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強力&安価なCDシュレッダー 「記録喪失」
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スタパ齋藤 1964年8月28日デビュー。中学生時代にマイコン野郎と化し、高校時代にコンピュータ野郎と化し、大学時代にコンピュータゲーム野郎となって道を誤る。特技は太股の肉離れや乱文乱筆や電池の液漏れと20時間以上の連続睡眠の自称衝動買い技術者。収入のほとんどをカッコよいしサイバーだしナイスだしジョリーグッドなデバイスにつぎ込みつつライター稼業に勤しむ。 |
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■ 現代のCD-R環境はグレイトだが
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イーレッツの「記録喪失」。その名の通り、CDメディアの表面を傷つけて読み出し不可能にするためのCDシュレッダー。イーレッツ直販価格9,980円
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超普及しまくりで誰もが扱いまくりのCD-R。メディアはこれでもかってほど安くなり、ドライブの価格や速度や機能は行き着くところまでイッちゃったもよう。ホントに広く深く普及したものだ。
10年ちょい前は、“CDを焼く”となれば一大事だった。まずメディアが高い。1枚フツーに千円以上した。加えてドライブも高かった。ちょっと高性能&高安定性な外付けドライブともなれば、5万6万は当たり前!! さらにSCSI接続だったりして、加えてライティングソフトも現在のもののように手軽ではなく、オマケに「CD焼いてる時はマウスにも触っちゃダメ!!」みたいなお約束まであった───いやホントにCDバーニング中にマシンを使ったりすると焼くのを失敗しちゃったりしたんですヨ!!
これに加え、現在とはレベルが全然違う“ドライブとメディアの相性問題”も存在した。このドライブにはあのメディアが最適、というような情報がまかり通っていたというか、そういう情報を知った上でなければ“CDバーニングの成功確率が下がったりした”のだ。現在のような“成功して当たり前のCD-Rバーニング環境”と比べると、冗談みたいなホントの話なのである。
昔の話はさておき、誰もがCD-R等を焼きまくりの現在ゆえ、まったくもってフツーのモノとして皆がCD-Rを手にするようになった。拙者も同様で、データの整理や保存、それから一時的なバックアップのためにCD-R等を多用するようになった。また、メーカーさんから資料等データが入ったCD-Rを頻繁に受け取るようにもなった。あるいは、出版社等からやはり資料等データが入ったCD-Rを受け取ることが増えた。
CD-R等を高速で焼けて、また高速でデータを読めて、さらにCD-Rはかさばらないので郵送なんかにも向いて、つまり便利で快適なCDメディアであり、それゆえ大普及している現在。だがその一方で、わりと多くの人にとって切実な問題も出てきた。
それは、捨てにくいということ。
例えばデータやシステムをバックアップしたCD-R。システムやデータは更新されるわけで、その都度バックアップを取る=新たなCD-Rを焼くわけだ。で、古いバックアップメディアはどーすんのか!? 結局捨てるわけですな。でも、大切なデータが入っているCD-Rを捨てて、ソレを誰かに悪用されちゃったら!? データの中に個人情報など人に知られたくないデータが入っていたら!? そういう意味での捨てにくさだ。
個人的なことではあるが、拙者は人一倍CD-Rを捨てにくいと感じる。例えばメーカーさんからもらった資料入りCD-Rなんか。
こういう仕事をしていると、NDA(NonDisclosure Agreement)なんかを交わして、メーカーさんから最新情報をもらったりする。NDAとは、一般に公開されない(しちゃいけない)情報を得る時に、情報提供者に対して「このハナシは絶対外部に漏らしませんゼ」という固い約束をすることだ。さておき、NDAを結んだ上で入手したCD-Rだったりすると、そういう情報を含んだCD-R等を捨てるときに困る。捨てちゃって第三者に拾われちゃったらマズいよな~、とか。
仕事相手からCD-Rでもらったデータなんかもそうだ。雑誌や書籍の制作途中段階をCD-Rに入れてもらって、それを見て作業して、さぁ仕事が終わったからCD-R捨てちゃえ……とはちょいとやりにくい。メーカーと交わすNDAのよーなモンはないものの、やっぱり出版社としては最終的に完全な形で情報を世に出そうと考えているわけで、CD-Rに入っている途中段階の情報が出ちゃうのはよろしくない。同時に、もしそういう情報が流出した場合「漏らしたのは誰だ!!」、「スタパの野郎です」となるのはまったく非常によろしくない。
なので、そういう、仕事相手からもらったCD-Rを捨てるにおいて、けっこー困ったりすることが多い拙者なのである。MOとかDVD-RAMとかで渡してもらえれば、完全に消去できるのになぁ、とか思ったりも。
■ こうして捨てようCD-R!?
でも捨てねばならない。っていうかもう使わない情報が入った器なんかいつまでも取っといても、邪魔なだけ。コースターとして二次利用、とか言う人もあるが、扱う枚数が十枚や二十枚じゃないからやっぱり困る。なので、結局捨てるわけだが、俺の場合は“誰かに拾われてもなるべくデータが読めない状態”にして捨てていた。
2~3年前までは、CD-Rの記録面にカッターで傷をガリガリ付けて捨てていた。これなら読めないであろー、と。実際にかなり深い傷を付けてしまえばCD-R内のデータは読み出せなくなるのだが、この方法には基本的な間違いがあった。
ひとつはCD-Rの構造的なコト。CD-Rの構造を図示すると以下のようになる。
[こちらがラベル面]
ラベル → ─────────────
保護層 → ─────────────
反射層 → ─────────────
記録層 → ─────────────
ポリカ → ─────────────
[こちらが記録面]
ポリカ(ポリカーボネイト)の側が記録面になるわけだが、この面に傷を付けてもイマイチ意味がない。物理的にこのポリカの層は他の層を全部合わせたよりもずっと厚い。ので、こちら側に傷を付けてデータを読めなくしようとするなら、カッター等で非常に深い溝を刻む必要がある。逆に、ラベル~記録層までは、実際には非常に薄い膜になっているだけ。なので、ラベル面にカッター等でガリッと傷を付ければ、容易に記録層(データが書き込んであるところ)に傷が達し、物理的にデータの記録層を破壊できる。
もうひとつの間違いは、今時の光学ドライブの性能のコト。例えば記録面に少々傷を付けたくらいでは、今時光学ドライブの最強に強まったエラー訂正機構のパワーで、データをフツーに読み出せたりする。また、ラベル面に傷を付けた場合でも、傷の位置によって一部データをビシッと読み出せたりする。
ちなみに、CD-R等の場合、中心部分にファイル管理情報が書かれているので、そのあたりを収集的に傷つければまあだいたい読み出せなくはなるが、でも、実際のデータは破壊されていない部分のほうが多い……ソノ気があるテクニシャンなら読み出せちゃうカモ!? もちろん、ラベル面を徹底的にカッターナイフで傷つけて“手とカッターが粉だらけになるほど”破壊するなら話は別だが。
■ 危険を承知で捨てる俺
さて、これらのコトを知った後、どのよーにCD-Rを捨て始めたかと言うと、割るようになった。
CDメディアは、ちょいと気合入れて頑張れば割れる。モノによって割りやすさが全然違うが、二つ折りにするカタチで曲げていくと、ある時点でパキィッ!! と耳障りな音をたてて真っ二つ&細かい破片となって壊せる。……これは俺の経験からのコトだが、なーんか古いディスクほどバラバラに割れるケースが多いような気がするんですけど、気のせい!?
さておき、割る場合は、ディスクのどちらかの面がより割りやすい面であることが多い。二つ折りにしても折れ曲がるだけなら、ディスクを逆向きにして再度二つ折りにすれば、だいたい割れる。で、割ったものを、別々のゴミ収集日に出すと安心感がさらに高まる。
でも、ディスクを割るのはけっこー面倒だし危険だ。CD-Rを割ると、前述のように細かな破片がけっこー飛び散る。ので、ゴミ箱やビニール袋の中に手を突っ込んで作業を行なうことになる。けど、それでも飛び散る。また、割るときに軍手などをして手を保護しないと危険。軍手なんか面倒だゼと思って素手で割りがちだった拙者は、CD-R破壊作業で何度か手を切っている。あーそう言えばCD-Rの破片が目の付近に当たった時はビビった。コレが目に当たっていたら!? と考えると、ゴーグルの使用をマジで考えたものだ。
で、実は、ここ最近では割るのをやめた。前述のようにけっこー危険な作業であると同時に、音がウルサいんですよ。プラスチックのゴミ箱の中で割っていると、バキィッカラカラッ!! と音がする。破砕音的にはちょっと気分はよいサウンドだが、これは周囲に迷惑だと言えよう。ていうか、去年末に多量にCD-R割ってたら、家族の者に文句を言われたと同時に、隣人(親戚なんですけどね)に「夜遅くまで大掃除してんだねー」と言われたりしてトホホ。
なので、カッターナイフを使ってラベル面をガシガシと。しかし、これはこれでやっぱり危険で、ラベル面をやや深く傷つけると細かい金属製のホコリみたいなもの(反射層の剥がれ!?)で手も部屋も汚れるし、スマートな方法ではない。
んーむ。あんなに手軽に作れちゃうのに、捨てるのが大変なCD-R。便利なんだか不便なんだかよくわらかなくなってきたなァ……と思ったところへ、これは!! な製品が出てきた。イーレッツの記録喪失だ。
■ 強力&安価なCDシュレッダー
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記録喪失はお値段1万円を切る程度。企業内での導入も手軽にできる
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記録喪失はヒジョーに単純な製品で、いわば“CDシュレッダー”。普通のシュレッダーが紙書類を細かく切り刻んで情報を読めなくするように、CDシュレッダーはCD等光学メディアを物理的に破壊してデータを読めなくするという装置だ。
これまでにもCDシュレッダーはあり、俺も何度か買おうと思ったが、どの製品も“企業向け価格”であった。数万円から十数万円だったりして、CDを完全に破壊する性能や処理速度には長けた製品たちだが、個人で使うには大袈裟すぎ。
だがこの記録喪失は、いきなり1万円を切る価格で登場。安いところだと9000円を切る価格で売られている。てなわけで、早速購入&使用開始。
その機能はほとんど説明不要と思われる。イーレッツの製品紹介ページに書かれていることがほぼ全て。記録喪失にCD-R等を入れれば、自動的にCD-R等の両面へ細かな傷が刻まれて、CD-R等を読み書き不能にする。
で、どの程度読めなくなるのか試したところ、記録喪失で処理したメディアは、拙者手持ちのどのドライブでも読めないどころか、メディアとして認識不能となった。メーカーはCD-R用としているが、DVDも同様に全然認識されなくなった。
記録喪失がCD等に刻む傷は、イーレッツの製品紹介ページ内のコレとかコレが示すとおり、小さなものだ。が、書き込み面においては、CD表面の傷を除去するためのコンパウンド等で除去できる深さではない。またCD-Rのラベル面においては、ラベル下の保護層、反射層、記録層までにバッチリ達する傷(処理後にラベル剥がして確認してみた)なので、ものすごーく高度で最強でプロフェッショナルな技術をもってしても、完全にデータを復活させることは不可能だと思われる。これなら、記録喪失でCDを処理した後、そのまま捨てても何ら不安&問題はないだろう。
また、何となく不安である場合、同じメディアを何度か記録喪失で処理すると、気持ち的に安心感が高まるかも。何度も処理すると、その都度傷が増え、ディスク表面が次々にメチャクチャになる。ここまでヒドいCDからデータを読み出せたヤツは逆に褒めてやるゼ、みたいな破壊の深さになる。
手を怪我したり部屋を汚したりせず、CD-R等に書かれたデータを物理的に破壊できる記録喪失。CD-R等をいつも割ったり傷つけたりして捨てている人にはうってつけだ。またIT系大企業とかでなければ、そのコストの低さから一般企業での導入もナイスと言えよう。
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記録喪失に1回通してみた状態。これでも読めなくするには十分と思われるが……
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4回通すとこのくらい表面がギタギタに。記録喪失に通すだけ、1回数秒程度なので何回通してもたいした手間ではない
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ただ、残念な点もある。それはCD処理時の音がちょいとウルサめであること。小型・家庭用の電動ドリルのよーな「ギィィイィィ~」的な騒音が出る。製材所から30メートル程度離れた位置における騒音ともちょいと似ている。記録喪失は5分間(約70枚を処理可能)の連続稼働が可能だが、フツーのオフィスでこの音を5分間出していたら、商談が滞っている同僚とかから「おめーウルセーよ!! アッタマ来んだよ!!」とウザがられるであろー。
もうひとつ、安全対策が完璧ではないこと。処理中のCDにある程度大きな抵抗がかかった場合でも、記録喪失は動き続ける。処理中のCDを手で引っ張り戻した程度じゃ止まらない。記録喪失がCDを引き込む力はけっこー強いのだ。で、例えばCD-R等の真ん中の穴に指を入れた状態で、そのCD-R等を記録喪失に挿入すると、非常に危険だ。記録喪失にはCD-R等を吐き出させるための逆回転ボタン(!?)があるものの、ああっヤバっ指挟まれたァァァッ!! てな状況で押せるかどうか疑問。
ちなみに、CD-Rの穴にちょっとやそっとじゃ折れなさそーなブラシの柄を突っ込んだ状態で、そのCD-Rを記録喪失に入れてみたら、バギャボギャッてな恐ろしい音とともに、CD-Rごとブラシの柄が飲み込まれた。その時点で記録喪失は停止した(メディア詰まり時に働く自動停止機能によると思われる)が、これが指だと思うとマジで怖いっス。え? ブラシの柄はどうしたかって!? スパッとキレイに切れておりました。
でもまあ、それをわきまえて使えばいいだけであり、それほど強靱な力でCD-R等を処理してくれるわけだ。
てなわけで記録喪失、CD-R等をサクッと破壊して廃棄したい人には、かな~りコストパフォーマンスの高い製品だと言える。
■ URL
「記録喪失」製品情報(イーレッツ)
http://www.e-lets.co.jp/product/cds.htm
2003/05/19 11:10
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