■ ソフト目当ての機材購入
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RR-US470本体。ジョグダイヤル操作が可能なモノラル録音のICレコーダーで、最長約134時間の録音を行なえる。単4形アルカリ乾電池×2本で最長30時間程度のバッテリー持続時間がある
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パナソニックのICレコーダー、RR-US470を購入した。
パナソニックのICレコーダーの現行機種は4機種ある。ステレオモデルのRR-US900とRR-US500、モノラルモデルのRR-US470とRR-QR270だ。
俺的観点でICレコーダーを選ぶ場合、どーせならステレオ対応、どーせなら長時間録音、てな感じで、いつもならRR-US900を選んでいたと思う。ていうか、音楽製作の音ネタ録音まで考えたりしがちなので、ステレオ録音対応・メモリカード採用・高音質マイク内蔵を考え、パナソニックの音声メモ向きの4機種は選択肢から外れたかもしれない。
が!! 今回はパナソニック以外を選べなかった!! そして!! その中でもRR-US470以外は考えられなかった!! なぜならば!! RR-US470にはVoice Editing Ver.2.0 Premium Editionソフトウェアが付属しているからだッ!!
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Voice Editing Ver.2.0 Premium Editionは、RR-US470等のパナソニック製ICレコーダーの音声をパソコン上で扱うためのソフト。単なる音声ファイル管理ソフトではなく、波形編集からテキスト読み上げ、音声認識まで、様々な機能を持つ
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すなわち俺の目的はVoice Editing Ver.2.0 Premium Editionソフトウェアなのであり、このソフトは市販されていないのであり、このソフトのこのバージョンが付属するパッケージは現在のところICレコーダーRR-US470しか存在していない。ので、ソフトを手に入れるためにはRR-US470を買うしかない。つまり拙者はVoice Editing Ver.2.0 Premium Editionを買ったのであり、RR-US470本体がむしろ付属品というスタンスのわしなのだ。
てなわけで、ソフト目当てでICレコーダー買いましたヨ。でも、一応使ってみたら、このRR-US470がプチ良かった。ので少々レポートをば。
■ 小技が効いてるシンプルなICレコーダー
RR-US470は、ICレコーダーとしての音質や機能からすれば、可もなく不可もない、わりと平凡な機種だ。モノラル録音、ズームマイク搭載、目的別に音声を保存できる5つのフォルダ、5段階に換えられる再生スピード、薄型・軽量、パソコンとUSB接続可能、てな感じで、スペック的にはフツー。ハードウェアとしては一見、高級感があるものの、実物はプラスチックな感じで少々チャチな印象が残る。
まあ主に音声メモや会議録音に使うICレコーダーなので、機能・音質ともに十分実用的だと思う。また、実勢価格で11,000円前後で購入できることを考えれば「こんなモンだろう」という納得感はある。
逆に、常用するICレコーダーとしては機能的にシンプルであるゆえ、何かと使いやすかったりする。例えば本体前面のジョグダイヤルだ。
RR-US470には多用するインターフェイスとして、クルクル回るジョグダイヤルがあり、その中央には4方向に傾けられて押下もできるジョイスティックが実装されている。ジョグダイヤルは音声ファイルの選択、音声再生時の早送りや巻き戻しに使えて、ジョイスティックは再生や一時停止、項目選択、音量調整に使える。
で、このインターフェイスが快適。録音を重ね、ファイルの数が増えたり、録音時間の長いファイルが出てきたりすると、ヤケに便利である。ジョグダイヤルを回せば親指等を少し動かすだけでファイルを探せる、目的の再生箇所を容易に見つけられる、機能設定時等に項目移動を素早く行なえる等々、何かとラク。一般的なICレコーダーと比べると、ボタン押下回数がずいぶん減るのだ。
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操作ボタン類の多くは本体右側に集まっている。が、通常の多くの操作はジョグダイヤルとジョイスティックで行なえる。回せて押せるインターフェイスにより、少ないボタン押下回数で操作していける
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[S]マークがセキュリティフォルダ。4桁の数字でパスワード保護をかけられる。パスワードを入れないと、[S]フォルダへの録音は行なえるが、再生やファイル移動を行なえない
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それから、新たに加わったセキュリティ機能。5つのフォルダのうち、[S]フォルダ(セキュリティフォルダ)に対してパスワード(数字4ケタ)を設定できる機能だ。パスワードを設定すると、ファイルの再生や移動ができなくなり、また、特定のパソコン以外からのファイル再生・転送もできなくなる。小型・軽量・常時携帯するものの、中にはわりと大切な情報が入りがちなハードウェアなので、こういう機能があるとより安心して使えるだろう。
難点はあまりないが、特定機能の呼び出しにくさが若干気になった。機能設定は本体右側の[フォルダー]ボタンの長押しで行ない、メニューに入り、ジョグダイヤル等で項目を選択していくが、画面上、現在どの項目が選択されているのかわかりにくい。また、再生時、同じく[フォルダー]ボタンを押すと、再生速度変更やイコライザー適用を行なえるが、これも現在選択されている項目がわかりにくい。
RR-US470の場合、選択されている項目が“項目名の点滅”で示されるが、この点滅速度がビミョーに遅め。パッと見では選択項目を見分けにくい。また、前述のとおり、[フォルダー]ボタンに複数の機能が割り当てられているので、スムーズに操作するためには若干の慣れが必要だ。……ジョグダイヤルという便利なインターフェイスを実装したのだから、これをさらにイージーに使いこなせるよう、[メニュー]ボタンとか[機能]ボタンみたいなものを追加して欲しかった。
■ 活用幅の広いVoice Editingソフトウェア
前述のとおり、RR-US470の購入は、付属ソフトことVoice Editing Ver.2.0 Premium Editionが目的の全てだったりした。が、このソフトとともにRR-US470を使ったりすると、なんか急激にRR-US470とVoice Editing Ver.2.0 Premium Editionが最強に強まったタッグに思えてくる。
Voice Editing Ver.2.0 Premium Edition(以下、Voice Editing 2)は、基本的にはRR-US470等で録音した音声ファイルを再生・管理・編集するためのソフトだ。RR-US470をPCとUSB接続し、RR-US470上の音声ファイルをPC上に転送したり、転送した音声ファイルを再生したり、ファイル名を付け替えて管理したり、あるいは波形レベルでの編集を行なえる。PCからRR-US470等ICレコーダーへの音声転送も可能だ。
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RR-US470とPCをUSB接続し、Voice Editing 2でRR-US470内のファイルを見ているところ。ICレコーダー内の各フォルダ・ファイルを、再生できる。また、ICレコーダー・PC間のファイル転送も自由に行なえる
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PC側に転送した音声ファイルをフォルダ毎に分類したり、ファイル名を付けたりして管理できる
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音声ファイルの波形編集も行なえる。部分削除、音声の結合、波形レベルでの音量調整、ノイズ除去等、わりと本格的な波形編集を行なえる
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他、Eメール添付機能を使えば、RR-US470等ICレコーダーで録音した音声をメールで誰かに送ることができる。送付時、Voice Editing mini playerという再生専用ユーティリティを同梱することもできるので、RR-US470での録音を仲間内でシェアするような使い方も現実的だ。
あるいは、Voice Editing 2で再生できる音声を音楽CD形式でCD-R/RWに焼くこともできる。会議録音を定期的に行なっている場合なんかは、一連の録音を音楽CDで残すことができる=録音機材やソフトがなくても、一般のCDプレイヤーで再生できる。音楽CDではなく、Voice Editing 2で再生するデータとして、CD-R等に対する音声ファイルの一括バックアップも可能だ。
Voice Editing 2を使うと、RR-US470がパソコン周辺機器のひとつとして使える感じですな。そのあたりの自由度・ハードルの低さは、他のパソコン連携可能なICレコーダーとは一線を画しているという印象がある。
Voice Editing 2自体の自由度の高さもナイスで、例えばパソコン上で再生している音声を録音・RR-US470等ICレコーダーへ転送可能なサウンドレコーディング機能(Vistaでは使えない)があったり、Voice Editing 2上で扱える音声ファイルを.WAV形式ファイルとして書き出せたり、ユーザー次第で様々に応用できる。
そして、さらに後述の機能群を考えると、実勢価格で1万1,000円前後のICレコーダーの付属ソフトとして、もーマジでヤケにお買い得感がありまくるゼ!! とか思ってやまない拙者。
■ 大盤振る舞いの音声合成・翻訳機能
Voice Editing 2は、ハードウェアの付属ソフトとしてはアリエナイほど豊富な機能を持っている。その中でも、俺的に特に惹かれるのは、高品位なスピーチ機能と、便利&楽しい翻訳機能だ。
まずスピーチ機能。テキスト読み上げ機能ですな。日本語(男性・女性)、英語、中国語、フランス語、ドイツ語、スペイン語、イタリア語、韓国語、ロシア語の9カ国語のテキスト読み上げが可能だが、その音質・流暢さはパナソニックの製品紹介ページの読み上げサンプルでご確認いただきたい。前のバージョンからあった機能だが、特に日本語・女性の声質がグレードアップしていて聞きやすい。
スピーチ機能は、Voice Editing 2から呼び出せるSpeechPadアプリケーションで使えるが、コレ、なかなか実用性の高いテキスト読み上げアプリなのだ。前述のとおり9カ国語での読み上げに対応し、ウィンドウに文章を入力して読ませることができる。これに加え、テキストファイルをドラッグ&ドロップしての読み上げも可能。さらに、読み上げ音声をそのまま音声ファイル化し、RR-US470等ICレコーダーへ転送することもできる。
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SpeechPadでテキスト読み上げを行なっているところ。ウィンドウに入力されたテキストを各国語で読み上げる
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SpeechPadのファイル取り込み機能を使えば、ウィンドウ上にテキストファイルをドラッグ&ドロップし、読み上げさせられる。ファイル内容を丸ごと読み上げるので、長文を一気に読ませたい場合に便利
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ファイル取り込み機能を使って、読み上げ音声を音声ファイルとして保存したところ。いわば朗読の音声が保存され、これをICレコーダーへと容易に転送できる
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翻訳機能もイカス。ていうかステキ。つーか凄い。やはり9カ国語に対応し、各国語間での相互翻訳を行なえる。外国語が苦手な拙者なので、各国語の翻訳精度はどうこう言えないが、日本語→英語の場合なら、論理的な日本語を書けば十分理解できる英語に翻訳してくれるようだ。
各国語の翻訳ができる&喋るので、日本語→各国語へと翻訳した結果を読み上げさせることも当然できる。さらに、その読み上げ音声をファイルとして保存でき、この音声をRR-US470等ICレコーダーへ転送可能だ。
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SpeechPadの翻訳機能を使い、日本語を英語に翻訳したところ。けっこーちゃんと翻訳してくれてる感じ!?
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今度は韓国語に翻訳させ、韓国語で読み上げさせているところ。外国語文字列をその国の言葉で読み上げてくれる、というだけで楽しい
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日本語から翻訳した韓国語を、さらにスペイン語に翻訳し、スペイン語で読み上げさせているところ。こうなると拙者が何をしたいのかすら不明ですな
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持ち歩けて音を聴けるICレコーダー、各国語のテキスト読み上げ、各国語の相互翻訳。RR-US470+Voice Editing 2の価値は、この連携にあるのかもしれない。例えば英語等外国語学習のツールになるし、あるいはメールや青空文庫等々のテキストを聞き取りやすい日本語で朗読してくれるシステムとしても使える。
Voice Editing 2には他にも多量の機能が実装されていて、どれも便利そうだったりオモシロそーだったりするものだが、それにしてもやっぱり1万1,000円前後で買えるICレコーダーに付属しているソフトウェアとは思えない濃さですよ、このソフト。また、Voice Editing 2とICレコーダーの連携により、ICレコーダーの新たな可能性を多々見ることができたりもする。
全てのICレコーダー必要ユーザーにオススメって感じではないが、特定の目的を持ってICレコーダーを活用したい人にはガシッとハマる確率が高いと思われるので、ピンとキた人はゼヒ、RR-US470+Voice Editing 2のタッグをお試しいただきたい。
■ URL
ICレコーダー「RR-US470」製品情報(パナソニック)
http://ctlg.panasonic.jp/product/info.do?pg=04&hb=RR-US470
2007/07/30 12:14
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