レビュー
ミリ波&5G SA対応の実力はいかに? “ドコモ史上最速”のルーター「Wi-Fi STATION SH-54C」を試す
2023年2月3日 00:00
ドコモからモバイルルーターの新製品「Wi-Fi STATION SH-54C」が1月16日に発売された。
5G対応モデルとしては3代目にあたり、今回のモデルでは5G SAとミリ波に対応していることが特徴で、ミリ波による超高速通信、5G SA(Stand Alone)に対応するため、SAのエリアではさらに高速でスムーズな通信ができることが期待される。
本稿では、「Wi-Fi STATION SH-54C」のレビューをお届けする。
5A SAに対応し、上りの速度上限も1.1Gbpsまで上昇
これまで、ドコモの5G対応の「Wi-Fi STATION」は2020年6月発売のSH-52A、2021年9月発売のSH-52Bがあり、SH-54Cは3代目となる。
いずれも5Gに対応するが、スペックは異なっており、ミリ波対応は初代SH-52Aと今回のSH-54Cのみ。5G SA(Stand Alone)対応はSH-54Cが初めてとなる。
受信時最大4.9Gbpsは先世代が4.2Gbpsに対して速く、送信時はSA対応ということで、従来の480Mbpsの倍以上となる最大1.1Gbpsとなり、スペック上「ドコモ史上最速ルーター」ということになる。
5Gの通信という面では過去最強ということになるが、5G部分の通信が速くても、問題はそこにつながる機器との間の通信方法だ。
各機器との接続では、Wi-Fi 6で最大2402Mbpsで接続が可能に
これまで5G対応「Wi-Fi STATION」はいずれもWi-Fi 6対応だったが、5GHz帯で最大1201Mbpsの通信にとどまっていた。ところが、今回のSH-54Cに関しては5GHz帯で最大2402Mbpsへと倍の速度の通信が可能になっている。
通信する側のパソコンやタブレットもWi-Fi 6で2402Mbpsに対応する必要があるが、5Gの高速通信を活用できることば喜ばしいこととなる。ちなみに、5GHz帯で2402Mbpsに対応する機器はパソコンに多いが、スマートフォンでは「Google Pixel 7/6」をはじめAndroidで各社のハイエンド機器などが対応している。
ただし、5GHz帯を使えば1Gbpsオーバーの通信が期待できるが、移動して使うモバイルルーターとしては、5GHz帯の利用は使い始めるまで時間がかかるなど少々使いにくい。すぐに通信をするには有線接続となり、USBや有線LANの接続が可能だが、5Gの超高速性を活かせる2.5ギガのイーサネットポートを搭載するのは初代のSH-52Aのみ。SH-54Cでは「USBテザリング」としてUSBによる接続となる。
SH-54Cの付属品に試供品として「USB-Ether変換ケーブル」があり、こちらを使って有線LAN機器を接続することもできるが、今回、試用機を使ってのレビューということで変換ケーブルは使っていない。
ちなみに、Wi-Fi接続で2402Mbpsの高速通信をしたい場合、屋外で登録などなしに使えるのはW56(5.6GHz帯)というバンドになるが、その場合、DFSという機能で衛星システムおよび気象レーダーに影響を与えないことを確認する時間が必要になる。モバイルルーターの電源を入れても起動時間に加えて、チェックする1分間が必要になるので、使い始めるまでの時間がさらに長くかかってしまう。
初期設定ではWi-Fiは2.4GHz帯となっており、2.4GHz帯なら起動後すぐ使えるが、最大573Mbpsの通信となり、5Gならではの速度を活かしにくい。
また、USB接続の場合でも、USB3.0以上の高速に通信できるケーブルを使わない限り、USB 2.0の規格上の480Mbpsで頭打ちになる。販売店のケーブルの棚を見てもらえればわかるが、ケータイ売り場のところにUSB 3.0以上に対応したケーブルはほとんど売られていないように、USB 3.0対応ケーブルは意外に出回っていない。USB 3.0以上のケーブルはあるとすればパソコン用のケーブル売り場ということになる。
街に連れ出す前に、自宅でチェックで通信の準備
さっそく連れ出したいところだが、まず、家で準備をしておきたい。まずやっておくのはWi-Fiの周波数帯を5GHz帯に設定しておくこととなる。最高速は不要で屋外で待ち時間なく使いたいというのならデフォルトの2.4GHz帯でもかまわないし、使っていて2.4GHz帯だから目に見えて遅いということはないが、せっかくの高性能を活かすなら5GHz帯への設定はマスト。
デフォルト設定では自動的に5GHz帯で2402Mbpsの通信ができる設定になっているが、ここも一応チェック。最高速を出すためには帯域幅が160MHzになっていることが必要だが、160MHz固定の設定はないので、「Auto」を選べば自動的に最高速の設定となる。
ノートパソコンと接続する場合に接続がWi-FiならSSIDとパスワードをチェックしておくが、USB接続の場合はSH-54C側がUSB Type-C、反対側がパソコンのUSBポート形状にあったケーブルを用意する。
両端がType-CのケーブルだとUSB 3.0以上対応かどうか見分けにくいので、パソコン側は従来ながらもType-A端子だと、端子部分が青色だとUSB 3.0と見分けやすい。
なお、起動に要する時間についても事前の準備で確認しておいたほうがいいだろう。デフォルトのクイック起動がオンの状態ではディスプレイが通信状態になるまで30秒程度、クイック起動がオフの状態では1分20秒程度。さらに5GHz帯がオンの場合、DFSに1分程度かかる。クイック起動のオンオフは本体ディスプレイのメニューから行う必要がある。
いよいよ実測
準備が整ったところで、街に繰り出して5Gのエリアでどのような使い心地を調べていきたい。まず、最高速が出る5G SAのエリアは現在、スポット的な展開となっており、数が少ない。今回のレビューでは、東京駅丸の内駅前広場で速度を計測した。
ただでさえ利用者が多く、駅前でもあり観光地ということもあって、写真を撮ってSNSにアップするなど、通信環境的には大混雑した場所、ということになるのだろう。持参した端末はSH-54Cと接続はGoogle Pixel 7で5GHz帯のWi-Fi 6で試してみた。
夕方の混雑前の15時過ぎから計測をはじめ、場所を微妙に変化させながら最高で下りで600Mbps台を記録するなど、5Gらしい速度を記録した。その反面、上り速度はまったく出ず、ひと桁~20Mbps程度。これは周囲で記念写真を撮ってSNSアップなどをしている影響もあるかもしれない。
残念ながら、SH-54Cでは5G SAで通信しているかNSAなのかを知る表示モードなどがない。本体ディスプレイにも、接続端末のWebブラウザから設定画面を開いても表示しているところはない。
ただ、それでも高速な通信ができ、データも素早く流れてきているため、5Gの有効性は高いと思われる。現在ではSH-54Cを使うメリットは少ないかもしれないが、この先、5Gのエリアや基地局がさらに増え、SA方式のエリアも拡大されたときには真価を発揮すると思われる。
なお、混雑がないと思われる深夜帯も計測してみたが、下りは高速にならないものの、上りは100Mbpsを超えることもあり、アップロードが高速という5Gの真価に迫ることができた。
5G SA対応でこの先が楽しみなモバイルルーター
SH-54Cを使ってみて、実際のところ接続したパソコンで速度の違いを感じるかというと、なかなか感じにくい面があるが、高速なモバイルルーターとして、しばらく使ったあとに、4Gのモバイルルーターを使えば、速度の差を感じ取れると思われる。
ただし、現状では5Gのエリアはかなり広がったとはいえ、ドコモの言う「瞬速」となる5Gがすべてではなく、今回のようなSAもミリ波もエリアとしてはかなり限られた場所となる。
今後、SH-54Cが真価を発揮するのは、カフェやコワーキングスペースで備え付けのWi-Fiではなく自前のモバイルルーターを使いたいところが、ミリ波や5G SAのエリアになったようなときなどだ。外出先で自分だけの比較的セキュアな回線が、どこに行ってもギガビットクラスの速度で利用できることは、非常に楽しみだ。