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触るな危険!! ハマり度大の「コルグ KAOSSILATOR」
スタパ齋藤 スタパ齋藤
1964年8月28日デビュー。中学生時代にマイコン野郎と化し、高校時代にコンピュータ野郎と化し、大学時代にコンピュータゲーム野郎となって道を誤る。特技は太股の肉離れや乱文乱筆や電池の液漏れと20時間以上の連続睡眠の自称衝動買い技術者。収入のほとんどをカッコよいしサイバーだしナイスだしジョリーグッドなデバイスにつぎ込みつつライター稼業に勤しむ。


触るな危険!! ハマり度大のコルグKAOSSILATOR

コルグ KAOSSILATOR本体。ツマミで音色等を選び、タッチパッド部を指で撫でたりすれば即、音を出せる。鍵盤不要・音楽知識もほぼ不要、タッチすればソレナリの音楽を奏でられるシンセサイザーである。外見はKAOSS PAD mini-KPとほぼ同じで、色だけ違うって感じですな
 2007年11月にコルグから発売されたKAOSSILATOR(カオシレーター)。“Dynamic Phrase Synthesize”と名付けられた少々風変わりな楽器である。

 非常に興味深いシンセサイザーなので発売と同時に買おうと思ってたんスけど、発売直後から激品薄で購入できず。最近になってようやく買えて、んで、使ってみたら感動!! したのでレポートしてみたい。

 シンセ好きでコルグな人なら、「あ!! もしかしてその名前、KAOSS PADにオシレーターが乗ったってコト!?」と興奮しがちなKAOSSILATOR。コレ、タッチパッドを指とかでイジれば音を出せるシンセサイザーである。

 特徴は多々あるが、まずは非常に小型で電池(単3形乾電池×4本)で使える点。ヘッドホンジャック(ステレオ・ミニ)を持つので、モバイルして楽しめる楽器ってわけですな。


KAOSSILATORのサイズは、幅106×高さ129×厚み29mmで、質量は154g(電池含まず)。ポケッタブルでモバイルなタッチ演奏型シンセサイザー(!?)なのである 電源は単3形乾電池×4本。ACアダプタ(別売)でも使える 本体手前にヘッドホンジャック(ステレオ・ミニ)があるので、KAOSSILATOR+市販ステレオイヤホンで場所を問わず楽しめる。本体上部にはライン出力端子(RCAピン)を実装する

 この小さなシンセサイザー、前述のとおりタッチパッドで演奏できて、しかも自由に持ち運んでドコでも楽しめるのだが、この時点でアブナい。物凄く危険と言えるっていうか、電車やバスで移動中であろうが、グラス片手に一杯飲り中であろうが、仕事の合間に一休み中であろうが、遊べる──うっかり乗り越してしまう可能性大であってグラス内の氷が完全に溶けるケース多々であり仕事が滞りがちだ。

 そうならない人もいると思うが、音が出るモノが好きとかシンセが好きとか曲とか作るの好きって場合、KAOSSILATORがアナタの時間をスゲぇ勢いで消費する可能性が高い。そのくらい、おもしろい。


めちゃめちゃハードル低いっす!! ヤバいっス!!

 これまでにも、持ち歩いてヘッドホンで楽しめるシンセサイザー方面機材は多々あった。が、そういった小さなシンセを楽しむには、ある程度の鍵盤演奏系知識やシーケンス機能活用形知識が要ったりした。シンセとかMIDIとか鍵盤とかに、ある程度慣れている人向けの製品って感じだったわけですな。

 KAOSSILATORの場合も、使い込みまくるには、まあ多少のソチラ系知識は要る。しかし、そういった知識・技術なくしても、イキナリ遊べるのがKAOSSILATORの良さである。前述のとおり、四角いタッチパッドに触れれば、音が出る。全体的に、左右方向に動かすと音の高低、上下方向に動かすとエフェクトの強弱が変わるよーな感じで、ま、後は、好きにいじってネ、んじゃヨロシク~、みたいな。


ノートパソコンにあるのと同じようなタッチパッド。ここに触れると音が出る。上下左右に動かすと音階や音色が変わったりする 選んだ音色によっては、複数本の指で演奏することもできる。基本的には単音しか出ないシンセサイザーだが、複数本の指を順番・連続的に動かすことで、わりと複雑なメロディも奏でられる 基本的な操作もシンプル。ツマミで好みの音色を選び、パッドを指で叩いたりなぞったりするだけだ。何となく触れていると、何か音楽のようなものがデキてきちゃうという感覚的な操作感である

 KAOSSILATORが持つ音色は、リード系シンセサイザー音が20種類、アコースティック(風)音色が10種類、ベース系音色が20種類、コード系が10種類、効果音(SE)等が20種類、ドラムキット音色が10種類、ドラムパターン音色が10種類。合計100種類の音色を持ち、本体上部中央のツマミで、音色を選ぶ。

 ただ、100種類とは言っても、実質的に聞こえてくる音はもーっとすごーく多いと思われる。KAOSSILATORの場合、例えばリード系シンセ音色なら、パッドに触れた指を左右に動かすと音階が連続的に変わり、上下に動かすとフィルターのかかり具合が連続的に変わる。で、フィルターのかかり具合を変える(指を上下にずらす)と、こもった音~きらびやかな音まで、ずいぶんと音色の表情が変わるのだ。

 また、ドラム系音色の場合、タッチする位置によって音が変わる。例えばパッド左下を叩けばバスドラム、右上を叩けばスネア、といった具合に。他の位置を叩けば、タムの音だったり、クローズドハイハットの音だったり、あるいはなんかソレっぽい効果音のような音が出たりも。

 サイズや形状は全然楽器ライクじゃないKAOSSILATORなんだが、とりあえず音を出して何か奏でてみようって時の使用感は、かな~りアナログチックというかアコースティック楽器っぽい。誰でも、触れさえすれば、何となく音楽っぽいコトを楽しめるというイメージ。

 そして、このハードルの低さがヤバい(後述する各種機能を使う場合も同様にハードルが低くてヤバい)のである。何となくパッドに触っただけのツモリが、いつの間にか曲を作ろうという姿勢に!! 音楽を奏でようという気分に!! そして!! 何本指奏法かなんかわかんないけど、各自の独自で好き勝手でテキトーな演奏方法により、ユーザーオリジナルの音楽が鳴っちゃうのダ!!

 例えば、指とか膝とか机とか地面とかを鳴らすなり叩くなりして、ビートを刻むことあるでしょ? 暇な時とか、何となくノッた時とか。俺とか上着のジッパーでスクラッチするの好きなんですけど、それは置いといて、そんな各種気分・テンションを音やリズムのカタチとして表現っつーか出すっつーか出ちゃう感じの時、KAOSSILATORの平易さ身近さが極めてグレイトである。指で触れれば非常に音楽的なサウンドをサクッと奏でられるからだ。


簡単で即時的なループ・レコーディング機能

 文字で“レコーディング機能”とか書かれた瞬間、引いちゃう人は多いと思われる。面倒臭ぇ~ムツカシそ~てなイメージありますな。しかし、KAOSSILATORの録音機能(というかシーケンス機能)は、テキトーに使ってりゃぁ楽しめる的な平易さを持つ。

 KAOSSILATORでは、2小節(8ビート)までの演奏を記録・再生する機能を持つ。例えば何となくKAOSSILATOR叩いてたらカッコ良さげなリズムがキマったっぽい、と。そんな時、ループ・レコーディング機能を使い、そのカッコ良いリズムを記録する。で、再生させる。

 うーん、我ながらカッコイイ!! こうなってくると、この超カッコ良いリズムの上にベースの音とかを加えてみたい!! という場合、ベースの音とかをさらにかぶせていける。さらに次々と各種音色を重ねていき、(最長2小節分だけど)オリジナルのメロディ/フレーズ/ビートを作っていけるのだ。

 ちなみに、録音は容易で、[LOOP REC/PLAY]ボタンを押しながらパッドに触れたり叩いたりすればいい。7セグメントLEDには順次ビート数が表示されるので、そのタイミングに合わせて演奏するんですな。すると、直後、録音結果が繰り返し再生される。失敗かな、と思ったら録音結果を消去してやり直せばいい。


最長で2小節(8ビート分)を録音できる。録音、と言っても音声をそのまま録音するのではなく、演奏した音色・タイミングの情報を記録するシーケンス記録となる。けど、ユーザー的には「演奏を録音する感じ」という使い勝手だ。使うボタンは[LOOP REC/PLAY] 録音している様子。[LOOP REC/PLAY]ボタンを押しながら、タイミング良く&好みの音が出るパッド位置に触れればいい 録音した内容がナイスであったら、その内容を保護することもできる。7セグメントLED上に“FIX”を意味する「FI三」が表示されているが、これが録音内容保護機能となる

 KAOSSILATORは、どちらかと言うとお遊び~即興演奏~サウンド作り方面の機材なので、録音の長さは上記の“最長2小節分のみ”となる。最長2小節を4トラックとか、最長2小節を8個まで接続可能うとかじゃなくて、全部で最長2小節(の1トラック)のみとなる。

 極めて簡素で必要最小限の録音機能って感じだが、このシンプルさはわかりやすくて良い。また、この程度でも、工夫次第で十分楽しめるし、曲も作っていけるんじゃないかと思う。

 例えば、重ね録りを簡単に行なえること。ドラム→ベース→リードシンセの順で録音するとしたら、まずドラムの録音を行なう。録音結果が気に入れたら、その内容を保護する。で、ベースの音を重ねて録音する。が!! 失敗した!! しかし、ベースの演奏のみを消去できる(上記で保護したから)。ゆえにベースのみ録音し直して、成功したら(保護して)リードシンセを録音し……という具合に、成功結果だけを残していける。

 1ステップのアンドゥと結果のセーブだけできるって感じだが、この単純さがKAOSSILATORの録音機能のハードルをグッと下げていると感じる。

 ただ、最長2小節(のループシーケンス)ってコトで、壮大な構想の曲を全部KAOSSILATORに打ち込むってのは明らかに無理ですな。かなりミニマルな感じのループシーケンスしか作れない。

 でも、KAOSSILATORはリアルタイムで好き勝手テキトーに演奏できまくりなので、曲の基本的な要素のみを録音し、後は気分に合わせて指で演奏ってスタイルならけっこー使えるんじゃないかと思う。

 また、ある程度高音質で録音できるポータブルレコーダーとともに持ち歩けば、ちょっとした時間にオリジナルのループとかメロディを作れて、それを素材として残していける。MIDIデータよりもむしろサウンドファイルを使うケースが増えつつある音楽製作においても、ちょいと楽しいし役立っちゃうツールと言えそうだ。


メロディなんて作れない~、という人でも

 指でパッドをイジるだけで自由に演奏できる!! とか言われても、あの、メロディとかフレーズとか、自力で紡ぎ出すのムリなんですけど、という人もあるだろう。拙者もそーですけど、それなりに聴けるオリジナルのメロディとかって難しいっすよね。

 そんな拙者にとって、あら便利!! なのがKAOSSILATORのスケール設定機能であった。設定できるスケールは全部で31種類あり、ブルースとかラガとかスパニッシュとかイロイロ含まれているが、中には“Japanese Miyakobushi”とか“Ryukyu Scale”なんてのもある。これらを選んでアコースティック系音色でテキトーに演奏してみると、不思議と日本風だったり沖縄っぽかったりするメロディになっちゃうんですな。


スケールとして“Japanese Miyakobushi”を選んだところ。これで演奏すると、なんかこう、ミョーに冬の海っていうか夕暮れの北陸っていうかナンな演歌っぽいメロディになる。なお、“Ryukyu Scale”はかなり沖縄っぽい 設定できるスケールやゲート・アルページエーターのパターンは、付属の小さなカード(の裏表)で一覧できる

 てなわけで、この機能を使えば、テキトーに演奏していても、それっぽい雰囲気のメロディを奏でられたりするから愉快である。テキトーでなく、意図して各スケールに合うメロディを奏でようとすれば、よりソレっぽいフレーズを演奏可能なのはもちろんだ。

 また、リズムの演奏補助方面機能としては、ゲート・アルページエーター機能を持っている。あらかじめ決まったビート・パターンで音色を鳴らす機能で、パッドに触れていれば自動的に、正確なビートで音色が鳴り続ける。ので、タイミングよくパッドを叩くのが苦手、って人でもキッチリとキマった演奏を楽しめる。

 ちなみに、ゲート・アルページエーターのパターン数は50種類。単純なビートや3/4、5/4といったやや複雑なビートまで一通り網羅されているようだ。なお、その詳細はコルグ・マニュアル・ライブラリーサイトからダウンロードできる。KAOSSILATORの取説も同様にダウンロード可能だ。


チョー楽しいだけに、残念な点も

 触り始めたその日から、KAOSSILATOR漬けになる時間が増えまくり中の俺なんですけど、そのオンリーワン的楽しさ&良さを置いといてKAOSSILATORを見ると、ハードウェアとしての使いにくさが少々残ったりする。

 ひとつは、パラメータの表示を全て7セグメントLED×3個で行なっている点だ。例えば前述のスケール設定時は、各スケールの略を3文字の英語で表示するが、パッと見じゃぁ全くわからない表示も少なくない。じっくり見ても理解不能? ま、ある程度使い込めば覚えたりもするが。他、このLEDを見つつ使う機能が少なくなく、そんな時もやっぱり表示の見にくさが気になる。

 あと、ボタン類の位置。一部、ヤケに使いにくいボタンがある。具体的には[LOOP REC/PLAY]ボタンで、コレ、録音時は押しっぱなしにする必要があるのに、本体右上端ってのがビミョーに。

 ユーザーにもよると思うが、右利きの人の場合、パッドを右手の指で触る(演奏する)と思うんですよ。で、録音中に押し続けるべきボタンが右側。ん~。やっぱり押しにくいのであった。

 あと、シーケンスパターンをループ再生中、リアルタイムに音色変えて演奏したかったりもするので、その時に音色変更ダイヤルが本体上部中央ってのもビミョー。回転させる時、指でLED表示隠れちゃうんスよ。また、一時的に音色を割り当てられるショートカットボタンみたいなのも欲しいところだ。

 でもまあ、恐らくKAOSSILATORは、KAOSS PAD mini-KPの筐体&内部基盤流用だと思う。そーそー多量に売れない電子楽器市場とも聞くので、コストダウン先決ってコトでしょうがないんでしょうな、この仕様は。でも、現在品薄中で売れてるよーなので、次のバージョンはゼヒ!! 見やすいディスプレイ&ボタン位置最適化とかをヒトツ!!

 と、一応細かい文句とか言ったりした俺であるが、しかし、KAOSSILATORは非常に買い度の高い新型楽器だと思う。ていうか、シンセの音を出すのが好きだったり、ループパターン聴いてたりするのが好きなら買いでしょコレ!! 2万円弱でここまで楽しめるなら買いですよええ、フツーに、絶対、買い!!

 でも、一応、自分に合うかどうか、まずは一度ショップにて実機に触れてみて欲しい。あるいは、YouTubeあたりでKAOSSILATORをキーワードとして検索し、KAOSSILATORの使われ方や音色を見てみるのがイイっすよ。で、欲しくなって買ってしまえ~!!



URL
  コルグ「KAOSSILATOR(カオシレーター)」製品情報
  http://www.korg.co.jp/Product/Dance/kaossilator/

2007/12/17 13:35

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