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Facebookは“コミュニティ”形成の場を目指す

グローバルの新戦略、日本での取り組みとは

6月に更新された新しいミッションを解説するフェイスブック ジャパン 代表取締役の長谷川晋氏

 フェイスブック ジャパンは、グローバルでの2017年第2四半期の業績と、日本市場で今後注力していく分野を解説する説明会を開催した。Facebook、Instagramのトレンドの中心が引き続き「動画」にあるとして、個人・法人(広告)の両方で利用の拡大を図っていくほか、コミュニティの活動を支援していく同社の新たな戦略も解説された。

Facebookは“コミュニティ”形成の場を目指す

 登壇したフェイスブック ジャパン 代表取締役の長谷川晋氏からはまず、6月に更新された「Facebookのミッション」について解説された。

 先端的なIT系企業の多くがそうであるように、(グローバルの)Facebookも自社が実現すべき“ミッション”を掲げており、プレゼンテーションなどでは冒頭に紹介されることも多い。すべてのサービス、全社員の行動の基点となるのが“ミッション”で、これを変更することは、会社としての最上位の戦略が変更されることを意味している。同社はこれまで「世界をよりオープンで繋がったものにする」というミッションを掲げ事業を展開してきたが、6月にこれを更新、「コミュニティづくりを応援し、人と人とがより身近になる世界を実現する」という新たなミッションを掲げた。

 サービスを利用するエンドユーザーにとってはまだまだこれからだが、「サービス、プロダクトなどすべてが影響を受ける」と長谷川氏が言うように、今後さまざまな場面に影響していくものと考えられる。

 以前のミッションと比較すると、単純に繋がるだけでなく、“どのように繋がるか”という部分にまで踏み込んでいるのが大きな特徴。このミッションの変更に連動する形で、実際にFacebookとして注視していく指標には、月間利用者数(MAU)に加えて「有意義なグループに参加する人」が追加された。6月時点でのグローバルのMAUは20億人で、「有意義なグループに参加する人」は1億人という。

 この“有意義なグループ”とは、実際にはFacebookのグループ機能で作られる一部のコミュニティを指すことになる。長谷川氏は、“有意義なグループ”について「オンラインだけでなく、実生活にも(前向きな)影響をおよぼすようなもの」と定義しており、たとえば、子供が産まれ初めて親になる人が、アドバイスを交換したり励まし合ったりするグループ、あるいは、薬物中毒・アルコール中毒の経験者や患者、その家族が集まり、経験談の共有や課題の解決、治療を目指すグループなどを、有意義なグループの例として挙げている。

 有意義なグループに参加する人が月間で1億人という数字は、MAUの20億人と比べるとまだまだ少ないという認識で、「これから10年はこれでやっていく」と、コミュニティの支援がFacebookのグローバルの主要なテーマになっていく様子を語っている。

 日本市場でも当然ながら、コミュニティの作成や発展を支援していく取り組みが行われる。これまでもフェイスブック ジャパンからは、話題になったりユニークな取り組みのグループや、社会貢献の取り組みを行うグループなどが紹介されてきたが、商品の販売もFacebook上で行えるようにしたり、グループの管理者の仕事を減らす機能を追加したりするなど、さまざまなグループの在り方に応えられるよう支援を行っていく。長谷川氏は「いろんなツールを提供することで、コミュニティの活性化や応援をしていきたい」と語っている。

Instagramでも拡大する動画トレンド

 フェイスブック ジャパンとしても度々触れてきているが、SNS上でのコミュニケーションは動画が一大トレンド。Facebook上では、音楽フェスティバル「サマーソニック」のライブ配信を行うなど、動画への取り組みを幅広い分野で拡大している。また、動画や静止画を360度で撮影する「360度コンテンツ」は、世界で7000万件以上が投稿されているという。

 おしゃれな写真というイメージが強いInstagramも、グローバルにおいて投稿された動画の視聴時間は前年比で80%増、1日に投稿される動画の数は前年比4倍と、こちらも動画の利用が大きく伸びている。

 投稿した画像や動画などのコンテンツが24時間で消える「Instagram Stories」は、デイリーユーザーが2.5億人、25歳未満のユーザーはInstagramを1日平均で32分以上利用するなど、活発に利用されている様子も紹介された。

 動画については、企業が広告として動画を利用する際にも、素材となるテレビCMにモバイル向けの編集を加えることで効果が向上するなどの知見やノウハウを提供、自動車からお菓子、オンラインゲームまで、さまざまな分野の事例も揃えた。

中小企業や自営業のマーケティングを支援、地方活性化も

 フェイスブック ジャパンとしては、日本の地方活性化や中小企業・自営業のマーケティング支援も、今後本格的に取り組んでいく。

 地方の活性化に対しては、これからニーズや課題を見極めていくとしており、活動が本格化するのはこれからだが、現地でイベントを開催するなど一部は活動を開始している。ここではFacebookのグループ機能なども連動しており、地域にどのように役立てていくのかといった課題が検討されていくほか、グローバルの事例として、Facebookを使って観光地をアピールし成功した例なども紹介していくという。

 個人事業主を含めた中小企業に対しても、Facebookを通じたマーケティングをより利用しやすい環境に整えていく。実際に中小企業や個人事業主からは、マーケティングや販路の拡大に課題があり、資金や人が限られ、デジタルツールの利用や海外展開は取り組み方が分からないといった声が寄せられるという。

 フェイスブックでは、FacebookやInstagramをマーケティングに使うことで、高いターゲット精度、国内外にリーチできるといったメリットを挙げており、さらに、1000円から始められてマーケティングの効果をまず確かめられるといった、導入のしやすさもアピール。実際に長崎県の壱岐島の果物店が自作のジャムをアピールする際、予算3万円で5万人に対して広告を配信し、単価はこれまでの10分の1の費用で済んだといった事例も紹介された。

 フェイスブックではまた、60以上のコースを用意したオンライン学習プログラムを提供しているほか、ビジネス向けページで広告の掲出事例や広告フォーマットの紹介も行っており、広告代理店を紹介するページも新たに用意。中小のビジネスオーナーがニーズにあったパートナーを探せるようにしている。

 さらに、チャットでのサポート窓口も用意。費用の支払いはクレジットカードだけでなく銀行振込(前払い)にも新たに対応するなど、中小のビジネス現場でも利用しやすいよう取り組みを進めている。

 フェイスブック ジャパン 執行役員 SMB事業統括の井上英樹氏は、「効果的なマーケティングは大企業だけのものではない。あらゆるビジネスで活用できる」と、幅広い規模のビジネスでFacebookをマーケティングに活用できるようにしていくことを紹介した。

フェイスブック ジャパン 執行役員 SMB事業統括の井上英樹氏

 広告の出稿者が広範になれば、広告の見た目や絵柄(クリエイティブ)の質の低下や、望まない広告が頻繁に出るようになるのではないかといった懸念が記者からあがったが、長谷川氏は「ものすごく重要で、注視している部分。相当いろんな取り組みをしている。テクノロジーと、目での検査を含めて、取り組んでいく。(広告の)クリエイティブ自体がユーザー体験や満足度に直結している。極めて真剣に向き合っている」と語り、ユーザーのニュースフィードに混在する形になる広告には、相応の注意を払っていく方針。また、全ユーザーに“ばら撒く”タイプの広告ではなく、高いターゲット精度により「おかしなものは、そもそも広まりにくい」としたほか、「これはイヤと拒否を示すこともできる」(井上氏)とユーザーが拒否を選択できることも紹介している。