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約99%の騒音をカット!! のヘッドホン「ソニー MDR-NC500D」
スタパ齋藤 スタパ齋藤
1964年8月28日デビュー。中学生時代にマイコン野郎と化し、高校時代にコンピュータ野郎と化し、大学時代にコンピュータゲーム野郎となって道を誤る。特技は太股の肉離れや乱文乱筆や電池の液漏れと20時間以上の連続睡眠の自称衝動買い技術者。収入のほとんどをカッコよいしサイバーだしナイスだしジョリーグッドなデバイスにつぎ込みつつライター稼業に勤しむ。


約99%の騒音をカット!! のヘッドホン

ソニーのノイズキャンセリングヘッドホン、MDR-NC500D。デジタルフィルターとデジタルイコライザーにより、従来のアナログ式ノイズキャンセリングヘッドホンよりも効率よく騒音を低減しつつ、高音質も実現している。2008年5月26日現在の実勢価格は35,000円前後
 今回のネタはソニーのヘッドホン、MDR-NC500D。周囲の騒音を約99%カットする!! てな鳴り物入りで登場したデジタル式ノイズキャンセリングヘッドホンである。興味津々モードで発売日に購入し、これまで約1カ月使用してきたので、その使用感等々についてレポートしてみたい。

 けっこー昔から存在するノイズキャンセリングヘッドホンの類。周囲の騒音を集音・分析し、その逆位相の波形(音)を発生させることで、耳障りな騒音を打ち消すというシクミ(逆位相式)を持つヘッドホンですな。

 各社から様々なサイズ・性能のノイズキャンセリングヘッドホンが発売されているが、このMDR-NC500Dは世界初の“デジタル制御によるノイズキャンセリング”を実現した製品である。デジタル処理で騒音を打ち消したり、音楽の音成分をイコライザー処理するので、効率よくノイズキャンセリングを行えて、ヘッドホンとしての音もイイ、というコトらしい。

 で、とりあえず拙者的結論を言ってみると、ノイズキャンセリングの効果については、けっこー驚けるほどのものが感じられる。また、これまでのノイズキャンセリングヘッドホンと言うと、確かに騒音は低減できるが音質が……てな印象があったが、MDR-NC500Dについては意外なほど高音質だと感じられた。


強力・自然に騒音低減

 まずはMDR-NC500Dの騒音低減効果だが、これまで使ったコトのある同系統製品と比べると、トップクラスの騒音低減効果があると感じられた。

 例えば、電車・バス・市街地での効果。電車やバスで移動中、MDR-NC500Dを使うと、主に低音を中心とする騒音がスコッと消えてくれる。エンジン音やモーター音あたりの低くて耳に圧力を感じるような音がフッと無くなる感覚だ。てか、無くなる。市街地でも効果がある。道路沿いとかでMDR-NC500Dを使うと、クルマから出てると思われる騒音がスッと消える。

 のだが、高い音は消えないようですな。ガタガタ、カタカタ、カシャカシャ、コンコン、的な高音寄りの騒音は、音が少し小さくなるものの、消えはしない。ソニーは“周囲からの騒音を約99%低減する”としているが、まあ計測方・計測値上はそーなのかもしれないが、体感上、ん~、80%くらい低減された感じ? というのが実感だ。

 しかし、その騒音低減が“かなり自然な感じで行われる”という点が好印象である。

 騒音を低減、ということのみ考えれば、他社製品でもMDR-NC500Dに近い性能を持つノイズキャンセリングヘッドホンがあったりもする。が、その多くは「騒音は減ったへど、なーんかちょっとヘンな気分」だったりして。

 例えば、耳に妙な圧力──高層ビルの高速エレベーターが上がり始めた時のような気圧感!? みたいなものが感じられたりして。ま、同時に周囲の騒音がフッとカットされるので、耳抜きしたくなるような違和感ではないのだが。

 一方、MDR-NC500Dについては、そういう違和感がより少ないように思う。ノイズキャンセリング機能をオンにすると、フワッと周囲の騒音が消滅するが、それは例えば排気音の大きめなパソコンの電源を切った瞬間のような印象。鼓膜を押していた騒音が、その一瞬以降、聞こえなくなった、みたいな。

 あ。あとアレに似てますな。郊外の静かな場所とか、高原とか、渓谷とか、そーゆートコロにクルマとかで行くじゃないスか。で、到着。そしてクルマのエンジンを切った瞬間、のような騒音の消え方と似ている。環境が静かになり、リラックスした気分に、といったイメージである。

 つまりは、なんつーか、肩から力が抜けるような“脱騒音体験”ができたりするというわけだ。拙者が試したところ、オフィス、市街地、電車、バス、地下鉄、あと拙宅、の、どこでも、その効果があったし、その時の違和感も非常に少ないと思えた。

 なお、MDR-NC500Dには3つのノイズキャンセリング・モードがある。状況に応じて手動で切り替えることもできるが、使用中に右ハウジング後部にある[AI NC MODE]ボタンを押すと、状況に最も合うノイズキャンセリング・モードが自動的に選択され機能する。


MDR-NC500Dの右ハウジング後部にあるボタン類。周囲の状況に応じ、自動的にノイズキャンセリング・モードを選択できる[AI NC MODE]ボタンの他、一時的に外部の音を聞くための[MONITOR]ボタン、電源ボタンが並ぶ 左ハウジングには、ACアダプタジャック(充電用)と音源接続用のステレオミニジャックが並ぶ

 ちなみに、MDR-NC500Dの右ハウジングには[MONITOR]ボタンというのがあり、使用中にこのボタンを押すと一時的にノイズキャンセリング機能が停止する。周囲の音を聞くための“外部音モニターボタン”ですな。本機使用中にこのボタンを押したり放したりすると、MDR-NC500Dの騒音低減効果がどんなモンなのかがハッキリわかる。

 ともあれ、恐らく非常に多くの人が「こんなにキッチリと騒音が低減されるヘッドホンがあるのか!!」と驚ける性能だと思うので、ぜひ一度実機に触れてその効果を体験してみて欲しい。


音質は良好だが、音漏れ少々!?

 MDR-NC500Dは、ノイズキャンセリングだけのためのヘッドホンとしても、ノイズキャンセリングしつつ音楽を聴くためのヘッドホンとしても使える。

 で、音楽を聴いた時の音質だが、正直なところ、一連のノイズキャンセリングヘッドホンの中では、最もクセがなく、ヘンな感じもせず、マトモであるってゅーか高音質だと感じた。

 無音状態ではほんの少しサーッというノイズが聞こえる。が、多くのノイズキャンセリングヘッドホンの無音状態ノイズがけっこー耳障りであることを考えれば、かなり低ノイズのMDR-NC500Dだと言えよう。

 音楽を聴いてみると、全体的に音の濁りっつーか混ざりみたいな感覚が少なく、それぞれの楽器がきめ細かめに聞こえてくる。低音もホドホド。ボーカル域が曇ったりせず、シッカリ聞こえる。ノイズキャンセリングヘッドホンとしては、予想外的にクリアでバランスの良い音質だと感じられた。


左ハウジング下部に音源(ポータブルオーディオプレーヤー等)からのステレオプラグを挿せる 接続のためのコードは、150cmのものと50cmのものが付属する。各コードは細身・しなやかで扱いやすい 他の付属品としては、航空機用プラグアダプタやプラグアダプタがある。この他、ACアダプタや電池ケース、全てのアクセサリを収納できる専用ケースが付属する

 ただ、ちょっと味気ない気もする。パンチがナイというか、大人しい=元気がないというか、低音のキレが鈍いというか、高音の突き抜け感・透明感もあとチョイかも、といった印象が残った。1万円クラスのヘッドホンと比べれば十分「イイ音」だと思うが、実勢価格3万オーバーのヘッドホンとして考えると、物足りなさも。って、前述の強力な騒音低減機能を考えると、これって欲張りすぎ?

 と、ビミョーな音質的印象を書いてみたものの、実際にMDR-NC500Dを外で使うと、度々「あーコレはイイ!!」と思えるシチュエーションに遭遇する。何度もそう感じたのは、電車等で移動中、クラシック音楽を聴いた時だ。

 曲・演奏にもよるが、例えば、非常に小さな音で始まり、徐々に徐々に大きな合奏となるクラシック曲なんかは、フツー的ヘッドホンで聴いていると、曲の序盤で音量を上げたくなったりする。で、大合奏状態にさしかかると焦って音量を下げたりして。周囲の騒音が、曲のダイナミックレンジを楽しませないように邪魔してる感じ。

 一方、MDR-NC500Dだと最初の演奏からシッカリ聞こえるんですな。そして、大合奏状態になった時に焦って音量を落とす操作をする必要がない。デフォルト、周囲の騒音があんまりナイ状態なので、家の中で聴く時と近いボリュームで、そういったダイナミックレンジの広い演奏をフツーに楽しめてしまうのだ。

 クラシック以外、曲中の音量差が激しいジャズとか、民族音楽とか、そういう“曲中に繊細な音量での演奏がある音楽”を非常に快適に聴けるMDR-NC500Dだと感じる。……でも、ロックとかパンクとかメタルとかイケイケなテクノとかにはあんまり効果がナイかも?

 あ。音量と言えば、拙者的感覚では、このMDR-NC500D、音漏れが少々多めな感じ。十分に周囲の騒音を低減してくれるヘッドホンなので、さほど音量を上げずとも音楽を楽しめる。のだが、その“さほど音量を上げない状態”でも、すぐ隣の人には音楽がすこーし聞こえちゃう感じ。「あっ!! この曲大好き!!」とちょいとガンガン鳴らして聴いちゃうと、隣の人にはハッキリと曲がわかる程度、音が漏れているように思う。

 てなわけで、やっぱり、音質についても音漏れについても、実際に実機に手持ちのプレーヤーを接続し、よく聴く曲を再生し、あなたの耳で試してみるのが無難だと思う。


軽いので常時使用も

 使っていて改めて気づくのは、高性能なノイズキャンセリングヘッドホンなのに、軽いこと。また、専用ケースに入れなければ、意外と荷物にならず持ち運べるというコトも。要は、携帯性もわりと良いので、常用もそーんなに苦にならないということだ。


本体サイズはこんな感じ。バッテリーは内蔵のリチウムイオン二次電池で、本体質量は約195g ハウジングはこのような状態にもなる。薄くなる、ってのは言い方がヘンだが、狭めの隙間にも入り、嵩張りにくい MDR-NC500Dのパッケージには、本体の他、専用ケース、航空機用プラグアダプタ、着脱式コード(2本)、プラグアダプタ、電池ケース付コード、ACパワーアダプタが含まれる。これら全てを専用ケースに収めて持ち運べるが、専用ケースは19×25×7cm程度あって、けっこー嵩張っちゃうのであった

 電源は、基本的には内蔵のリチウムイオン二次電池を使う充電式となるが、付属の電池ケース付コードを使えば単3形アルカリ乾電池×2本でも使える。ちなみに電池持続時間は、リチウムイオン電池では約15時間、アルカリ乾電池だと約10時間となっている。

 なお、電池が切れた場合、多くのポータブルオーディオプレイヤー等では“音楽を聴けなくなる”ようだ。てか、MDR-NC500Dの場合、コレで音楽を聴く場合は、必ず、ノイズキャンセリング機能をオン(つまり電源オン)にする必要がある。ノイズキャンセリング機能を使わず、ヘッドホンとしてのみ使うってコトは想定されていないようである。

 となってくると、上記のリチウムイオン電池で連続約15時間使えるって点が微妙だと感じる人もありそうだ。「欧米へ海外出張だけど、MDR-NC500Dで快適な空の旅(というか睡眠)を!!」と考えた場合、電池切れが心配ですな。毎日新幹線で移動しまくりのビジネスマンにおいても、電池が心配かも。

 まあ、他のノイズキャンセリングヘッドホンも要電源なので、どの機種使っても結局電源のコトをしっかり考えておく必要がある。が、MDR-NC500Dの場合、基本は内蔵バッテリーってコトで、出先での充電を考えるとACアダプタを必ず持参する必要がある。出先で単3電池を調達、って場合でも、電池ケース付きコードを持ち出す必要がある。

 本体は軽く、携帯性も高く、常時携帯が比較的に容易なMDR-NC500Dなのだが、長時間使い続けることを考えると、あるいは他の機種より携帯性がよろしくないカモという状況がありそうだ。

 しかし、そういうケースを除けば、高性能なノイズキャンセリングヘッドホンとしては軽くて嵩張りにくく、騒音低減効果が高く、さらに音質も良好。毎日の騒音をズギャギャッと減らし、気分良く通勤・通学・音楽を楽しむには、やはり、現在最も注目すべき一台だと思う。



URL
  ソニー MDR-NC500D
  http://www.ecat.sony.co.jp/headphone/product.cfm?PD=29226&KM=MDR-NC500D

2008/05/26 13:54

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