iPhone駆け込み寺

「iOS 15」パブリックベータを試す、FaceTimeのAndroid/Windows対応や「Safari」パワーアップが熱い!

 日本時間の7月1日未明、6月上旬の開発者向け会議「WWDC21」で「来月公開」と予告されていた次期OSのパブリックベータが公開された(次期macOSのみ未公開)。7月公開としておきながら、北米時間で6月30日のタイミングで公開されるのは正直、予想ガイだったが、今回はAppleから取材にもとづく特別な許可を得られたので、パブリックベータ版の「iOS 15」の簡単なインプレッションをお届けする。

 ただし読者にはくれぐれも、これが「ベータ版」と言うことをご注意いただきたい。OS自体に不具合があって正常に動作しない、パフォーマンスが著しく低下する、といった可能性がある。また、サードパーティによる各アプリ/サービスによる次期OS向け開発は始まったばかりなので、こちらも正常に利用できない可能性がある。

ちなみにiPhone 12 Proでは容量は5.46GBだった

 パブリックベータは簡単な登録でインストールできるが、試すのであれば、メインに使っているデバイスではなく、動かなくなっても困らない予備のデバイスで利用しよう。iOS 14に戻すにはパソコンを使い、「リカバリモード」という機能を使うことになるが、これが面倒な上に失敗すると大変なので、くれぐれもご注意いただきたい。

 ベータ版であるので、今秋公開予定の正式版とは機能や見た目が異なる可能性がある。ベータ版だけに修正・改善は当然だが、操作手順が変わったり、ベータ版にある新機能が正式版の初期リリースに搭載されなかったり、ベータ版のバージョンアップにより機能が追加実装されたり削除されたりすることもあり得る。つまり本稿で書かれていることが正式版と異なっていても、「そういうもの」と考えて欲しい。

 繰り返すが、これはベータ版、それも初期のリリースなので、動かなくなっても困らないデバイスで試すべきものだ。幸いにも筆者宅には予備のiPhoneやiPadがたくさん転がっているので、今回はiPhone 12 ProとiPad(第7世代)にパブリックベータをインストールして試していく。

 なお、この記事ではiPhone(iOS 15)の新機能をメインに解説するが、そのほとんどはiPad/Macでも使える機能だ。その一方でiPad(iPadOS 15)にはiPhoneに搭載されない新機能が多数あるので、そちらはそちらで別記事でその印象をお伝えしたい。

Android/Windowsでも参加可能になった「FaceTime」

 次期OSの目玉機能の一つは、アップルの提供する独自のテレビ電話機能「FaceTime」の機能強化だ。

画面共有のSharePlayは実行しても共有できなかった。未実装なのかサーバー混雑なのか設定ミスなのかは不明

 とくに参加者全員で同じ動画を同期視聴する「SharePlay」は目玉中の目玉、なのだが、筆者の環境では試すことができなかった。まだパブリックベータの段階なので、こうしたオンライン機能は試せないのは仕方ないところだが、この機能は個人的には非常に楽しみなので、各動画配信サービスには素早く対応して欲しいところだ。

 FaceTimeはWindowsやAndroidからも利用可能になった。と言っても、参加可能になったというだけで、発信はApple IDとアップルデバイスを持つユーザーが行なう必要がある。

FaceTimeの参加リンクをメールで送るとこんな感じ。本文などは自由に設定できる

 仕組みとしては、「FaceTime」アプリで「リンクを作成」というボタンができているので、それをタップし、招待URLを共有する方法を選ぶだけ。共有はいつものUIなので、メールやメッセージ、AirDrop、各種メッセージアプリなどを選べる。

 共有された招待URLはAndroidやWindowsはもちろん、iPhoneやMacからも利用可能だ。ブラウザが立ち上がり(必要に応じてブラウザのカメラやマイクの設定を行なう)、まずは参加者の名前を入力する。アップルデバイスでもApple IDは求めらない。その後、「Join」をタップし、招待URLの送信者が参加を許諾すると、テレビ電話が開始される。

招待URLのリンク先。ここで参加者名を入力する。ホストが入室を許可するかはこの参加者名を見ることになる
Android端末からの参加した状態。これはGmail内でページを開いている

 仕組みとしてはいわゆるWebセミナー、ウェビナーに最適だ。ホストがApple IDとアップルデバイスを所持している必要があるが、リンクをクリックするだけで環境を問わず、参加者のApple IDも不要で使えるので、ウェビナーツールとして広まる可能性がある。筆者もFaceTimeは母との連絡(しかも音声のみ)でしか使ったことがなかったが、これならば友人とのオンライン呑み会や仕事での打ち合わせなどにも使いたいな、と思うところだ。

 ただ、FaceTimeは無料で使える機能なので、正式版には何らかの制限(参加人数や連続時間)が設けられる可能性も否定できない。現時点では、大規模な商用ウェビナーに応用できるかどうか、今後注目したいところだ。

いろんなシチュエーションで切り替えられる「集中モード」

設定アプリ内の集中モード。モード数はどんどん増やせる。筆者なら「ゲーム」や「VR」「筋トレ」「野球観戦」とかを追加したい

 通知を制限する「おやすみモード」が拡張され、「集中モード」となった。「おやすみモード」は「集中モード」の1つとして存続する。

 「おやすみモード」は通知音や通知の表示を制限する機能だ。もともとは睡眠時などを想定した機能だが、「仕事のプレゼンなどで人に画面を見せるとき」「作業に集中したいとき」「仕事のことを忘れてプライベートを満喫したいとき」などにも応用できる。

 しかしiOS 14までは「おやすみモード」は1つしかなかった。仕事中は仕事関連と家族からの連絡は受けるが、友人との雑談スレッドやオンラインゲームの通知は受けたくないだろう。逆にプライベートタイムでは仕事の連絡は受けたくないが、オンラインゲームの通知は逃したくないだろう。細かいことを言うと、たとえばプロ野球セ・リーグの甲子園球場での試合(阪神主催試合)はネット中継に大きなディレイがかけられているので、得点速報アプリはオフにしておきたい。

 このようにシチュエーションごとに受けたい通知は異なるので、それをシチュエーションごとに設定し、簡単に切り替えられるようにしているのが、「集中モード」というわけだ。

それぞれの集中モードでわりと細かく設定できる。「睡眠」だけヘルスケアの睡眠機能と連携する特別扱い

 集中モードは自由に追加し、カスタマイズできる。通知を受ける連絡先とアプリ、あとはモードの種類によっては、即時性のある「タイムセンシティブ通知」を受けるかどうかや「ヘルスケア」の睡眠測定をするかといったことを決められる。この「タイムセンシティブ通知」というものが何か、今回試したなかでは正直、まだ掴みきれていない。設定画面では「一刻を争う通知」という表記もあるが、ここは正式版ではどちらかに統一されるかもしれない。

 また、この集中モードを切り替えるとホーム画面を専用のものに変更することもできる。設定するのは面倒だが、仕事中にゲームアプリを表示しない、ゲーム中に仕事アプリを表示しないなど、まさに「集中」のためのモードというわけだ。

 切り替えは手動だけでなく、時間帯や場所、利用するアプリによって自動で切り替えることもできるし、位置情報やアプリの使用状況などに応じて自動的に切り替える機能「スマートアクティベーション」もある。知らないうちに通知が届かなくなることは気になるが、上手く使えば便利そうな機能だ。

集中モードの状況をアプリと共有するかどうかも設定できる。仕事関連のメッセージアプリに「ゲーム中」とか表示させたくないよね、と言うことだ
集中モードの切り替えはコントロールセンターからも素早く切り替えられる。従来同様「1時間だけ」とか「移動するまで」とかも設定可能

 あとはこの集中モードの設定、iCloud経由でアップルデバイス間で同期する。筆者のようにデスク上に1台のMac、3台のiPhone、4枚のiPadが並んでいる一般的なご家庭(あるいは逸般的な誤家庭)だと、テレビ会議を始める前に全デバイスをおやすみモードに切り替える必要があったが、その手間が省けるのは非常にありがたいし、iPhone/iPadユーザーがパソコンを含めたデバイスをアップルで統一する意義が高まったとも言える。

 この集中モード、一部の対応メッセージアプリだと、どのモードになっているかが相手に伝わるようにもなっている。地味に便利そうなので、こちらもサードパーティアプリの対応も期待したいところだ。

「Safari」はUIを大きく変更。片手で使いやすいぞ!

新しい「Safari」。アドレスバーなどのUIが画面下部にまとめられた

 基本アプリもいろいろと改善・変更が施されているが、中でも影響の大きそうなところが「Safari」のUI変更だ。これがなかなかイイ。

 iPhoneでは従来、アドレスバーが画面上部に表示されていたが、これが下部に移動した。片手で本体を掴み、その親指で画面をタップする場合、6インチ超級のiPhoneだと画面上部がタップしにくく、従来のアドレスバーはタップするだけでも命懸け(手を滑らせると……)だったが、それがなくなる。

 また、「戻る」や「共有」「ブックマーク」「タブ切り替え」などのボタンが並んでいたバーが廃止となり、画面下部には開いているページのURLバーだけが表示される(従来同様、下スクロール中は簡易表示となり省略される)。

 「戻る」やタブ切り替えといった操作は、このバー上のボタンから行なう。タブ切り替えに関しては、このURLバーを左右にスワイプすることでも可能で、正式版でもこのまま導入されることを期待したい。「(…)」みたいなボタンをタップすると共有やブックマーク追加などのメニューが表示される。

アドレスバーをスワイプするとタブ切り替え
(…)ボタンで呼び出すサブメニュー。ここから共有とかリーダー起動とかをする

 iPhone版「Safari」にとっては登場以来、最大の変化と言えそう。筆者にとっては、「非常に便利でイイ」と感じられるものだ。

iPad版のSafariも大きく変更。アドレスバーとタブバーが統合されてスッキリした

 ちなみにiPad版やMac版もUIに手を加えられている。URLバーとタブバーが統合されてスペースが節約されたとかなので、iPhone版ほどの変化ではないが、しかし地味ながら嬉しい改善だ。

「Safari」の「タブグループ」も極めて便利!

Safariのアドレスバーをロングタッチすると、そのページのサブメニューが表示されるので、そこでタブグループ移動が選べる

 また、iPhone/iPad/Mac共通で、「タブグループ」という機能が加わった。これは複数のタブを保存・整理するというものだ。

 タブグループに登録したいページを開いているとき、URLバーをロングタッチすると開くメニューから「タブグループへ移動」を選び、登録したいタブグループを選べば、そのWebページがタブグループに移動する。ちなみに画面左側にナビゲーションエリアを同時に表示できるiPadの場合、ドラッグ&ドロップでタブグループ間の移動も可能だ(おそらくMacでも可能と期待される)。

iPhoneだとタブ選択画面からタブグループ間の移動ができる

 タブグループを切り替えると、そのタブグループに登録されているタブだけが表示される。しかしもともと開いていたタブや別のタブグループは表示されないだけで維持され、タブグループを切り替えればそちらに戻る。ちょっと伝えるのが難しい機能だが、こんな感じの機能だ。

 仕事でもプライベートの買い物や旅行のプランニングでも趣味の情報収集でも、パソコンのブラウザで大量のタブを開いて検討を進める、そんな人は多いのではないだろうか。筆者もそうだ。おかげで現在筆者のMacの「Safari」には、ゲームの攻略情報が3つ、買い物情報が5つ、いま書いてるこの記事のためのアップルのOSプレビューページが6つ、それぞれタブで開きっぱなしだ。

iPad版だと左側のナビエリアを常時表示できるので(消すこともできる)、タブグループ操作が簡単だ

 そうなるとタブバーは大混雑で、どれがどれだか極めてわかりにくい。進行中の作業で見ているタブ以外は閉じろ、とも思うのだが、あとで開き直すのが面倒だったりするので開きっぱなしにしがちだし、そうなると作業と無関係のWebページもチラチラ見えて気が散ってしまう。

 タブはそんな筆者のような人間のための機能だ。しかもこのタブ、同じApple IDでサインインしているアップルデバイス間で同期する。筆者としてはすぐにでもメインのMacで使い始めたいくらいだ(仕事に必要なマシンにベータ版は入れられないが)。

そのほかのアプリもいろいろ改善

「Safari」以外にもいろいろなアプリに改善が施されている。

 たとえばアプリというよりもサービスの方だが、「iMessage」には写真をまとめて共有したり、PodcastやApple Musicの曲を共有しやすくなる仕組みが組み込まれる。ただ、iMessageは依然としてアップルデバイス専用のコミュニケーション機能となるので、正直、アップルデバイスにまみれている筆者も使うことは少ない。Android版やWindows版のアプリも投入して欲しいと思うところだ。

こちらは新機能ではないが、写真アプリでハンバーガーを検索したところ。筆者の写真ライブラリにハンバーガー多すぎである

 写真やWebページ上の画像に含まれる文字を選択し、コピペや電話の発信、メールの作成などができるようになる、とのことだが、対応言語に日本語は含まれておらず、今回、試すこともできなかった。画像認識したものをWikipediaなどで検索する機能も追加されるようだ。ちなみに画像認識は現行のOSでも行なわれている。試しに「写真」アプリの検索ボタンから「ハンバーガー」と検索してみよう。ご飯の写真を撮る習慣があるとけっこう面白い機能だ。

 「マップ」アプリはARを使った道案内などいろいろな機能が追加されるが、これらが利用できるかどうかは、サーバー側のデータが更新されるか次第だ。パッと見たところ、日本での地図表示などは大きくは変わっていなかった。ここはベータ版なのでそもそも対応してる国や地域があるか、まだわからない。

実はiOS 14までは「Wallet」だったアプリが「ウォレット」に名称変更されている

 ウォレットも強化され、鍵や身分証明証などに使えるようになったようだが、当然だがこれは対応デバイスや対応システムがないと使えない。身分証明証はまずは米国からだと思うが、いずれは日本でも導入して欲しいところだ。物理カードよりセキュアで扱いやすいのだから、マイナンバーカードやワクチン証明で使えるようになればなぁ、と思う。

 今回はFaceTimeのAndroid/Windows参加、SafariのUI改善、集中モードなど、現時点で試せる範囲でも、面白いもの、便利そうなものが多い。しかし毎度のことだが、OSだけが新しくなっても、アップル以外のアプリやサービスが対応してくれないと意味がない、という新機能は多い。

 正式版の公開は「秋」とアナウンスされている。例年のパターンだとだいたい9月だ。それまでの準備期間中に各アプリやサービスが対応していってくれることを期待したい。

 今回は速報的な記事として、現時点で簡単に試せる機能に絞って、筆者の抱いた印象や今後への期待をまとめており、通知機能の改善など、しばらく使ってみないと使用感のわからない機能は省略している。今後もパブリックベータを試し続けてみるつもりなので、面白そうな機能は別の機会に追加レポートをお送りできれば、とも思っている。