レビュー

KDDIが「VTuber」と「Galaxy Z Fold8」でミリ波をアピール、通信量増大に“ミリ波を活用しなければいけない”フェーズに

 KDDIは3日、5G通信とサムスン電子製のスマートフォン「Samsung Galaxy Z Fold8」の魅力を体験できるイベント「Samsung Galaxy Z Fold8シリーズとミリ波で体験! VTuberスペシャル3Dトークライブ presented by KDDI | Samsung」を開催した。

 5G通信のなかでも超高速、超大容量、超低遅延の魅力を持つ「ミリ波」を活用したイベントで、サムスン電子の最新機種「Samsung Galaxy Z Fold8」の大画面を活かしたコンテンツが用意された。

 KDDIでは、ミリ波のエリア拡大とユースケース創出の取り組みを進めており、今回のイベントでは、最新機種とミリ波を掛け合わせたユースケースの認知を高める狙いもあると見られる。

“エリアを作りにくい”ミリ波の弱点を克服

 5G通信では、4G通信の周波数を利用する「NR化」と、ミッドバンドの周波数を利用する「Sub6」、そして高い周波数帯を利用する「ミリ波」の3つがある。通信速度やレイテンシーの低さなど通信で求められる性能は、「ミリ波」が最も優れている。その一方で、電波は周波数が高ければ高いほど直進する性質があるため、エリアが最も作りにくいのも、また「ミリ波」だ。建物や山など障害物が多い場所では基地局を多く設置しなければならず、あまり経済的でない。このため、これまではイベント施設など、ユーザーが多く集中し、エリア化がしやすい場所に展開されてきた。

 ところが、KDDI先端技術統括本部先端技術企画本部システム戦略部長の高田潤氏は、「いよいよミリ波を使わないといけない段階になってきた」と語る。端末のディスプレイは時を重ねるごとに大きくなっていき、それにあわせてコンテンツもリッチとなり、ユーザーが通信する通信量は増大してきている。さらに、生成AIやエージェントAIの登場で、上り(アップロード)の通信量も増大し、これまで以上の低遅延性能が求められるようになった。これまでは、伝搬特性や経済性などからSub6によるエリア展開が中心だったが、「そうも言っていられなくなった」というわけだ。

KDDI先端技術統括本部先端技術企画本部システム戦略部長の高田潤氏

 そこでKDDIでは、このミリ波の弱点を克服すべく、「ミリ波の中継器」などさまざまな装置や技術を開発し、ミリ波のエリア拡大に取り組んでいる。高田氏も携わったという新宿西口エリアにおけるミリ波中継器実験では、道路のエリアカバー率が33%程度だったものが、中継器を用いることで99%まで拡大した。実際に歩いてみても「通信速度が1Gbpsを維持したまま通信できた」と評価する。1万5000局(2024年時点)の基地局と共にこの中継器を活用すれば、これまでエリア化が難しかった場所にも展開できるようになる。

イベント会場にあるミリ波基地局

ユースケースの創出も大きな課題

 エリア展開だけでなく、さまざまなユースケースの創出にも取り組んでいる。

 3月には、XREALのARグラス「XREAL Air 2 Ultra」を使ったXR体験イベント「mmWAVE DE VTuber〜凪乃ましろ スペシャル3Dトークライブ」を実施した。ミリ波対応スマートフォンとARグラスを活用し、イベント会場にキャラクターがいるかのような体験ができるもので、大容量のデータを短時間で転送でき、遅延の少ないキャラクターの動きを楽しめた。

3月のイベントでは、ARグラスを使ってリアルなキャラクターがすぐ目の前に登場する体験ができた

 これまでは、ライブ配信用に特別なネットワークスライスを用意したり、カメラで撮影した大容量のRAWデータを瞬時にサーバーに上げたりするなど、業務用途でのユースケースが多かったが、一般ユーザーのデータ通信量も増加の一途をたどっており、コンシューマー側へのミリ波展開も積極的に行うフェーズに入ってきた。

 このため、ユースケースの創出だけでなく、“ミリ波対応スマートフォン”の普及、拡大に取り組むことで、「ミリ波が使えるユーザーの拡大」を図り、マネタイズにつなげるべく、今回のイベントを開催したとみられる。

イベント会場にはミリ波の性能をアピールする展示も

最新スマートフォンを使った今回のイベント

 今回は、ミリ波対応のフォルダブルスマートフォン「Samsung Galaxy Z Fold8」を利用し、VTuberたちとトークをするイベントが開催された。会場には最大50人の参加者が集まり、同時に端末を開き、コンテンツを楽しんだ。

 アプリ立ち上げ時に、大容量のデータをダウンロードし、リアルタイムでキャラクターの動きが端末上で展開される。コンテンツはARのもので、容量も大きい。この大容量のデータを、大人数が一斉にダウンロードする場合、Sub6帯では時間がかかってしまっていたというが、イベントではミリ波を利用し、わずか数秒でダウンロードが完了し、すぐにキャラクターと対面できた。

イベントで使用した「Samsung Galaxy Z Fold8」
手元のスマートフォンで楽しめる

 実際のキャラクターの動きも、通信で配信される形になるが、会場内で流れるキャラクターの音声ともズレを感じず、まるで目の前にキャラクターがいるかのような体験が楽しめた。

 イベントでは、ジェスチャーゲームが開催された。スマートフォン越しに目の前の空間で、キャラクターが全身を使って表現していた。配信側からは、視聴者の端末の動きを見られるようになっているのか、視聴者がジェスチャーを理解できず首をかしげている(端末を傾けている)と、キャラクターが「みんなわからないみたい」と、視聴者とのリアルタイムな交流が生まれていた。

キャラクターとジェスチャーゲームを楽しむ

課題は価格とiPhone対応

 ミリ波対応スマートフォンは、ハイエンドモデルを中心に展開されており、半導体価格の高騰などを受けて、端末価格も当面下がらないと見られる。このため、いざ「ミリ波対応端末を買いたい」となっても、価格面で断念するユーザーも少なくないだろう。

 また、国内モデルのiPhoneは、最新のiPhone 17シリーズを含めてミリ波に対応していない。日本ではiPhoneのシェアが依然高い水準であり、ミリ波拡大の大きな壁の一つとなっている。

 今回のイベントをきっかけに、国内でも「ミリ波が重要」という機運が高まり、諸課題が解消されることを期待したい。

サムスン電子ジャパンMX事業本部事業者営業Group部長の鈴木祐介氏(左)も駆けつけ、新機種「Samsung Galaxy Z Fold8」をアピールした