KDDIがベンチャーファンドの取り組みを解説、新たな出資企業も
KDDIは、グローバル・ブレインと共に運営するベンチャーファンド「KDDI Open Innovation Fund」の新たな出資企業を発表した。また、出資はしていないものの提携が決まった企業も発表され、8月1日以降、順次auスマートパス向けにコンテンツの提供が行われる。7月31日には都内で記者向けに説明会が開催され、KDDI Open Innovation Fundの取り組みが解説されたほか、出資や提携が決まった各社からサービス内容が紹介された。
「TOLOT」は文庫本サイズのフォトブック |
新たにKDDI Open Innovation Fundの出資が決まったのは、専用のスマートフォンアプリで写真を送信すると文庫本サイズのフォトブックが作れるTOLOTのサービス「TOLOT」(トロット)。スマートフォン向けサービスの開始は8月1日から。同サービスでは1冊あたり最大62枚の写真を収録でき、サインペンや鉛筆、水彩絵の具でも描ける用紙を採用しているのが特徴。写真のデコレーションや描き込みを本が届いた後で行えるほか、テンプレートなどを利用してメモ帳のように使うこともできる。送料は無料で1冊500円と価格が抑えられている。auスマートパス向けには、1回の利用(1冊)が無料になる特典が用意される。なお、KDDI Open Innovation FundからTOLOTへの出資額は5億円と発表されている。
TOLOT 代表取締役社長の末松亜斗夢氏 | |
すでに出資しているジモティーとは業務提携により、募集や告知の無料掲示板「JMTY」(ジモティー)のAndroid版アプリが、8月1日よりauスマートパス会員向けに先行して配信される。同サービスは無料で利用でき、無料や格安での売買・取引をユーザーの“地元”にフォーカスして提供する。配送が中心のオークションサービスとは違い、引き取りに行く利用が多いのも特徴になっている。
ジモティー代表取締役の加藤貴博氏 | |
このほか、出資はないものの、提携先としてデジカメプリントの「しまうまプリント」が、8月1日より初のスマートフォンアプリをauスマートパス会員向けに提供する。海外ゲームタイトルを国内向けにローカライズして提供する3rdKind(サードカインド)についても、新たにauスマートパス会員向けに先行して新しいゲームタイトルがリリースされる。
しまうまプリントシステム 代表取締役副社長の高橋洋一郎氏 | |
3rdKind 代表取締役CEOの細谷太郎氏 | |
■キャリアが作り込む時代から「パートナーの強みを迅速に活かす」時代へ
KDDI 新規ビジネス推進本部副本部長の増田和彦氏 |
31日に開催された説明会には、KDDI 新規ビジネス推進本部副本部長の増田和彦氏が出席した。増田氏は、スマートフォン時代を迎えてサービスの作り方が変わっているきていることに触れ、「キャリアがガッチリと作り込むやり方から、すでにあるものを、手軽に活用するやり方に変わりつつある。パートナーの強みを迅速に活かす時代になっている」と変化を指摘する。
一方、パートナーとの協業においては、純粋な協業から共同事業化、少額出資などさまざまな方法をこれまでも採用してきているが、KDDIという企業の規模や業種もあり、出資については「一定の時間がかかってしまう」とし、これがボトルネックになっているとする。増田氏は、「新しい取り組みの武器はスピード感。通常の出資の取り組みでは全く追いつけない」ことから、ベンチャーファンドとしてKDDI Open Innovation Fundを設立したことを明らかにした。
KDDI Open Innovation Fundでは、KDDI∞Laboで支援したスタートアップ企業の2社に既に出資しているほか、今回解説された2社と合わせて4社に出資したことになる。また、出資以外にも、サービス展開や拡大にあたってのコラボレーション先の紹介といった、実務面での支援も行っていくという。
「直近で一番重要なのは、auスマートパスとのシナジーを創出すること」と増田氏が語るように、出資や提携を行っている企業は、スマートフォン向けサービスで「auスマートパス」との連携を行うことが(実質的に)前提となっている。多くの場合、前述のようにauスマートパス向けの先行配信や特典が別途用意されるといった形。App StoreでiPhoneアプリをすでに提供している企業や、3rdKindのようにGoogle PlayストアやNTTドコモの「dマーケット」向けにタイトルを提供している場合もあるが、「制限すると、企業価値を最大化できない」として、提携にあたって、こうした展開に制限は設けられていない。
2012/7/31 16:16