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ドコモ井伊社長が語る「home 5G」提供の狙い

 5月19日、NTTドコモは夏モデル発表会を開催した。テーマを「5G for individuals」と掲げ、新機種に加えて、5Gを活用する個人ユーザー向けサービスの拡大が発表された。本稿では、会見後半に実施された質疑応答の内容を、話題ごとにまとめてご紹介する。

ドコモ井伊社長

宅内向け「home 5G」について

――「home 5G」が提供されることになった。以前の本誌インタビュー(関連記事)でも強い意欲を示していたが、目標契約数や勝算など、提供にあたっての考えを聞かせて欲しい。あわせて料金がどのような考えで設定されたかも教えて欲しい。

井伊 基之社長(以下、井伊氏)
 (ウイズコロナ時代で)自宅内の需要が非常に高まるということで、現在の「ドコモ光」だけではなくて、工事不要で便利な、即開通できるWi-Fi環境を提供しようと考えた。

 拡大中の5Gのエリアで繋がると高速になる。最高速をなるべく提供したいということで、より速い環境がいいと思っている。

 目標値は考えていないが、「数年で100万契約に達すれば」と考えており、非常に楽しみにしている。

 料金については、やはり使い放題、容量無制限ということが大事だと思っている。今回の価格(月額4950円)は、4000円台、5000円を切ろうと言う感覚で設定した。

 もちろん競争の影響で今後はわからないが、基本的にこの価格はずっと維持したい、ワンプライスでいきたいと考えている。

――他社の宅内向けルーター製品では通信方式を絞ったり帯域を制限したりすることがある。今回4G/5G両対応になった理由は? 契約者の近隣で5Gエリアを整備していく考えは?

安部成司氏(プロダクト部部長)
 エリアとしては4Gが広い。いち早く製品を提供するうため4Gに対応した。今後は5Gエリアが順次拡大することになり、そちらも利用できるよう対応することになった。

 お客さまにあわせてエリアを拡充するという考えについて、決まったものはない。ただご利用環境にあわせてエリア展開していければと思っている。

――home 5Gは使い放題ということだが、ネットワークへの影響はどう対応しているのか。

井伊氏
 ヘビーユーザーの方にご利用いただくことも想定してる。混み合ったときにネットワーク側で帯域制御をする仕組みを入れている。ベストエフォートということで、混み合ったときには遅くなるかもしれない、ということになるが、可能な限り、きめ細かく制御してスピード(通信速度)を維持できるよう、今回かなりしっかり対応するような準備をしている。

――「home 5G」できめ細やかに帯域制御するとのことだったが、具体的にはどのような手法か? 5Gスマホとは違いがあるのか?

滝澤 暢氏(光ブロードバンド事業推進部サービス企画担当 担当部長)
 具体的なところは控えたいが、home 5Gに必要な部分もあったりするし、スマートフォンと同じところを使っているところもある。

 お客さまにご迷惑がかからないよう、ネットワーク側、サーバー側で制御する形としている。

――home 5G、どういった用途を想定しているのか

滝澤氏
 dTVを始めとするエンタメ系や、テレワークでのビデオ会議、それに付随するセキュリティといった利用を想定している。今後は、ホームIoTの広がりも検討していきたい。

 ドコモ光は700万契約を超えているが、工事時間を短縮したい、すぐ使いたいという声がある。どうしてもドコモ光が届かなかったところに今回応えたいと考えた。

――home 5G、登録住所だけでの利用となる理由は?

滝澤氏
 今回、ドコモ光に類似したサービスと考えている。そこで決められた位置ということで設計した。法的根拠に基づくものではない。加えて、「決めたところで使う」ことを前提にした価格設定になっている。

――home 5Gを単体で購入できない理由は?

滝澤氏
 わかりやすさを踏まえて提示することになった。

新機種について

――メーカーの発表会が先に実施されインパクトに欠けた部分もあったように思う。どう受け止めているのか。

安部氏
 3機種ほど先に発表されているが、お客さまの状況にあわせ、できるだけ早くお届けしたいと考えていた。

 今後について決まったことはないが、できるだけお客さまにあわせていきたい。

――他社と比べ、中国メーカーの採用がないようだが、その考えは?

安部氏
 ドコモとしては広くさまざまなラインアップを取り揃えたい。いろいろと話を進めた結果、こういうラインアップになったとご理解いただければ。

――他社は5G端末に特化するところもある。今回、4Gスマホを用意した背景を教えて欲しい。

渡邉 正明氏(プロダクト企画担当部長)
 ドコモとしては、基本的にニーズにあわせたラインアップを用意する方針だが、今回発表した4G端末は非常にお安い価格になっている。この価格を実現するには、今回は4Gとなった。

 今後は5Gへラインアップを振っていく。

5Gサービスの成長について

――5G契約が400万を突破し、今年度1000万目標とのことだが、これまでの経緯と今後の考えは?

井伊氏
 2020年10月ごろから端末がどんどん売れ始めたことがトリガーになっている。ただ、まだ5Gを実感していただけるサービスが充分整備されているとは思っていない。

 これから出していくが、せっかく新しい端末を買うのであれば、エリアも拡充されており、お客さまの期待も端末に集まっているのかなと思う。

 個人向けとしては当面はエンタメ、VRなどで切り開いていく。

 法人は、IoTなどソリューションをどんどん広げたい。今後はビジネス向けが(5Gの)牽引力になるだろう。

――今回の発表会は若年層に向けた取り組みが多かったように思う。どう意識して、今後どう取り組むか教えて欲しい。

井伊氏
 5Gには法人用途もあるが、今回は「5G for individuals」、個々人の方に向けた5Gをテーマにした。

 5Gのフロントランナーになっていただけるユーザーとなれば、若年層ということで、そこに受け入れられる内容を重視している。5Gは若者だけのものではないが、先駆けを作っていただきたいということで、そのようなラインアップになったと思う。

――新体感ライブCONNECTが終了するとのことだが、dTVへ統合されるということか。

山下 智正氏(コンテンツ戦略担当 担当部長)
 去年から巣ごもり需要などで、dTVがかなり好評をいただいている。新体感ライブCONNECTではライブ需要がかなり盛り上がっていた。

 このあたり、アプリをひとつにすることで、ライブ前~本番~終了後をシームレスに楽しんでいただけるようにして、さらに盛り上がりを広げたいと考えた。

――THECOOとの提携について聴きたい。リモートでのライブ配信とのことだが、スタッフも含めたフルリモートなのか。

山下氏
 フルリモートが目的ではなく、ライブ配信本数を増やしたいと考えている。

 アーティストが最先端ライブを簡単に実現できるということで、本数を増やしたい。
 dTV、THECOO以外のプラットフォームへの配信は現時点では考えていない。

――ここ最近、4Gから5Gへ切り替わるとき、通信しづらいという声がある。ドコモで把握しているのか。

太口 努氏(5G事業推進室 室長)
 そうしたご指摘に限らず、エリア関連では日々さまざまなご指摘をいただいている。電波伝搬の特性上、(繋がりにくいという事象を含め)可能性はゼロではない。

 個別の件では、まだ認識できていないところがあるかもしれないが、エリア改善を進めていきたい。