レビュー
ドコモ「home 5G」専用の新ルーター「HR02」を試す、先代モデルとの違いは?
2023年4月21日 00:00
ドコモの5Gを使った固定回線サービス「home 5G」用のルーターとして「home 5G HR02(以下、HR02)」が登場した。既存の「home 5G HR01(以下、HR01)」から新型に切り替わったというよりも、高性能タイプが追加されたということになる。有線LANが2.5Gビットのイーサネットに対応したほか、Wi-Fiもメッシュ対応するなど、家庭内でより高性能な固定回線として利用できるようになっている。
5Gのスペックは変わらないが、LAN側が一段階アップ
まず、最初にスペックを確認しておこう。5Gの性能は基本的には従来のHR01と変わっていない。変わっていることはWi-Fiの最高速度アップと、有線LANの速度アップというLAN側が強化されていること。それに尽きると言っていいだろう。
もちろん、LAN側が高速になるため、Wi-Fiも有線LANもスペック表に表れない部分が変わっている可能性があるとは思うが、5Gが現時点でギガビットクラスの速度が出ているかというと、そうでもないので、実利用に及ぼす影響は大きくないと思われる。
具体的には、Wi-Fi 6対応という点はHR01とHR02とも変わらないが、HR01の最高速度は5GHz帯で1201Mbps、2.4GHz帯は300Mbpsとなる。その点、HR02は5GHz帯が4804Mbps、2.4GHz帯が1147Mbpsと数値が大きく、速くなっている。
ただし、これは通信の相手側も同じ規格に対応している必要がある。Wi-Fi 6の場合、ストリーム数やチャネル数の組み合わせによって最高速度が決まる。「HT160」という160MHz幅の通信に対応するGoogle Pixel 7を間近に置いて接続したところ、2402Mbpsでリンクした。Wi-Fi性能の充実したスマートフォンを用意すれば、HR02の無線区間の速度を活かすことも可能になる。
有線LANは2.5Gbpsに対応
次に、有線LANは2.5Gbpsに対応している。これまで主流だった1Gbpsの有線LANに比べ、少しのコストアップで対応できるため、今はPCの有線LANが2.5Gbpsということが増えている。
実際、5G側の実効速度が1Gbpsに迫ってきており、場合によっては1Gbpsを超えることも十分ありえるため、LAN側の速度もその速さに対応する必要はありだろう。そうでなければ、せっかくの高速性能が無駄になりかねない。
また、5G側の実行速度が1Gbpsに届かなくても、家庭内のLANを構築する上ですべて2.5Gbpsに揃えたいという人もいるだろう。5G側の速度はともかく、自宅LAN内に大容量データを保存するNASでもあれば、LANは速ければ速いほどいい。
ただし、2.5Gbpsに対応するのは2ポートある有線LANのうちの上側だけ。下側は従来ながらの1Gbps対応なので注意は必要だ。有線LANが1Gbps対応のものを接続した場合は上でも下でも1Gbpsで接続することになる。
メッシュ機能はWi-Fi EasyMeshに対応するが……別途動作確認機種を公開
HR02と従来のHR01は今後も併売されるようだが、その際の製品の使い分けを記したWebの記載などでは、HR01はワンルームや単身向け、HR02がファミリー世帯とされている。ファミリー世帯で使った場合に必要性が高まるのがメッシュ機能。HR02だけにメッシュ機能が搭載されている。
メッシュでは、複数の無線LANアクセスポイントを利用し、Wi-Fiに接続する機器は1つの設定だけでどのアクセスポイントとも無線接続できる。
たとえば電波が届きにくい家なら各フロアや届きにくい場所に設置すれば、どの場所でもスマートフォンをはじめさまざまな機器がWi-Fiに接続できる。同様のものに中継器があるが、メッシュならば接続先を気にすることなく利用できるため、使うほうはとても便利になる。
HR02に搭載のメッシュ機能は「Wi-Fi EasyMesh」で、Wi-Fi機器の相互接続性などを検証しているWi-Fiアライアンスのメッシュの標準規格。対応機種は多いのだが、問題は互換性。一応、標準規格なのでどの対応機種同士を組み合わせてメッシュネットワークが使えると思いたいが、現実はそうなっていない。
ドコモ側で公表している対応機種は、バッファローのWi-Fi 6対応ルーター「WSR-5400AX6Bシリーズ」と中継機「WEX-1800AX4EAシリーズ」となり、同じバッファロー製のWi-FiルーターでWi-Fi EasyMeshに対応していても使えない可能性がある。
そこで、手元にあったバッファロー製のWi-Fi 6ルーターでWi-Fi EasyMesh対応の「WSR-1800AX4」で試してみたところ、設定が完了するようなそぶりを見せるものの、実際にはメッシュの動作はしなかった。
設定方法はHR02でWi-Fi EasyMeshをオンにして、子機側となる機種もWi-Fi EasyMeshをオンして指定の設定をすれば、有線LANケーブルでLAN側同士を接続すると自動設定されるのだが、WSR-1800AX4側のSSIDがHR02に近いものに変更はされるがメッシュの構成とはならなかった。
バッファローは動作確認が完了した機種を公開しているが、おそらくその機種以外も検証しているはずだ。記載がない機種は試していないのではなく、動作しないから記載していないと考えるほうが自然。現時点では対応機種以外でのメッシュ機能の利用を期待しないほうがいいだろう。
実測は下りで5Gならではの高速性を発揮する
前置きが長くなったが、どのくらいの速度がでるか、だ。試した場所はドコモの5Gのエリアで住宅地、どの5Gスマートフォンでも「5G」表示が出るような場所であり、ミリ波のエリアではない場所だ。
無線で接続するスマートフォンはGoogle Pixel 7。無線区間のリンクは2402Mbpsの状態で、下りは500Mbpsに届くか届かないかという数値を記録した。複数の時間帯で計測しているが、夕方から夜にかけてや、昼食どきの混雑時をのぞけば、だいたいこのような数値を記録した。
上りについては少し残念で、20Mbps前後が最高値となり、時間帯によっては10Mbpsを切ることもある。データのアップロードや生配信といった、上りをメインとした用途には厳しいかもしれない。
実際の使用感としては、Webサイトの表示などで光ファイバー回線と比べて少し反応が鈍いかなという印象を受ける。特にGoogle マップで航空写真を表示した場合に、地図スクロールを速くしたあと、地図が表示されるまでの時間が少しかかる印象だ。また、YouTube動画を複数台や複数ウインドウで開いた場合、低画質になりやすい印象を受けている。
何日か使っているうちに気になるのはGoogleマップの表示だが、それ以外の不満は感じない。幸いにして上り回線の速度を求めるような使い方をしていないこともあるため、もし、クラウドストレージをフル活用するようになれば、不満を感じるかもしれない。
そのほかの設定
ルーターとしての設定項目は、通常のルーターと同様にさまざまな設定が用意されている。ホームルーターとして、通信回線側の設定項目としてAPN設定も可能となっている。たとえばMVNOのSIMをここに挿して使うといったことも一応は可能だ。
通信障害時に、他社回線の利用は?
最近のトレンドとして、通信障害時に他社回線を使ってフォローするということがある。そこで、HR02にドコモ以外、auやソフトバンク、楽天モバイルのSIMを挿入して通信はできるのだろうか。
実はHR02はSIMロックがかけられていない。手元にあったau(mineo Aプラン)、ソフトバンク(ワイモバイル)、楽天モバイルのネットワークを使ったSIMを挿入してみたが、APNなどの通信設定をすることで、いずれもデータ通信が可能になった。
ただし、筆者が試した限りでは通信ができたものの、これは動作保証外。そもそもHR02は通常のモバイル回線向けの機器ですらない。
この件をドコモに問い合わせたところ「HR01/HR02ともにSIMロックをかけていないため、他社回線を利用することは可能だが、ドコモとして動作保証はしていない」とのこと。
通信障害が発生した非常時には、他社SIMを挿入して障害回避に使えそうだが、動作保証がない点は十分理解したうえで使ってほしい。
HR02の価格が高くなるのはリスク?
最後に購入の際の注意だ。HR02になってLAN側の性能はアップしたが、そのかわり価格が大幅にアップしてしまった。HR01が3万9600円に対してHR02は7万1280円。ただし、ドコモのhome 5Gを使い続けるうちは、36回分の補助である「月々サポート」が1980円×36回あり、ちょうど36回払いの金額の1980円と同額となり、今や懐かしい言葉となった「実質0円」となる。
HR01のほうも同様で、36回払いの月々の支払いと同じ金額の「月々サポート」がつくため、こちらも実質0円。3年間使い続けるなら、HR02でもHR01でも支払い費用は同額となるので、ハイスペックなHR02を買ったほうが明らかにお得だ。
ただし、途中解約になると月々サポートがなくなるため、本体の分割払いの残金は支払い終えるまで払わないといけない。3年の間に何か事情が変わる可能性もあり、価格が高いということはその点がリスクと言えよう。
加入の際は、性能、エリアと料金プランや支払額をほかと比較して検討し、自分に合った回線を選んでほしい。