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ノートパソコンで出張録音していきたい!!
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スタパ齋藤 1964年8月28日デビュー。中学生時代にマイコン野郎と化し、高校時代にコンピュータ野郎と化し、大学時代にコンピュータゲーム野郎となって道を誤る。特技は太股の肉離れや乱文乱筆や電池の液漏れと20時間以上の連続睡眠の自称衝動買い技術者。収入のほとんどをカッコよいしサイバーだしナイスだしジョリーグッドなデバイスにつぎ込みつつライター稼業に勤しむ。 |
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■ 出張録音したいッ!!
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SKB社製のラックケース。ABS樹脂製でタフであり、質量的にもけっこー軽い4Uケースだ。わりかし安価に買えたりする
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何を隠そうこの俺は、しばらく前からスタパストリームというストリーミング音声配信コンテンツ、つまりネットラジオ番組を作っている。なんで作り始めたか等々の顛末は、本連載記事のバックナンバーに書いてあるが、ぶっちゃけた話、世間話等を録音し、編集し、エンコードしてネット配信しているのだ。
その録音・編集に使っている機材はDigidesign社のDigi002という製品。コレはかなりの優れ物で、コンピュータにIEEE 1394ケーブル1本で接続するだけで、マルチチャンネルのオーディオインターフェイスとして使えるのだ。つまり、複数のマイク等をつなげて、複数のオーディオトラックに同時録音ができるよーになる。
さておき、前述のスタパストリームを作り始めてから、ある必要性に迫られるようになった。これまで、スタパストリームは拙宅にて録音していた。ゲストの方に、ウチにご足労願って、それで収録していた。が、この収録を外で行いたい場合がある。俺が機材一式を持って出向き、その出先で収録を行ないたいな~、と思うケースが増えたのだ。
じゃあDigi002とマイクとパソコンを持ち出して外で録音……と思ったのだが、現在拙者が持ちうるDigi002稼働用パソコンはデスクトップ機。出張録音をするには適切なノートパソコンが必要だ。また、Digi002と組み合わせて使えるノートパソコンがあったとしても、Digi002ってけっこーデカいんですな。持ち出して使うのは現実的なのかァ? と。
加えて、持ち出すのはパソコンとDigi002以外にも、マイク、ケーブル、ACアダプタにバックアップ用HDDにと、けっこー大荷物になる。……果たして出張録音は可能なのか? でもデキたらいいなぁ、やりたいなぁ。さぁどうしよう、どうしたらいいんだろう、迷うなぁ困ったなぁボカぁ、てな俺であった。
■ Digi002Rackとノートパソコンで
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ラックケースにDigi002Rackを入れたところ。上側にユニットを入れているのは、ツマミ類を回しやすくするためと、Digi002Rack背面につないだケーブル類を下部空間から引き出しやすくするため(←録音環境によっては手前からケーブル出したほーが便利なのダ)
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そんなコトを考えていた頃、Digi002のラックモジュール版であるDigi002Rackが発売された。コレは前述のDigi002から、コントロールサーフェイス部分(ミキサーのフェーダーにあたるところ)をザックリ削除したよーな製品だ。要は、Digi002にあるコントロールサーフェイス機能が不要な人向けであり、Digi002より小型のマルチチャンネルオーディオインターフェイスが必要な人向けの製品である。
おおっ!! Digi002Rackって、もしかしたら出張録音向け機材かもしれない!! ていうかコレを使えば、ウチでやってるスタパストリーム収録を、外でラクにできるよーになるかも!! だって2Uラックサイズで質量も5.5キロと(比較的に)軽量だし!!
また、Digi002Rackは価格的にも(Digi002に比べると)手が出しやすい。Digi002の実勢価格がだいたい28万5000円程度なのに比べ、Digi002Rackは16万円弱。前述どおりDigi002Rackのほーにはコントロールサーフェイス部がナイものの、10万円以上安いってことになると、オーディオインターフェイスとして非常に強い魅力を感じてしまう、し、出張録音の夢も現実に近づく。
んーむDigi002すげー欲しい気がしまくってきた~、と思っていた時、このよーなサービスを発見してしまった。デジタルレコーダー(サービス対象品)を持ってる人は、ソレと交換で、Digi002Rackを安く売りますヨ、と。112,000円ですヨ、と。そして、俺の場合、交換サービスに該当するハードウェアを持っていた!! くわッ!! 交換するしか!! 買うしかDigi002Rack!! てなわけで、Digi002Rackを割安価格にて購入ッ!!
よっしゃコレで出張録音……ああっそうだDigi002Rackを動かせるノートパソコンも要るのダ!! 買わなきゃ!! ていうか手持ちのノートパソコンで……いや、それはちょっと怖いよーな気がする。
俺的経験からの結論を言えば、Digi002(やDigi002Rack)を動かすコンピュータは、なるべく“専用機”であることが望ましい。専用機ってのは、つまり、Digi002等だけのコトを考えたコンフィギュレーションのマシンのことだ。Digi002等のため以外のソフトウェア・ハードウェアは可能な限り停止ないしアンインストールしたコンピュータがナイス。また、ウワサによれば“Windowsマシンで使う場合は特にそう”らしい。
実際、Digi002ハードウェアやProToolsLEソフトウェアをWindowsXPマシンで使っている俺の場合、“非専用機でDigi002を使うと細かなトラブルが出ている”のだ。
例えばネットワークアダプタが利用可能になっていると、録音中に突然エラーが出て録音が止まったりする。あるいは、バックグラウンドで動いている何かしらのサービスが影響して、編集中にエフェクトがかからなくなったり処理が中断されたりする。アンチウィルスソフトなんかもトラブルの原因になる感じ。
とにかく、Digi002と組み合わせて使うコンピュータは、Digi002だけのために全てのリソースを捧げるよーなコンフィギュレーションであることが望ましい、てのが俺の経験則(でありDigi002ユーザーに共通した考え)だ。
また、俺がやってる録音の場合、ゲストさんをお呼びするわけで、録音中にトラブって録音中止とかになっちゃうと申し訳が立たなかったりする。一応仕事ってコトで、問題なく録音できてアタリマエという環境を作った上で、一発で確実に録音せねばならない。
てなわけで、Digi002シリーズ専用機として使えるノートパソコンを物色開始。で、結果から言えば、DELLのInspiron5100を購入した。ベーシックパッケージを選び、不要なパーツ・スペックをガシガシ削りつつ、Digi002動作に必要な要素を加えてBTOしたら、16万6215円なり。Pentium4 2.66GHz駆動のノートパソコンとしては、けっこーお安いよーな気がした。
ちなみに、DELL製を選んだのは、CPUもチップセットもDigi002向け───DELLのマシンは総じてインテル系パーツ採用なので、Digi002動作推奨環境にマッチするマシンのラインナップが豊富なのだ。あと、BTOできるんで、最も安い構成で買いやすいってのもあった。あと、仕事柄DELLのノートを何台も試用したのだが、ミドルクラスのノートやサブノートはどれも静穏性が高い(録音時にマイクへ雑音が入りにくいわけですな)ってのもあった。あと、Inspiron5100は現在はもしかしたら既に販売中止かもしんない(Inspiron5150が出たので)。
■ この出張録音環境、吉と出るか凶と出るか?
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ラックケースの2U分の空きスペースには、マイク、ACアダプタ、ポータブルHDD、ケーブル、それからノートパソコンを収納できる。各機材はスポンジ素材のソフトケースに入れている。ちなみにこのスポンジ素材のケース、100円ショップで1個100円だヨ!! 100個買っても1万円!! だと思った
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てなわけで、一応、Digi002Rackによる出張録音のための機材は揃った。だが、Digidesign Digi002Rack+DELL Inspiron5100は、果たして、ちゃんと問題なく動作してくれるかどーか、である。
いやね、実際こーゆー機材って、動かしてみないとわかんないんですよ、どーなるのかが。CPUもチップセットもOSも設定も、どれもDigi002シリーズの動作環境に合わせたつもりなのに、なーんか調子悪いとか、どーもトラブルがDELLっていうか出ることも、あるのだ。
なぜトラブるのかはわからないが、IEEE 1394コントローラチップが影響しているカモとか、ビデオチップやそのドライバが悪さしてるとか、HDDのパフォーマンスがどーとかマザーボードがこーとか、いろいろ要素があるらしい。正直なところ、俺もやっぱり「このノートパソコンなら絶対にDigi002動きますヨ!!」といった情報を得てから、ノートを買いたかったところ。
Digidesign社は、Digi002Rackの推奨ノートパソコン(WindowsXPベース)としていくつかのマシンを提示している───DELLのInspiron8500やInspiron600m、東芝Satellite1900シリーズ、IBM ThinkPadのAシリーズやTシリーズ等々だ。が、ソレを鵜呑みにしてそのままハイそうですかと推奨マシンを買うのもつまらない(←とか言ってるからトラブるんだよ>俺!!)。
理想としては、実ユーザーの使用環境を知りたかった。とりわけ、WindowsXPベースのノートパソコンでDigi002Rack(やDigi002)を使っている人の「快適に動いてますっ!!」という声を。だが、Digi002シリーズの多くはMacユーザーだったりして、さらにはデスクトップ機ユーザーだったりして、ついでにDigi002Rackユーザーの声ってのは非常に少ない。
そして俺の場合、今すぐにでも出張録音を行いたいと考えていた。実ユーザーからの経験談をたっぷり聞いてから手を出す……んじゃぁ時間の無駄!! ムダ無駄むだッ!! だったらアグレッシブに自分で試すでしょ!! てなわけで、やや無謀にも、前述のノートを買ってみたわけだ。
で、ココで原稿を書いているってコトは、そうなんですよアニキ!! しっかり動いたんですよブラザー!! Digidesign Digi002Rack+DELL Inspiron5100を使い始めて既に6回録音しているが、ノープロブレムですよノープロブレム!! 大成功ッ!! ってそんなに騒ぐことでもないのだが、出張録音環境として非常に便利に使えている。また安定性の面でも、もしかしたらウチの自作パソコン(Digi002向けマシン)よりも信頼できるかもしれない。
使っているInspiron5100は、Pentium4の2.66GHzで、メモリは1GB。HDDは40GBのものだが、システム(C:)ドライブに20GB、残りを録音用のドライブ(D:)としてパーティションを設定している。パーティションを設定しているのは、録音用の領域だけをクイックにデフラグしたりフォーマットしたりできるからだ。ちなみに、HDDは富士通のMHT2040AHが入っていた。他、Digi002Rack動作に不要なデバイス類は全てBIOSレベルで停止させ、ソフトウェアも必要最小限なものしか動かしていない。
それから、液晶パネルの表示解像度は1400×1050ドット。このくらい高精細だとProToolsLEソフトウェア(6.2日本語版)を快適に使えてナイス!! なお、Inspiron5100のチップセット等はDELLの製品紹介ページをご参照いただきたい。
で、この出張録音環境で、どの程度のパフォーマンスが出ているのかと言えば、具体的には通常行う3~4チャンネルの同時録音はすげー楽勝。また、状況に応じ、各チャンネルへのRTASプラグイン(コンプレッサやリミッタ)の割り当ても時々行うが、それをやってもまだまだ余裕あり。試しに6トラックの同時録音時、各トラックにRTASプラグインを割り当てても(リバーブとコンプレッサーとリミッターで試した)、まだまだ全然余裕アリでProToolsLEソフトウェアがサクサク動いてくれている。
それ以上の負荷をかけて、どこまでイケるかは試していないが、このくらい動けば(Digi002シリーズの本来の使用目的である)音楽録音用途での出張録音でもかなり実用的に使えるんじゃなかろうか。
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アイ・オー・データのポータブルHDD。これがあるとない=録音データのバックアップを取れると取れないじゃぁ、データの安全に関して大きな違いが出るし、さらには精神的な余裕が全然違ってくる=心おきなく収録作業ができるのだ
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東急ハンズで買ったACアダプタ。表と裏で合計4個のソケットがあり、ケーブルは巻き取り式(2メートル)。シンプルで扱いやすいヨ!!
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■ こんな工夫でモバイルスタジオ
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出張録音するの図。必要機材は全部4Uラックケースに詰め込んで、重いけど持ち歩き可能だ
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わー良かったDigi002RackとInspiron5100は相性良かった録音もバッチリこなせるし、これからのスタパストリームは外へ出て行きますよ!! ってだけの話だったりもするが、ご参考までに、俺の出張録音環境を少々ご紹介。
まず、オーディオインターフェイスとソレを動かすためのノートパソコンとしては、前述のとおり、Digi002RackとInspiron5100となる。
これに加え、マイクがAKGのC747。詳しくはココに書いたが、録音機材の設定次第では最強にグレイトな音を録音可能なコンデンサマイクである。これを4本持ち歩いている。
その他は、各機材用のACアダプタや電源ケーブル、接続ケーブルくらいだが、俺の場合、絶対に必須なのがバックアップ用のHDDだ。ていうかですね、Digi002シリーズで録音した場合、サウンドは全てWAVファイルとして残る。ので、ソフトウェア上のトラブルがあったりして、録音時の設定が消えたとかデータファイルへのリンクがどーなったとかしても、まあだいたい、録音データ自体は残る。が、俺の場合、基本的にHDDへのデジタル録音っちゅーモンを信用していないのだ。
テープでアナログ録音した場合なら、テープが切れたりしても、切れてない部分の音は助かる。テープへデジタル録音してもそうだ。が、テープメディアじゃなくてディスクメディアだったら? そう、ファイルシステムが壊れたら一発でご臨終。何時間録音してあろうが、32ミリ秒とかで全データが消え失せる可能性がある。また、過去に一瞬で録音結果を消失した経験があるので「最近のHDDはそうそう飛びませんヨ」と言われても、なかなか安心できない。
ので、上記のシステムで録音したら、その直後、即座に、一息入れる前に、外付けの(←これ肝心)のポータブルHDDへ録音データのバックアップを取るのだ。で、そのバックアップに使っているのが、アイ・オー・データのHDPX-U80(R)。USB2.0接続で、バスパワーで動き、しかもカッコイイという俺的お気に入りバックアップメディア(ていうかポータブルHDD)である。
こんな機材を使用・携帯しているわけだが、持ち運びの際には、これらをワンパックにしている。具体的には、SKB社製の19インチ・4Uラックケースに全機材を詰め込んでいる───Digi002Rack自体は2Uサイズだが、ケースの余り2U分のスペースにノートパソコンやマイクやケーブル類を入れているのだ。……が、全部で10キロ前後の重量があるので、片手で持ち歩くのは一苦労だったりする。
ともあれ、なーんだWindowsXPノートでもProToolsLEをちゃんと使えるんだなぁと喜んでいる俺。収録場所の環境さえ良ければ、これだけで非常に高音質の録音ができる。ホントにいい時代になったなぁと痛感中なのである。
■ URL
「Digi 002 Rack」製品情報(英文)
http://www.digidesign.com/products/digi002rack/main.cfm
「DELL Inspiron5100」製品情報
http://www1.jp.dell.com/content/products/productdetails.aspx/inspn_5100?c=jp&l=jp&s=dhs
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