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案外安い出費で大きな安堵のUPS 「オムロン BX50XF」
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スタパ齋藤 1964年8月28日デビュー。中学生時代にマイコン野郎と化し、高校時代にコンピュータ野郎と化し、大学時代にコンピュータゲーム野郎となって道を誤る。特技は太股の肉離れや乱文乱筆や電池の液漏れと20時間以上の連続睡眠の自称衝動買い技術者。収入のほとんどをカッコよいしサイバーだしナイスだしジョリーグッドなデバイスにつぎ込みつつライター稼業に勤しむ。 |
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2度あることは……
先月、確か7月14日だったと思う。その日はヤケに湿気ありまくりの日だったが、空は蠢くような曇天で、なーんかおどろおどろしい雰囲気であって、つまり雷雨になりそうな空もよう。雷雨好きだけど仕事中の俺は、窓の外を見たりディスプレイを見たりして、ややソワソワしつつ原稿を書いていた。もちろんパソコンで原稿を書いていた。
ら!! イキナリ!! ピカッと光ったと思ったその約32ミリ秒後に俺の最強に強まっているし調子もグレイトなパナコムLCWの電源が落ちたなぁと思うが早いか雷鳴が鳴り響いた頃には家ん中真っ暗となった。すなわちどっか近所に落雷したと思われる。で、まあ、俺に直接落雷したんじゃないんだから別に光って鳴って停電しただけなのだが、ちょい心配なのは仕事中のマシン。
原稿のデータは、いつも数行書いたらセーブするクセがついているので、消えても5~6行。大してイタくない。でも、マシンにとっては突然の強制停止。システム関連のファイルが壊れちゃったりしたらイヤだなぁ、と。ともあれ、電力が回復するのを待ち、まずはマシンがどーなったか見るべく、起動してみた。結果、起動はできて、他も特に問題なさそう。ひと安心して原稿を書き始めたら、ちょっと珍しい現象が。
俺は日本語IMEとしてATOK14を、テキストエディタは秀丸エディタを使っている。このふたつで原稿を書いている。で、雷の影響もなかったよーだしと、いつもの調子で原稿を書こうとしたら、漢字変換を行なうと突如、秀丸が死ぬ。ありゃりゃ!? と思ってまた原稿を書こうとすると、あらま今度はヘーキだなって感じで書き進めていると、不意にまた秀丸が死ぬ。明らかに先ほどの停電によるマシン強制停止が原因とは思われる。
その後数時間かけ、アレコレいろいろ試した結果、どうやら、ATOKのユーザー辞書が壊れたらしい。ATOKはオプション設定でメモリ上に辞書を常駐させて変換の高速化を図れる日本語IMEだが、俺はこのオンメモリ辞書を利用中だった。そのせいかも!? ともあれ、現象としては、「じ」という文字を入力・変換した途端に秀丸が異常終了するのだ。再現性ありまくりの不調に陥った。
その後数十分かけ、ATOKを完璧にアンインストールし、まっさらの状態から再インストールしたら、トラブルは治ったが、結局は雷様のおかげで4時間くらい時間を無駄にし、しかも鍛え上げたユーザー辞書も消えちまった。むー。ちょいとイタいっていうか、なんか貯めといた1円玉貯金を家族に全部使われちゃった感覚。なんだよ俺の1円玉貯金使ったろーふざけんな!! でも256円しかなかったヨ。え……256……あっそう……許す。みたいな煮え切らない残念感が残った7月14日の俺だった。
そう言えば、以前にもこーゆーコトがあったのだ。3年くらい前、ソニーのVAIOノートのPCG-715を使っていた時だ。やっぱり停電があったが、マシンがノートパソコンなので安心していたら、VAIOノートはストールし、原稿など俺のユニークデータを収めたフォルダ“だけ”が消えちゃった。バックアップを取っていたので、大してイタいトラブルじゃなかったが、その時も煮え切らない気分っていうかちょっとだけイヤーな感じのどんよりした気持ちになった。
そうかこの釣り支度を万全に整えて体調万全で出かけようとしたら雨が降ってきたようなヘボい気分は、今回で2度目なのか。あーかったりぃ……ていうか2度あることは3度あるっつーよな!! そう考えると3度目のこの気分はぜひ味わわないでいきたいゆえ、俺は無停電電源の購入を決意したッ!!
オムロンのがイイかも……
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オムロンのPOWLI(パウリ)シリーズBX50XF。薄型で縦置きも横置きも可能。液晶デスクトップマシンの下に置くのにはちょうど良いサイズ。縦置きにしてミニタワーデスクトップなどと並べておいても邪魔にならない。最大300Wまでの電力を供給可能
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ATOK14を再インストールし、原稿記述環境もビシッと安定して、さあ原稿の続きを書こうかなと思ったけどやめてヨドバシカメラのウェブサイトで無停電電源を吟味し、コレかなコレだろコレが一番イイだろと思ったのが、オムロンの無停電電源(バックアップ電源:UPS)のPOWLIシリーズ。モノとしては、POWLIのBX50XFにした。
無停電電源(UPS:Uninterruptible Power Supply)は、停電時などにもパソコンなどの電気製品に電力を供給する装置だ。つまりバッテリー。通常は家庭用などの商用電源(コンセントですな)からパソコンなどに電力を送りつつ内部のバッテリーに充電し、停電時にはバッテリーからパソコンなどに電力を送る。なお、通常時 → 停電の瞬間に(超短い時間で)自動的に電源を切り替えてくれるので、突然の停電などでもパソコンなどの電気製品が停止することがない。それから、コンピュータ向けの多くのUPSは、停電時つまりUPSのバッテリーが使われ始めたら、自動的に正しい手順でコンピュータをシャットダウンするなどの機構やユーティリティソフトを持つ。
それからUPSは、モノにもよるが、基本的には、停電後にわずかな時間だけパソコンなどに電力を供給できればイイというモノ。サーバー用のUPSなどはけっこー長い時間サーバを動かしまくれるそうだが、ふつー一般に小売りされている感じのUPSは、停電してもパソコンをずっと使い続けられる装置“ではない”のだ。停電でいきなりパソコンが停止するディスクがクラッシュしたりして困っちゃうから、停電後でも正しい手順でパソコンをシャットダウンできる=停電によるトラブルを防ぐためのものである。
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基本的には単なるバッテリーなので、スイッチ類は少ない。左側の電源スイッチはUPS自体の電源をオンオフするもの。これをオフにすると通常時でも停電時でもパソコンに給電しない。右のブザー停止/テストボタンは、BX50XFの警告音が鳴るかなどのテスト用
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俺がBX50XFを選んだのは、価格とサイズ。UPSとして蓄電容量が大きければ、それだけ停電後などにもシステムを長く使えるが、蓄電容量が大きいUPSはそれなりにデカくて高価になる。また、前述の理由のとおり、UPSは停電の瞬間のトラブルを回避し、その後の安全策を取れる程度の性能があれば十分なのだ。特にパーソナルユースではそうだ。なので、蓄電容量はそーんなに気にせず、なるべく安く買えて、サイズ(や形状)が俺のシステムにマッチするものを選んだ。
BX50XFの良い点は、縦置き・横置きが可能で、UPSにしてはスマートなところ。加えて、横置きしたときのサイズが、現在俺が使っているマシンこと松下のパナコムLCWの真下にちょうどよく収まるという点。スッキリと邪魔にならず置けるから選んだって感じだ。ていうかUPSってけっこー邪魔になるデザインのモノが多いのだ。年に数度役立つか役立たないかの装置が、いつもデーンと邪魔に構えていてもらってはイヤンな感じだと言えよう。
ただ、UPSを選ぶ場合は、当然のことだが使用するシステムの総消費電力をよーく考えたほうがいい。例えばBX50XFは300Wの電力を供給できるUPSだが、これにパソコンと複数台の大型CRTおよび各種周辺機器をつなぐとなると、ちょっとキツいかもしれない。俺の場合は使ってもせいぜい50W程度に収まるシステムなので、BX50XFは十分余裕もしくはやや過剰気味なUPSとなる。
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BX50XFの背面。コンセントが3つあり、合計で300Wまでの電力を供給できる。その中央やや左に見えるのが、電話回線を通してやってくるかも知れない雷高電圧を防ぐためのサージ保護コネクタ。その左はパソコンとの通信用のRS232Cコネクタと本体の基本的な機能を設定するディップスイッチだ
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停電時には自動シャットダウン
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オールインワンノートパソコンとだいたい同じくらいのサイズであるBX50XFは、松下のダブル液晶デスクトップ機ことパナコムLCWの下にピッタリと収まる。なかなかスリムで邪魔にならない無停電電源なのだ
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BX50XFを始めとするPOWLIシリーズUPSの使い方は比較的にチョーカンタンで、本体を設置し、システムとつなぎ、電源を入れるだけ。これで単に停電時にも電力を供給してくれるバックアップ電源として使える。加えて、UPSとパソコンをシリアル(RS232C)接続し、専用の電源管理(監視)ユーティリティソフトウェアをインストールすれば、停電時にはパソコンを自動シャットダウンしてくれる便利なUPSとして使えるようになる。
BX50XFに付属のユーティリティはバックアップ電源監視モニタというもので、これがちょいと良くできている。そのウィンドウを見ればおわかりいただけるように、常時UPSの状態を監視し、入出力電圧や周波数、それから使用中の消費電力容量などを知らせてくれる。また、UPSの細かな機能・動作設定はほとんどこのユーティリティから設定できる。
停電時の自動シャットダウンの時間設定などもこのユーティリティで設定する。これもそのウィンドウを見ていただければ一目瞭然だが、停電が起きてからパソコンの自動シャットダウンが始まるまでの時間などや、警告音などを鳴らす時間も細かく設定できる。
停電時の具体的なUPSの動作は、まず停電したら自動的に電源がUPS(内のバッテリーからの)電源に切り替わる。その後、一定の時間UPSの警告ブザー音が鳴り、次にシャットダウンの処理が始まる。アプリケーションを閉じて、OSをシャットダウンさせるという手順だ。これが済むと、UPSからの電力供給も自動的に停止する。
これらの手順の各段階の時間は、自動シャットダウンの時間の設定で行える。例えば[シャットダウン開始までの時間]を60秒に設定すれば、停電直後ブザーが鳴るだけで特に何も起きない時間が60秒続く。また、[システムシャットダウンに必要な時間]を360秒に設定すれば、最初のブザーが鳴るだけの60秒が過ぎた後、にシャットダウンの自動処理が始まり、OSがシャットダウンするなどする間、360秒間電力を供給する。その後、UPSからの電力供給が止まる。ってコトバで書くとなーんなゴチャゴチャした感じだが、実際は一度使ってみれば即飲み込めるような単純な設定だ。
ともあれ、常時使っているソフトなどの環境によって、シャットダウンまでの各段階の時間設定を自由に行えるのは便利であり現実的だと言えよう。
それから細かいところでは、Windows 2000のパフォーマンスと連携して、このバックアップ電源監視モニタが動作するあたりもちょいとおもしろい。別にUPSをモニタしてもそーんなに大きな意味はないのだが、自分のシステムの消費電力の移り変わりなんかを観察できたり知れたりできるのは少々楽しい。
この他にも複数のUPSを連携させて使うとか、ネットワーク上で便利に使うなど、BX50XFにはいろんな賢い機能があるが、パーソナルユースではまあ、充実した自動シャットダウン機能を持ったバックアップ電源といったところ。
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バックアップ電源監視モニタのウィンドウ。リアルタイムで電圧や消費電力などがわかる。多彩な機能を持ったユーティリティなので、いろいろなパラーメータを見たり設定をいじくっているのもちょいと愉快
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バックアップ電源監視モニタのイベントログウィンドウ。BX50XFが過去にどんな動作をしたかを一覧できる。いつ停電が起きていつバックアップを始めたかなどがわかって、ちょっとだけ愉快
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UPSの実際
さて、UPSを導入して大安心なフィーリングの俺だが、導入してから日が短いってこともあって、まだ一度も全然UPSが活躍してくれねえのであった。だって雷もブレーカーも落ちないんだもーん。
むー、つまらん。じゃあ自分で!! と思って、おもむろにブレーカーを落としてみた!! そしたら、おおっ、鳴ってる鳴ってる警告ブザーが鳴ってますよ!! 警告ブザーが鳴っているということは、UPSからパソコンなどに電力が供給されているということ!! 家の電源の大元であるブレーカーをダウンさせてもパソコンを動かしているとはさすがUPS!! って当たり前ですな。
で、設定した時間が過ぎると、今度は自動シャットダウンを始めた。アプリケーションを閉じ、いつものシャットダウンと同様の手順を踏み、マシンが[電源を切れる状態]となり、その後設定した時間が過ぎるとマシンの電源が落ちる。同時にUPS自体もオフ状態。よっしゃよく働いた!! って自ら停電起こして喜んでる自分がややもの悲しい俺であった。
ともかく、突如の停電が起きてもこれならデータを壊したりディスクをクラッシュさせることもない。何せいつものOSシャットダウンと同じことをしているのだから。
あ、それから、BX50XFの背面には、3つのコンセントのほか、電話回線のサージ保護コネクタも備わっている。これはちょいと心強いですな。去年あたりは都心部でけっこーたくさん雷が落ちたらしいが、その影響で、モデムやTAやパソコンなんかが壊れたそうな。雷の電流が電話線を経由し、モデムやパソコンに被害をもたらしたらしい。でも、電話回線用のサージ保護コネクタがあれば、そういう被害も受けない。受けるときゃ受けるらしいが、非常に受けにくくなるようだ。なので、これからの季節、すなわち台風がビシバシやってきたり夏の終わりを告げる雷雨が降りまくったりする時期には、かなり安心感の高い装置なのではないだろうかと思う。
ただ、実際の話、雷で停電とか、あるいは家電使いすぎてブレーカーが落ちるなんてこたぁ、そうそうナイのだ。こないだ停電したのいつだか覚えてますぅ? たぶんほとんど記憶がないって人が大多数だと思われる。ブレーカーが落ちるってのは月に何度かある家庭があるかもしれないが、雷で停電ってのは年に数えるほど。UPSを設置したとは言え、これが役立つ機会はあーんまり、ない。なので、いつも便利とか使っておもしろいって製品ではない。
が、いわゆるひとつの万が一の時、最悪の事態=システムの深刻なクラッシュは、たぶん確実に防いでくれるだろう。安心を獲得できる製品として考えれば、案外低い出費で大きな安堵を得られると言えるのではなかろうか。
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バックアップ電源監視モニタでBX50XFの動作設定をしているところ。UPSとして動き始めた後の動作を秒刻みで設定できる
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Windows2000のパフォーマンスで、BX50XFを監視することもできる。バックアップ電源監視モニタと同様に、接続(負荷)容量を確認できるので、UPSの容量を見ながら周辺機器をつなぎ、全体の消費電力を調べられたりして便利
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・ オムロン POWLI BX50XF製品情報
http://www.omron.co.jp/ped-j/product/ups/bx50xf/bx50xf.htm
・ スタパ齋藤常時出演中!!「スタパトロニクスTV」(impress TV)
2001/08/20 16:14
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