石川温の「スマホ業界 Watch」

「iPhone 14/14 Pro/14 Pro Max」実機で感じた“仕上がりの上手さ”とは

 9月16日発売のiPhone 14、iPhone 14 Pro、iPhone 14 Pro Maxを一足早く入手して試す機会を得た。

 今回のiPhone 14シリーズ、Androidユーザーから見れば「何を今さら」といみツッコミどころが多い。あるメーカー関係者が「あれはウチが先に製品化したんだけどなぁ」とぼやく姿も目にしている。Androidスマートフォンからみれば「iPhoneはようやく対応したのか」という進化点が多いのだ。

 ただ、実際にiPhone 14シリーズを触ってみると「後追いだけど、よくできている」というのが正直な感想だ。

iPhone 14 正面
iPhone 14 背面
iPhone 14 Pro 正面
iPhone 14 Pro 背面
iPhone 14 Pro Max 正面
iPhone 14 Pro Max 背面

Dynamic Islandに脱帽

 まず画面上のパンチホールだが、Androidスマートフォンでは何年も前から導入されており、最近では画面の下にカメラを埋め込むのが最先端だったりする。

iPhone 14 Pro MaxのDynamic Island

 iPhone 14 Proシリーズにはカメラだけでなく顔認証のデバイスも内蔵せざるを得ないため、画面下に埋め込むのは難しいようだ。

 ノッチからパンチホールになったものの、正直言って第一印象は大きくて邪魔な存在にしか感じない。しかし、これが使い始めると、パンチホール部分に通知や情報が表示され、意外にもしっくりきているから不思議だ。アップルのイベントで説明してきたAlan dye氏が 「ハートの境界線を曖昧にする」 といっていたが、まさにハードの弱点をソフトが補ってしまった感がある。

 こうしたユーザーインターフェイスの作り込みは、Android陣営にはなかなか難しい。

 「Dynamic Island」、個人的には「してやられた」と思っている。

iPhone 14 Proで音楽を再生中のDynamic Island
着信時

ロック画面の常時表示で感じたアップルの「上手さ」

 もうひとつ、上手いと感じさせたのが常時表示だ。

常時表示で写真を壁紙に

 「常時表示なんて、Androidスマホなら結構、当たり前」だと言える。時計や天気などが常時表示されているなんて何年も前からだ。

 今回のiPhone 14 Proシリーズの場合、待ち受けに設定されている時計やウィジェットだけでなく写真も常時表示となっている。画面自体は暗いのだが、不自然な感じがなく人物の写真も表示されている。いつでも子どもの顔が見られるのが嬉しい。

 常時表示時、時計は人物の手前に表示されるが、iPhone 14 Proを手荷物と画面が点灯して、時計表示は人物の後ろになる。AIを駆使して、人物を上手く切り抜き、表示しているのが地味ながらもよくできている。

ボイスメモを起動中、画面が消灯しても、表示はされ続ける

カメラ機能は

 カメラに関しても、iPhone 14 Proシリーズでは従来の12MP(1200万画素)から48MP(4800万画素)に進化。さらに1つのピクセルを4つにまとめて、光の取り込む量を増やすといった取り組みをiPhone 14 Proシリーズでは行っている。このあたりの処理もすでにハイエンド寄りのAndroidスマートフォンでは当たり前のように導入されている。

 iPhone 14 Proでは、自動的に最適な撮影ができるようになっているのはもちろんのこと、「Apple ProRAW」では12MPと48MPを手動で切り替えることが可能だ。PhotoShopでの編集を考えて、明るさを優先して撮影するか、解像度を優先して撮影しておけるかが選べるのは嬉しい。

12MP
48MP

 iPhoneのカメラはどちらかといえば「誰でも簡単に何も考えずに綺麗な写真が撮れる」というコンセプトだった印象が強く、実際、iPhone 14では、その流れを踏襲している。

 一方、iPhone 14 Proシリーズはとことん「Pro向け」になりつつあるようで、Web媒体だけでなく、いまは少なくなりつつある紙媒体でも充分、通用する写真が撮れそうな気がしている。

ポートレート

 実際にiPhone 14 Proのカメラで子どもの撮影から、食べ物、風景など、様々な撮影をしてみたが、マクロも強ければ、2倍の望遠も解像感が保たれたままの画像をおさめることができるなど、幅広いシーンで頼りになるカメラとなっている。

0.5倍
1倍
2倍
3倍
15倍

 48MPとなり、センサーも大きくなるなど、おそらくソニーの技術力の恩恵を受けているのだが、一方で、アップルの画像処理、さらにはA16 Bionicの組み合わせにより、独自の進化を歩んでいるように感じた。

面白さを感じさせる「eSIM」

 もうひとつ「他社はやっているけど、上手いことまとめている」と実感しているのがeSIM周りだ。

 iPnone 14シリーズだけでなく、iOS 16を入れたiPhone 11以降の機種であれば、キャリアに再発行手続きを申請しなくても、他のiPhoneにeSIMを転送することが可能となった。

 実際にキャリアとして対応しているKDDIの「povo2.0」で試してみたが、確かにiPhoneだけで、eSIMを移行できるのは本当に便利だ。いちいち、オンラインで申請したり、チャットでお願いして、本人確認の手続きしたりするといった煩わしさからも解放される。

 この10年以上、何度となくSIMピンでスマートフォンのSIMカードスロットを開けてきたが、ようやくそんな人生からも解放されるのだ。

 ただ、eSIMのスマートフォン単体の移転は、すでにアメリカのグーグルが手がけるMVNO「Google Fi」で導入されている。物理SIMからのeSIMへの移行、eSIMから物理SIMへの移行も提供済みだ。

 eSIM移行に関しても、iPhoneよりAndroidのほうが先なのだが、日本ではユーザーの多いiPhoneが対応し、キャリアも順次、導入することで、eSIMの認知度、利便性がさらに向上することだろう。

 総務省が菅さんに言われてeSIMの導入に対して、キャリアに圧力をかけてきた効果がいよいよ発揮されるというわけだ。

 いずれにしても、iPhone 14は、アップルのハードとソフトを上手いこと融合した「パッケージ力」が遺憾なく発揮されているスマートフォンのように感じた。

 iPhone 14はあまり進化を感じることはできないが、iPhone 14 Proシリーズにおいては、実に完成度の高い、楽しいスマートフォンになっていると思う

石川 温

スマホ/ケータイジャーナリスト。月刊誌「日経TRENDY」編集記者を経て、2003年にジャーナリストとして独立。携帯電話を中心に国内外のモバイル業界を取材し、一般誌や専門誌、女性誌などで幅広く執筆。