■ 最初は「……」、使って「!!」、のDSC-G1
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ソニー サイバーショット DSC-G1。有効画素数600万、35mm判換算で38~114mm相当の光学3倍ズームレンズを搭載。大きく高精細な液晶画面を持ち、独自のレンズバリア機構が特徴的だ
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ソニーのサイバーショットDSC-G1(←音が出るページにつき注意)を発売日に購入した。購入理由は大型・高精細液晶、新しいレンズバリア機構、それから新たなユーザーインターフェイスであるHOMEメニューに興味を持ったことだ。
購入後、早速イジって液晶表示の美しさに驚いたり、HOMEメニューに「ふーん」と思ったり、新たなレンズバリア機構にも「ふーん」と思ったりした。同時に、本体の厚み、遅めの起動速度、全体的にあまり速くないレスポンスに「んむむ……!?」と疑問を感じたりした。率直なところ、購入直後、DSC-G1について「液晶はイイんだけど他は……!?」と疑問を持った。
でもコレ、7万円弱もするデジカメ。テンション下げて数日でお蔵入りでは俺の懐が非常に痛いっつーか忍びないっつーか寂しいっつーか。というコトで、若干無理してポジティブな姿勢を取り、DSC-G1を使っていくことにした。
すると、使用日数が増す毎に、なんかちょっとDSC-G1が良いと思えるようになった。液晶のキレイさは相変わらずだが、そのサイズと画素数がナンのためだったかも少しわかったような。それと、デジカメを買っても付属ソフトなんか全然使わない拙者なんスけど、DSC-G1の付属ソフトを頻繁に利用するようにもなった。
こういう経験、ちょいと久々っす。最初に触れてピンと来なかったハードウェアは後々もピンと来ずじまいであるケースが多い。が、DSC-G1は使っていくとその方向性がよく見えてくるし、そのコンセプトから来る良さおもしろさが感じられる。
てなわけで、以降、サイバーショットDSC-G1についてレポートしてみたい。なお、DSC-G1の詳細はソニーの製品紹介ページ(←音が出た後、また時を経て音が出たりするページなので注意)をご参照いただければと思う。
■ ボタン類はやや特殊だが、わかりやすい操作系
サイバーショットDSC-G1(以下、G1)は、撮像素子有効画素数600万のコンパクトデジカメで、35mm判換算で38~114mm相当の光学3倍ズームレンズを搭載する。その外見も特徴的だが、3.5型・92万1,600画素のエクストラファイン液晶を搭載している点が目を惹く。他、本体内に約2GBの内蔵メモリを持ち、無線LAN対応でもある。
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本体を左右に引くとレンズ部が現われる、という新しい機構のG1
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レンズ部を露出させると、本体裏面操作部が液晶パネル下側から現われる
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デジカメの中では最大級となる3.5型の液晶を搭載。非常にデカい。また、パネル画素数は92万1,600。すご~く高精細だ
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で、まず全体的な操作感だが、デジカメとしてだけ考えると、実使用上ビミョーな点が少なくない。
例えば電源投入時、(撮影するためには)本体上部のスライドレバー式ロックを右に入れつつ本体を開くと起動する。が、撮影可能になるまで、4秒前後かかる。他の今時的デジカメと比べると、起動遅すぎ。また、DSC-T100等と比べると、レンズを露出させるスライド動作があまりスムーズでなく、スライド後の固定感も危うく、片手での操作もしづらい。
操作ボタン類も風変わりだ。液晶サイズから、ボタン類の多くへは、本体をスライドさせないとアクセスできない。本体右側面には[DISP]、[BACK]、[MENU]、[HOME]および押下可能な4方向ボタン(スティック)が実装されているが、これらを使い慣れるまでけっこー時間がかかった。
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“OPEN(CAMERA)”の刻印の下にあるのが、レンズ部を露出させるときに使うレバー式のロック機構。指のかかりはよく、不意にレンズ部が露出しないような機構としては良好だが、撮影までのステップを強く意識させる操作感だ。起動時間も遅め
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操作ボタン類。比較的に多くのボタン類は、本体をスライドさせないと使用できない
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本体右側のボタン類は、本体をスライドさせていない状態でも操作可能だが、慣れないと、操作時にいちいちボタン表面の刻印を(本体右側を覗き込むように)確認する必要がある。各ボタンの操作感自体は良好だが、操作全体に煩雑さを感じる
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どんなモンだろうか? と期待したHOMEメニューだが、ま、これはコレでいいんじゃないでしょうか、てな印象。G1のような多機能な製品の場合は設定戸惑いがちだが、全機能を一望しやすく、機能へのアクセス・設定を行ないやすいメニューだと思う。ただ、名前も売られ方も見られ方も、G1はデジカメ。サイバーショットという考えでG1を触り、HOMEメニューを使うと、なんなこー機器としてのつじつまは合っているけれども、デジカメのユーザーインターフェイスとしては回りくどくなっているようにも感じる。
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G1の各機能を起動できるHOMEメニュー。左端から、カメラ、ビューワー、ミュージック、コミュニケーション、ツールボックス、メディアツール、設定と並ぶ
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HOMEメニューから音楽プレイヤーを起動した。デジカメとして、静止画・動画撮影やビューワーは、専用ボタンでアクセスできる。他はHOMEメニューからアクセスするのがわかりやすい
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各機能で[MENU]ボタンを押すと、その機能の設定を行なえる。とりあえずHOMEメニューから機能にアクセスし、そこから[MENU]ボタンで設定をしていく、というわかりやすさがある。が、操作ステップ数が増え、操作・機能の階層が深いようなイメージが加わり、デジカメとして考える少し煩雑にも思える
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他、画面が大きく高精細なので、撮影時や再生時の表示モードが多彩だったり、機能設定時等にテキストでの説明が表示されたりする。ボタン類の操作には若干慣れが必要(特に本体横のボタン類)だがが、表示は平易&親切なケースが多い。上記のHOMEメニューも理解しやすいので、操作時のわかりにくさは少ない。
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3.5型液晶全体をビューファインダーとして使用している状態。大きさはもちろん、鮮明さも抜群。表示の追従速度も十分に実用レベルだろう
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機能設定状態等を含めた画面表示。液晶が大きく高精細なので、多くの情報を同時に表示させた状態でも、十分に広いビューファインダーを利用できる
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機能設定時には、それら機能の動作等を説明するガイド表示が現れる。非常にわかりやすくてナイス
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他のサイバーショットシリーズと比べたりなんかすると、操作時に少々の違和感を感じたりするG1。とは言え、どれも慣れで克服できる程度のものであり、多機能なハードウェアとしてはフツー~上々って感じですな。ただ、ゲンブツは製品写真よりも大きめ厚め重めだったりもする。操作感も含め、そのあたり、ぜひ店頭実機で確かめて欲しい。
■ 誰もが「キレイですね~」と言う液晶
特徴的な機構・機能を持つG1だが、個人的には今もなおピンと来ない機能もある。ていうか無線LAN系の機能にピンと来とりません。
てのは、G1の無線LAN系機能(コラボショット、ピクチャーギフト、DLNAサーバ機能)って、フツー的な無線LAN環境にはいまひとつ向かないと感じるからだ。ま、フツーの無線LANアクセスポイントにつながったりしますけど、“G1の相手となる機器”として“他のG1もしくはDLNA機器”が要る。友達や家族や知人がG1持ってるケースって……!? ソニー製品ならDLNA対応機器が多いが、DLNA機器使いまくり環境ってのも、まだ、ねえ。てなわけで、無線LAN系機能は全然活用できていない。
ピンと来まくりなのは液晶画面。それと、この液晶上で楽しく使えるビューワー機能。そしてこれらは後に、G1というハードウェアにピンと来させる大きな要素となるが、さておき、この液晶には多くの人が強い反応を示すのであった。
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まず、撮影時のビューファインダーとして“対象が非常にキレイに見える”こと。その見え方の気持ちよさは、高品位な光学ファインダーに迫るものがある
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高精細液晶ということで、非常に緻密な画像再生が行なわれる
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拡大再生をすると、ピントの山も掴みやすい
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つーかですね、G1で何か撮ろうとすると、「おっ、キレイですね~」と言う人が多々。もちろん、G1の液晶表示を見て、である。中には「キレイに撮れるカメラですね~」と、まだ撮ってないのに言う人も。その液晶表示だけでG1が欲しくなる人も多いようだ。この液晶表示の良さ美しさは、ぜひ自分の目でお確かめいただきたい。
G1は、画質的にもかなりイイ線だと思ったりする。というか、前述の液晶上で再生すると、パソコン上で画像を見るのと近いイメージで、画像をある程度精査できる。ので、より現実的な“現場での撮り直し”が可能になり、ヘンな写真撮れちゃってた率が低くなっているのかも。
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晴天屋外での撮影。ISO感度・ホワイトバランスはAUTO(以下の写真も同様)。見た目のより緑が鮮やかに写ったが、好印象
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水面に近寄って撮影。これも若干、色乗りが強く感じられるが、イメージに近い写りになった
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ちょっと赤が飽和しちまったが、鮮明な写りとなった。他の写真と同様、鋭いクリアさがG1の持ち味!?
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友達の飼い犬。通称フライフィッシング犬だが、毛の細部、つやもしっかり描写されている
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釣れた魚をパチリ。十分な光量下、ISO感度が低く設定された場合、ノイズが少ないスッキリした写りになるようだ
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室内での撮影。AFも良好。フォーカスを外すことは少なかった
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若干ホワイトバランスが転んだ例。ガラスの色が原因か? しかし描写としては良好と感じる
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ISO感度が高まると、低コントラスト部のディテイルが徐々に潰れていく感じ。この写真はISO250。また暗部に色ノイズも見られる
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こちらはさらにISO320まで上がった例。被写体が高コントラストなねこ様なので、ノイズやディテイルの潰れはあまり目立たない
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【編集部より】
デジカメの解像度が数百万画素レベルとなり、HTMLページで撮影元画像を掲載するのが難しくなりました。そこで、元画像をご覧になりたい方のために、撮影例データをまとめてダウンロードする圧縮ファイル(ZIP圧縮、23.0MB)をご用意しました。こちらからダウンロードしてください。
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撮影後の写真をG1上で表示して人に見せた場合も、「キレイですね~」を連発されたりする。従来の、あまり大きくなく高精細でもない液晶を搭載したデジカメからのギャップか、実はそーんなにはキレイに撮れていない写真でも、スゲくキレイに見えちゃったりするG1の液晶であった。
G1には手軽に使える露出補正機能から始まり、細かなフォーカス設定やオートブラケット撮影も可能で、手ブレ補正機構も搭載し、高感度撮影による被写体ブレ防止もわりと現実的。なので、マジメに撮ればシッカリとキレイな写真が撮れる。
だが後述の理由から、どちらかと言えば、撮ることよりもむしろ、撮った画像を見て楽しむような使い方をするのが吉と出るカメラだと思う。ので、通常は、全部カメラ任せな設定で撮っている拙者。でも、わりあいキッチリ撮れるので、デジカメとしても十分な実力があると感じる。
ただ、オートホワイトバランスだと、ホワイトバランスが狂う(というか期待しない色になる)ケースが少々。また、ISO感度が高くなった場合、暗部にヘンな色が出たり、ディテイルが潰れたりする。ま、他の高感度系コンパクトデジカメでも似たようなものだが。
■ G1で撮る、G1にたまる、G1で見る・見せる
ぶっちゃけた話、デジカメとしてのG1はフツーですフツー。性能も描写も悪くないので、フツー+αという印象だ。一方、マイナス因子としては、ちょっと戸惑うボタン類等ハードウェアインターフェイスと、大きめ重めの本体。なのだが、G1を使い続けてみると、そーゆー細かな要素はどーでもよくなってくる。
てのは、G1には、撮るための機能・性能に加え、撮った写真を見る・楽しむための機能・性能が十分に備わっているからだ。
例えば2GBの内蔵メモリ。G1で撮影すると、この内蔵メモリにも外部メモリ(メモリースティックDuo)にも画像を記録可能だ。が、どちらのメモリに写真を記録した場合でも、内蔵メモリには“必ずアルバム画像表示用のVGA(640×480ドット)サイズ画像も”記録される。
G1で撮ると、オリジナル画像の他に、アルバム表示・管理用の画像も自動保存されるわけですな。なので、撮った写真は全て、G1のビューワー上で(アルバムとして)見ることができる。この際、オリジナル画像はG1やG1上の外部メモリになくてもよい──メモリースティックからオリジナル画像をPC等に移動しちゃっても、G1上にはこれまで撮った写真が残る、というわけだ。もちろん、G1上のアルバムに対する任意の写真の追加・削除も可能。
アルバムは、撮影日毎もしくは撮影頻度毎に自動的に区分・生成される他、G1単体で一連の写真を任意のアルバムにまとめることもできる。また、付属ソフトウェアAlbum Editorを使用すれば、アルバムに自由なタイトルを付加したり、より高度な画像検索機能を利用できるようになる。
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ビューワーで、アルバム内の1枚を表示した例。「この日のアルバムの中から1枚選んで表示する」というパターンですな。撮った写真はアルバムとして本体内で自動管理される
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アルバム内の写真をこのようなサムネイルで一望することもできる
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さらに小さいサムネイルを表示させつつ、複数冊のアルバムを見渡すこともできる
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要は、G1で撮る→G1上に自動的にアルバムが生成される→G1持ってればいつでもこれまで撮ってきた写真を楽しめる、てなシクミ。写真をビューワーとして楽しむスタイルは、ちょっと工夫&頑張れば他のデジカメでもできるし、エプソンのフォトビューワーを始めとする製品でもできるし、小型ノートPCでもできる。が、撮っていけば、自動的にデキるようになっちゃうという点で、G1はすこぶる実用的でありラクであり楽しいと感じられる。
この考え方と機能、G1を少し使った程度ではピンと来ないものだと思う。G1を使い続け、G1に写真がたまりつつ自動的にアルバムが生成される頃……あ!! G1は自動生成アルバム内蔵のデジカメだったのか!! と気づいたりする。
これに気づくと、だから液晶がデカくて高精細なのか、だから2GBのメモリを内蔵しているのか、と理解できつつ、さらに、撮ったた画像が自動的に整理され、これを見て楽しめるのが、この先のデジカメの姿なのかも!! と、何というか、ちょっと目が覚めたりした俺であった。
ちなみに、G1のアルバム機能を積極的に利用する場合……というかG1の内蔵メモリおよび大型・高精細液晶を活用するにはアルバム利用が大吉だが、その場合、前述のAlbum Editorが非常に役立つ。これを使うと、G1上のアルバムを細かく編集できる──アルバム名の付加、アルバム分割・結合、写真へのラベル付加、写真へのコメント追加、検索時に役立つ画像解析等々、さまざまな処理を行なえる。
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Album Editorの表示例。PCとG1を接続した状態で、Album EditorがG1内のアルバム情報を読み出して表示している。アルバムを編集したり画像にコメント等を付加すれば、G1内のデータにもすぐに反映される
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1枚の写真にコメントを加えてみた。この他、オリジナルのラベルを付加することもできる
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PC上で写真にコメントを入力すると、G1上でその写真を表示させた時にコメントも表示される
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G1にはインテリジェントサーチと呼ばれる高度な画像検索機能があり、アルバムの検索から始まり、ラベルによる検索、似た画像の検索、顔の検索等々を行なえる。ラベルや色といった検索条件を組み合わせての絞り込み検索も行なえる。
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アルバムの中から目的の画像を検索できる検索メニュー。写真等に設定したラベルや色により検索できる他、顔や写真の色といった曖昧な要素からの検索も可能だ
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類似画像検索の例。“似た画像”を検索する機能だが、色や明るさなどから類似画像を判断しているようだ
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ポートレイト写真で、赤が多い写真、というふうな曖昧な指定で検索
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検索結果。曖昧な指定でも、なかなかシッカリと写真を見つけてくれる
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前述のとおりG1には2GBの内蔵メモリーがある。ココに、撮った写真のアルバムが次々と自動生成・保存される。VGAサイズの画像だと(アルバム用VGAサイズのデータとしてなら)最大約2万枚保存できるとある。2万枚の写真が入ったアルバム!! 手動ではブラウズできませんな。というわけで、インテリジェントサーチのような高度な検索機能も用意されているのだ。
というわけで、コンパクトデジカメとして見ると、わりあいフツーで液晶や外見以外は平凡っぽいG1。だが、十分撮れることに加え、“撮った写真をよりよく楽しめる”ことまで考えれば、これまでのデジカメの方向性を大きく変えてしまうかもしれない力を持つ一台だと感じる。撮る・見る・見せる、という、写真が本来持つ意味や楽しさを、唐突ながらも、いきなりスマートに提示した斬新なハードウェアなのではないだろうか、と。
そのあたりにピンと来る人は、一度、G1、いじくってみる価値があると思う。
■ URL
ソニー サイバーショット「DSC-G1」製品情報
http://www.sony.jp/products/Consumer/DSC/DSC-G1/
2007/06/18 12:45
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