レビュー

フォーマルなルックスとヘルスケアを両立、「HUAWEI WATCH GT 3 Pro」

 Googleが同社初となるスマートウォッチ「Pixel Watch」を発売したことから、最近またあらためてスマートウォッチに注目が集まっている。筆者は現在「Amazfit GTR 3 Pro」を常用しており、スケジュール確認やメッセンジャーの通知、日常的な運動や睡眠の記録などに役立てている。

 スマートウォッチが注目された理由の1つに、デジタルヘルスケアとの相性の良さがあるわけだが、タフに設計すればどうしてもスポーツウォッチに近くなっていき、フォーマルなスタイルになりにくい。

 今年7月に国内でも発売を開始した「HUAWEI WATCH GT 3 Pro」は、そんな中にあって比較的フォーマルなシーンにも対応できるデザインが特徴である。シリーズには46mmと43mmがあり、デザインもかなり違っている。今回はシリーズ中の46mm グレーモデルをお借りすることができた。公式ストアでの価格は、4万7080円となっている。

「HUAWEI WATCH GT 3 Pro」グレーモデル

 スマートウォッチはディスプレイの形状から角形と丸形があるが、筆者は個人的な好みから、これまで丸形を愛用している。角形はなにをどうやっても「スマートウォッチ感」が薄れないが、丸形は比較的普通の時計と見分けが付きにくいこともあり、オールマイティなシーンに対応できるように感じている。

 46mmモデルにはほかにブラックモデルもあり、こちらはエラストマーベルトになっている。グレーモデルはレザーベルトゆえに、よりフォーマル感が高いところがポイントである。ボディおよびリューズはチタン製で、肌に触れるリアケース部はナノセラミックを採用している。ディスプレイは1.43インチで、表面はサファイヤガラスで覆われている。

ベルト裏面はブラウン

 OSはHarmonyOSを採用しており、操作体系としてはリューズのプッシュがメイン機能と文字盤の切り替え、右下の機能キーには特定の機能を割り当てられる。上から下へのスライドで設定画面、下から上のスライドでメッセージ確認。左から右で天気と音楽再生、右から左で検出したバイタルデータなどが確認できる。

リューズもチタン製

 昨今のスマートウォッチで注目されるのは、バッテリー持続時間だ。Pixel Watchが24時間程度しか保たないということが明らかになると、あちこちから落胆の声が聴かれた。Apple Watch Series 8では、標準18時間、低電力モードで最大36時間となっている。Apple WatchもPixel Watchも、上位モデルではLTEによる通信機能を持つことから、消費電力が高くなるという事情はある。だが毎日寝る時に充電するようでは、睡眠時間のモニターなどに支障が出るところだ。

 昨今のLTE非対応モデルのバッテリー持続時間は、飛躍的に向上している。例えばバッテリー持続時間に注力したAmazfit GTR 3では最大21日、上位モデルのAmazfit GTR 3 Proでも最大12日となっている。実際の使用感としては10日ぐらいだが、すでにスマートウォッチを毎日充電するというのは、感覚的には時代遅れになりつつある。

 HUAWEI WATCH GT 3 Proは、通常使用で約14日間を謳っている。執筆時点ではフル充電から使い始めて5日目だが、バッテリー残量は55%となっている。概ね10日ぐらいは保つと考えていいだろう。せめてこれぐらいが、LTEなしスマートウォッチのスタンダードであるべきだろう。

付属充電器はワイヤレス給電タイプ

HarmonyOSなら簡単運用

 HUAWEI WATCH GT 3 Proは、スマートフォンアプリ「Huawei Health」との連携が必須となっている。ただご承知のようにHUAWEIは2019年頃から、トランプ政権下の米国で輸出禁止措置を受けており、Googleから閉め出されている状態である。Android OSの代わりにHarmonyOSを開発するも、Google Playが使えないという苦しい立場に追い込まれている。

スマートウォッチと連携には必須のアプリ「Huawei Health」

 したがってAndroidユーザーがHUAWEI製品を使おうと思ったら、2020年に登録された古い「Huawei Health」をGoogle Playからインストールし、そこからapk形式のアップローダーをダウンロードするか、あるいは自分でHUAWEIのサイトへ行って直接ダウンロードし、インストールする必要がある。いわゆるサイドローディングするわけである。

公式アプリからサイドローディングしていく必要がある

 サイドローディングしたアプリには通知や自動起動、バックグラウンドアクティビティなどの機能が制限されているので、それらのパーミッションを手動で許可していく必要がある。

アプリからはパーミッション変更手順が示される

 これらの知識があり、自分でリスクも取れるユーザーであれば問題ないのだが、一般的なユーザーには難しいだろう。また単に「難しい」だけでは済まず、意味もわからずこうしたパーミッション設定手法だけを覚えてしまうことで、悪意のあるアプリも自ら動くよう設定してしまえるという、一種のトレーニングになるというリスクも存在する。

 HUAWEI製品は日本での評価も高いが、こうした米国での制裁のリスクを日本人が払っているという状況は健全とは言えず、一部知識のある方にしか製品をお勧めできないところは、ご理解いただきたい。こうした事情から、今回はHUAWEIからHarmonyOS搭載のスマートフォン「HUAWEI P40 Lite 5G」も一緒にお借りし、このセットでレビューを行なっている。

 HarmonyOS上でのペアリングは、Andorid上とは違って簡単だ。アプリを立ち上げるだけでペアリングのアラートが出るので、必要な項目にチェックを付けて「DONE」を押すだけで完了である。ペアリングの時はなぜか英語表記だが、アプリ自体は日本語表記である。

HarmonyOS上では簡単にペアリング完了

 無料版も沢山あるので、まずはそちらから試すのがいいだろう。フィットネスに特化したものも多いが、リアルな時計に近いものもあり、フォーマルなシーンでも使えそうなものが多い印象だ。

比較的フォーマルでも使えるものが多い

 ウォッチのリューズを押すと、アイコン上に並んだ機能一覧が表示される。リューズの回転で拡大縮小できるあたりは、Apple Watchの影響だろう。この一覧画面は、設定でリスト表示にも変更できる。

アプリの並べ方にはApple Watchの影響が感じられる
運動達成率の表示も似ている

 機能的には多くのスマートウォッチで提供されているものと遜色ない印象だが、個人的に気に入ったのは、「Healthy Living」というタスク管理アプリである。仕事のスケジュールとは別に、起きてから寝るまでのタスクを設定できるのだが、薬のリマインダーが設定できるのがありがたかった。

1日のタスクを設定できる「Healthy Living」

 筆者は滋養強壮のために漢方薬の服用を勧められているのだが、これが「食間」という微妙な服用時間なのである。食前や食後なら忘れないのだが、特に昼食の時間が大きくブレたりすると、食間という時間タイミングを忘れがちである。これがリマインドできるので、飲み忘れがなくなった。曜日ごとに別れたピルケースなどいらないという、イカしたジイサンになれそうな機能である。

 フィットネスとしては、筆者は午前中にだいたい決まったコースをサイクリングしている。Amazfitでは運動を始めると、自動的に記録モードに変わるので、手間いらずである。本機もそうした自動モードを備えているが、起動は若干不安定である。

 初日は画面表示がフィットネス記録モードに遷移しなかったので、記録していることに気がつかず、途中で手動スタートに変更したために記録が中断されてしまった。2日目は自動で記録されるものと思ってそのまま運動したが、なんとまったく記録されていなかった。3日目は最初から手動で設定したので、ここでようやく全行程がちゃんと記録された。

手動でスタートしてようやく全行程が記録された

 サイクリング中の測定画面は、なかなかわかりやすい。一番見たいのは速度と距離なわけだが、これが中央にあり、「速度」「距離」といった単位も大きいので、運動を止めずにチラ見しただけでも認識できる。

サイクリング中の測定画面

 運動後はアプリのほうで、心拍数の変化と速度の関係を同じ時間軸で見比べられるので、運動に対する負荷がわかりやすい。今回はアップダウンのない平坦なルートだったが、もっと高低差のあるルートだったら速度や負荷との関係が面白いデータになっただろう。

運動後は様々なデータを比較検討することができる

 睡眠に対する分析は、通常の睡眠に加えて昼寝の時間も考慮してくれるため、現実的なデータが取れる。ウォッチによっては、昼寝することを想定していないものもあるのだ。

睡眠の分析

 また深夜に目覚めたタイミングや二度寝の測定も正確だ。明け方に起き出して1回原稿の手直しをした時間や、そこからもう一度寝たのも記録されている。ウォッチによっては、一度起きたらそれ以降は睡眠測定モードを抜けてしまうものもある。

総論

 「HUAWEI WATCH GT 3 Pro」のグレーモデルは、フォーマルなルックスではあるが、機能的にはフィットネス系のスマートウォッチと機能的には変わりなく、同じように利用できる。ただレザーベルトが、長期間の汗や汚れなどにどれぐらい耐えられるのかは未知数で、フィットネスの記録を中心に考えるならブラックモデルのほうがいいだろう。

 フィットネスに使わないのであれば、リマインダやタイマー機能、天気概況、気圧計といった機能が充実しており、使い勝手は悪くない。SNSなどの通知などは、HarmonyOSではどこかからかapkファイルを拾ってきてサイドローディングしないといけないこともあり、今回はテストしていない。

 ハードウェア的には満足度も高い(がお値段もそこそこする)モデルだが、Androidで専用アプリを使う場合のリスクをご理解のうえ、活用していただきたい。