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音で遊べるヤマハのテノリオン
スタパ齋藤
1964年8月28日デビュー。中学生時代にマイコン野郎と化し、高校時代にコンピュータ野郎と化し、大学時代にコンピュータゲーム野郎となって道を誤る。特技は太股の肉離れや乱文乱筆や電池の液漏れと20時間以上の連続睡眠の自称衝動買い技術者。収入のほとんどをカッコよいしサイバーだしナイスだしジョリーグッドなデバイスにつぎ込みつつライター稼業に勤しむ。
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音で遊べるヤマハのテノリオン
一部で超話題の斬新な電子楽器、
ヤマハのテノリオン(TENORI-ON)
。白色に光る256個のLEDが鍵盤&演奏を視覚化するパネルとなるという、メディアアートな感じの存在だ。
テノリオン本体。縦16個×横16個のボタン(白色LED内蔵)が、演奏時の鍵盤となり、演奏再生時には表示パネルの役割を果たす。ボタンを何となく押しているとソレっぽいメロディを奏でてくれたりする電子楽器なのだ
テノリオンの発表があった時は「岩井俊雄氏とヤマハのコラボなコンセプト・デバイスとかかニャ?」とか思った俺。電子音とLEDで表現したナニカ、というイメージを抱いていた。が、情報が得られるにつれ、これは楽器らしい、と。しかも、ちょっと楽しそうであり敷居が低そうだヨ、と感じられた。特に、これまでにないカタチのインターフェイスに興味津々な拙者であった。
そんなところ、ヤマハから実機をお借りすることができたので、早速試した……途端、猛烈かつヒジョーにコレが欲しくなったりしたってのはさておいて、今回はこのテノリオンについてレポートしてみたい。
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テノリオンって何?
テノリオンは電子楽器である。16×16個=256個のLED内蔵ボタンと、256種類の音色(うち3種類はユーザーが作った音を使える)を持ち、16ステップのシーケンサー機能を使える。音源内蔵のステップシーケンサー、と言えるが、イジってみた印象はそーゆーアリキタリのものではなかった。
テノリオンのサイズは205×205×32mmで、質量は約約700g(乾電池含まず)。前面に256個の入力ボタン兼LEDが、背面に256個のLEDが並ぶ。本体のほとんどがLEDって感じですな。机上に置いても、両手で持っても使える(演奏できる)
表面に並んだ256個のLEDが鍵盤の役目を果たす。いくつかの演奏・入力モードを持つが、どのモードにも“適宜ボタンを押せば音を楽しめる”という感覚がある。LEDはボタン押下や演奏に応じてテンポよく光る
【動画】画面クリックで再生
内蔵のデモを再生したところ。光とともに音楽を奏でるナニカ、というイメージではある。が、LEDの縦方向が(主に)音階、横方向が時間(16ステップ)となっている。シーケンサーであるテノリオンにプログラムしてこれを再生すると、プログラムを光で再生しつつ発音している状態なのだ
テノリオン、電源入れるとプログラム開始OK状態になるんスよ。で、何となくボタンを押し、眺めていると、押したボタンのとおりに音が鳴ってるもよう。
……パネル上のボタンを押すと、なんかソコの音が出るみたい。右から左へ流れているのは、なるほど、このタイミングで押したボタンが鳴るんだナ、てなコトがわかる。
【動画】画面クリックで再生
電源投入直後、ボタンを押したとおりに音色が鳴るモードになっている。ボタンは、上方向が音階で、横方向が再生の順番。時間時軸に沿って16ステップ発音した後、また最初のステップに戻って再生を続ける
【動画】画面クリックで再生
こうすると、よりわかりやすいですな。音色は、この他にも253種類のプリセットから選ぶことができる
【動画】画面クリックで再生
本体左側上にある[L1]ボタンで、瞬時に音色を変えられる。[L1]ボタンを押すと、画面上縦横を貫く線が現れるが、その交点が現在再生されている音色。[L1]を押しながら、画面上の一点を押せば、その位置にあたる音色を選択できる。音色変更等各種操作は、本体下側のジョグダイアルとボタンでも行なえる
恐らく、ステップシーケンサーというモノを知っている人なら、すぐにその動作を察知できるだろう。また、そーゆーモンを知らない人でも、とりあえずボタン押したりすれば、音楽な感じのモノが出来つつあるっぽいコトを理解できる。総じて、かなり直感的に“音を楽しめるハードウェア”である。
私見だが、テノリオンを既存の電子楽器と横並びで考えると、テノリオンの妙味を見失うと思う──「突飛なインターフェイスの音源だよね」「遊べるかもしれないけど、曲は作りにくい」とか思っちゃうカモ。これまた私見だが、テノリオンは、これを従来のような楽器として見たり、あるいは手持ちの楽器に加える新たなインスツルメンツとして考えるのは残念に思う。
ナゼかと言うと……。
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粘土みたいに、音をイジって遊ぶ
テノリオンの機能・使い方に関しては、
ヤマハの製品紹介ページ
に詳しく掲載されており、各種マニュアルをダウンロードできるので、そちらをご参照いただきたい。また、同サイトやYouTube等では、動画による(高度な)パフォーマンスも見られる。
のだが、テノリオンに触れる前に、そういった完成作品や電子楽器としての機能詳細を見てしまうと、結局テノリオンってナンカよくわかんないけどカワイイ音とか出るらしいヨ、という印象になりがちだと思う。そこで、俺の独断と偏見でテノリオンに対する見解を書いたりしてみたい。
てか、なんつーかコレ、童心状態でただただ粘土をこねたり、あるいは漠然と木を削ったりするような感触に激似である。
例えば、無心に粘土こねてて、あれ? なんかコレ……もっとこねると……ちょっといいカタチになってきたヨ!! てな感じで、当初は混沌だった状態からナニカがデキてくるような状況ってあるでしょ? アレに非常に近い。
【動画】画面クリックで再生
テキトーにボタンを押して、出る音に任せて何となくイジっている例。これが音楽的かどうかはアレだが、本人的には[ボタンを押してみた]→[何となくメロディっぽい]→[ちょっとソレらしくなった]、という予想外の展開が実に愉快だ
【動画】画面クリックで再生
ドラム系の音も入っている。テキトーにボタンを押していくと、聴いたコトない演奏となる。が、テキトーに音を減らしていけば、アリかもしれないリズムに!?
【動画】画面クリックで再生
ファミコン寄りのポップな音も入っている。やはりこれも何となくボタンを押していると何となくレトロ・ゲーム風に
テノリオンをイジると、ボタンを押すだけで何かしら音が出て、その音にチョイ影響された自分がチョイ意識してさらにボタンを押す、と、音に方向性がでてきて……という、テノリオンvs拙者における障壁の低いインタラクティビティが心地よい。心地よい上に、音楽チックなものが出来上がるから愉快だ。
しかし、多くの楽器~電子楽器の場合は違う。プリミティブなアコースティック楽器とか、
コルグのアレ
とかならイジってるだけで楽しめたりするが、ほとんどの楽器にはお決まりのインターフェイス(鍵盤とか弦とか)がある。電子楽器~DAWあたりなら音を出す前の設定なんかも。
なので、従来の楽器の多くは、演奏技術がない場合、いい加減にイジってるだけじゃ楽しめない。鍵盤楽器をテキトーに弾いたりなんかすると、だいたい前衛的な演奏になりますな。速く弾くとフリージャズですな。不協和音の中に、たまに心地よい和音が出たりする程度で、結果、楽器イジってヘコんだりして。
テノリオンの場合、まずはテキトーでOKである。基本は16ステップのシーケンサーなので、(スコアモードなら)耳障りなテンポにならない。また、テノリオンでは、特定の音階(スケール)で音が鳴るようになっている。
ちなみに、音階は、Ionian(イオニアン)、Dorian(ドリアン)、Phrygian(フリジアン)、Lydian(リディアン)、Mixolydian(ミクソリディアン)、Aeolian(エオリアン)、Locrian(ロクリアン)、Chromatic(クロマチック)、OKINAWA(琉球音階)の9種類から選択可能。
ともあれ、テンポと音階は自動的に調整されるので、要は“そーとームチャをしない限りソレらしいメロディになる”というわけだ。
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敢えてテキトーな演奏したい人にも
何となくイジってればソレっぽいメロディが出てきて楽しめるテノリオン。別の言い方をすれば、テキトーにしか演奏できない人にでもOKなテノリオンである。
が、しかし、ある種の積極的なテキトー操作から、新しい発想が生まれたりするという点で、テノリオンはアイデアを発生させるツールだとも思う。
鍵盤楽器や弦楽器等がデキる人の場合、鍵盤や弦に手を置くと、思わず“指が記憶している演奏”をシちゃいがち。何事もそーだが、その人の特定の技術が高まる一方で、その技術がその人の発想・方向性を狭めたりする。
テノリオンについても、テノリオン独自の演奏技術ってのがあるとは思うが、それよりも、積極的に偶然の音を求められる機材というニュアンスを強く感じる。前述の粘土とかの話と同様ですな。何となくイジってみたら、ちょっと良さげなフレーズが……じゃあココをこうしてソコをあーして、と、無や混沌から何か光りそうな要素を求める時の手助けをしてくれる装置だと思う。しかもボタン操作だけというハードルの低いインターフェイスで、だ。
だから、テノリオンはむしろ、メチャクチャかつテキトーにイジって遊ぶのが良いのでは、と。フツーしねーだろこういうコト、というのを、手軽&即座にして、アリエネーと思っていた音の並びがアリに転ずる瞬間を求めたり楽しんだり。
なお、テノリオンには
様々な演奏モード
がある。具体的には、ステップシーケンサ然としたスコアモード、パネル状を光が移動しながら(ブロック崩しゲームのように跳ね返りながら)ランダムに音を奏でるランダムモード、指先で描いた軌跡を光と音で自動再生するドローモード、光が重力に従って落下して跳ねるように音を出すバウンスモード、押したボタンの音が出たりその音が持続して鳴ったりするプッシュモード、パネルの横軸を音階・縦軸を発音間隔として鍵盤的に演奏できるソロモードの6種類だ。
これらどのモードでも、前述の音階に従って音が出て、規則正しいタイミングで音が出るモードもある。ので、やはりテノリオンは、何となく触っていれば、音と戯れることができる電子楽器だと言えよう。
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ちょっと物足りない音色と操作感
テノリオンをしばらく使ってみて、全体的にはスゲく歓迎すべき電子楽器だと感じる。誰でもスグ使えるし、出てくる音にゲンナリするシチュエーションが少ないっていうか多くのケースで気持ちよくなれるし、あと白色LEDのイルミネーションもキレイだし。
ただ、使っていると少々の物足りなさも感じる。
ひとつは、これは岩井俊雄氏の世界というコトで仕方がないかもしれないが、音色がすこーし岩井ワールド寄り? てな気がすること。全体的に癒し系でありアンビエント。ズガンとロックなサウンドとか、ピキーンとテクノな響きという音色が非常に少ない。
誰の耳にも心地よい音が揃っている点は非常に良いとは思う。が、簡単だったり偶然だったりする操作で、様々な音を好奇心とともに試せる装置として、さらに多種多様な音色があって欲しかった。ユーザーが作成したサンプリングサウンドをテノリオン上で演奏することもできるが、やはりプリセットで多量に入ってんのがラクっす。
それと操作性。机上や膝の上に置いて演奏するには特に問題ナシだが、手に持って使うと、ボタン位置&本体形状&本体質量の関係上、ちょっと不安定な感じ。YouTubeのテノリオン演奏動画なんかを観ていると、やはり多くの人がなーんかギクシャクした感じでテノリオンを持って演奏している。ま、慣れの範疇ではあるのだが。
あと個人的には、白色LEDじゃなくて、フルカラーLEDとかを実装して欲しかった……って、回路が複雑化してパーツも高くなって値段がガーンと上がっちゃう? でも、テノリオンの場合、表側の256個のLEDが非常に重要な入力系インターフェイスになっているので、LED全体の視認性を上げたりシーケンス動作をより見やすくするために、もう一工夫欲しかったように思う。
ともあれ、外見・挙動の斬新さのみならず、実はより多くの人にとって身近な電子楽器であり、これまでの楽器~電子楽器の制約を打ち砕いているようにも思えるテノリオン。現在、
TENORI-ON Web Shop
のみで、121,000円(税込)で発売(抽選販売)されているが、俺の場合は(拙者の懐に)もーちょっと余裕があったら即買いな感じ。夏頃に抽選販売があったら買おうかニャ!! とか考え中である。
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URL
ヤマハの「テノリオン(TENORI-ON)」製品情報
http://www.yamaha.co.jp/tenori-on/
「テノリオン(TENORI-ON)」ニュースリリース
http://www.yamaha.co.jp/news/2008/08042501.html
2008/06/09 15:28
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