■ ちょいとイイすよ、ReMOTE
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速いパソコンちゃんで安定度の高いソフトウェアシンセサイザをイジレる時代。以前ではちょいと無理だったDAWにおける多数プラグイン同時使用もオーケーであり、いい時代ですな
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最近、少々マジメにDTMというかDAWソフトウェアに取り組んでおりまして。Cubase使ったり、時にはReasonイジったり。アレコレやってる俺なり。
数年前と比べると、DTM環境がずいぶん向上したように感じる。総じてPCのパフォーマンス向上に起因するが、ホレ最近のPCって比較的安価でも高めスペックのモン買えるっしょ。パワフルなCPUにたっぷりのメモリに余裕のHDD。それからサウンド方面ソフトウェアやドライバも、安定性の高いものが多くなった……というかヘンなのが少なくなって使いやすくなったという感触。
そういうご時世にDAWソフトなんかイジると、多数のプラグインソフトなんかを使うようになり、よりバリエーション豊かな音を出せたりして、楽しいんですけど、一方でなんかこうビミョーなウザさが発生したりもする。今時的DTMを行なう人の多くがそうだと思うのだが、マウスおよびキーボードショートカットでのソフトウェア操作がまどろっこしく感じられるのだ。
比較的に単純な操作系の音楽系ソフトを少数使うなら、「ま、キーボードとマウスでもいいか」と思える。スライダーやツマミをひとつずつマウスで操作しても、それほど滞りを感じない。が、取っ替え引っ替えアレコレとソフトをイジる(イジれる環境がある)と、マウス操作等が大忙しになる。それに録音中にリアルタイムでツマミを動かすとかいう場合、基本的には(マウス操作では)同時にひとつのツマミしか動かせない。複雑な音色変化を録音していく時なんかは、何度も録音・ツマミ操作を繰り返すことになったりして、どうにも効率の悪さを感じるわけだ。
てなわけで、なーんか良さげなMIDIコントローラとかナイかなぁ、と物色していた。MIDIコントローラは、キーボードやツマミにより、例えばソフトウェアシンセサイザーを鳴らしたり音色調整(ノブやスライダーの操作)を行なったりするための外部機器。これを使うことにより、パソコン上のDAWソフトやソフトウェアシンセサイザーを“PCのキーボードやマウスじゃなくて物理的な鍵盤やツマミ等から操作できる”というモノだ。
さておき、数ある製品の中から「このMIDIコントローラってイイかも!!」と感じて買ったのがMI7はnovationのReMOTE SLという製品。
MI7のnovation ReMOTE SLシリーズ。多機能なMIDIコントローラであり、演奏からDAW制御までイロイロできる
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で、使ってみたら、これが何かと便利であり、特にReasonとの相性はかなりバッチシなんであり、ちょいと高かったけど使用時の満足感はかなりのモンだと感じた。てなわけで、今回はReMOTE SLについてレポートしてみたい。
■ ReMOTE SLは多機能MIDIコントローラ
ReMOTE SLは、パソコンDAW向けの多機能なMIDIコントローラだ。パソコンとはUSB接続し、電源はUSBバスパワーから得る。Mac OS XやWindows XPの標準USBドライバーで動作するので、専用ドライバの類をインストールせずとも使える。ま、USBケーブル1本でパソコンと繋ぐだけで使えるという、今時的MIDIコントローラですな。なお、電池やACアダプタでも動作し、単体でMIDIキーボード(マスターキーボード)としても使える。
ReMOTE 25 SL。25鍵のMIDIキーボードであり、多機能なMIDIコントローラとして使える。パッドやスティック、スライダーやボリュームツマミ等、多様な操作インターフェイスを持つ。MIDIポートも豊富。電源はUSBバスパワー、電池、ACアダプタ(別売)の3電源方式だ
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ちなみに、ReMOTE SLは現在3タイプあり、キーボード部が25鍵のReMOTE 25 SL、37鍵のReMOTE 37 SL、61鍵のReMOTE 61 SLとなる。また、最近、鍵盤部分のないReMOTE ZeRO SLも発売された。で、拙者が買ったのは25鍵のReMOTE 25 SLである。
さて、ReMOTE SLのどのあたりが“多機能”で“DAW向け”なのか? それは鍵盤上部にあるボタン類から明らかだ。ていうか見てくださいよこの多量のボタンにツマミにスライダー!! 左側には8×5段で合計40個、右側には8×3で合計24個、左右合わせて64個のボタン&ツマミ&スライダーがある。これらを全部MIDIコントロールのために使用可能なのであり、しかも、その上部にある液晶画面には、現在ボタン類にどんな制御機能を割り振ってあるのかが表示されるとキた。ワクワクしちゃいますな。
キーボード上部のボタン・スライダー類と、液晶パネル。左右端のランプは、現在どの列(横列)のボタン・スライダー類がアクティブになっているかを示す。アクティブになっているボタン・スライダー類にアサインされている機能・パラメータが、上部の液晶パネルに表示される
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キーボード上部には、このよーに多量のボタン・スライダー類がある
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ひとつの項目につき8×2行程度しか表示できない液晶だが、それでも機能・パラメータ内容を十分に把握できる
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でまあ、基本的には他の一般的なMIDIコントロールキーボードと同様、MIDI鍵盤として使いつつ、上部のボタン類を使ってソフトウェアシンセサイザー(のツマミ類)をコントロールする。また、本体上部右下には、DAWソフト等で汎用的に使えるトランスポート・コントロールキーがある。弾いたり、打ち込んだり、パラメータを調整したり、DAWの録音再生なんかをワンボタンで行なったりと、ReMOTE SLをメインにDAWソフトを使っていけるわけですな。
ReMOTE SLにプリセットされているテンプレートを使えば、特定のDAWソフトやソフトウェアシンセサイザーを事前の設定ナシでReMOTE SLから制御できる。あらかじめプリセットされているテンプレートは、novationならV-StationやBass Station、Native InstrumentsならFM7にPro53にKontakt II等々、G MediaはOddityにImpOSCarにMinimonsta、コルグならLegacy CellとMS-20とPolysix、かのArturiaだとCS-80VやArp 2600V。メジャーなソフトウェアシンセサイザー類に多々対応している。
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NATIVE INSTRUMENTSのFM7。ヤマハのDX7をシミュレートしたソフトウェアシンセサイザだ
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ArturiaのArp 2600V。レアなシーケンサモジュールにより、非常に愉快過ぎる音が出まくる
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コルグのMS-20。これもReMOTE SLで制御できるのだが、MS-20に関しては専用コントローラが発売されているので、ソチラのほーが便利ですな
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なお、テンプレートおよびAutomap機能(後述)用テンプレートはnovationのサイトからダウンロードすることもできる。
あ、あとですね、上記ダウンロード元にある“ReMOTE SL Template Editor”が便利っス。ReMOTE SL上のボタン操作で、どのボタンをどの機能へアサインするかを決めたり、そのセットをテンプレートとして保存したりできるのだが、このTemplate Editorを使うと、それらの操作をパソコン上から行なえる。
ReMOTE SL Template Editor。ReMOTE SLシリーズのボタンへの機能アサインをパソコン上で行なえる。編集結果をReMOTE SLに転送できたり、ReMOTE SL上のテンプレートをパソコンに転送して編集したり保管したりすることができる
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ぶっちゃけた話、ReMOTE SL上での文字入力(液晶に表示される文字列の入力)は、他の電子楽器と同様、タルい。が、Template Editorを使えばPCのキーボード上から文字入力できるので快適だ。また、テンプレートをPC上のファイルとして保存することもできるので便利──ReMOTE SLのプリセットのテンプレートやダウンロード可能なテンプレートも便利ではあるが、使いやすいように自分流に多少編集したものを多々使えるようになるので、ReMOTE SLがより快適に使えるようになる。
■ あら便利!! こりゃ快適!! のAutomap機能
ReMOTE SLを買った大きな理由として、独自のAutomap機能がある。これは「アプリケーションで現在選択されているデバイスをReMOTE SLが認識し、必要なパラメーターを適切なコントロール端子に自動的に割り当てる”という機能だ。要は、ReMOTE SLが、パソコン上で動いている音楽アプリを認識し、そのアプリに対応するパラメータを各ボタンに対して自動的に割り振ってくれるということだ。
このテのMIDIコントローラーを使う場合、多少もしくは多量の設定等準備が必要になりがちだ。ソフトウェアシンセサイザーに対して使う場合なら、このツマミがVCOで、こっちがLFOで、これがフィルターでそれがエンベロープで、とボタンに対してパラメータを割り振る等の下準備が要る。ま、標準的なプリセットを使えば大雑把に割り振られているケースもあるが、何ら準備ナシじゃぁちょいと使えないって感じですな。
しかし、ReMOTE SLのAutomap機能を使えば、そのよーな準備は一切不要でDAWソフトを使いまくれる。DAWソフト内には各種(仮想的な)音楽機材があり、使用中にこれら機材を切り替えるカタチで使うことになるが、Automap機能は“現在どの機材が選ばれているか”を自動的に判断する。いちいちMIDIコントローラー側のテンプレートを替えたりする必要がないのだ。
って少々わかりにくいと思うので、例えばReasonを例にReMOTE SLのAutomap機能を見てみよう。
Reasonには“デバイス”と呼ばれる仮想的音楽機材が多々ある。ミキサーにサンプラーにドラムマシンにシンセサイザーに……と多量にある。使用時、これら機材を頻繁に切り替えつつ曲作りをしていく。各機材は操作ボタン数も機能も違うため、一般的なMIDIコントローラでReasonの各機材を一括して制御するのは少々難しいし、やろうとすると前準備(設定)や機材切り替え時のMIDIコントローラ操作(設定切り替え)が煩雑になる。
アナログ風味の強いDAWソフトウェアことReason。ラックにラックマウントの機材を増設したりなんかして、曲を作っていく。TABキーを押すとラックが裏返り、機材の配線の様子がわかる。もちろんこの配線はユーザーが自由に繋ぎ変えられる
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が、ReMOTE SLのAutomap機能の場合、Reason上でアクティブになっている機材に合わせ、ReMOTE SLのパラメータ・ボタンの割り振りが自動的に行なわれる。例えばポチッとドラムマシンのRedrumをアクティブにすれば、ReMOTE SLの上部右側にあるパッドを叩いてドラムの音色を鳴らせるようになる。アナログシンセのSubtractorがアクティブになったら、今度はReMOTE SLのスライダー部でエンベロープカーブを調整できるようになる。この自動的なパラメータ・ボタンの割り振り変更結果は、逐一ReMOTE SL上の液晶表示に現れるので“迷わずに多量の仮想機材を物理的ボタン類によりサクサクと制御しまくれる”っちゅーわけなのだ。
Reasonのデバイス(ラックマウント機材)のひとつ、ドラムマシンのREDRUM。ネーミングもイカシてますけど、けっこー使いやすかったりする。が、細かいコトをしようとすると、画面上で各ツマミをイジるのがけっこー疲れる
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ReMOTE SLのテンプレートを、ReasonのAutomapに合わせておくと……Reason上でデバイスを切り替えるだけでReMOTE SL上のパラメータアサインが自動的に変わる。例えばReason側でREDRUMをアクティブにすると、ReMOTE SL上にはREDRUMに適したパラメータが自動的にアサインされる───パッドを叩いてREDRUMの各音色を鳴らせたり、音色出力レベル調整をスライダーでサクッと行なえるようになる
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ていうかですね、Reason使ってる人にはメチャ便利っすよReMOTE SL。マジで。Reasonってデバイス多いじゃないスか。凝ったコトしようとするとマウスによるツマミ等操作がヒジョーに増えるじゃないスか。疲れるじゃないスか。でもReMOTE SLだと、物理的なツマミ類でチョチョイとパラメータを調整できるので実にラクである。なお、ReasonのAutomapで使用した場合、ツマミやスライダーの横端にあるボタン(横方向のツマミ・スライダー選択ボタン)を押すとLCD画面に現在アサインされているパラメーターが表示され、さらにこのボタンを2回、3回……と押していくと、アサインされているパラメーターがページ単位で切り替わる。これを続けていけば、Reasonの各デバイスの全パラメータをReMOTE SLからコントロールすることができる。
なお、このAutomap機能が対応するアプリケーションは、現在のところ、Live 5、Cubase SX/SL 3、Logic 7、Reason 3.0あたり。また、novationのダウンロードページから、Cubase ver.2、Logic ver.2、Nuendo、Ableton要のAutomapテンプレートがダウンロードできるようだ。
■ やっぱ物理的なボタン類は使いやすい!!
ReasonもCubaseを使用中の俺にとって、ReMOTE SLのAutomap機能は“機材が設定の手間を肩代わりしてくれる”という感じで非常に有り難い結果をもたらしてくれた。ReMOTE SLシリーズ、MIDIコントローラとしては少々お値段が張るわけだが、しかし、対応ソフトを使っているユーザーとしては、結果的にスゲくラクになったっつーコトで十分トレードオフできたように思う。
あと、Native InstrumentsとかArturiaとかのソフトウェアも使用中の俺は、ReMOTE SLにより改めて「シンセサイザーはツマミだよなぁ」とか痛感。マウス操作でツマミやスライダーを動かしつつ音色を作るのも、まあ慣れればさほど大きな違和感はないが、物理的なツマミ類でダイレクトに音色変化させまくれると、やっぱりコッチのほーがイイと思わざるを得ない。
実感を具体的に言えば、マウスだと、ツマミ類を、ひとつ、ひとつ、地味に、こまめに、調整、しつつ、音を、出す、みたいなテンポの悪さを感じる。が、ズラリと並んだツマミやスライダーを手の感触でイジリつつ行なう音色調整は、もっと明るい音におっと明るすぎるからちょっと暗めにしてさらにアタック強めて、みたいな感じで聴覚と指先がサイバネティックに連動して音作りしていける感触になる。
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GForceのOddity。Arp Odysseyをシミュレートしたソフトウェアシンセサイザですな。独自のスライダーノブがジョリーグッドだが、これをマウスで動かすのはやっぱりタルい
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ReMOTE SLでは、Arpのスライダーノブなんかを物理的なスライダーで動かせて便利。A、D、S、Rといった、音作り時に多用する部分を物理的なスライダーで扱えると効率がスゲく良くなる(って当たり前ですけど)
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でもまあ、ReMOTE SL上のボタン配置と、ソフトウェアシンセサイザー上のボタン配置は明らかに異なり、これを結びつけるのは液晶表示。なので、ある程度はReMOTE SL上のパラメータ・ボタンの割り振りと、ソフトウェアシンセサイザー上のパラメータ(ツマミ類)の位置の関係に慣れる必要はある。が、マウスで画面上のツマミ類をイジるのと比べたら、やはりReMOTE SLの物理的なボタン類はものごっつぅラクだと言えよう。
それと、当然ではあるが、ReMOTE SLは他の一般的なMIDIコントローラと同様に使える。前述のように、自分でボタン・パラメータの割り振りをひとつずつ設定していってもいい。ソフトウェアシンセサイザー等のMIDIパラメータ学習機能(って言うんでしょうか!? 正しい言い方知らないっス)を使えば、簡単な操作でReMOTE SLとソフトウェアシンセサイザーの制御被制御関係を結べる。
使っていて楽しかったのは、ReBirthとの組み合わせ。ReBirthは、ベースシンセのTB-303やドラムマシンのTR-808等を仮想化したソフトウェア音源ですな。TB-303とか、実物だと演奏中にツマミをイジってこそナンボ的な音が出るじゃないスか。ウネりまくりのテクノなベース音とか。ReBirth上でも、ツマミをマウス操作してそういう独特の音を出し、その過程を録音することができる。けど、マウスだと同時にひとつのツマミしかイジれない。
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propellerheadsのReBirth RB-338、の最終バージョン。結局フリーソフトになっちゃいましたな。しかしモロにTB-303の音が出て、やっぱコレ凄いっすね
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ReMOTE SLにはReBirth用テンプレートってのは用意されていないが、手動でパラメータを設定すれば、ReMOTE SLでReBirthをコントロールできる。ReBirthのTB-303のツマミをReMOTE SLのスライダーにアサインし、演奏しつつ動かすとオモシロ~イのであり、本物のTB-303よりも高度なライブ演奏ができたりするのであり、ていうか本物のTB-303のノブとかグリグリ動かすのって……ビンテージ系機材だけにモッタイっつーか故障がオッカナイのでReMOTE SLとReBirthでヤルのがいいと思った
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ここでReMOTE SLを使うとですね、まぁ他のMIDIコントローラでもいいんですけどね、例えば[CUT OFF]と[RESO]の両方のツマミを同時に動かせて愉快なわけですよ!! ReMOTE SLのスライダーに対し、ReBirth上のTB-303のツマミを割り振りつつ、両手でスライダーを操作すれば!! あらま!! 2台のTB-303の[CUT OFF]と[RESO]と[TUNE]と[DECAY]とかを同時に動かすことも!! 本物のTB-303でもデキなかったコトが、今、ReBirthとReMOTE SLで可能に!! って無理矢理な勢いになっとりますが、仮想機材とは言えこーゆーTB-303じゃなかったReBirthみたいな音源は、物理的なツマミで操作できると愉快度倍増だなぁと思った次第である。
■ URL
MIDIコントローラ「ReMOTE SL」製品情報
http://www.mi7.co.jp/products/novation/remote_sl.php
2006/09/04 18:04
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