レビュー

グーグル「Pixel Watch」の決済機能を徹底的に試してみる(中)

【Suica編】

 10月7日に発売された、グーグル初のスマートウォッチ「Google Pixel Watch」。全般的なレビューはこちらの記事で紹介済みだが、本稿ではGoogle Pixel Watchに搭載される決済機能「Google Pay」に焦点を当て、詳しく紹介する。

 上・中・下の3回に分けてお届けする予定で、今回は「クレジットカードの登録」に焦点を当てた「上」に続き、主に「Suica」に関して紹介する。

既存モバイルSuicaの転送は、おサイフケータイアプリの機種変更手続きを利用

 Pixel WatchにSuicaを登録する方法は、すでにスマートフォンで利用しているモバイルSuicaを転送する方法と、新規にPixel Watch版Suicaを発行する方法の2種類がある。いずれもPixel Watchとペアリングしたスマートフォンから作業を行うことになる。

 スマートフォンの「Watch」アプリを起動し、メインメニューの「Google」をタップし、サブメニューの「Google Pay」をタップすると、Google Payの設定メニューが現れる。このGoogle Pay設定メニューから、Pixel Watch版Suicaの新規発行や既存モバイルSuicaの転送を行う。

 まず、既存モバイルSuicaをPixel Watchに転送する方法だ。Pixe Watchに登録するGoogleアドレスに紐付いたモバイルSuicaアカウントでモバイルSuicaを発行済みであれば、そのモバイルSuicaをPixel Watchに転送して利用可能となる。

 その場合は、まず発行済みのモバイルSuicaをクラウドに預ける機種変更手続きを行っておく必要がある。

 既存モバイルSuicaを登録しているスマートフォンで「おサイフケータイ」アプリを起動し、マイサービスに表示されているモバイルSuicaの右上にある「メインカードの確認・切替」と書かれた部分をタップ。するとモバイルSuicaの詳細情報が表示されるので、その下部にある「カードを預ける(機種変更)」と書かれた部分をタップし、画面表示に従って進めると、そのモバイルSuicaがクラウドに預けられる。

既存モバイルSuicaをクラウドに預ける手順
既存モバイルSuicaが存在するスマートフォンで「おサイフケータイ」アプリを開き、モバイルSuica右上の「メインカードの確認・切替」をタップ
モバイルSuicaの詳細メニュー下部にある「カードを預ける(機種変更)」をタップし、サブメニューで「はい」をタップ
最終確認メニュー下部の「預ける」をタップ
「カードを預けました」と表示されれば作業終了

 ここまでの作業が終了したら、スマートフォンのPixel WatchアプリからGoogle Pay設定メニューを開き、「新しいカードを追加」メニューから「Suica」をタップして先に進む。

 すると、「Suicaの既存カード」というメニューが表示され、先ほどクラウドに預けたカードが表示される。

 そして、表示されているカードをタップしてしばらく待つと、その既存カードがPixel Watchに転送され、利用可能となる。すでにチャージしていた残金もそのまま転送されるので、転送直後からそれまで同様に利用可能となる。

 なお、今回は実際に試していないが、Pixel WatchではモバイルSuica定期券に対応していないため、既存のモバイルSuica定期券はPixel Watchに転送できないものと思われる。

Pixel Watchで預けたモバイルSuicaを受け取る手順
Google Pay設定メニュー内の「新しいカードを追加」メニューから「Suica」をタップ
「Suicaの既存カード」というメニューに預けたモバイルSuicaが表示されるので、タップ
「スマートウォッチで公共交通機関を利用できるようになりました」と表示されたら受け取り完了
転送前の残高もそのまま引き継いで受け取れる

Pixel Watch版Suicaの新規発行でトラブル多発

 それに対し、Pixel Watch版Suicaの新規発行では、筆者が試している限り、さまざまな問題が発生している。

 まず、現時点で問題なくPixel Watch版Suicaを新規発行できているのが、モバイルSuicaアカウントが紐付けられていないGoogleアカウントを利用する場合だ。

 Pixel WatchアプリでGoogle Pay設定メニューを開くと、「新しいカードを追加」メニューが表示されるので、そこから「Suica」をタップしてSuicaの新規発行を行う。

 既にPixel Watchにクレジットカードかデビットカードが登録されている場合には、Pixel Watchに登録されているカードの一覧が表示されるので、下部の「スマートウォッチに追加」ボタンをタップすることで、新しいカードを追加メニューが表示されるので、そこから作業を進めることになる。

 続いて「Suicaアカウントを作成します」というメニューが表示されるので、登録するメールアドレスやパスワード、氏名、住所の郵便番号、電話番号、性別を入力する。それらの入力が完了したら、下部の「アカウントを作成」ボタンをタップする。

 その後しばらく待ち、「スマートウォッチで公共交通機関を利用できるようになりました」と表示されれば、Pixel Watchに登録したGoogleアカウントに紐付いたモバイルSuicaアカウントと、Pixel Watch用のモバイルSuicaが同時に新規発行され、Pixel Watchに新規発行したSuicaが登録される。

Pixel Watchに登録されているカードの一覧が表示される場合は、下部の「スマートウォッチに追加」ボタンをタップ
「新しいカードを追加」メニューで「Suica」をタップ
「Suicaアカウントを作成します」メニューで、メールアドレスやパスワード、各種個人情報を入力し、下部の「アカウントを作成」ボタンをタップ
「スマートウォッチで公共交通機関を利用できるようになりました」と表示されれば作業完了

 それに対し、登録したGoogleアカウントにモバイルSuicaアカウントが紐付けられている場合には問題が多発。筆者が試している環境では、現時点でPixel Watch版Suicaの新規発行は1度も成功していない。

 まず、Pixel Watchとペアリングしたスマートフォンに、Pixel Watchに登録したGoogleアカウントと紐付いたモバイルSuicaアカウントで作成したモバイルSuicaが存在している場合、Pixel Watch版Suicaの作成作業を進めてもモバイルSuicaのチャージ画面に遷移してしまい、作成できない。

 そこで、その既存モバイルSuicaを、おサイフケータイアプリでクラウドに預けた後に、再度Pixel Watch版Suicaの作成作業を進めてみると、こんどは「Suicaの既存カード」メニューが表示された。しかし、下部の「新しいカードを作成する」ボタンをタップしても、先ほど同様にモバイルSuicaのチャージ画面に遷移してしまう。もちろんチャージしようとしてもエラーとなるし、Pixel Watch版Suicaの新規作成も行えない。

登録したGoogleアカウントにモバイルSuicaアカウントが紐付けられている場合、何度やってもモバイルSuicaのチャージ画面に遷移してしまい、Pixel Watch版Suicaを新規作成できなかった

 次に、Pixel Watchに登録したGoogleアカウントと紐付いたモバイルSuicaアカウントで作成したモバイルSuicaが、Pixel Watchとペアリングしていないほかのスマートフォン内に存在する場合だ。

 その状態でPixel WatchアプリでSuicaを作成しようとすると、モバイルSuicaアカウントの新規作成画面に遷移してしまう。しかし、1つのGoogleアカウントには1つのモバイルSuicaアカウントしかひも付けられないという制約があるため、ここでモバイルSuicaアカウントを新規作成しようとしてもエラーとなってしまう。

 そして、その既存モバイルSuicaが存在しているスマートフォンのおサイフケータイアプリでモバイルSuicaをクラウドに預けた後に、再度Suicaの作成作業を進めてみた。

 ただ、その先の挙動は先ほどと同じで、「Suicaの既存カード」メニューは表示されるが、下部の「新しいカードを作成する」ボタンをタップして進めてもチャージのメニューに遷移し、チャージも新規作成も行えない。

作成済みのモバイルSuicaが他のスマートフォンに存在する場合には、Pixel Watch版Suicaを新規作成しようとするとモバイルSuicaアカウントの新規作成メニューに遷移してしまう
1つのGoogleアカウントには1つのモバイルSuicaアカウントしかひも付けられないという制約があるため、そのまま作業を進めてもエラーとなる

 なお、既存モバイルSuicaを、モバイルSuicaの会員メニューサイトから退会・Suica払いもどし手続きを行えば、上記の問題が発生することなく、新たにPixel Watch版Suicaを新規作成できることが確認できた。

過去にモバイルSuicaを作成済みのモバイルSuicaアカウントから、その既存モバイルSuicaをモバイルSuicaの会員メニューサイトで退会・Suica払いもどし手続きを行った後であれば、新たにPixel Watch版Suicaを新規作成できた

 以上のことから、過去にモバイルSuicaを作成したことがあり、そのモバイルSuicaがいずれかのスマートフォンに存在しているモバイルSuicaアカウントと紐付いたGoogleアカウントを利用する場合には、Pixel Watch版Suicaの新規作成の過程で問題が発生する可能性がある。

 とはいえ、いろいろと調べてみると、Pixel WatchとペアリングしたスマートフォンにモバイルSuicaが存在する場合でも、Pixel Watch版Suicaを問題なく新規作成できたという報告も確認している。そのため、ここまで紹介した問題が全ての環境で発生しているわけでもなさそうだ。

 とにかく、これらの問題についてGoogleおよびJR東日本には、いち早く原因を究明し改善してもらいたいと思う。

Pixel Watch版Suicaへのチャージ方法

 Pixel Watchに登録したSuicaへの料金のチャージ方法としては、Google Payからクレジットカードでチャージか、駅の券売機やコンビニエンスストアなどでの現金チャージが利用できる。現金チャージの方法はカード版Suicaと基本的に同じなので、ここではGoogle Payでのチャージ方法を紹介する。

 なお、Google PayからクレジットカードでPixel Watch版Suicaにチャージを行いたい場合には、あらかじめスマートフォンのGoogle Payにクレジットカードを登録しておく必要がある。ここでは、すでにスマートフォンのGoogle Payにクレジットカードが登録されているとして進めていく。

 Pixel Watch版Suicaへのクレジットカードチャージは、スマートフォンのPixel Watchアプリから行う。

 Pixel Watchアプリを開いて「Google」→「Google Pay」とタップすると、Pixel Watchに登録されているカードが一覧表示される。

 そこに表示されているSuicaをタップすると、Suicaの詳細情報や残高などが表示されるので、そのメニューにある「チャージする」ボタンをタップ。すると、チャージメニューに切り替わるので、利用したいクレジットカードを選択するとともに、チャージしたい金額を入力して、下部の「チャージする」ボタンをタップ。そして、カード裏面のセキュリティコードの入力が求められた場合には、入力して作業を進めると、チャージが完了する。

 このように、Google Payからのチャージを行う場合には、Pixel Watchとペアリングしたスマートフォンが必ず必要となる。できればPixel Watch単体でもチャージできると良かったが、それでもGoogle Payに登録したクレジットカードから場所を問わず簡単にチャージできるのは、大きな利点と言える。

 ちなみに、Pixel Watchのリューズをダブルクリックして表示されるSuicaの券面をタップし、下部の「スマートフォンで開く」をタップすると、ペアリングしたスマートフォンで直接Pixel WatchアプリのSuica詳細メニューが表示される。この方法なら、スマートフォンでPixel Watchアプリを起動したりメニューをさかのぼる手間が省けるので、チャージ時に便利に活用できそうだ。

登録カード一覧からSuicaをタップ
Suicaの詳細メニューにある「チャージする」ボタンをタップ
カードのセキュリティコードの入力が求められた場合には入力し作業を進めると、チャージが完了
このように、問題なくチャージが行えた
Pixel Watchのリューズをダブルクリックし、Suica券面をタップして表示されるメニューから「スマートフォンで開く」をタップすると、スマートフォンでPixel WatchアプリのSuica詳細メニューが直接開くので、チャージ時などに便利だ

 ところで、Pixel Watch版Suicaでは、Pixel WatchのメニューやスマートフォンのPixel Watchアプリを利用してもオートチャージは設定できない。

 しかし、知り合いがオートチャージを設定している既存モバイルSuicaをPixel Watchに転送してみたところ、以前同様にオートチャージが有効だったという。

 あらかじめスマートフォンの「モバイルSuica」アプリでオートチャージを設定しておく必要があるが、Pixel WatchのモバイルSuicaでもオートチャージを有効にしたいなら、そちらも試してみるといいだろう。

 ただし、この方法でPixel WatchのモバイルSuicaでオートチャージが利用可能になるとしても、実際にオートチャージが可能な場所はスマートフォンのモバイルSuicaなどと同じで、首都圏Suica/PASMOエリア、仙台エリア、新潟エリアの駅自動改札機や一部の車載機に限られる。

スマートフォンのモバイルSuicaアプリでオートチャージを設定したモバイルSuicaをPixel Watchに転送すれば、Pixel Watchでもオートチャージが有効のまま利用できるようだ

Suicaはそのままタッチで利用可能

 では、実際の決済の様子を紹介しよう。

 まずはPixel Watch版Suicaからだ。こちらは公共交通機関での利用や物品購入時など、特別な操作は不要で、そのままPixel Watchをカードリーダーにかざすだけでいい。

 実際に公共交通機関の自動改札を通過してみたり、自動販売機や店舗で商品を購入してみたが、スマートフォンのモバイルSuicaやカード版Suicaと変わらず、カードリーダーにかざすと素早く反応し、スムーズに自動改札の通過や物品の購入が可能だった。

 ただ、通常自動改札機のカードリーダーは進行方向右側にあるため、Pixel Watchを左手に装着しているとかなりタッチしづらい印象。こればかりは、スマートウォッチ全般の問題であり、Pixel Watchの問題とは言えないだろう。

 決済の履歴は、Pixel WatchのSuicaのメニューか、スマートフォンのPixel WatchアプリのSuicaメニューから確認できる。Pixel WatchのSuicaメニューは、リューズをダブルクリックしてSuica券面をタップすると呼び出せる。

 いずれも、メインメニューでは直前の決済情報が、履歴メニューでは過去の決済履歴を確認できる。物品購入はどこで購入したかの情報は表示されないものの、公共交通機関での利用では、どこからどこまで利用したのかも表示される。

Pixel Watch版Suicaで店舗や自動販売機で商品を購入する場合には、Pixel Watchをそのままカードリーダーにかざすだけで決済が行われる
Pixel WatchのSuica詳細メニューを開くと、直前の決済情報が表示される
詳細ボタンをタップすると、過去の決済履歴が表示される
決済履歴は、Pixel WatchアプリのSuica詳細メニューでも確認可能
Pixel Watchアプリでも過去の決済履歴を確認可能だ

タッチ決済はリューズをダブルクリックしてタッチ

 次に、クレジットカード、デビッドカードのタッチ決済だ。こちらはPixel Watch版Suicaと異なり、決済前の操作が必要となる。その操作とは、Pixel WatchでのPIN入力またはパターン入力と、リューズのダブルクリックだ。

 PIN入力またはパターン入力については、決済時に毎回必要というわけではなく、Pixel Watchを腕に装着した後に1度だけ行えばいい。通常は、装着直後にPIN入力またはパターン入力が促されるため、そこで入力しておけば、その後Pixel Watchを腕から外すまで再入力不要。Pixel Watch装着後、タッチ決済前にPINやパターンの入力を行っていなかった場合には入力が必要となるが、ほとんどの場合、タッチ決済前にPINやパターンの入力は不要と考えていい。

 となると、実質上決済前に必要な操作は、リューズのダブルクリックとなる。リューズをダブルクリックすると、Pixel Watchに登録されているクレジットカード、デビットカードの券面と、上部に「リーダーにかざす」と表示される。この状態でカードリーダーにかざすことで、タッチ決済が行える。

 今回、いくつかの店舗で試してみたが、カードリーダーによって反応速度がやや異なるものの、おおむねスムーズに読み取って決済が行えた。さきほどのSuicaでの自動改札通貨と同じように、カードリーダーの位置によってはタッチしずらいこともあるが、基本的にはスマートフォンや物理カードでのタッチ決済とほぼ同感覚で利用できる。

 そして、こちらもSuica同様に、Pixel Watchのカードのメニューか、スマートフォンのPixel Watchアプリのカードメニューから確認できる。メインメニューには直近の決済情報が、履歴メニューでは過去の決済も確認できる。利用店舗によっては、利用店舗の地図や店舗情報などの詳細な情報を閲覧できる場合もある。

タッチ決済を利用する場合、決済までにPINまたはパターン入力認証を行っておく必要があるが、Pixel Watch装着後に1度でも認証を行っておけば、それ以降Pixel Watchを外すまで入力の必要はない
Pixel Watch装着後にPINやパターン入力を行っていれば、リューズをダブルクリックしてカード券面を表示させるだけで決済が可能だ
Pixel Watchのカード詳細メニューに直前の決済情報が表示される
Pixel Watchアプリのカード詳細メニューからも決済情報を確認できる
過去の決済履歴も参照可能
利用した店舗によっては、詳細な店舗情報を閲覧できる場合もある

Suicaは電源オフでも利用できた

 ところで、ペアリングしたスマートフォンやネットワークから切断された状態でも決済できるか試してみた。利用したPixel WatchはLTE対応版だったが、SIMは非装着状態で利用。それでも念のため機内モードに設定するとともに、Wi-Fi、Bluetooth共にオフに設定。またペアリングしたスマートフォンも電源を落としておいた。

 その状態で試してみたところ、Suica、タッチ決済のいずれも問題なく決済できた。このことから、Wi-Fi版のPixel WatchでもPixel Watchのみを装着しペアリングしたスマートフォンを持ち出さなくても決済できるはずで、これはなかなか便利だ。

 また、Pixel Watchの電源を切った状態でも決済できるか試してみた。この場合、タッチ決済は事前のPINまたはパターン認証が行えないため、決済不可能。それに対しSuicaは問題なく決済できた。念のため、電源を切った直後と、電源を切って5時間ほど経過した状態で試してみたが、いずれも問題なく決済できた。今回は購買のみを試したが、おそらく公共交通機関も利用できるものと思われる。

 Pixel Watchはバッテリー駆動時間が最大24時間と短く、充電忘れで外出時にバッテリー切れになることも容易に想像できる。そのため、電源オフでもSuicaが使えるのは心強い。とはいえ、スマートフォン同様に、バッテリーが完全に切れてNFC/FeliCaチップへの給電が途絶えると、Suicaも利用できなくなる可能性が高い。そういった意味では、過信は禁物だ。

スマートフォンとの接続やネットワーク接続、Wi-Fi接続が失われた状態や、Pixel Watchの電源がオフの状態でもSuicaは決済が可能だった
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