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ケータイ新機能チェック
エアエッジ プロとメガプラスを試用レポート

 2月から社名が「WILLCOM」に変更されるDDIポケットから、新サービス「エアエッジ プロ」の試験サービス用の端末をお借りすることができた。実際の商用サービスとは端末や回線、ネットワークの仕様や機能でさまざまな違いがあると思われるが、せっかくの機会なので使用感などをレポートしたい。


「エアエッジ プロ」って何?

DDIポケットが説明会で語ったエアエッジ プロの位置付け
 エアエッジ プロはDDIポケットのPHS網を使った、データ通信専用の新しいネットワークサービスだ。同社の社名がWILLCOMになる2月以降に開始される予定となっている。現在行なわれている試験サービスでは、PCカード型の端末を用い、PCカードスロットを搭載するパソコンでデータ通信を行なえるようになっている。料金などの詳細は発表されていない。

 従来のサービスとの違いは、ずばり「速度」だ。エアエッジ プロは従来の2倍にあたる、最大256kbpsの通信速度を実現している。このことから同社ではエアエッジ プロを「メールの確認や、Webサイトの閲覧だけでなく、業務アプリを頻繁にダウンロードする法人ユーザーや、普段からモバイル機器を持ち歩くユーザー」をターゲットにしたハイエンド向けサービスとして位置づけている。

 通信の高速化のカラクリはいたって単純だ。DDIポケットのデータ通信サービスは、速度32kbpsの通信回線を複数本同時に利用することで高速化を図っている。現在サービスが行なわれている「32kパケット方式」のサービスでは1本、「128kパケット方式」のサービスでは4本の回線を同時に利用できる。そしてエアエッジ プロでは回線を8本利用することで、通信速度が256kbpsとなっている。ちなみに2月からはそれぞれ通信方式の呼び名が利用する回線本数別に「1xパケット方式」「4xパケット方式」「8xパケット方式」に変更になる。


DDIポケットによるメガプラスの説明
 さらに同社では、データを圧縮することで通信量を減らして体感速度を向上させるサービス「メガプラス(高速化サービスV)」の提供も行なう。

 メガプラスは中継サーバー側で圧縮、パソコン側で展開することで通信回線に流れるデータ量を減らし、見かけの通信速度を向上させるサービス。米ベンチュリーワイヤレス社の技術を使っていて、専用ソフトをパソコンにインストールすることで利用できる。

 メガプラスはエアエッジ プロのユーザーだけでなく、1xパケットや4xパケットのユーザーにも提供される。2月以降にDDIポケットあらためWILLCOMが発売するAirH"端末には、ドライバソフトとメガプラスのソフトが入ったUSBメモリが同梱される予定だ。それ以前のAirH"端末ユーザーも、メガプラスのソフトをダウンロードすることが可能だという。ちなみに利用料金は2005年7月末日まではお試し期間として無料とのことだ。

 なお、今回はエアエッジ プロの端末とともにメガプラスも試用できたので、こちらも合わせてレポートしよう。


使い勝手は従来と変わらず

試験サービス用端末
 試験サービスの端末はPCカード型だ。使用する回線が多いせいか、アンテナ部がかなり大きい。

 従来端末同様、PCカードモデムとして利用する。商用サービス時にどのような端末が提供されるか発表されていないが、おそらく当初は試験サービスと同型端末でサービスを展開するだろう。PCカードスロットがないiBookやバイオ Type Uなど一部のノートパソコンでは利用できないので、従来サービスのようにCFタイプやUSBタイプなど端末バリエーションの追加に期待したいところだ。


小さなアンテナ部は可倒式 モバイルパソコンに装着するとかなりアンテナ部が大きい印象

 PCカードを装着すると、自動でOS標準のドライバーがインストールされる(Windows XPでの利用時)。続いて電話番号などアクセスポイントの設定や、PPPやTCP/IPの設定、さらに必要に応じてMTU値とRWIN値の設定変更も推奨されている。MTU値とRWIN値は設定しないでも通信できるが、設定した方が安定性や速度が向上する、とのことだ。

 メガプラスを利用する場合には、さらにソフトをインストールする。ソフトはタスクバーのインジケーターに常駐し、そこから圧縮の有無や圧縮率を変更できる。メガプラスのサービスはソフトを起動させておくだけで自動で機能するので、まったく手間はかからない。


インジケーター部中央の「V」がメガプラスの常駐ソフト 必要な設定のほとんどはインジケーターアイコンから行なえる

 ちなみに今回の試験サービスではソフトはすべてCD-Rで提供されたが、正式サービスではこれらのソフトはUSBメモリで提供されるという。モバイル向けのパソコンの中には光学ドライブを搭載していないモデルも多いため(筆者のノートパソコンも光学ドライブはない)、コストはかかるだろうがUSBメモリの採用は嬉しいポイントだ。

 また、USBメモリにはアクセスポイントやMTU値などの自動設定とメガプラスのソフトのインストールを自動で行なう「EasySetupTool」が入るという。今回そのツールを利用することはできず、設定は手動で行なったが、ツールを使えば初心者でも簡単に最適化設定が行なえるはずだ。


実効120kbpsの速度と、強烈な「メガプラス」

 今回のテストではバイオU(PCG-U3)を利用した。プロバイダは試験サービス用のもの。実験を行なったのはすべて都内(渋谷)のマンションの9階、窓から6mくらいの距離。

 上記の環境で、まずはダウンロード速度を測定してみた。やり方は、FTPサーバー上に置いた約36MBのBMPファイルと、それを圧縮した約1MB(1.15MB程度)のZIPファイルのそれぞれを、Windows XPが標準で搭載するコマンドプロンプト版のFTPソフトでダウンロードしている。試行回数は3回程度と少ないので、あくまで参考値としてとらえて欲しい。

 まずはメガプラスを無効にした状態で速度を測定してみた。

ファイル種類 1回目速度 2回目速度 3回目速度 平均速度
ZIPファイル 129.92kbps 147.12kbps 89.60kbps 122.21kbps
BMPファイル 127.76kbps 未計測 未計測 127.76kbps


 BMPファイルは1回のダウンロードに40分近くかかるため、それだけでも平均値としての意味があると判断し、1回しか試行していない。が、最大速度である256kbpsのほぼ半分の速度が得られている。環境によって左右されるとは思われるが、かなり良い結果だ。

 続いてメガプラスを有効にした状態で速度を測定してみた。メガプラスを有効にすると、データが圧縮され早くダウンロードできるため、見かけの通信速度が変化する。

ファイル種類 1回目速度 2回目速度 3回目速度 平均速度
ZIPファイル 168.88kbps 133.68kbps 150.40kbps 150.99kbps
BMPファイル 2858.4kbps 2888.8kbps 2879.4kbps 2875.6kbps


 2875kbpsというのは、桁間違いではない。2種類のファイルで大きく通信速度が異なるという結果が得られた。BMPファイルはZIPファイルの19倍の速度でダウンロードできている。メガプラスを利用しないときに比べると、実に22倍、約3Mbpsだ。

 今回使用したBMPファイルは、元が36MBでありながらZIP圧縮をかけると1.15MBまで小さくなるという、圧縮しやすいデータである。対するZIPファイルはすでに圧縮がかかっているので、さらに圧縮をかけても容量を減らすことが難しいデータだ。

 これら、ファイルの特性がメガプラスの効果に大きく影響したのだろう。圧縮により必要なデータ転送量を減らすメガプラス利用時は、圧縮しやすいファイルの方がダウンロード速度が向上するというわけだ。

 メガプラスにはこうした普通の圧縮(データを劣化させないいわゆる可逆圧縮)によるデータ削減に加え、ウェブページのJPEG画像を高い圧縮率で再圧縮する機能もある。これは前述の機能と違い、画質を劣化させて容量を減らす、というものだ。

 画像の圧縮率は4段階が設定でき、容量を減らせば減らすほど、画質は劣化する。これが別の意味で強烈な機能だったりする。以下にサンプルの画像と4段階に圧縮した例を掲示しよう。


元画像(15KB)

最高画質設定(14KB) 準最高画質設定(14KB)

準速度設定(13KB) 最高速度設定(12KB)

 見ての通り、かなり画質が劣化する。最高画質設定でも、ぱっと見でJPEG画像特有のブロックノイズが見られる。画質を落としていくとモザイク状態だ。

 効果の方は、ケース・バイ・ケースでかなり変化する。たとえばサンプルで選んだ画像の場合、元画像のサイズが十分に小さいせいか、圧縮しても容量があまり変わっていない。一方で128KBのJPEG画像で試したときは、48KBくらいまで圧縮しても画質をそれなりに保っていた。またほかの小さな画像で試した際には、圧縮後に大きくなったケースも見られた。

 低圧縮高画質の画像を見る際には効果が高そうだが、サムネイルがたくさん並んでいるようなページの場合、メガプラスの効果はあまり期待できなさそうだ。実際に何度か画像が大量にあるウェブページを読み込んでみたが、再圧縮による速度変化よりも、ウェブサーバーのレスポンスの影響が大きかった印象だ。また容量が増えてしまっているケースがあったにも気になる。容量が増えてしまう画像は圧縮せずに転送する、といった機能も欲しいところだ。


ブロードバンド並とは言い難いが、確実な速度向上

 エアエッジ プロの通信速度は、今回の実験で実効速度120kbps超という結果が出た。最大の256kbpsには及ばないが、半分も出ているので上々というべきだろう。数十Mbpsのブロードバンド環境に慣れていると物足りなさを感じるが、モバイル環境としては優秀だ。

 メガプラスも今回の実験では最大で実に3Mbps近い通信速度が得られた。しかしこれは圧縮しやすいBMPデータの転送時という、かなり特殊なケースでの結果だ。ネット上にある画像などのデータは、ほとんどが圧縮されている。圧縮済みのデータが相手だと、メガプラスの効果は薄いので、画像中心のウェブページを表示する場合は、あまり速度を向上させられない。

 ウェブページの本体であるHTMLファイルは、圧縮が効きやすいテキストファイルなので、HTMLファイルの割合が大きいニュースサイトではメガプラスの効果は期待できる。たとえばケータイ Watchのトップページを見ると、画像を含めた全容量は300KB程度だが、そのうちHTMLファイルは120KB近くを占めている。テキストファイルはたいてい10分の1程度まで圧縮できるので、全容量を200KBくらいに圧縮可能なはずだ。

 しかし、それでも容量は3分の2にしかならない。実際に画像の少ないウェブページを見てみても、メガプラスを有効にしたときと無効にしたときで体感速度に差は感じられなかった。テキスト中心のウェブページでは、エアエッジ プロ自体の速度が十分に速いため、差がわからないのだ。

 メガプラスは状況によって高い効果を発揮するので、ないよりあった方が良いサービスだが、劇的に体感速度が向上するかというと、そこまでは期待できない印象だ。

 しかしエアエッジ プロ自体は十分な速度を持っている。ブロードバンドに慣れてしまっていると遅さを感じるが、モバイル環境としてはかなり安定した高速通信環境だ。ウェブページを見るくらいならばそれほどのストレスは感じないだろう。

 利用料金については未発表だが、現在の128kbpsのサービスよりも少し高めの料金設定になる見通しだ。となると、限られた時間で素早くデータをダウンロードしたい仕事で使うユーザー向けのサービスという位置付けになるだろう。



URL
  DDIポケット
  http://www.ddipocket.co.jp/

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(白根 雅彦)
2005/01/17 13:34

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