レビュー

ゲーマーが試す! 「AQUOS zero2」の実力

軽さは正義! カジュアルゲーマーにも最適な異色のハイエンド機

シャープが繰り出す第2のハイエンド機

「AQUOS zero2 SH-01M」

 AQUOSシリーズを展開するシャープから、ゲーミングスマートフォン「AQUOS zero2」が登場する。今回は1月30日に発売となるNTTドコモ向けの「SH-01M」をお借りできたので、実際にゲームを試して実力を見ていく。

 シャープのAQUOSシリーズには、ゲーミング機である「AQUOS zero」シリーズのほかに、ハイエンド機の「AQUOS R」シリーズがある。最新の「AQUOS R3」は先に発売されており、搭載するチップセットはどちらもSnapdragon 855だ。

 つまり「AQUOS zero2」は、既に「AQUOS R3」というハイエンド機がありながら、あえて作られたゲーミング機ということになる。こういった展開をするメーカーは決して多くない。そこにどんな狙いがあるのかも考えながら見ていきたい。

 まずは主なスペックを確認していく。同じくNTTドコモ向けである「AQUOS R3 SH-04L」のスペックも並べて比較してみよう。

【AQUOS zero2 SH-01M】【AQUOS R3 SH-04L】
チップセットSnapdragon 855(2.8GHz+1.7GHz)
メモリー(RAM)8GB6GB
ストレージ(ROM)256GB128GB
通信機能IEEE 802.11a/b/g/n/ac
カードスロットなしmicroSDXC
ディスプレイ約6.4インチ有機EL、1,080×2,340ドット約6.2インチPro IGZO、1,440×3,120ドット
スピーカーステレオ
バッテリー容量3,130mAh3,200mAh
充電方式USB PD(別売)
SIMカードnano SIM
重さ約141g約185g
大きさ(高さ×幅×厚さ)約158×74×8.8mm約156×74×8.9mm
OSAndroid 10Android 9(Android 10へバージョンアップ予定)
価格(税込)87,912円90,288円

 チップセットはどちらもSnapdragon 855で、クロックも同等。メモリーは「AQUOS R3」が6GBなのに対し、「AQUOS zero2」は8GBに増量されている。大量のアプリを起動してメモリーを使い切るようなことがなければ、処理性能はほぼ同等と考えていい。

 ストレージは「AQUOS R3」の128GBから、「AQUOS zero2」は256GBへと倍増している。さらにUFS 3.0に対応したことで、書き込み速度が2倍、読み込み速度が1.8倍に高速化したとしている。ゲームの起動時間では有利に働くだろう。ただし「AQUOS zero2 SH-01M」にはSDXCカードスロットがないため、写真や動画などのデータも内蔵ストレージで扱うことになる。

 ディスプレイは「AQUOS R3」がPro IGZO液晶、「AQUOS zero2」は有機ELを採用している。有機ELは液晶よりも応答速度が高速なので、シビアなゲームには適している。ただし解像度に関しては、「AQUOS R3」が1440×3120ドットなのに対し、「AQUOS zero2」は1080×2340ドットと、解像度が下がっている。

 ゲームにおける解像度の向上は、単純な画質の向上に加え、3Dゲームで小さな敵も見つけやすくなる等のメリットがある。しかし解像度が上がれば描画処理が増え、フレームレートが低下するというデメリットもある。この点は遊ぶゲームによるため、一概にどちらが良いとは言えない。

 バッテリーは「AQUOS R3」が3,200mAh、「AQUOS zero2」は3,130mAhで、僅かに減少している。3,000mAhもあれば大容量と言われることもあるが、ゲームアプリ、特に描画負荷が大きい3Dゲームはバッテリー消費が大きくなるため、最近のゲーミングスマートフォンはより大容量のバッテリーを搭載する傾向がある。

 本機のバッテリーが比較的小容量な最大の理由は、軽量化だ。重量は「AQUOS R3」の約185gから、「AQUOS zero2」は約141gと、大幅に軽量化されている。ハイエンドチップセットを搭載するゲーミングスマートフォンとしては異様なほどの軽さで、本機の最大の特徴と言える。

 価格は執筆時点(1月27日)のドコモオンラインショップで、「AQUOS zero2 SH-01M」が87,912円となっており、「AQUOS R3 SH-04L」より2,000円強ほど安く設定されている。新製品の方が高そうなものだが、あくまで用途が違うということなのだろう。

重量は実測で140g(nano SIM未挿入)

「ハイレスポンスモード」など洗練されたゲーミング向け機能

通知パネルに表示されるゲーミングメニュー。複数の機能がまとめられている

 本機にはゲーム向けの機能がいくつか用意されている。その筆頭となるのが「ハイレスポンスモード」だ。通常は60Hzとなるタッチパネルの入力を240Hzに高速化し、入力遅延を大幅に減らす。またタッチの時間が短すぎて60Hzの認識から漏れる「タップ抜け」も防げるとしている。

 同時に画面の描画も高速化。通常は60Hzで描画されるところを120Hzに倍速化するとともに、間に黒画面を挿入することで残像感を低減し、疑似240Hzで駆動している。「ハイレスポンスモード」という名前から、入力の高速化だけなのかと思ってしまうが、描画の高速化とセットで動く機能となっている。

 ゲームアプリを起動すると、通知パネルにゲーミングメニューが表示される。このゲーミングメニューを使うかどうかはアプリごとに選択できるが、本稿で使用する4つのゲームアプリはGoogle Play外からインストールした「フォートナイト」を含めて自動で登録されており、それ以外のアプリは登録されていなかった。

 ゲーミングメニューではハイレスポンスモードのオン・オフができるほか、ゲーム起動中の通知をブロック(電話の着信もブロックするか別途設定可能)、録画、ゲームタイトルの攻略サイトやYouTube動画の検索もできる。録画はワンボタンでスタートでき、ゲーム内音声だけでなくマイクで話し声も録音できる(マイクの録音をしない設定も可能)。使い勝手のいい機能が通知パネルにうまくまとめられている。

通知ブロックの設定で、電話の着信もブロックできる
録画の画質や、入力される音声も調整可能
動いているゲームの攻略サイトもすぐ検索できる
YouTubeの攻略動画も探せる
ワンタッチ検索に使うキーワードも変更できる
ゲーミングメニューを使うアプリは手動で設定できる。ゲーム以外のアプリでも利用可能だ

 さらにゲーミングメニューでは詳細設定が用意されている。「ゲーム画質」を使うと、映像の暗い部分がやや明るく見えるようになり、ゲームによっては有利に働く。また「パフォーマンス」では、「高精細表示を優先する」と「軽快動作を優先する」という2つの設定があり、後者を選ぶとゲームの解像度が低下する。映像の処理負荷を下げてフレームレートを稼ぐ狙いがあるものと思われる。

 海外製のゲーミングスマートフォンでは、端末の処理能力を調整するような多彩なカスタマイズ機能を持つものが多い中、本機の設定項目は少なく、細かい数字をいじるような設定もない。端末の性能を細かくカスタムするのではなく、機能ごとにオン・オフする形になっており、デジタル機器に詳しくないユーザーにもわかりやすい。こういうところに総合家電メーカーらしい考え方が現れていると思う。

パフォーマンス設定では、解像度を下げて動作を軽くできる
上は高精細表示優先、下は軽快動作優先の画面

軽量でも快適なゲーミング環境

本体裏面。見た目にはわからないが、ほぼ全面を使ってうまく放熱している

 続いて4つのゲームを試していくが、特にバッテリーに関する部分に注目したい。先述の通り、本機のバッテリー容量は3,130mAhで、ゲーミングスマートフォンとしてはやや少なめだ。

 この対策として、充電時の発熱を抑制するというアプローチが取られている。2つの充電ICを搭載することで充電時の発熱源を分け、充電しながらでも快適に利用できるようにしようという考え方だ。また熱を本体全面に広げて放熱する設計で、特定の箇所が熱くならないようにしている。

 どんなに大容量のバッテリーを搭載しても、使い続ければいずれはバッテリー切れを起こす。であれば、まずは軽さを追求しつつ、充電中にも快適に利用できるよう放熱性能を高めればいいというわけだ。もちろん充電ICを増やすことによる重量増もあるはずで、シャープとして絶妙なバランスを探した結果、この製品が生まれたということだろう。

ドラクエウォーク

「ドラゴンクエストウォーク」

 1つ目は「ドラゴンクエストウォーク」。気温13度の晴天時にプレイした。ゲームの動作は実に快適で、GPSの挙動も問題ない。冬場なので端末の発熱はわかりにくいが、意識して触れば僅かに温かいような気がするという程度。

 映像の色味は鮮やかで、どの色も明瞭に出ている。それでも目が疲れるようなビビッドさではなく、自然な色合いでまとまっていると感じる。「ゲーム画質」をオフにすると、コントラストが上がって黒が際立つので、好みに応じて使う分けるといい。

 画面の明るさは、直射日光の下でも100%まで上げれば何ら問題ない。ただ90%以上の明るさに手動で設定しようとすると、有機EL特有の焼き付きに注意を促す表示が出る。明るさの自動調整を使っている時には特に問題なく100%まで上がるので、常時100%にしたいのでなければ、使用上の問題はない。

画面の明るさを90%以上にすると有機EL特有の焼き付きに関するガイドが表示される

 特筆すべきは、やはり軽さ。側面が表・裏とも丸く湾曲しており、手に触れる部分が薄くなっていることも相まって、手に持って歩くのがとても快適だ。

 バッテリー消費は、30分プレイして約8%。5~6時間程度の連続プレイにも耐えうるので、よほど長時間出歩かない限りは問題なさそうだ。

側面が丸くなっている分、手に持った時には格別に薄く、軽く感じる

フォートナイト

「フォートナイト」

 2つ目は3Dアクションシューティングの「フォートナイト」。画質は自動で最高に設定されており、激しいアクションシーンでもフレームレートが落ちることなく快適だ。

 負荷が高いゲームなので、発熱を確かめてみたところ、裏面が全体的にほんのり温かく感じられる。局所的に温度が高く感じられることはなく、プレイ中に発熱が不快になるようなこともなかった。

 さらに充電しながらプレイしてみると、発熱はやや増え、特に本体上部の熱が感じられるものの、やはり全体にうまく放熱されており、少し温かいと感じる程度に留まっている。ゲームの描画処理にも影響は見られず、充電の有無でプレイ感覚に違いがない。

 「ハイレスポンスモード」も試してみたが、本作はゲーム側の設定で秒間30フレームで頭打ちとなっていることもあり、見た目の変化は感じられない。入力の高速性に期待して使うなら意味はありそうだ。

 バッテリー消費は、30分のプレイで約12%。充電なしでも3時間は遊べる計算になるので、ゲーム機として見てもさほど問題ない。

スクスタ

「ラブライブ!スクールアイドルフェスティバル ALL STARS」

 3つ目はリズムゲーム「ラブライブ!スクールアイドルフェスティバル ALL STARS」。画質は最高画質の「3D最高」が自動で選ばれており、ライブシーンのキャラクターの動きや、プレイ時のタップの感覚は全く問題ない。

 サウンドの質は全体的に軽く、いかにもスマートフォンの小さなスピーカーから出ている音という印象。本体上部のスリットと、底面の穴の2か所から音が出るのだが、ステレオ感も弱い。とはいえ音を楽しむというレベルではないだけで、耳触りな音がするということはなく、ゲームプレイには支障ない。またヘッドフォン端子もないので、USB Type-Cからの変換かワイヤレスになるのも悩ましい。

 「ハイレスポンスモード」を試してみると、プレイ感覚には特に変化はないのだが、スコアが少し向上した。これが「ハイレスポンスモード」の効果なのか、単に筆者の調子が良かったのか(笑)は判断が難しい。

 バッテリー消費は30分のプレイで約9%となった。

クラロワ

「クラッシュ・ロワイヤル」

 4つ目は対戦型ストラテジーゲーム「クラッシュ・ロワイヤル」。片手持ちでプレイするゲームなので、軽い本機は長時間持っていても疲れが少ない。対戦ゲームだけに、余計なことを気にせず集中してプレイできるのはありがたい。

 縦持ちでの発熱もほとんど感じられない。操作感もよく、タップのズレもほとんど感じられないし、反応速度もとても良好だ。

 「ハイレスポンスモード」に切り替えると、タップの反応がさらに早くなったように感じるのだが、もともと快適なので明確な差があるとまでは言えない。ただ本作はタップ抜けが致命的なゲームなので、入力高速化による安心感は大きい。今回プレイした4つのゲームの中では、本作が最も本機のメリットを享受できていると思う。

 バッテリー消費は30分のプレイで約7%。外出時の合間などにちょっと遊ぶ程度なら問題ない範囲だろう。

「ハイレスポンスモード」はバッテリー消費に影響するか?

「ハイレスポンスモード」はゲーミングメニューでいつでも切り替え可能

 4つのゲームを試してきたが、バッテリー絡みでもう1点試したい。本機のゲーミング向け機能の筆頭である「ハイレスポンスモード」だが、反応速度や描画速度が上がった分、処理負荷が増えるはずで、バッテリー消費も激しくなる可能性がある。実際のところどの程度影響があるのか、この機能をオン・オフしてバッテリー消費を確認してみた。

【ハイレスポンスモードのバッテリー消費(30分間プレイ)】
オフオン
ドラクエウォーク8%8%
フォートナイト12%12%
スクスタ9%10%
クラロワ7%7%

 プレイ内容が完全に同じにはできないことや、小数点以下の数字が見えないことから、検証結果はおおよその数値ではあるのだが、今回の検証では「ハイレスポンスモード」によるバッテリー消費の差はほとんど見られなかった。これなら大抵のゲームでオンにして使いたいと思う。

 「ドラゴンクエストウォーク」のように、素早い操作や高いフレームレートを必要としないゲームもあるので、全てのゲームで「ハイレスポンスモード」を使うべきとまでは言わない。アプリごとにオン・オフの設定ができ、使い分けも簡単だ。

eスポーツからカジュアルゲーマーまでカバーする懐の広さが魅力

 一口にゲーミングスマートフォンと言っても、端末の方向性はずいぶんと違う。それはゲームの内容やプレイする環境が、とても多彩だからだ。

 競技として極限を追求するeスポーツもあれば、散歩しながら片手間に遊ぶゲームもあるし、映像美や音楽を楽しみたいゲームだってある(本稿で試した4つのゲームはその辺りも考慮している)。それら全てに最適な端末というのは、おそらく存在しない。

 ゲーミングスマートフォンは、まず高性能であることが条件で、そうなると発熱も大きくなるため高い冷却性能が必須。さらに映像も美しく、音もよく、バッテリーも大容量で、画面もなるべく大きく……となっていくと、どうしても端末は大型で重量増に向いてしまう。

 「そうじゃない。人によって、ゲームによって、求めるものは違うんだ」というメッセージを本機からは感じる。極限の処理能力、究極の冷却性、最長のバッテリー、最高の音質は、他社製品に譲る。しかし端末の軽さ、映像の美しさ、設定のわかりやすさでは最高を目指す。他社とは違うメリハリを持たせたことで、本機は唯一無二のゲーミングスマートフォンとなっている。

 本機のターゲット層となるのは、「ハイレスポンスモード」の恩恵が大きい、eスポーツのような競技性の高いものと思われるかもしれない。もちろんそれも間違いではない。

 しかし実際はそれだけでなく、軽くて持ち歩きやすく、防水・防塵機能もおサイフケータイもあり、普段使いにも不自由しない。そしてちょっとした合間にゲームを遊ぶのに、軽さは絶対的な恩恵がある。様々なゲームを気軽に楽しみたい人に、本機を選んで欲しいと思う。この懐の広さが、本機のゲーミングスマートフォンとしての最大の魅力だ。