レビュー

ドコモの格安スマートウォッチは、どんな人に向いているのか?

 ドコモが7月7日に低価格のスマートウォッチを発売した。画面サイズが異なる2モデルが用意され、1.83インチ画面の「スマートウォッチ 01」は時計や文字が見やすいことが特徴。

 1.45インチ画面の「スマートウォッチ 02」はスリムで、装着性を重視する人に適している。機能には差はないようで、どちらも6980円だ。スマートフォンのOSはiOS、Androidの両方に対応。

 ドコモショップおよびドコモオンラインショップで購入でき、ドコモ回線を契約していなくても購入・利用可能。筆者はドコモから両方のモデルを借りて使い比べてみた。

左がスマートウォッチ 01、右がスマートウォッチ 02。製造は「フューチャーモデル」というメーカーで、同社がオンラインで取扱説明書を提供し、サポートセンサーも用意されている

サイズの異なる2モデルから選べる

 スマートウォッチ 01は、正方形をやや縦に長くした1.83インチのディスプレイを搭載。Apple Watchに近いサイズ感だ。ディスプレイはタッチ対応で、右側面にリューズを模したボタンを搭載。

 ホーム画面に戻したり、ワークアウトの計測を一時停止したりでき、回して画面をスクロールすることもできる。マイク、スピーカーも搭載し、裏面に心拍センサーなどを備えている。

スマートウォッチ 01は文字盤が大きく、情報が見やすいことが利点
裏面に心拍センサーを搭載

 ベルトはシリコン製で、ステンレス製のバックルで留める。ややチープな質感だが、装着感は悪くない。ベルトを含む重さが約40gで、非常に軽く感じられた。

ベルトは一般的な留め方で、サイズ調整がしやすかった

 スマートウォッチ 02は、1.45インチの長方形のディスプレイを搭載。 “画面が大きめのスマートバンド” といった印象だ。

 ベルトもスリムで、ベルト込みの重さは約28g。なお、画面の輝度は800cd/㎡で、スマートウォッチ 01(500cd/㎡)よりも明るい。右側面には “回せない” 普通のボタンを備えている。

スマートウォッチ 02はスリムで軽いことが魅力
左がスマートウォッチ 01で、右側面に回して操作できるデジタルクラウンを搭載。右がスマートウォッチ 02で、押すだけのボタンを搭載。それぞれマイクも搭載
左がスマートウォッチ 01、右がスマートウォッチ 02。どちらも左側面にスピーカーを搭載

 どちらを選ぶかは好み次第だが、筆者は画面の見やすさを重視して、スマートウォッチ 01をメインで使ってみることにした。

スマートウォッチ 01をiPhone 16 Proと接続させて使った。iPhoneには「TechWear」というアプリをインストールして、ペアリングした

スマホライクに直感的に操作できる

 タッチスクリーンの操作性はスマホライク。ホーム画面を右にスワイプすると、アイコンが並ぶ機能メニューが表示される。左にスワイプするとショートカットが表示。スマホにおけるウィジェットのようなもので、何を表示させるかは自分でカスタマイズできる。

 下にスワイプすると「クイック設定」、上にスワイプすると通知を確認できる。

右にスワイプすると機能メニューが表示
左にスワイプすると表示されるショートカットはカスタマイズ可能
下にスワイプするとクイック設定が表示
上にスワイプすると通知を確認できる
長押しすると文字盤のデザインを変更できる

 タッチレスポンスは敏感過ぎず、かと言って鈍くもなく、操作しやすいと感じた。

 バッテリー持続時間は3~5日間。筆者が実際に使った感覚では、3日は余裕で持ち、充電は週に2回程度で済んだ。充電は付属のケーブルで行う。

 20%くらいまで減ったときに充電を始めて、フル充電までに1時間以上かかった。充電は速くはないが、不便を感じるほどではない。

同梱のUSBケーブル充電器で充電する。ウォッチの背面にマグネットでカチッと装着できる

着けているだけで健康状態をモニタリング

 スマートウォッチの要とも言えるヘルスケア機能は、歩数、心拍数、血中酸素飽和度、ストレス値、睡眠を測定できる。

 心拍数は自動でモニタリングする間隔を設定でき、血中酸素飽和度は手動で測定できるほか、睡眠時には自動で測定される。基本的には、ただ着けていれば、自動で健康状態がチェックされる。

心拍数とストレスの自動測定は「TechWear」アプリで設定できる
心拍数や血中酸素飽和度は手動でも測定可能

 ヘルスケア機能の設定や、測定データの管理は、スマホにインストールした「TechWear」アプリで行う。筆者はiPhone 16 Proとペアリングして使ったが、Android向けのアプリも同じデザインで機能にも差はなかった。

ヘルスケアの測定結果は「TechWear」アプリに同期される。グラフが主体で見やすい。また、メニューも見やすく、迷わずに使いこなせた
睡眠の結果画面の例。かなり詳しく分析される
直近の結果はウォッチでも確認できる

 「TechWear」アプリは、ヘルスケアデータがグラフィカルに表示され、メニューも探しやすく、非常に使いやすかった。

 測定の精度については、筆者が評価することはできないが、歩数や心拍数は納得できる数値が表示され、睡眠時間も正しく測定されていると思えた。

 しかし、血中酸素飽和度は、一般的なパルスオキシメーターよりも低い数値が出るように感じた。

血中酸素飽和度は画面をタップして、しばらく静止するだけで測定できる。健康状態に問題はないが、数値が低く表示されるのが気になった

ワークアウト機能は価格相応

 運動を測定する「エクサイズ」機能は、必要最低限という印象。ランニング、ウォーキング、サイクリングをはじめ、100種類以上のメニューが用意されているが、これといった特別な機能があるわけではない。運動中の心拍数がトラッキングされ、運動の強度がわかり、消費カロリーが算出される仕組み。

 GPSは搭載されていないので、走った距離や経路を記録することはできない。

エクササイズのメニューから行う運動を選んで起動する
目標を設定すると、運動中に達成状況を画面表示と音声で知らせてくれる

 ただし、スマホの「TechWear」アプリから「トレーニング」を起動すると、スマホのGPS機能で位置情報を取得することができ、ウォッチの「エクササイズ」も自動的に起動する。

 であれば、ウォッチで「エクササイズ」を起動すると、自動でスマホのGPSが起動したらいいのに……と思ったが、そういう仕様にはなっていないようだ。

スマホを携帯し、「TechWear」アプリから「トレーニング」を起動すると、GPSによって位置情報を取得し、経路や速度も記録される

 筆者は「TechWear」アプリの「トレーニング」から「ウォーキング」を起動して使ってみたが、その際に、スマホの「トレーニング」画面と、ウォッチの「エクサイズ」画面に表示される消費カロリー量に大きな差があることにも違和感を覚えた。

 おそらくウォッチに表示されるのが正しい数値で、スマホには運動時間に基づく概算の数値が表示されるようだが、なんとなくモヤッとした。

 運動の測定時に気になったことは他にもある。

 まず、ジェスチャー操作の反応が今ひとつだった。ウォッチには腕を上げて時計を見ようとすると画面が自動で点灯する機能がある。それをオンにしていたのだが、運動中に画面を見ようとしても反応せず、何度かやり直したりして、ストレスを感じることがあった。

 また、運動中に現在時刻を確認しづらいことも難点。歩数や消費カロリーなどが表示される画面は見やすいのだが、そこに現在時刻が表示されないため、時刻を確認するには、他の画面に切り替える手間が生じた。

ウォーキング中の画面例。画面が大きく情報は見やすいが、現在時刻が表示されないのが不便

 運動中の画面表示や、モチベーションを上げるためのプラン作成、データ分析など、運動に関する機能は、一般的なスマートウォッチには見劣りし、やはり “価格相応” という印象だ。

 ワークアウト機能を重視するなら、他のメーカーのスマートウォッチを選ぶべきだろう。

スピーカーの挙動や「dヘルスケア」連携など、気になった部分も……

 著しく不便というわけではないが、使いづらいと思った部分は他にもあった。

 まず、ウォッチがスマホの外部スピーカーとして動作することだ。iPhoneで音楽を再生すると、ウォッチのスピーカーから音が鳴り、iPhoneで出力の切り替えが必要になった。音楽だけでなく、動画やゲームの音声も同じ挙動だった。

 筆者がこれまでに使ったスマートウォッチは、ウォッチにスピーカーが搭載されていても、通話音声や音声ガイドなどを出力するだけで、メディアの音声が自動で再生されることはなかった。

 ちなみに、iPhoneだけでなく、Androidスマホと接続させた場合も同じ挙動だった。ウォッチからメディアの音声を聴きたい人は少ないはずだ。音声プロトコルの改良を期待したい。

ウォッチと接続した状態で音楽を聴こうとすると、ウォッチのスピーカーが自動で選択され、iPhoneのスピーカーに切り替える手間が生じた

 次に、リモート撮影機能。ウォッチでスマホのカメラのシャッター操作ができる便利な機能なのだが、スマホの「カメラ」アプリには連携しない。

 利用するには「TechWear」アプリから「リモート撮影」を起動し、カメラを起動する必要があった。撮影画質に違いはないのだろうが、普段使っている「カメラ」アプリを使えないことに違和感を感じた。

スマホのカメラのシャッターを切る機能があるが、スマホ純正のカメラアプリではなく、「TechWear」アプリから「リモート撮影」を起動する必要がある

 スマートウォッチ 01/02は、ドコモの健康管理サービス「dヘルスケア」と連携できることも特徴としている。どうやって連携させるのかを試してみたところ、「TechWear」アプリや、オンラインの取扱説明書には「dヘルスケア」という項目が見当たらず。

 プレスリリースによると、iPhoneでは「ヘルスケア」、Androidでは「ヘルスコネクト」アプリが必要になるとのこと。ウォッチで計測したデータはそれらのアプリに介して「dヘルスケア」に同期させる仕組みになっている。

 ドコモが「docomoselect」として販売する製品なので、もっと簡単に連携できるといいのになぁ……と思ったのが本音だ。

Google Pixel 9 Proに「dヘルスケア」をインストールして、スマートウォッチ 01との連携を試してみた。まず、スマホに「ヘルスコネクト」をインストールし、「TechWear」のデータを同期するように設定し、さらに「dヘルスケア」と連携させる必要があった
iPhoneの「ヘルスケア」との連携できる

初めてスマートウォッチを使う人におすすめ

 スマートウォッチ 01/02は、6980円という安さではあるが、スマートウォッチに求められる標準的な機能はしっかり備えている。

 レビューしたヘルスケアやワークアウトの機能以外に、スマホの通知機能もあり、電話がかかってきたり、メッセージが届いたりすると、すぐにわかる。アラーム、ストップウォッチ、世界時計、スマホが見当たらないときに探せる機能も備えている。

画面をタップして、接続しているスマホから音を鳴らすことができる
画面を白く点灯させて、キーライトして使うことも
スマホで再生中の音楽をコントロールすることもできる
電卓アプリがプリインストールされており、大画面のスマートウォッチ 01は無理なく操作できた

 しかし、Apple WatchやGoogle Pixel Watchなどに比べると、使い勝手で劣り、アプリを追加することもできない。

 価格的に仕方がないことではあるが、決済機能も備えていない。あくまでも初心者向きのスマートウォッチだ。「スマートウォッチに興味がある」、「試してみたい」といった人におすすめしたい。