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「ドローン基地局」飛翔~UQも初参加のKDDI防災訓練
2017年2月24日 18:08
「ドローン基地局」飛翔
今回、初披露された「無人航空機型基地局(ドローン基地局)」。被災直後、通信が途絶えた山間部を上空からLTEエリア化する非常用基地局だ。
あわせて、空中撮影用ドローンによって、被災地域の上空を撮影し、映像で確認するデモンストレーションも披露された。将来的には、この2つの機能が、1つのドローンに統合されるという。
防災訓練では、伊豆大島が大規模災害で孤立したという想定。ヘリコプターで上陸後、空撮用ドローンで状況を観察し、基地局ドローンを飛行させるという訓練が行われた。到着からドローン基地局の組み立てにかかる時間は、15分程度としている。
山間部を空からエリア化
防災訓練にあわせ、KDDI 電波部 マネージャーの遠藤晃氏が「ドローン基地局」のコンセプトを紹介した。
災害発生時にライフラインとなる携帯電話ネットワーク。途切れさせないための対策として、自動車に基地局を搭載し、臨時にエリア化する移動基地局車の配備が進められてきた。
しかし、2011年3月に発生した東日本大震災では、道路が通行不能となり、陸からのネットワーク復旧が困難となった。その教訓として、KDDIは、非常時に「海」「空」からエリア化するための対策の実用化を進めている。
「海」からの対策は、船舶に搭載できる衛星回線をバックホールとした基地局だ。23日、系列会社のケーブル敷設船「KDDIオーシャンリンク」に実践配備が発表された(※関連記事)
一方、「空」からの対策となるのが、今回披露された「ドローン基地局」。陸からも海からも対策が困難な場合に出動する方針だ。
auの「ドローン基地局」は、飛行しているドローンの周囲1km程度を携帯電話エリアにする。主に山間部の“谷間”となる場所など、障害物が多い場所を空中からエリア化するためのツールだ。
見通しのよい空中では、電波はより遠くまで届く。ドローン基地局では、地上の基地局からのLTE電波を中継してエリア化する。
また、Wi-Fiの中継器を搭載することで、地上から光回線などをWi-Fiで中継して、LTEエリア化することもできる。将来的には、ドローンを編隊飛行させ、数珠つなぎにWi-Fiを中継することで、より遠くの地点もエリア化可能とする。
ドローンの連続飛行時間に制約があり、1回の飛行では30分程度の利用に留まる。今後、ドローン自体のバッテリー効率の改善進める一方で、同じ役割を担うドローンを2基用意し、交互に飛ばすことで利用時間を延ばす試みも行っていく。
ドローンを活用した基地局としては、NTTドコモも開発しているが、地上に設置した基地局車のアンテナを、空中に運ぶためにドローンを利用している。KDDIのドローン基地局は、ドローン自体が中継局として機能するというコンセプトの違いがある。
KDDIは、3月以降に全国10カ所の保守拠点ににドローン基地局を配備し、実証実験を進める。各地域の気象条件などのデータを収集し、実際の現場で使いやすいドローンへと改良するという。
なお、ドローン基地局は、現在は法制度の整備されていないため、実際の被災地で利用することはできない。同社は実証実験と並行して、法制度化に向けた働きかけも行っていく。
UQコミュニケーションズがKDDI防災訓練に初参加
今回のKDDI防災訓練では、グループ傘下のUQコミュニケーションズが初めて参加した。2017年2月に両社は防災協定を締結し、災害時の相互支援体制を強化する。
防災訓練では、KDDIの基地局車のアンテナやバックホール回線を共用し、au LTEとWiMAX 2+の両サービスを提供するという想定で、基地局車を展開していた。
UQコミュニケーションズはWiMAX 2+のネットワークを独自に運用しており、基地局車をKDDIとは別に展開している。大規模なイベントなどのネットワーク対策では、KDDIの基地局車で共用することもあったが、災害時の出動実績はなかった。
共用とすることで、KDDIの基地局車にWiMAX 2+の制御装置を接続するだけで両方のネットワークが提供でき、被災時の効率化につながる。