iPhone駆け込み寺

「iPhone 14/14 Pro/14 Pro Max」ファーストインプレッション、実機でわかった進化のポイント

左からiPhone 14 Pro Max、iPhone 14 Pro、iPhone 14

 9月16日、iPhone 14シリーズのうち、Plusモデルを除く「iPhone 14」「iPhone 14 Pro」「iPhone 14 Pro Max」の3モデルが発売される。

 今回は発売前日にアップルより実機を借りることができたので、実機に触れたからこそ判明したポイントを何点かピックアップし、ファーストインプレッションをお届けする。

 スペックシートからわかるiPhone 13などとの違いについては、別記事にて解説しているので、そちらもご参照いただきたい。

ベンチマークスコアは従前モデルから5〜10%の向上

 プロセッサーとしては、スタンダードモデル(iPhone 14/14 Plus)はiPhone 13シリーズと同じA15 Bionic、Proモデル(iPhone 14 Pro/14 Pro Max)は新しいA16 Bionicを搭載している。

 カタログスペックから違いを解説した事前レビュー記事では、「A16 BionicはA15 Bionicと大差ないのでは」としていた。実際にベンチマークアプリで確認してみると、A15とA16で差はあるものの、大きな差ではない、という印象を与えるものだった。

 ベンチマークアプリ「Geekbench 5」をそれぞれのモデルで4回試行し、もっとも良い数値を比べてみた。CPUマルチスコアとComputeスコアはバックグラウンドアプリの影響を受けるためか、数値が大きく上下する傾向があり、4回程度の試行ではあくまで参考値レベルだが、傾向は出ている。

Geekbench 5のスコア

 A16 Bionicを搭載するiPhone 14 Pro Maxは、ほかのA15 Bionic搭載モデルに比べ、CPUのスコアは5%以上は高速化しているが、10%には届かないという形だ。プロセッサーのクロック周波数が上がっているので、それに伴って高速化している感じである。

 GPUを使うCompute(Metal)のスコアは、「iPhone 14 Pro Max」は「iPhone 13 Pro Max」より10%ほど高速化している。ここは新旧モデルの差がハッキリしているが、それでも10%程度である。

 iPhone 14のスコアがさほど伸びていないように見えるのは、アプリの最適化やバックグラウンドアプリの影響があるかもしれないので、あまり参考にはならない。本来、iPhone 14はiPhone 13 Proと同じ5コアGPUのA15 Bionicを搭載しているので、Computeのスコアはもっと高いはずだ。

 意外だったのは、iPhone 14の搭載メモリ量がProモデルと同じ6GBだったことだ(表の数値はGeekbench計測。ディスプレイ描写にメモリを使うせいか、解像度の高いモデルはアプリが使用できるメモリ量が減る)。iPhone 13では4GBだったので、1.5倍となる。これなら、今後数年にわたって期待されるiOSのバージョンアップも、一世代先のプロセッサーを搭載する「iPhone 14 Pro/Pro Max」と同じタイミングかもしれない。

 ただ、現状ではメモリを大量に消費するような、“行儀の悪い”iPhoneアプリは少ない。4GB未満のモデルでもヌルヌル動くので、6GBの恩恵を感じられる場面はまだ少ないだろう。

 プロセッサーパワーも同様で、たとえば多くのゲームアプリはより多くのプレーヤーにプレイしてもらうべく、古いモデルでも動作するようにデザインされている。現時点でA16 Bionicの恩恵をフルに活かせる場面はまだ多くはないと見られる。

 iPhone SE(第3世代、2022年モデル)でも計測してみると、当たり前だが、同じA15 Bionicを搭載するiPhone 14やiPhone 13と遜色ないスコアを叩き出している。コストパフォーマンスの良さを感じさせるところだ。

Proモデルのカメラ進化。超広角カメラに体感できるレベルの差あり

 「iPhone 14 Pro」「iPhone 14 Pro Max」では、メインカメラに48メガピクセルのクアッドピクセルセンサーを搭載するなど大幅な強化が図られている。

 今回はケータイ Watch編集部のあるビルからのサンプル程度しか撮る時間がなかったので、カメラの評価はまた別の機会としつつ、まずはどんな実装になっているかを簡単に解説しよう。

iPhone 14 Proの48メガピクセルProRAWデータから中央を等倍で切り出すとこんな感じ。わりと細部まで描写されているが、あとで載せる2倍デジタルズームの方が看板が読める

 Proモデルでは非圧縮のProRAW撮影をした時に限り、48メガピクセルで記録できる。ちなみにこの場合、6048×8064ピクセルでファイルサイズは1枚75MBになると書かれている(実際にはサイズは上下する模様)。ストレージがある程度求められるスペックとも言える。ProRAWでの撮影解像度は「設定」アプリで設定可能で、12メガピクセル記録も設定できる。

ProRAWの設定。48MP保存は「覚悟」がある人向けかも

 標準設定ではProRAWはオフになっているが、これをオンにしても、「設定保持」の設定をオンにしない限り、カメラを起動するたびにProRAWはオフになる(iPhone 13 Proなどでも同様)。この仕様は個人的に、好印象を持った。

 ProRAW/48メガピクセルの設定になっていても、ナイトモードやフラッシュ使用時、マクロ撮影、1倍以外のズームでは12メガピクセルで記録される。ナイトモードなどでは4ピクセルを束ねて感度を向上させていて、1倍の広角レンズ以外は12メガピクセルのままで、マクロ撮影は超広角レンズを使っているからだ。

 48メガピクセルを使えるシーンが限定されるが、普段の12メガピクセル撮影時は、感度を向上(ノイズを低減)させているので、新センサーの威力は普段から発揮されている、ということもできる。

iPhone 14 Proによる広角カメラの写真。中央交差点近くの看板は「Golf」という文字がかろうじて判別できる
iPhone 14 Proによる2倍デジタルズーム写真。中央の看板の「Victoria」の文字がうっすら読めるレベル
iPhone 13 Proによる広角カメラの写真。明るい昼間はノイズも少なく、大きな差は出ない模様

 また、iPhone 14 Proで2倍ズームをかけると、48メガピクセルセンサーの中央12メガピクセルを使うので、画素補完処理などが最小限となり、従来のデジタルズームより画質が良くなっている。iPhone 11 Proなどは2倍の望遠カメラを搭載していたが、iPhone 14 Proのデジタルズームの方がレンズの明るさやピクセルピッチでは上回るという。実際に撮影してみても、画質はなかなか良いと感じられた。

 2倍デジタルズームは35mmフィルム換算で焦点距離48mm相当となる。古くは「標準レンズ」とも呼ばれていた、使いやすい画角だ。人物やものを撮るとき、背景が広がりすぎず、遠近感が強調されず、それでいて人間が視覚的に中央と感じる範囲は撮影できる。この画角の画質が向上したのは、かなり嬉しいポイントだ。

iPhone 14 Proの望遠カメラの写真。中央交差点近くのディティールは、広角カメラのデジタルズームに比べると格段に細かく撮れている

 望遠カメラは3倍、77mm相当だ。こちらはiPhone 13 Proから性能が格段に向上したわけではないが、広角レンズの2倍デジタルズームよりも細部が描写されていて、そこそこ実用性のあるカメラとなっている。ちょっと前のスマホの望遠カメラは、「それってメインカメラのデジタルズームの方がマシでは」程度の描写性能のこともあったが、iPhone 14 Proではそういったことはない。

iPhone 14 Pro Maxのマクロ写真
iPhone 14 Pro Maxのマクロ写真の中央を等倍で切り出した写真。13 Proとの差は歴然としている
iPhone 13 Pro Maxのマクロ写真
iPhone 13 Pro Maxのマクロ写真の中央切り出し。14 Proに比べると線がぼやけている

 超広角カメラはセンサーサイズの拡大とレンズの変更となり、iPhone 13 Proに比べると大きく変化している。

 さまざまな撮影シーンで差がつくと思うが、今回、テスト撮影した中ではマクロ撮影に顕著な差が見られた。

 一見すると大差ないようにも見えるが、紙幣のように、ディティールのある被写体を等倍まで拡大すると、その細部の描写能力に確実な差があることがわかる。どこまでも細部を写す必要のある自然物、たとえば小さな植物や虫を撮影するときは、大きなアドバンテージになるだろう。

 超広角カメラはスタンダードモデルのiPhoneも搭載していて(SEシリーズは非搭載)、風景撮影などで使う機会も多いが、この描写性能が強化されたのは、かなり嬉しいポイントだ。

夜景をナイトモードにせずにiPhone 14 Proで撮った写真。このくらいの環境だと旧モデルやiPhone 14との差は見られなかった

 スタンダードモデルとなるiPhone 14は、メインカメラがiPhone 13 Proに近いスペックとなっている。

 しかし、超広角カメラはProモデルのようにマクロ撮影には対応せず、ProRAW撮影もできないので、この辺りは差別化されているポイントだ。カメラ好きで、カメラの性能を絶対重視するというのなら、実際に使ってみて進化を感じられるProモデル、おすすめである。

思ってたより面白くて実用的なDynamic Island

ディスプレイの上部にあるバー上の黒い部分が「Dynamic Island」。カメラなどの穴とマルチタスク表示などが融合している

 ProモデルではTrueDepthカメラの形状が変更され、従来のノッチ型からピンホール型に近い、四方をディスプレイに囲まれたものとなった。ノッチ型を「半島」とすればDynamic Islandは文字通り「島」だ。

 一見するとこの部分、ひとつながりに見えるが、実機をよーく見ると、右側のカメラレンズが円形になっていて、その左がセンサー(立体形状を測定するためのドットプロジェクタなど)の入った部分となっている。

カメラ起動中はレンズとセンサのあいだにインジケーターが表示される。目をこらして見ると、どこまでディスプレイかが見える

 最近のiOSでは、カメラやマイクの使用中はユーザーにそのことを示すためにインジケーターが表示される。

 このインジケーターが、一見するとディスプレイがない部分に見える、カメラの左側に表示される。つまりカメラとセンサーの間はディスプレイがあるのだが、あえて使っていない、という実装のようだ。

「マップ」のナビと「ボイスメモ」の録音をともにバックグラウンド動作させると、このようにDynamic Islandが2つに分裂して表示される

 このDynamic Island部分、バックグラウンド動作中のアプリやちょっとしたダイアログ表示なんかにも使われる。

 そのとき、ハードウェア的なディスプレイの穴と同じように、端っこを丸めたバー形状で表示され、まるでディスプレイの穴が大きくなったかのようなアニメーションをするようになっている。

 2つのアプリをバックグラウンドで動作させると、このDynamic Islandは2つに分裂して表示されたりもする。どんなアプリが動いているかがわかりやすく、面白いだけでなく実用性も高い。

 バックグラウンドアプリがDynamic Islandに表示されているときにタップすると、そのアプリが全画面表示となる。

 何もバックグラウンドアプリが表示されていないときも、タップすればちょっとだけアニメーションして反応する。なんというか、「タップいただいたことは理解いたしますが、バックグラウンドアプリがないんですぅ」と言わんばかりの動きで、かわいい。

 ちなみにディスプレイが存在しない部分の、カメラやセンサーのありそうなところをタッチしても反応する。どこまでタッチパネルセンサーが入ってるかわからないが、けっこう手が込んでいる。

 正直にいうと筆者もDynamic Islandの発表時は、「そんな変なデザインと機能にコストかけへんでも」と若干思っていたが、実物を見ると「これ見せられたら、こっちの方がエェわ」と感じてしまった。バックグラウンドアプリが動いていることがわかりやすく、しかもちょっとした表示もあるのが便利だ。個々人で感想はさまざまだと思うが、気になる人は店頭などで実物を確認してほしいポイントでもある。

常時表示のロック画面は?

ロック画面では表示が暗くなりつつも消えない

 あとProモデルはディスプレイが常時表示となり、画面が消灯せず、スリープ中もロック画面が表示される。と言っても、照度やコントラスト、フレームレートは控えめで、省電力化されている。

 iOS 16の新機能であるロック画面(通知画面)のウィジェットと組み合わせると、ちょっと面白い機能ともなる。

 たとえば、iOS 16のリリースと同時に、俺たち野球ファンの味方、Yahoo! スポーツナビの「野球速報」アプリがこのウィジェットに対応していて、ロック画面にフォローしているチームのスコア速報を表示できるようになった。卓上など手元に置いておけば、常に最新スコアを見られるので、セ・リーグ3位争いが激しくなっている阪神・巨人・広島のファンの方々は、シーズン終わりまで活用することになるのではないだろうか。

 余談だが、通知画面により高度な生情報を表示させるiOS 16の新機能「ライブアクティビティ」は、ひっそりとiOS 16.1実装へと延期されたようだ。対応アプリが登場しないと意味がない機能なので、アプリ開発者側と歩みを揃えつつ実装されることを期待したいが、これも実装されるとiPhone 14 Proの常時表示と相性の良い機能となりそうだ。

大きさと重さ

 iPhone 14シリーズではminiモデルが廃止され、スタンダードとPro、それぞれに6.1インチと6.7インチがある、2サイズ4モデルとなっている。

iPhone 14 Pro Max。この大きさだと、片手で操作するのはかなりツラい

 スタンダードモデルは軽量なアルミ合金フレームを採用するが、Proモデルはより巨大なカメラを採用しつつ高級感のあるステンレススチールフレームを採用することもあって、とにかく重たい。

 iPhone 14の172gもひと昔のスマホだったら重量級だが、同じサイズのiPhone 14 Proは206gもある。慣れることのできる重さではあるが、iPhone 14 Proを触った後にiPhone 14を手にすると「おぉ軽い!」と感じる。

 iPhone 14 Pro Maxになると、重さは240gといった具合で、ずっしりとくる。大きくて握りづらくもあるので、歩きながら片手で使うことはオススメできない。iPhone 14 Pro Maxの画面修理費用は、5万6800円(AppleCare+加入の場合は3700円)だ。

極めて細かいポイントだが、側面ボタンの位置が従前モデルとちょっと異なる。カメラ周りが大きくなってるのでどちらにせよケースの使い回しは不可能なのだが……

 ちなみに発売が1カ月遅れとなる6.7インチのスタンダードモデル「iPhone 14 Plus」は、iPhone 14 Pro Maxと同じ6.7インチディスプレイを搭載するが、重さは203gと、6.1インチディスプレイのiPhone 14 Proとほぼ同じだ。なんだか不条理である。

 カメラ部分の出っ張りは、従前モデルと比較して「ヤバい」と感じるくらい存在感を増している。

左がiPhone 13 Pro、右がiPhone 14 Pro。正面から見た大きさも若干巨大化
厚みも約0.8mmほど大きくなった。元が3.3mmで、けっこうな差である

 背面パネルとレンズの先端の高さを大雑把にノギスで実測した数値で言うと、iPhone 13 Proは3.3mm、iPhone 14 Proは4.1mmだった。ちなみにレンズ抜きの厚みは7.85mm。

 Proモデルはレンズのフレームも硬いステンレススチールのようで、iPhone同士を重ねると、「Ceramic Shield」のフロントパネルに容易に引っ掻き傷を残してしまう。複数台のiPhoneを購入して比較レビューする筆者は、何回かフロントパネルを傷つけていて、ハートも傷ついている。

スタンダードモデルのカメラ部は、iPhone 13(左)が小さかっただけに、iPhone 14(右)は大きく感じられてしまう

 スタンダードモデルの方もカメラ部分が巨大化している。こちらもレンズの高さをノギスで計測すると、iPhone 13が2.2ミリ、iPhone 14が3.2ミリだった。iPhone 14はiPhone 13 Proと同等のメイン広角カメラを搭載するので、同じくらいの大きさにはなるわけだが、1.5倍くらいになるのは、結構な差を感じる。

 カメラは物理的な大きさが性能に直結するので、高性能化で大型化するのは避けられない。しかしこのデザインはどうにかならないのか、とも思う。ケースをつければマシにはなるが、iPhone 13シリーズでも、薄型ケースだとカメラ周辺の出っ張りが目立ってしまう

 デザインは、iPhone 13シリーズ以前と同様のテイストをiPhone 14シリーズも引き継いでいる。

 スタンダードモデルは、背面ガラスは光沢仕上げ、カメラ周りと側面フレームが無光沢仕上げと仕上げとなっている。側面は無光沢のアルミニウムで、指紋もつかず、手触りも良く、いい感じだと思う。

 Proモデルは、背面ガラスは無光沢、カメラ周りと側面フレームが光沢仕上げとなっている。側面フレームは鏡面仕上げのようなステンレススチールで、高級感があって見栄えも良いが、少しでも触ると手脂が残る感じで、実用シーンでは美しさを保ちにくい。

iPhone 13(左)とiPhone 14(右)のPRODUCT(RED)

 ちなみにiPhone13シリーズとiPhone 14シリーズ、同名のカラーでもテイストが若干、しかし一目でわかるくらいには異なっている。とくにPRODUCT(RED)はiPhone 13ではワインレッドに近い渋みがあったが、iPhone 14ではかなり鮮やかになった。かなり違うので、本体カラーにこだわりがある人は、実物を見てからの購入を強くオススメする。