由に「Xperia 5」シリーズを選んでいただいていた方、Xperiaが好きな方にとっては、新商品は「Xperia 10」シリーズということになるので、そういったお客さまも一定数いらっしゃると思います。
ですが、「Xperia 5」シリーズをラインアップとしては継続していきますので、パフォーマンスとサイズを求めるお客さまに対しては、Xperia 5 Vを提案させていただきたいと思っています。
特に「Xperia 1」シリーズのお客さまは、どちらかというと「最新のものを」という方が多くいらっしゃいます。
一方、「Xperia 5」シリーズのユーザーの方は、より良いものを求められてはいますが、「最新でなければいけない」という理由は「Xperia 1」シリーズ(のユーザーほど)ほど多いわけではないので、現行のXperia 5 Vでもお客さまのニーズは満たせると考えています。
――Xperia 5 Vは今年1回値下げしていると思うが、継続販売を狙ったものだったということか。
水野氏
新商品が出てきたタイミングで、1世代前のものの買いやすさというところで、少しお手ごろな価格で購入したいニーズに対する提案です。
――「Xperia 5」シリーズのナンバリングはどうなるのか。
水野氏
今後の商品のところについては、現時点でまだお答えできるところがありません。
――ゲーミングに力を入れているかどうかを聞きたい。東京ゲームショウ(TGS)への出展も途切れたが。
水野氏
東京ゲームショウへの出展について、今期は見直して出展しないことにしました。ですが、ゲームの打ち出しを弱めているかというと、必ずしもそうではありません。
ゲームにおいては、特にハイスペックなものに関してはパフォーマンスが非常に大事だと思っています。Snapdragonの最新チップセットを採用し、排熱のところも大幅に強化しているので、Xperia 1 VIは先代モデル以上に実現できていると思っています。
お客さまにとって重要な要素のひとつとして、ゲーム機能は継続的に進化させてきています。
――キャンペーンが今日からだが、なぜ今日なのか。競合他社にぶつける意図は。
湯原氏
タイミングはまったく意図していません。これは我々として計画していたタイミングとたまたま合ってしまったということです。
Xperia 1 VIやXperia 10 VIについては、発売記念キャンペーンを実施していましたが、それがちょうど9月上旬までというスケジュールでした。ですので、そのキャンペーンが終わったタイミングで、もうひと盛り上げしたいという背景です。
――既存のXperiaからの移行を狙うのはわかるが、競合他社の機種からの移行を目指す取り組みはあるのか。
湯原氏
他社さまのスマートフォンを使っている方向けのキャンペーンも考えていきますし、今後実施していく可能性は大いにあります。
具体的には今年の5月、「Xperia 1」シリーズの新商品が出るタイミングで、他社からの移行を目指したキャンペーンを、エントリーキャンペーンという名前で打ち出しました。他社からのお客さまの比率もかなり高いものになりました。
タイミングに応じて、さまざまなキャンペーンを実施していきます。