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KDDIがイオングループの防災訓練に参加

年内をめどに防災協定を締結予定、災害時の連携を強化

 KDDIは、イオングループが開催した「外部連携 防災訓練」に参加し、車載基地局を設置・稼働させるなどの訓練を行った。イオングループは防災関連の取り組みで外部企業との連携を強化しており、同訓練には東京ガスや東京電力、京セラコミュニケーションシステムなども参加。KDDIでは、年内をめどに、イオングループと防災協定を締結する見込み。

 21日にイオングループが開催した防災訓練は、関東エリアで大規模な地震が発生し、「イオンモール幕張新都心」が千葉市から一時避難所として指定を受けたという想定。帰宅困難者への対応や支援、車中泊避難者への対応などを念頭に、訓練が実施された。

帰宅困難者の支援、震度7を体験できる起震車

 帰宅困難者への支援では、イオングループのミニストップが「帰宅困難者支援ステーション」を店頭に設営し、飲料水の提供やミニ冊子を配布するといった対応。

 「イオンモール幕張新都心」では、駐車場の一角に地震の揺れを体験できる「起震車」が設置され、訓練に参加した社員が、揺れの大きさや、過去の大地震の揺れを再現した内容を身をもって体験。大きな揺れに晒された直後は、三半規管に影響が残りふらふらとしてしまう場合があり、避難で階段を使う際に注意が必要といった知識も伝授された。

ミニストップの「帰宅困難者支援ステーション」の設置
起震車による地震の揺れの体験

「イオンモール幕張新都心」の大型自家発電装置

 「イオンモール幕張新都心」に設置されている大型の非常時ガス発電機の立ち上げ模擬訓練も、東京ガスと共同で実施された。これは、停電時にイオンモールで使用する自家発電装置のひとつで、石油燃料を使う発電機に加えて用意されている大型の発電機。発電によりイオンモール内の通路などの共用部や重要施設に電源を供給する。

 非常時ガス発電機の燃料は都市ガスだが、一般家庭向けの都市ガスではなく、中圧ガスの導管がひかれている。中圧ガス導管は、阪神・淡路大震災や東日本大震災クラスの大地震にも耐える構造で、ガスの供給が止まらないのが特徴。非常時ガス発電機では、原理的にはガスが供給されるかぎり発電できるとしている。

自家発電装置の稼働

移動電源車で屋外の装置を稼働

 東京電力からは低圧電源車(移動電源車)が配備され、実際にエンジンを稼働し発電を行って、100Vの電力を供給する訓練が実施された。この電源を使い、送風機を動かしてバルーンシェルターが展張されたほか、KDDIの通信設備に電源が供給された。

低圧電源車の稼働

バルーンシェルター

 バルーンシェルターはイオングループが用意しているもので、空気で膨らませた屋根を展開するというもの。熊本地震の際には実際に使用され、車中泊避難者に対して足を伸ばして寝られる場所を提供するなどした。衝立やマットなどを用意することで、プライバシーに配慮した環境で休めるような取り組みも準備されている。

車載基地局、最新の可搬型基地局を展開

 KDDIは車載基地局で携帯電話向けのアンテナと衛星エントランスを展開。衛星携帯電話や、携帯電話・スマートフォンの充電ボックスといった避難所向けの設備を設置した。さらに、可搬型基地局とパラボラアンテナについて、導入(購入)したばかりのモデルも投入し、実際に組み立てる作業を行った。新型の可搬型基地局は大型のペリカンケース2個で運べ、パラボラアンテナの皿の部分も分割され収納できるモデル。衛星は自動で捕捉する仕組みで、組み立てを含めて30分もかからずに稼働できる。

 京セラコミュニケーションシステムは、スーツケース型で持ち運べる可搬型Wi-Fiステーションを展開。モバイル網側は通常のLTEのほか、可搬型基地局などとも接続できる。

トラック型「移動ATM」も登場

 訓練ではこのほか、まだ1台しか配備していないというトラック型の「移動ATM」も設置された。イオン銀行のATMが内部に設置されており、避難所などでお金を引き出すといったことが可能になる。訓練を兼ねて都心でも設置されることがあるほか、熊本地震の際には東京から自走して被災地に入り、実際にサービスが提供された。

 また、訓練は地域の自治体と連携。イオンモールの一角でボランティアによる炊き出し訓練を行い、災害時に使用される袋にご飯を詰めて、豚汁と一緒に訓練の参加者に提供された。

「移動ATM」

 「イオンモール幕張新都心」は巨大な施設で、内部の広い芝生のエリアや強力な電源設備が災害対策で活用されれば、地域の住民や帰宅困難者にとって心強い存在となる。KDDIはイオングループと防災協定を締結することで、こうした大型の一時避難施設に対しても災害対策用の通信設備を素早く提供できる体制を整えていく。