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小型でカワイイ! 電子工作向け直流電源キット「DK-911」
スタパ齋藤 スタパ齋藤
1964年8月28日デビュー。中学生時代にマイコン野郎と化し、高校時代にコンピュータ野郎と化し、大学時代にコンピュータゲーム野郎となって道を誤る。特技は太股の肉離れや乱文乱筆や電池の液漏れと20時間以上の連続睡眠の自称衝動買い技術者。収入のほとんどをカッコよいしサイバーだしナイスだしジョリーグッドなデバイスにつぎ込みつつライター稼業に勤しむ。


電子工作向け直流安定化電源キット

 唐突なんですけど、拙者、直流安定化電源が好き。なので、複数台持っており、なんやかんやでけっこー頻繁に使用中である。で、最近、小型でカワイイ安定化電源キットを組み立てたのだが、ソレが意外なほど実用的だったので、レポートしてみたい。モノは、サンハヤトの実験用直流電源キットDK-911だ。


サンハヤトの実験用直流電源キットDK-911、の完成状態。直流安定化電源全般からすると、異端なほどカワイイ!! ような気がしてならない。ツクモロボット王国にて7980円で購入 DK-911はこんな姿で売られている!! 外箱には特に愛嬌ナシ。質実剛健な感じの電源キットですな キットなので、ハンダ付けやケーブルの切断等、多少の工作が必要になる。が、説明書通りに進めれば特に問題なく組み上げられる

 直流安定化電源は、えーと、定義は微妙に難しいような気がするが、交流100ボルト(コンセントからの電気)を直流に変えるACアダプタでありかつ、出力電圧(や電流)の変動が非常に少なくて、さらに出力電圧等をある程度変化させられる電源装置を指す。精度や機能により様々な機種があるが、要は正確な電圧で機器(というか回路)を駆動させるための高精度な電源、てな存在である。


菊水の直流安定化電源PAB 18-1A。かなり古い安定化電源だが、0~18ボルト、最大1アンペアまで使えるわりには小型で高機能。菊水製品は、古い機器でもウェブサイト上から説明書をダウンロードできるのがナイス エー・アンド・デイの直流安定化電源AD-8723D。定電圧・定電流の電源として使えて比較的に低価格。実験用にオススメな感じ ちょっと本格的な直流安定化電源、アレイ3600シリーズ。写真はモデル3645A。定電圧・定電流を出力でき、出力電圧等設定も非常に精密に行える

 身近なところでは、電子工作なんかに超便利ですな。正しく安定した電圧を出力する電源となるので、回路を比較的に正しく検証できたり、電源電圧の違う回路をテストする時は安定化電源側の出力を変更するだけで済んだりもして、頻繁に役立つ。多くの直流安定化電源は出力電圧の設定における自由度が高いので、ヒトツあると電源に関する苦労や面倒が激減するわけだ。

 ヒトツあると、とか言いつつ、上記のように複数の安定化電源を持ってる俺なんだが、結局、日常的に使える安定化電源として「もっと小さいのが欲しい!!」という観点から、実験用直流電源キットDK-911の購入に至った。

 で、実際に速買って組んでみたら全体的にナイス!! 電源が乾電池ベースの電子工作においては実用性もかなり高い感じなので、これはゼヒ、レポートしてゆきたい!! てな今回なのである。


学びながら作れる点も魅力

 実験用直流電源キットDK-911は、キット。なので、ハンダごてやニッパー、ドライバーといった工具を使い、自分で組み上げる必要がある。ちなみに、組み上げ済(完成品)のモデルDK-910も最近発売されたようだ。なお、サンハヤトの直販価格は、組み立てが必要なDK-911が9975円、完成品のDK-910が1万2285円となっている。


DK-911はキット品。基板への部品取り付け(ハンダ付け)からシャーシのネジ止めまで全部DIYなのだ 基板や部品は、大まかなセクション毎に袋詰めされている。日本メーカーのシッカリしたキットは、部品の選別がラクでイイですな 箱に「ハンダ付けする部品点数38点。ハンダ付け箇所約90箇所」とある。ゆっくりジックリと組み立てても、半日あればできると思われる

付属する説明書。“学年・組・氏名”とあるあたり、学校用の教材として多く使われているのだろう 説明書では電子工作の基礎知識を身につけていける。電子工作キットとしては懇切丁寧ですな 部品の加工方法も解説されている

 DK-911を組み立てだが、工作としてはさほど難易度は高くない感じ。基板のパターンが大きめであり、実装する電子部品も小さいものはあまりない。ハンダ付け初心者がいきなりDK-911、というのは(キットとしての価格がある程度するので)微妙にナンだが、ハンダごてを握ったことのある人なら誰でもイケる内容だと思う。

 ちなみに、組み立てに必要な道具は──ハンダごて、ハンダ、ニッパー、ラジオペンチ、プラスドライバー、テスターといった程度。ハンダごてを持っている人なら既に全部揃ってたりしますな。


必要なコード類とシャーシの一部。全て同梱で、シャーシには部品取り付け用の穴が空いているので、ほとんど加工の手間はなく、容易に組み上げられる 基板は3枚。ハンダ付けもすぐに完了してしまう。基板のハンダ付けより、コード類のハンダ付けの方が手間がかかる感じだ 基板と基板を接続しつつ、シャーシに取り付けつつ、シャーシと基板を配線しつつ、という感じで作業を進めていく

組み上がり間近の状態。組み立て後半に行くほど、電子工作キットとしての扱いにくさが出てくるのは、サンハヤト製安定化電源キットの特徴かも!? フロントパネルを取り付けた状態。この後、ショート等がないか確認すれば完成だ ショート等の不具合がないかどうかシッカリと確認を。何しろAC100ボルトで動作するハードウェア、電源投入前に安全を確かめないと……。方法は説明書に明記されている

 キットを作ってみて思うのは、キット自体の手軽さもあるが、説明書の良さですな。もともと教育向けのキットらしく、電源方式やその駆動原理なんかも説明している。


説明書内では、直流安定化電源の方式やしくみ、簡単な動作原理が説明されている ただ、この説明で全てがわかるというものではなく、この説明をさらに解説する教師が必要な概要というイメージではある

 そんなキットなので、作りながら「この部分がレギュレータで、こっちのツマミで抵抗値を変えてるのか」と“部品の実際”がよくわかる。「ココとココをつなげ、そしてこのパーツを付けろ」的な手順だけを説明したキットと比べると、より電子回路の理解に向くキットだと思う。


手取り足取り……ではない部分も

 半日あれば組み上げられるキットとは言っても、「ハンダ付けする部品点数38点。ハンダ付け箇所約90箇所」であり、AC100ボルトが流れる機器。なので、作る時は慎重になるわけであって、組み上げ後半は多少の疲れが出てきた。

 その時に感じたのは、説明書がある側面で“ぶっきらぼう”であること。お手軽簡単・体験キットの説明書なんかだと、(1)ココとココをハンダ付けします、(2)ここをネジ止めします、(3)その後にこのコードをつなぎます……みたいに説明されていて、何も考えずに作業を進められたりする。

 一方、DK-911の説明書の場合、要点は明確に説明されているものの、そこまで親切ではない。例えば、実体配線図を伴う組み立て説明ページに抵抗値が明記されていなかったり、ケーブルの色が一部読みづらかったりする。ので、「あれ? このR10っていう抵抗、何Ω!? あとW8っていうコード、何色? トランスのドコに接続するんだっけ?」てな感じで混乱したり、疑問が出たりする感じ。


説明書では、組み立ての要点は明記されていてわかりやすい。手順も明記されており、実体配線図もキレイ 手順や実体配線図はもちろん完璧なのだが、抵抗やコンデンサ等は全て記号(RxxやCxx)で示されていながらも抵抗値や容量がそのページには書かれていない ケーブルの色も一部読み取りにくい(上図の左、W1およびW2など)。……つまり、各ページおよび回路図をじっくり見ろ、ってコト、です、な

 ただ、この部分は「DK-911の説明書がイマイチ」という印象ではない。ラクして作ろうとするスタンスだと「DK-911の説明書は説明不足」に見えてくるのだが、学習しながら作ろうとする場合は、なんつーか納得できる説明書なんですな。

 説明書巻末には回路図を兼ねた配線図があって、これを見つつ、組み立ての手順解説ページも見つつ組み上げていくと、いろいろ理解できる点が多いのだ。例えばヒューズやサージアブソーバーがどうつながり、どう役立っているのか、みたいなコトが、回路図および実際のパーツの接続によってよく理解できる。

 逆に、全ての手順を完全&親切に説明した説明書だと、組み上げるにはラクだが、理解のチャンスをスルーしてしまうかもしれない。恐らくは、指導者と生徒がいて、ポイント毎に説明がありつつ組み上るためのDK-911。説明書を使う側が「電子回路を学ぼう」というスタンスだと、組み上げ後の達成感を増強してくれる一冊だと思える。

 と、腰を低くしてこのキットを見るとそーゆー感じ。だがしかし、ぶっちゃけ、単なる電子工作キットとして考えると、多少の作りにくさを感じたのも事実だ。「とっとと作ろう!!」てな方向だと説明書はちょっと面倒感アリだし、基板どうしの結線作業がスムーズに進まない感もアリだし。てなわけで、やはり、ある程度の学習意欲を持ちつつ組んでいくのが吉なキットだとは思う。


精度は低めだが、使いやすい直流安定化電源

 さて、組み上がったDK-911。てか、DK-911を買った理由は、第一にフロントパネルのカワイさであり、電圧をロータリースイッチで変更できる点であり、本体の小ささであり、オマケ的にハンダ付けも楽しめるから。


DK-911のフロントパネル。塗装もシルク印刷もキレイであり、機能的な単純明快さもカワイげ 出力電圧を調整するためのロータリースイッチ。カチカチカチっと8段階で回転する 外形寸法は、幅91×高さ93×奥行き164mm。質量は1.4kg。小型の安定化電源なのダ

 で、そんな観点からDK-911を組み上げてみて、使ってみたら、ん~む、イイ感じ!! 総じて使いやすいし、外観もイイし、やはり小さいってトコロが実用的であって、やはりカワイかった!!


完成したDK-911さん。シンプルですな。電源ランプはオレンジ色のネオンで、白いボディに映える 電圧は、1.5、3、3.3、5、6、9、12、15ボルトの8段階に変更できる。最大出力電流は800ミリアンペアで、定電流電源としては使えない。出力電圧の誤差は±5%。2万円弱あたりの直流安定化電源と比べるとかなり精度が低いが、趣味的お気楽電子工作用途には十分かも!? ファンはナシ。静かに使える点においても快適なのだ

 実際に使ってみると、まずコンパクトなので机上に出しっぱなしにしておいても邪魔にならないのが良い。また、拙者の場合は趣味の電子工作用途に使っているが、出力電圧が電池の本数に従っている点も便利で、電圧の切り替えをガチガチッと一発で固定できるのも快適だ。

 つーか、ちょっと高性能な直流安定化電源の場合、電圧や電流の調整をクリック感のないボリュームで行うため、例えばちょうど3ボルトとかピッタリ9ボルトとかに合わせる時、少しストレスがある。かなり高機能な製品の場合、そのあたりもスゲく快適だったりするが、それはソレで高価&大型&操作が煩雑になったりする。

 あと、ぶっちゃけた話、DK-911は直流安定化電源としては出力電圧の精度が高くない。負荷アリの公称値で誤差が±5%とある。ので、正確な電圧を求める方にはオススメできない。が、乾電池が電源となる回路の電子工作なんかを、それほど厳密って感じではなくてヤルなら、十分に使える精度であり定格なんじゃないかと思う。

 あと、どうでしょう……時として精度の高い電源を使って計測とかしたくなるかも~的な人においては、DK-911は、とりあえず使える小さくて手軽な電源、てな感じ? いわばサブとか予備!? で、本腰入れたい時には、ベンチトップな感じの本格的なのを、というイメージだろうか。

 ともあれ、DK-911、作って楽しめて、電源のことも少々学べて、そして日常的に役立ったりする直流安定化電源として、けっこーおもしろいキットだと感じた次第である。



URL
  サンハヤトの実験用直流電源キット「DK-911」製品情報
  http://www.sunhayato.co.jp/products/details.php?u=1317&id=06061

2008/08/18 10:51

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