石川温の「スマホ業界 Watch」
Androidの後追いでもiPhoneが「iOS 18」で魅せるホーム画面の体験向上
2024年7月30日 00:00
アップルは7月17日、今秋正式発表予定の「iOS 18」などのパブリックベータ版を公開した。パブリックベータ版は開発者だけでなく一般ユーザーにも開発中のOSを使ってもらい、不具合などのフィードバックを集めるためのバーションとなる。
最近では設定アプリから、気軽にダウンロードをオンにすることが可能となっている。ただし、当然、開発中のOSであるため、バグなどが残っている場合もある。アップルではメインではなく、予備の端末を使っての検証を推奨している。
実際、iOS 18のパブリックベータ版を入れたiPhone 15 Pro Maxでは、CarPlayを使うと、Google Mapがイマイチで、ナビゲーションの途中で落ちるなどの安定性に欠けている。
ちなみに、パブリックベータ版ということで、アップルのAI機能である「Apple Intelligence」やAndroidと無料で動画や写真のやりとりができる「RCS」の機能はまだ試すことができない。
ホーム画面のカスタマイズ
今年6月に開催された開発者向け会議「WWDC24」でiOS 18が発表された際には正直言って、「Androidを追いかけているな」と思ってしまった。
ホーム画面のカスタマイズはAndroidが初期のころから実現しており、「何をいまさら、アップルはAndroidを追随しているのか」と唖然としたものだった。
しかし、実際にiOS 18のパブリックベータ版を触ってみると「良くできている」というのが実感だ。iOSが培ってきた見た目、デザインの統一性がしっかりととられているのだ。
iOS 18では、アプリのアイコンを自由に並べられるようになった。Androidでは当たり前のことであり、Androidユーザーからすれば「いまさら、何を言っているのか」とツッコミたくなるだろうが、iOSにおいては、画期的な事と言える。
これまでは自動的に(というか強制的に)アイコンが配置されてしまったが、iOS 18では、アイコンを自由に好きな位置に配置できる。これにより、アイコン同士を間隔を明けて配置したり、親指が届く範囲だけ、つまり画面下半分だけにアイコンを集中的に配置できるようになったのだ。
また、小さな四角いアイコンとして配置するのではなく、ウィジェットとして配置する事も可能になった。アイコンを長押しするとアイコンにするかウィジェットにするかを選べるため、ウィジェットにして一部の情報を常に表示させつつ、必要な時はウィジェットを開いてアプリに入っていけるという挙動を選ぶことができるのだ。
アイコンの色味をすべて統一することもできる。これまでは色鮮やかで派手なアイコンが並んでいたが、すべて同系色にしてシックにまとめ上げるという変更が行えるのだ。確かにすべてのアイコンの色調が一緒となり、統一感が出るのはいいのだが、反面、アプリそれぞれの見分けがつきにくく、起動し合いアプリを見つけにくいという難点も存在する。
ホーム画面関連で「Androidよりもいいかも」と思えたのが、セキュリティ面の向上だ。
アイコンに対して「FaceIDを必要とする」という項目を追加することができる。これにより、ホーム画面のロックを解除する際にFaceID、さらに特定のアプリを起動する際にさらにFaceIDが必要という二重のロックをかけられる。
メールやメッセージなどのアプリにおいて、万が一、他人に見られないようにロックを強化しておけるのはかなり安心といえそうだ。
また、iOS 18においてはアプリ自体を非表示するという機能も備わった。これにより、iPhoneを家族や友人に手渡した際に他人に知られたくないアプリを見せないようにすることができるのだ。
そうした隠しておきたいアプリは「非表示」というフォルダのなかに収納される。非表示フォルダ内のアプリを起動したいときには、これまでFaceIDが必要になる。
そもそも「非表示フォルダがあるということはやましいアプリがあるのではないか」と家族に問いただされそうだが、iOS 18にアップデートすると、すべてのユーザーに非表示フォルダが出現するため、そうした心配は無用のようだ。
アプリをすぐ起動できる仕組みも
これまたAndroidユーザーがツッコミが来そうだが、iOS 18ではロック画面から特定のアプリの起動が可能となった。
これまでもカメラアプリとフラッシュライトアプリが起動できたが、これが自由にカスタマイズできるようになった。
例えばウォレットアプリを割り振っておけば、レジでの支払時にすぐに決済系アプリを起動できる。iPhone 15 Proなどではサイドにアクションボタンがあり、アプリを割り振ることができたが、それ以外の機種でもロック画面上にアプリを置いておけるので、すぐにアプリが起動できるのはかなり便利だ。
コントロールパネルにおいても、用途別に複数のパネルに、それぞれ異なるコントロールを追加できるなどのカスタマイズ性が増した。Wi-Fiの切り替えやテザリングのオンオフ、AirDropなど、これまで設定メニューから入っていくなど、結構、面倒であった手順がコントロールパネル経由でサクッと設定できるのは、かなり操作が簡便になった印象だ。
アップル純正のアプリにおいても、それぞれ利便性が増している。
例えば、カレンダーアプリにおいては、月表示にした際、詳細がわかるように表示したり、タイトルだけ、あるいは予定が有無だけを確認したりできるなど、ピンチイン、アウトをすることによって、自由に表示形式を変えることができるようになった。
これまでiOSのカレンダーは画一的な表示しかできなかったため、こうした自由にレイアウトを変更できるのはかなり便利だ。まさに、これまでAndroidやiOS向けにサードパーティが提供してきたカレンダーアプリのいいとこ取りをしてしまっている感がある。
メモアプリは、WWDCでiPadOSでの説明にあった「手書きによる計算」に対応している。手書きで計算式を書くと、その場で計算をしてくれ、答えを出してくれるというものだ。
ペンの使えないiPhoneで手書きで計算式を書くかといえば微妙だが、iPad OSと共通のアップデートが施されているようだ。
さらに電話アプリでは留守番電話が入っていた際、用件をテキストで起こして表示してくれるようになっている。テキスト起こしは完璧ではなく、ところどころ、間違ってはいるが、ある程度の内容は把握できる。筆者の場合、アドレス帳に登録されていない番号からの着信が本当に多い。怪しい不在着信の番号に折り返す前、すぐに留守電の内容を確認できるのは本当にありがたい。
Apple Intelligenceを筆頭に、今後、スマートフォンの操作性はAIによる「利便性の向上」でAndroid陣営と競争していくことになりそうだ。