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もう手放せません!! 「ワコム Smart Scroll」
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スタパ齋藤 1964年8月28日デビュー。中学生時代にマイコン野郎と化し、高校時代にコンピュータ野郎と化し、大学時代にコンピュータゲーム野郎となって道を誤る。特技は太股の肉離れや乱文乱筆や電池の液漏れと20時間以上の連続睡眠の自称衝動買い技術者。収入のほとんどをカッコよいしサイバーだしナイスだしジョリーグッドなデバイスにつぎ込みつつライター稼業に勤しむ。 |
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見れば見るほどヘン!?
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「ワコム Smart Scroll」標準価格6000円。一見したところ、ユーザーが機能を割り当てられる「多機能マウス」のように見えるが、これは補助入力機器なのだ
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アレは何だろう……でもどーでもいいや、てな感じで薄く薄く興味を抱いていた製品があった。試してみようと思うまでは、その製品名すら覚えていないくらい、その印象も強くない製品である。メーカーさんには失礼な話だが、それはワコムのSmart Scrollという入力機器だ。
Smart Scrollという名さえ知らない頃(つっても最近ですけど)の俺は、多量のエレコム製マウスにこっそり混ざったり、あるいは目立ちまくりのロジクール製各種デバイスの陰にあったり、もしくはドーンと中央に位置するマイクロソフトマウス棚の下のほーにあったりする、この製品を見ていた。ていうか見えていた。いやむしろ見えていたけど意識しないでいた。何しろそーゆーマウス系製品、ポインティングデバイス類の中でのSmart Scrollは、またもや失礼な話ではあるが“目立つことにさえ失敗した一発屋”的なモノと思えたのだ。
Smart Scrollは、一見、トラックボールである。ああトラックボールね、ワコムなんだァふーん、てな見え方をして店舗に置かれていたり置かれていなかったりする。トラックボールと言えばやはり最近じゃぁロジクールですなという具合で、即、消費者から目をそらされてしまう雰囲気の製品だ。とても非常にかなり地味なトラックボール、という見え方のモノであった。
しかもマウス類が置かれてるコーナーにあるものの、他メーカーの製品はズラリと何種類もあるのに、Smart Scrollはポツリと寂しい位置に置かれていたりするから、またもや失礼な話ではあるが「なんか昔とかに発売されたけど在庫として余っちゃってる製品かなんかだろうけどどーでもいいや」と思われがちな存在に見えまくるのだ。
なのでワコムかなんかのトラックボールかなんかがあるのは見えていたような気がしたものの、その製品が全然気にならなかった拙者である。が、そのパッケージを手にしてみたら、前述の薄い薄い興味が、興味津々なる積極的疑問へと変わった。てゅーかコレって何なのよ? ボールの上にある8つのボタンは何なのよ? ボールの右のホイール? 形状的には左利き用のトラック……あ、パッケージに書いてあった。左手専用エルゴノミクスデザイン、と。なるほどコレを左手で扱って……お、マウスと同時に使うのか……むむむ!! これはもしかしたらもしかするかも!! 入力機器の二刀流でバッサバッサと入力なのかも!! だとしたら……。
と興味が加速的肥大を遂げたゆえ、早速試用。そして気の早いことに結論から言うと、Smart Scrollはちょいとスゴい。恐らく多くのユーザーのイラつきや不快感をズバシュワッと斬って捨ててくれるキョーリョクな“補助入力機器”なのである。
確実に効率が上がる入力機器!!
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俺の場合は、特にExcelとPhotoshopとInternet ExplorerとAcrobat Readerで、Smart Scrollを大活用
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Smart Scrollの詳細についてはワコムの製品紹介ページをご覧いただきたいが、製品概要をザッと紹介してみたい。
Smart Scrollでできることは大きく分けて3つ。まずトラックボール(Scroll ballという)を使っての画面スクロールだ。例えばWebページを閲覧中、ブラウザの中に収まりきらないようなデザインや写真などがある場合。フツーはウィンドウ左や下のスクロールバーをマウスで操作し、見たい内容が表示される位置まで画面をスクロールさせる。だが、Smart Scrollの場合、ボールをコロコロと動かすだけで、上下左右自由自在かつクイックに画面をスクロールさせることができる。
もうひとつ、Smart Scrollにはホイール(Zoom wheelという)がある。これは画面の内容をズームアップ・ダウンするためのホイールで、例えばフォトレタッチソフトで写真を見ている時にこのホイールを回すと、写真の拡大縮小をコロコロ動作だけで行える。虫眼鏡アイコンをクリックする必要がなくなるわけだ。
それから、Smart Scroll本体上部に見える8つのボタン類(Function keyという……ってフツーっぽい呼び名ですな)。ここにはよく使うキーボードショートカットを割り振れる。例えばウェブブラウザの場合なら、[ホーム]、[検索]、[お気に入り]、[履歴]、[戻る]、[進む]、[中止]、[更新]などの機能をボタン一押しで呼び出せるのだ。
で、ユニークなのが、Smart Scrollは、左手で扱うようにデザインされている点。つまり、右手でマウスやタブレットのペンを使い、左手でSmart Scrollを使う。Smart Scrollのボール、ホイール、8つのボタンは、それぞれ“アプリケーションで特に多く使われる機能”が割り振られている。誰もが良く使う機能をダイレクトに呼び出せるようにした入力機器がSmart Scrollなのだ。すなわち、常用する機能はSmart Scrollでの操作に任せ、その他をマウスに任せる。タスクシェアリングとでも言おうか、本来マウスが担っていた操作の一部をSmart Scrollに任せることにより、入力の効率化を図ろうという器機なのだ。
実際、Smart Scrollを使うと確実に作業効率が上がる。例えばPhotoshopで写真をレタッチする場合、誰もが絶対使うのがズームツール(虫眼鏡のアイコンですな)や手のひらツール(画像をドラッグしてスクロールさせるアレですな)、それからツールパレット内のいくつかのツール??範囲選択やトリミングやエアブラシなどのツールだ。Smart Scrollを使うと、まずは写真のズームアップダウンやスクロールを、ズームツールや手のひらツールを選択することなく行える。Smart Scrollのボールやホイールを操作するだけで良いのだ。また、マウスでツールパレット内のアイコンをクリックすることなく、8つのボタンのどれかを押すだけでよく使うツールを選択できる。これらの操作は左手で行うので、右手に持ったマウスは、左手で行われたツール切り替えやズーム等操作の後、すぐに描画やトリミングなど他の操作が行なえる。
具体的には、例えば、左手(Smart Scroll)でツール選択→右手(マウス)でツール使用→左手で別のツールを選択→右手で新たなツールを使用→……というふうに、右、左、右、左のクイックな連携作業を行なえる。これまで右手だけで行なっていた作業を、右手と左手で行なえるようになるのは、文字入力が一本指打法からタッチタイピングに変わったくらいのスムーズさがある。
でもPhotoshopの場合、多彩なキーボードショートカットがあるから、右手でマウス、左手でキーボードショートカット操作をしても効率的じゃないか!? と思われるかもしれない。十二分に素早くキーボードショートカットを扱えて、十分に指が長くて、ついでに十分に右手のマウスさばきがうまければ、確かにそうだ。が、実際はそこまでキーボードショートカットに熟達しつつ片手だけでキーボードショートカットを使いこなしまくりの人ってのは少ない。一方、Smart Scrollとマウスを交互に使った時は、誰が使ってもいきなりスムーズ。キーボードショートカットのように左右の手をバタバタ動かすことも激減する。
特に、ルーチンワーク的なマウス操作が多いケース??Photoshopなら、画像の一部を拡大し、コピーし、新規ウィンドウに貼り込んで保存、のような繰り返し行なわれる作業の効率が劇的に上がる。ルーチンワークの多くのケースでスクロールや拡大縮小があるので、まずこれがボールとホイールで効率化される。また、ルーチンワーク内の機能選択や処理適用を8つのボタンに割り振れば(ユーザー設定が可能なんダ)、キーボードに触れることもなく、もちろんプルダウンメニューを開くこともなく、スコスコと作業を進めて終えちまえるのだ。
恐らく、文章だけではこのスムーズ感は伝わりにくいと思う。なので、機会があればぜひ実機に触れてボールやホイールをコロコロしたりボタンをペキペキ押したりしてみて欲しい。
プラグイン方式でアプリに適切な動作
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Photoshop 5.0/5.5/6.0用プラグイン。Smart Scrollの操作を非常に細かくカスタマイズ可能
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Smart Scrollのよーな感じの入力デバイスってのは、これまでにもあった。例えばボタン数の多いホイールマウスなんかがそうだ。フツーのマウスとして使えて、ホイールを回せば縦にスクロールできて、ホイールを押しながらマウスを動かせば上下左右自由にスクロールできたりもして、他のボタンを押せばあらかじめ割り振っておいた機能を使える。
他にも、Microsoft Office Keyboardや、ロジクールのCordless Freedom Opticalキーボードには、ウェブブラウザの[戻る]・[進む]をダイレクトに実行できるボタンや画面スクロールが可能なボタンが装備されている。しかもキーボード左側にあるので、片手にマウス、片手でボタンやホイール、入力作業を効率化できる。
のだが、ボタン数の多いマウスも、前述のキーボード類も、ボタンやキーのカスタマイズの幅が狭い。ウェブブラウザを使うには便利だが、他のアプリケーションを使う場合はイマイチ便利さがない、みたいな。最大公約数的にまずまず使えるくらいのカスタマイズ性だ、と思う。
Smart Scrollの場合はどうかと言えば、ウェブブラウザからテキストエディタまでだいたいまずまず便利っぽく使える最大公約数的カスタマイズ性があり、かつ、特定のアプリケーションではヤケクソに細かいカスタマイズができるよーになっている。それは、Smart Scrollの動作を、プラグインソフトウェアで実現しているからだ。
現在リリースされているプラグインソフトは、『Microsoft Word 97/98/2000/2002』用と『Excel 97/2000/2002』用と『Visio 2000/2002』用と『Internet Explorer 5.0/5.5/6.0』用と『Netscape Navigator 4.7/6.0/6.2』用と『Adobe Photoshop 5.0/5.5/6.0』用と『Photoshop Elements』用と『Photoshop 5.0 LE』用と『Adobe Acrobat Reader 4.0/5.0』用と『Autodesk AutoCAD 2000/LT 2000』用と『Macromedia Flash 5/MX』用と『ComicStudio Mini/ComicStudio』用と『Expression 2 LE/Expression 2』用と『頭脳Rapid』用などとなっているっていうか、このページにある対応ソフトリストどおり。
で、これらのソフトを使う場合、Smart Scrollは実に細かなカスタマイズを行なえる。プラグインソフト内に、各アプリケーションの多数のショートカットが登録されているので、これをSmart Scrollのボタンに割り振れるのだ。また、アプリに合わせてボールやホイールを動かした時の動作が適切に登録されているので、Smart Scroll使ったらアプリがヘンな動きをしたヨってなこともない。
プラグインを入れておきさえすれば、Smart Scrollドライバがアクティブになっているアプリケーションを自動的に判別し、各アプリで設定したボタン機能などを自動的に読み込み・動作する。ユーザーが意識してプラグインとアプリを切り替えるなどの必要はない。
ちなみに、上記のアプリ用以外のプラグインも、リクエストすることによって新たに公開される可能性も高い。また、Smart Scroll用プラグインを開発するためのSDK(Software Development Kit)も公開されており、その気があって腕に覚えのあるユーザーならば自力でプラグインを作っちゃえたりもする。
さておき、他の汎用性のある“プログラマブル入力機器”と比べると、プラグイン方式で特定アプリの特定機能をとことん設定しまくれるSmart Scrollは、実用性がヒッジョーに高いのである。
なお、Smart Scrollで動かしたいアプリのプラグインがない場合、Smart Scrollは汎用のプラグイン(デフォルト)で動作する。汎用プラグインを使う場合は、8つのボタンに対してCtrl+O、Ctrl+C、Ctrl+X、Ctrl+V、Ctrl+Z、Alt+→、Alt+←、Shift、Ctrl、プログラム起動など、Windowsの基本的な動作を割り振れる。ボールとホイールは、アプリによるが、スクロールや1ページごとのブラウズや画像等の縮小拡大や文字等の縮小拡大となる。汎用プラグインでSmart Scrollを使った場合、まあだいたい役立つが、アプリによってはミョーな動きをしちゃうこともある。
もう手放せません!!
実際のところ、俺の場合は、特にExcelとPhotoshopとInternet ExplorerとAcrobat Readerで、Smart Scrollを大活用している。8つのボタンにキーボードショートカットを設定してクイックにアプリを使いこなすのがヒジョーに快適!! アンドゥとコピーとペーストがサクサクできまくって便利!! 新規書類も一発で開けてキモチイー!!
ドえらく便利なのが、やはりボールとホイールだ。前述のようにPhotoshopでは虫眼鏡アイコンなどのツールアイコンをクリックするウザさから開放されて痛快であり、Excelなんかだと横長とか縦長の表を作ってもスクロールのイライラが全然ない。どんなに広大なワークシートでも、ボールをコロロロッとすりゃぁ自由自在に閲覧できちまいやがるのダ!! ExcelとIEに共通した快適さとして、ページやワークシートを自在にスクロールできるってのがあるが、以外にもナイスなのはホイールによる文字サイズの変更だ。ホイールをクリリッと動かすと文字サイズを自由に拡大・縮小できる。キモチよく閲覧したいってことでどーも画面一杯に広げがちなワークシートやページだが、Smart Scrollを使うようになってからは小さいウィンドウでも十分快適に閲覧できるようになった。
ついでに、ドライバのデキも良くて、Smart Scrollのホイールを一押しすれば、8つのボタンにどんな機能が設定されているかが一目瞭然のウィンドウが開く。もう一押しすればそのウィンドウが閉じる。ウィンドウを開いて、ボタン等のカスタマイズをするのも非常に簡単である
難を言えば、まだちょいとプラグインの数すなわちSmart Scrollでとことんまで効率化できるアプリが少ないってあたりだろうか。ついでに難を言えば、デザイン的に地味。逆に言えば、アクがなくてフツーのデザインゆえ、ヘンに目立ったりしないのは良い。のだが、けっこー気に入って使える製品だけに、例えば色違いがあるとか、ボールの色を選べるとか、別のカタチを選べるなど、モノとしての選択肢はもうちょい欲しいところ。
とか言いつつ、「そんな文句言うなら使うな!!」と言われたら「あうあうあうゴメンナサイ文句言いませんからSmart Scroll取り上げないでっ!!」と哀願してしまうほど便利。もはや手放せない存在であり、コレなしではPhotoshopとExcelとIEとAcrobatの快適さがガクンと下がってしまうと言えよう。
・ ワコム Smart Scroll製品情報
http://tablet.wacom.co.jp/products/smartscroll/smart_top.html
2002/06/24 14:18
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