7月27日、ウィルコムからW-ZERO3[es]が発売される。7月14日より、店頭での予約も開始された。予約開始というだけでも、店頭には行列ができるなど、ユーザーの注目度の高い端末だ。発売前ではあるが、ウィルコムより製品をお借りしたので、ファーストインプレッションをお伝えしよう。なお、お借りしたのは発売前の端末で、実際に市販される製品とは異なる可能性があることを、ご了承いただきたい。
W-ZERO3[es]は、昨年末に発売されたW-ZERO3(以下、初代モデル)の流れを汲む、OSにWindows Mobileを採用したPDAライクなケータイだ。ソフトウェアの追加など、パソコンのような機能がある。
基本的な機能は初代モデルとほとんど変わっていない。CPUなどの内部スペックもほぼ同等で、液晶はサイズが小さくなったものの、解像度は同じVGA(480×640ドット)だ。初代モデルと同様に、収納可能なQWERTY配列のフルキーボードも内蔵している。
■ より「ケータイ」に近づいたデザイン
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正面
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初代モデルとの最大の違いは、デザインだ。W-ZERO3[es]ではキーボードを収納すると、液晶の下に数字ボタン並ぶ一般的なストレート型ケータイのスタイルになる。普通のケータイのように、片手で端末を持ちって、数字ボタンで文字入力できる。
その一方で、フルキーボードとタッチパネル式液晶も搭載しているので、初代モデルと同様に、両手で端末をつかみ、親指でキーボードを押したり、片手で持ってスタイラスで入力するといったスタイルでも利用できる。
初代モデルに比べ、サイズがコンパクトになったことも、W-ZERO3[es]の大きなポイントだ。初代モデルは幅が70mmもあるため、手で握ると大きいと感じたが、対するW-ZERO3[es]の幅は56mmで、片手でつかんだときに握りやすいサイズに収まっている。
ただ、それでも普通のケータイに比べるとちょっと重い。スーツのポケットに入れるならば問題なさそうだが、シャツの胸ポケットに入れるには気になる重さかもしれない。筆者のように、ケータイをズボンのポケットに入れて持ち運ぶ人間からすると、縦135mmはかなりサイズオーバーだが、初代モデルに比べると、持ち運びやすさは格段に向上した印象だ。それでも普通のケータイと同じように持ち運べるかは、使い方次第といったところだろう。
液晶は初代モデルと同じVGA解像度ながら、サイズは3.7インチから2.8インチへと小型化した。面積的には約0.6倍程度だ。初代モデルと比べるとだいぶ小さいが、それでもケータイとしては大きいサイズなので、視認性は普通のケータイ並かそれ以上だろう。しかし、小さくなったために、ウェブブラウジング時などにリンクボタンが小さいと、スタイラスでタッチしにくい印象を受けた。
フルキーボードのサイズも、初代モデルより少し小さくなっているが、幅はほぼ同じなので、慣れてしまえば問題はなさそうだ。「A」キーの上に「W」キーがあるなど、一般的なキーボードに比べると少々独特な配置だが、これも慣れてしまうとタッチタイピングのように半分手探りで入力できるようになった。
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W-ZERO3[es](写真左)とW-ZERO3(写真右)
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W-ZERO3[es](写真上)とW-ZERO3(写真下)
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また、地味な変更点ではあるが、本体底面に初代モデルにはなかった充電用の接点が追加され、充電スタンド(別売り)が使えるようになった。データ通信用の接点は用意されておらず、USBクレイドルは利用できない。ケータイとしての使い勝手を重視したモデルと言えそうだ。
もう一つの地味な変更点としては、ボタンロック専用のスライドスイッチが側面に追加されている。ボタンロックはアプリケーション起動中でも設定可能で、初代モデルの待受画面でサイドボタン長押しよりもだいぶ使いやすくなっている。
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底面。通話用マイクの穴と充電用接点がある
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上面。カバーをはずすと、W-SIMスロットがある。左側の丸い部分はスタイラス収納部
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■ 「W-ZERO3メール」など新たなソフトが追加
W-ZERO3[es]では、ブラウザに「Opera」、メーラーに「W-ZERO3メール」がプリインストールされている。それぞれ、「Internet Explorer」や「Outlookメール」も用意されており、いずれも標準のブラウザとメーラーとして設定できる。「Opera」は初代モデルに提供されているものとほぼ同じだが、「W-ZERO3メール」は、W-ZERO3[es]用のオリジナルアプリケーションだ。
「W-ZERO3メール」では、ウィルコムのメール(pdx.ne.jpドメインのメール)の自動受信にも対応している。「Outlookメール」と違い、フォルダの自動振り分けにも対応しているので、W-ZERO3[es]でたくさんのメールを受信するならば、「W-ZERO3メール」を標準として設定するのがおすすめだ。ただしパソコンのOutlookとメールフォルダのシンクロなどができないので、そういった用途では「Outlookメール」を併用することになる。
「W-ZERO3メール」の画面は、フォルダツリーとメールリストの2ペイン表示形式になってる。パソコンでは珍しくない表示形式だが、ケータイとして見ると、なかなか画期的な印象も受ける。操作はタッチパネルでも行なえるが、カーソルボタンでも一通りの操作ができる。普通のケータイのように、片手でメールを読んだり書いたりできるわけだ。
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フルブラウザの「Opera」。W-ZERO3[es]向けに少しだけチューニングが施されるという
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「W-ZERO3メール」。フォルダ自動振り分けにも対応する
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文字入力では、予測変換に対応した「ATOK+APOT」が搭載されている。ケータイのように数字ボタンで文字入力するときや、フルキーボードで文字入力するときに予測変換機能を利用可能だ。画面の解像度が高いので、たくさんの予測候補が表示され、使い勝手も良い印象だ。
ソフトウェア面で地味に便利になったのが、待受画面(Today画面)だ。Today画面のリストに「実行中のプログラム」という項目が加わり、起動中のアプリケーションの件数をすぐに確認できるようになった。この項目をクリックすると、起動中のアプリケーションのリストが表示され、終了などの操作が行なえる。Windows Mobileでは画面を閉じただけではアプリケーションが終了しないので、なかなか便利な改良点だ。
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予測変換に対応したATOKを搭載。学習しないでも予測辞書は充実している
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Today画面。W-ZERO3(初代)にはなかった、「実行中のプログラム」という項目が表示されるようになった
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■ 無線LANは内蔵しないが、周辺機器の増設が可能
W-ZERO3[es]では無線LANを内蔵していない。その代わりにUSBやminiSDカードスロットで、周辺機器を接続できるようになっている。今のところ、USB接続のW-ZERO3[es]用のワンセグチューナーやminiSDカードタイプの無線LANアダプタなどの商品化が予定されている。
無線LANが内蔵されなくなったのは残念な面もあるが、必要に応じて追加できるのであまり問題にはならないだろう。ただ、miniSDカードタイプの無線LANアダプタの場合、使用中にminiSDカードが使えなくなってしまうのは問題だ。できれば、USBタイプの無線LANアダプタも選択肢として用意して欲しいところだ。
また、USBはホスト機能をサポートし、キーボードやストレージデバイスなどを接続できる用になった。ただしW-ZERO3[es]側のUSBポートの形状は、周辺機器側に搭載される場合が多いミニタイプとなるため、別売りの変換アダプタケーブルが必要になる(ウィルコムストアなどで販売)。こうした周辺機器については、サードパーティがW-ZERO3[es]向けに製品を作ってくることを期待したい。
もちろん、初代モデル同様に、ソフトウェアを追加インストールしたり、パソコンと連携させることもできる。こういったWindows Mobileならではの機能を使い込めば、W-ZERO3シリーズは、高いポテンシャルを秘めた端末でもある。マルチメディアプレーヤーといったメジャーな用途から、VNCクライアントといったマニアックな用途まで、さまざまな機能で活用できる。
ただし、これらのWindows Mobileの特徴は、善し悪しでもあると思う。Windowsパソコンとの連携がなければ利用できない機能もあるし、パソコン慣れしていないとわかりにくい機能も多い。普通のケータイでできることならば普通のケータイの方が使いやすいので、Windows Mobile端末ならではのメリットを理解できないならば、W-ZERO3シリーズを使う意味はあまりないだろう。
■ 方向性が異なるW-ZERO3[es]と初代モデル
W-ZERO3[es]は、W-ZERO3の後継機種ではなく、W-ZERO3シリーズのバリエーションモデルという位置づけにある。W-ZERO3[es]とW-ZERO3とでは、方向性が異なっており、どちらが良いかは、利用スタイルによって変わってくるはずだ。
たとえば、ビデオ再生やウェブブラウジングを重視するならば、初代モデルの方が画面が大きくて使いやすい。ただし重さ220gと、ケータイとしてはサイズも大きく、カバンに入れて持ち運びたいところだ。またPDA型のデザインなので、ケータイのように片手で文字入力はできない。独特の形状もあって、通話に利用するのが恥ずかしいと感じるユーザーも少なくないだろう。
一方のW-ZERO3[es]は、より普通のケータイ的な使い方ができる。コンパクトになったので、普段はスーツのポケットにでも入れておいて、電話がかかってきたらすぐに取り出せるような使い方もできる。
ケータイ的なスタイルで、初代モデル同様の多彩な機能を利用できるのが、W-ZERO3[es]の特徴だ。W-ZERO3シリーズの機能は欲しいが、初代モデルは大きすぎて使いづらい、もっとケータイのように使いたい、という人向けの端末というわけだ。
それでも普段使いのケータイとしては、W-ZERO3[es]は大げさすぎる印象を受けるかもしれない。ちょっとコンビニに行くときに、気軽にポケットに突っ込んでいくようなケータイではないだろう。もちろん、W-SIM対応端末なので、両方買ってシーンによって使い分けるという手もある。仕事中だけW-ZERO3[es]を使って、プライベートでは「nico.」のようなコンパクト端末に切り替える、といった使い方もできるのだ。
なお、今後も初代モデルは併売される。W-ZERO3シリーズの機能を使いたい人は、購入前に、どの端末をどう使うのが自分の利用スタイルにあっているかを、しっかり検討しよう。7月14日~17日にかけて、都内の量販店でW-ZERO3[es]の体験イベントが行なわれている。7月19日からは、東京ビッグサイトで開催される「ワイヤレスジャパン 2006」でも、実機展示が行なわれる予定だ。購入を検討している人は、こうしたイベントで実機を確認するのもおすすめだ。
■ URL
製品情報(ウィルコム)
http://www.willcom-inc.com/ja/lineup/ws/007sh/
製品情報(シャープ)
http://www.sharp.co.jp/ws/special/007sh/
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(白根 雅彦)
2006/07/14 15:41
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