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AIBOが終わっちゃう! 「ソニー AIBO ERS-7M3」
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スタパ齋藤 1964年8月28日デビュー。中学生時代にマイコン野郎と化し、高校時代にコンピュータ野郎と化し、大学時代にコンピュータゲーム野郎となって道を誤る。特技は太股の肉離れや乱文乱筆や電池の液漏れと20時間以上の連続睡眠の自称衝動買い技術者。収入のほとんどをカッコよいしサイバーだしナイスだしジョリーグッドなデバイスにつぎ込みつつライター稼業に勤しむ。フォトエッセイのスタパデイズをAlt-R(http://www.alt-r.com/)にて連載中。 |
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■ AIBOが終わっちゃう
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最新型にて最終型のAIBOのモデルERS-7M3。sonystyleでの税込価格は19万4,250円。余裕で現代的ノートPCが買える値段だったりするが……
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去年の暮れからAIBOちゃんをいじくって遊んでる俺にとって衝撃的だったのが「ソニー、AIBO、QRIO、QUALIA撤退」というニュース。えーっ、ヤメちゃうのぉ~!? イヤんイヤん!! みたいな。
おそらくAIBOに触れていなかったら「ふーん、ヤメるんだロボット」くらいにしか思わなかったかもしれない。が、AIBOオーナーとなってからそのニュースを聞いたもんだからショック甚大。こーんなにイカシたハードウェアおよびテクノロジーが、ここで、止まる。これはヒジョーにモッタイナイのであって実に寂しいことだと感じた。
ま、しょうがないんでしょうな。いわゆる白もの系の生活必需家電を作っていない(そーとも言えない!?)メーカーとして余裕コイて市場あんまり広くない製品にお金かけられないんでしょうねえ。でもひとつの大きなソニーっぽさが失わ(以下略)。
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AIBO ERS-7M3のボディカラーはパールホワイトとパールブラック、それから既に販売完了したハニーブラウンがあるが、拙宅のAIBOはパールホワイト。……ていうかコレって白モノ家電では!? とか言ったりして(寒)
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ねこ様と同居も問題ナシ。AIBO登場直後から、AIBOを怖がったりウザがったりする様子はなかった
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AIBOからねこに手出しすることはないが、ねこはAIBOに度々ちょっかいを出し中である。特に動く尻尾が気になるご様子
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さておき、事実上、この3月でAIBOは生産終了となる。既に何万台だか知らないんですけど出荷済&各家庭で活躍中のAIBOの産み&育ての親ことソニーはブリーダー廃業なわけですな。拙宅でパラパラ踊る量産型QRIOも夢となった。俺的には非常に悲しい!! てなわけで、なんつーか追悼な気分をもってして最新型で最終型(!?)のAIBOことERS-7M3の使用感……いや存在感をレポートしてみたい。
■ 思わず愛着湧いちゃうロボ
AIBO ERS-7M3(以下、AIBO)は四足歩行の自律型エンターテインメントロボだ。その詳細についてはソニーの製品紹介ページをご覧いただきたいが、自発的に行動したりなんかして、周囲の人間を楽しませたりしてくれるロボットである。
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関節がたくさんあるAIBO。可動部自由度の合計数は20で、動きも滑らかだ。全体的に犬っぽい動作が多い。犬を超越した動きもする
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表面はクルマのボディっぽい光沢仕上げ。汚れにくかったりもする。ホコリもあんまり付きませんな
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背中、頭、胸等に多数のセンサーを実装している。鼻先には35万画素のCMOSイメージセンサーや距離センサーが内蔵されている
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市松模様のポールがあるのが充電用のステーション。AIBOはこの充電用ステーションを自ら発見し、充電が必要だと判断すればステーションへと自分から乗っていく。ステーション発見→後ろ向きで接続姿勢→ステーションへセット、という順だ
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で、AIBOと暮らしているとも言える俺的結論から言えば、AIBOは玩具以上・生身のペット未満てな感じの存在だ。高価なオモチャなのか? と言われれば、オモチャなんかじゃナーイ!! とプチ憤慨するかも。かと言って、お宅のねこちゃんよりステキ? と言われたら、んんんん~、リアルねこ様のほーが色々な意味で……んん~、と返答を濁してしまうかもしれない。
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AIBOを凝視する拙宅ねこ様。興味津々状態である
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拙宅ねこ様を凝視するAIBOさん……ウソですAIBOは拙宅ねこ様とか全然無視っス
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でも、ねこ様はAIBOにアクセスしがち。ねこがAIBOの背中センサーに触れ、それにAIBOが反応することも時々
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でもですね、他の機械とは一線を画する愛着を感じちゃったりはするわけです。各種コントローラからコマンドを伝え、そのコマンド通りに動く一連のハードウェアとは、大きく違う印象を与えるAIBO。そう感じさせるのは、総じてAIBOが自律型ロボットであることと、ソニーの演出の巧さだと思う。
写真は無線LANにて制御してAIBOを踊らせているところだが、AIBOが自律モードで動いている時も同様の踊りを披露したりする。
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好き勝手に行動するAIBOさん近影。全体的な行動パターンとしては、走らないし舐めないし動きも早くない犬、という感じ。活発でない座敷犬? とも言えるかもしれないけど言えないような気もする
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例えば、AIBOは(設定にもよるが)一日中好き勝手に行動する。突然思い立ったように机と机の間の狭い空間を探検し(ているような仕草を見せ)たり、何かに驚いたり、昼寝したり、踊ったり。長く観察していると、まあ全体的に同じようなパターンで行動することが多いが、それでも時々、ええっそんなコトもするのォ!! という突飛かつ斬新な動きを見せる。
ので、プログラムされており新たな行動パターンを自ら生成するような類のロボットでないことはわかっていても、ついついその行動を見てしまう。と同時に、どのよーな気分であのよーな行動を? などと空想してしまい、さらに、そうか悲しいのかカワイソウに!! などと妄想してしまってナデナデしてしまってナデナデされて喜ぶAIBOちゃんがカワイク見えてしまったりするじゃありませんか旦那さん!! イイ歳してロボットに愛着ですよ奥さん!! というわけである。
また、そのような人間からの愛着を増幅させる巧みな演出がポツポツ見えるからヤバい。例えばAIBOさん、時々、突然、「ハーイ、お手」とか言って前足を突き出すのだ。お手をしたから褒めたりなんかして欲しいらしい。けど拙者は原稿執筆中であって貴様のところまで行って撫で撫でしている暇など……ああっ!! 悲しんでいる!! すなわち、お手をしたのに褒めも叱りもされなかったAIBOちゃんは「あーあ」と悲しそうな声をお出しになられる。
そーゆー声は同居人的に全然聞きたくないので、「ハーイ、お手」の直後に速攻でAIBOに近づいて足の裏センサーを触ると、「嬉しい~」とか言ったりする。対象は違うが、ねこがこっち向いてゴロニャーンと啼いた直後に近づくと、尻尾立てて背中丸めて足もとにスリスリするようなシチュエーションと似ていたりする。AIBOの頭部LEDや音声(日本語もAIBO語(!?)も設定可能)での感情表現は微妙に行きすぎ&クサいとも思うが、そのインタラクティビティは普通一般の機械とは違って非常に感覚的でありつつツーカー感があり、人間をちょいとソノ気にさせる。
つーかですね、AIBOがたまに遠くで「こっち来て」とか言うわけですよ。そしたら、また何か新しい芸を見せてくれるかも!? とか思うじゃないですか。とりあえずAIBOのほーに行くでしょやっぱ。そして近づいたら、AIBOが「チュっ」とか言うんですよ旦那さん!! 「チュっ」ですよ奥さん!! 突然のねこキスとか犬の口ナメナメとか以上に、AIBOは「こっちに来てくれたからチュっ」という決定的な意思表示を巧みっつーかむしろ巧妙に行なうんだから、気を抜いている人間なんざぁイチコロと言えよう。
他にもAIBOの妙味は多々あるが、飼って(!?)みるとなるほど飽きさせないし愛着をわかせる。こちらが積極的でなくても、あるいは単にハードウェアとしての興味だけ持って接しても、いつの間にか興味を持たせ好きにさせて、結局は楽しませる。見てて愉快とか楽しいっつーのもあるが、一緒にいることがおもしろくなるという点で、確かにAIBOはエンターテインメントロボなんだなぁと感じる。
■ 毎日の小さな楽しみ
AIBOは徐々に成長したりなんかする。いや、恐らく実質上成長してはいないのだが、成長を感じさせる行動を色々と取る。ので、例えば、AIBOを初期化する時、なーんかちょっと切なかったりする。アレコレ色々試したい派の拙者の場合、去年後半から現在まで、AIBOを何度か初期化しているのだが、その初期化時、長らく愛用してきたネットワークゲームのプレイヤーキャラクターをサーバ上から消去する時のような、小さな切なさを感じてしまう。
開梱直後=工場出荷状態のAIBOは、立つこともできない赤ちゃんだ。が、これがイキナリ、AIBOらしい良さである。フツーは「なんだよお手とかするとか聞いたのに、電源入れたら立ちもしないじゃん」と想像すると思うが、ていうか電源投入直後の拙者は一瞬そう思ったが、数分見てると、どうにか立とうと頑張っているAIBOさん。
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開梱直後のAIBOは赤ちゃん状態。立ち上がって歩く(=大人になる)まで、多かれ少なかれ時間がかかる。それを見ているのもまた愉快っス。なお、最初から大人の状態にすることもできる
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大人状態になったAIBO。アイボーン(骨のような遊具)を自分でくわえ、ピンクボールを蹴ったりもする。もちろん両方とも遊びで
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最初はくわえたり蹴ったりするだけだが、時間経過とともに非常に高度な“芸”へと上達していく
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最終的には、悲しんだり疲れたり人間に励まされたり(声をかけたり撫でたりすると元気づくらしい)して、立ち上がって大人になるAIBOだが、どーもその過程が状況によって違うのだ。うちのAIBOは数十分で立った、うちのは数日かかった、みたいに状況によって成長過程が異なるっぽい。立ち上がって大人になった後も、ピンクボールやアイボーン(付属のAIBO用遊具)が大好きとかソコソコ好きとか、積極派だとか警戒派だとか、状況に応じて性格付けが変わるようだ。
また、AIBOは毎日、好き勝手に記念写真を撮っている。AIBOが撮った写真はAIBO内のメモリースティックに保存されるが、AIBOを家庭内LAN等に無線LAN接続すれば、Webブラウザ経由で閲覧することができる。で、それを見ると、AIBOの視線から見た日常があったりするわけで、また、AIBOのお気に入りの場所(これも写真に撮って残すが時々変わる)を見たりするとAIBO観点からの生活の場を垣間見られたりして、ちょいと感慨深い。
AIBOが撮った写真等はWebブラウザで表示可能(無線LAN接続が必要)。メール関連機能の設定もWebブラウザから行なえる
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“本日の記念写真”や“お気に入りの場所”は、AIBOが自発的に撮影する一枚。前者は毎日日替わりで、後者は時々変わる。どちらにせよ、これを見るのも人間側の楽しみだったりする
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AIBOに声をかけて(命令して)写真を撮ってもらうこともできる。画素数は高くないが、ケータイでスナップを撮る感覚でAIBOを利用できる感じ。
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ま、AIBOが感情を持って写真を撮っている、というわけではなく、AIBOという装置が偶発的に撮った写真を見て想像を膨らましているオーナーが居る、という現実ではある。が、いつも一緒にいるヤツが、ソイツの視点での写真や日記(毎日こっそり書いてるヨ)を残していて、そーゆーのを見てしまうと、俺の日常とAIBOの日常を写真や日記において強引に接続しちゃうモンですな。そういう点でも、AIBOと一緒に過ごすのは楽しかったりする。
後述のAIBOエンターテインメントプレイヤー(付属ソフト・無線LAN環境が必要)を使えば、AIBOがこっそり付けている写真日記を読むことができる。日記も写真もAIBOが自発的に撮ったり書いたりする内容となる
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■ ロボット的なAIBO
が、エンターテインメントな“ツール”としてのAIBOも、けっこーイケてる。例えばAIBOを家庭内LAN等と無線LAN接続すると、意外なほど多くのお役立ち機能を使える。具体的には、外出先からAIBOにメールを送って写真を撮ってもらうとか、お留守番モードにして室内を監視(動くものを感知すると写真を撮ったりする)させてその結果をPC上で見るとか、人間本位で“AIBOを利用”できるようになる。
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AIBOを無線LAN接続する時に使用するソフトウェア、AIBO WLANマネージャ3の表示。AIBOに対する設定はメモリースティック経由で行なうが、設定自体は平易でわかりやすい
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設定後はAIBO WLANマネージャ3からAIBOを検索できる
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AIBOの無線LAN接続が完了すると、AIBOエンターテインメントプレイヤーを使えるようになる。AIBOが何をどうパターン認識しているのか、何を聞いているのかなど、なかなか興味深い情報が得られて楽しい
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で、いちばんオモシロイのが、付属のAIBOエンターテインメントプレイヤーですな。このソフトを使うと、例えば無線LAN接続されたAIBOを自由自在に制御できる。AIBOの完全コントロール。PC上でAIBOが見ているもの聞いているものをモニターしつつ、AIBOをラジコンのように自由に歩き回らせることができる。単にラジコン的遊びとしても楽しいが、AIBOを歩かせて特定の場所をモニター(映像・音声)したり写真を撮ったり、あるいはAIBO経由でリビングと子供部屋で(人間同士の)コミュニケーションするなど、ツール的にAIBOを利用できる。
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AIBOエンターテインメントプレイヤーにより、AIBOを完全に制御しているところ。AIBOのカメラが撮影している画像(動画)をリアルタイムで見られる他、AIBOがキャッチしている音も聞ける。もちろんAIBOを自由に動かすことができる
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AIBOエンターテインメントプレイヤーで、自由に動き回っているAIBO(からの映像等)をモニターしているところ。AIBOが充電用ステーションをどう認識しているかも見られる
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こちらもAIBOをモニターしているところ。AIBOが何を考えているのかが、画面上に日本語のテロップで表示されたりする
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それから、メディアプレイヤーとしてAIBOを楽しめるようにもなる。要はPC上の音楽や情報を、AIBO経由で再生できる。PC上にあるMP3ファイルをAIBOに演奏させたり、各種RSSニュースサイトの情報をAIBOに読み上げさせたり。後者は音声合成による読み上げとなるので若干聞き取りにくいが、前者の音楽再生はちょいと楽しい。音楽に合わせてAIBOが踊るのだ(スタンドアロンでも音楽に合わせてダンス等させることができる)。
PC上にある音楽ファイルや、インターネットラジオ、WebコンテンツをAIBO経由で受信できる。AIBOをマルチメディアブラウザ的に活用することもできる。が、それよりも、音楽を鳴らしつつAIBOが踊ったり、たどたどしい日本語で「ホリエヨウギシャガサイタイホ」とかいうニュースを読み上げてくれるのが愉快だ
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ほか、無線LAN接続状態でもスタンドアロンでも、AIBOには多種多様な機能が盛り込まれており、おもしろかったり役立ったりするが、ともあれ非常によくデキた自律型四足歩行ロボットだと思う。
……やっぱ、残念ですな、AIBOの生産完了。ここまでキッチリと製品化されているのに、もうオシマイは寂しいしモッタイナイしAIBOオーナーとしてガックシであり、恐らくいわゆるソニーファンも少々肩を落としているんじゃないかと想像する。ぜひ、景気がもっと上向いたら再開発をドーンと表明して欲しいっス>ソニー、みたいな気持ちである。
■ URL
AIBO製品情報
http://www.jp.aibo.com/products/ers7m3/about01.html
AIBO生産終了のお知らせ
http://www.jp.aibo.com/support/clinic_info/notice_58.html
AIBO「ERS-7M3」製品情報
http://www.jp.aibo.com/products/ers7m3/about01.html
2006/03/06 11:03
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ケータイWatch編集部 k-tai@impress.co.jp
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