【CES 2016】

「Snapdragon 820」第1号機は中国LeTV、車載向けやIoT向けのチップも披露~クアルコム

 クアルコムは、「CES 2016」で記者会見を開催。11月にメーカーに対し出荷が始まった、次期チップセット「Snapdragon 820」の進展や、車載向け、IoT向けチップなどを発表した。

クアルコムのCEO、スティーブ・モレンコフ氏

 会見に登壇したのは、クアルコムのCEO、スティーブ・モレンコフ氏。同氏はまず、Snapdragon 820の概要を解説した。Snapdragon 820は、クアルコムの次期ハイエンド向けチップセット。64bit化を急ぎ、ARMのコアをそのまま採用した「Snapdragon 810」とは異なり、従来通り、クアルコムが独自にカスタマイズした「Kryo」コアを採用する。

 GPUには40%の性能向上を果たした「Adreno 530」を採用。パフォーマンスの高さを生かし、機械学習を取り入れた画像認識や、セキュリティ機能にも対応している。モデムについては「X12」が採用されており、LTEはカテゴリー12/13が利用できる。下りの最大速度はキャリアアグリゲーションを利用した際に、最大600Mbpsとなる。

「Snapdragon 820」の特徴。カスタマイズされたクアッドコアの「Kryo」を採用。GPUの性能も40%向上している

 モレンコフ氏によると、Snapdragon 820は、すでに80以上のデバイスに採用されることが決定しているという。11月の出荷時には60、12月に中国・北京で開催されたイベントでは70と発表されていたが、CESのタイミングではさらに採用端末が増えたようだ。現状では毎月10端末のペースで増えており、メーカーからも好評を得ていることがうかがえる。

80以上の端末に採用される見通しが立った

Snapdragon 820初搭載は中国企業の「Le Max Pro」

 モレンコフ氏は、Snapdragon 820を初採用する端末も紹介した。第1号機となるのが、中国メーカーのLeTVが開発した「Le Max Pro」。4GBのメモリ(RAM)を搭載しており、60GHz帯を使った高速通信のWiGig(IEEE 802.11ad)にも対応する。

第1号機として「Snapdragon 820」を採用する「Le Max Pro」
超音波で指紋を読み取る「Sense ID」に対応
併催イベントに出展されていた「Le Max Pro」。詳細は別記事でお届けする

 背面には指紋センサーを搭載。この指紋センサーは、「Sense ID」と呼ばれるSnapdragon 820に組み込まれた機能を利用している。モレンコフ氏は、この機能を「超音波を使って指紋を読み取る」と紹介。指が汚れていたとしても、正確に素早く、指紋のスキャンができることが紹介された。

車載向けチップも

 また、Snadpragon 820は、スマートフォン以外にも応用される。代表的な分野には、車載向けチップセットがあり、記者会見では「820A」と「820Am」という2つのバージョンが発表された。また、AUDIの車載向けシステム「AUDI MMX」には、「Snapdragon 602A」が採用されることも明らかになった。

車載用チップの「Snadragon 820A」「820Am」
「AUDI MMX」にも、Snadpragonが採用される

 会見では、タブレットを搭載した車で経路などの情報を検索し、その情報をディスプレイで表示されているダッシュボードに移したり、機械学習を使って道路の状況を認識したりするといったデモが行われた。

車載タブレットに表示した情報を、ダッシュボードに切り替えるデモなどが行われた

IoT向け製品群も紹介

 クアルコムは、IoTにも力を入れている。スマートシティ向けには、クアルコムが得意とするLTEモデムを紹介。「カテゴリー1」をサポートする「MDM9270-1」、「カテゴリーM」をサポートする「MDM9206」を発表した。カテゴリー1、カテゴリーMはM2M、IoTなどをターゲットに策定されたLTEの規格で、利用する帯域を減らし、モジュールの小型化や低消費電力化、長寿命化などを実現している。

スマートシティ向けのモデムを紹介

 このほか、スマートホーム向けには、Wi-Fiのネットワークを自動で最適化する「SON」に対応した、「Snapdragon 212 Smart Home」を発表。ドローン向けに、「Snpadragon Flight platform」を発表するなどして、チップセットの応用範囲を広げていることをアピールした。

スマートホームや、ドローン向けのプラットフォームも紹介された

石野 純也