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「AQUOS zero2×Dolby」、映像美と臨場感あるサウンドを追求するその仕掛けを聞く

 1月末に発売された「AQUOS zero2」は、普段使いとゲームを楽しむ用途をアピールする約141gのシャープ製のAndroidスマートフォンだ。

AQUOS zero2

 そのAQUOS zero2には、ドルビーのHDR規格「Dolby Vision」(ドルビービジョン)と、立体音響の「Dolby Atmos」(ドルビーアトモス)が搭載されている。

 今回、ドルビージャパン、シャープ、そして31日から「Dolby Vision」「Dolby Atmos」に両対応する4K対応のハリウッド作品を配信することになったU-NEXTの3社からそれぞれの取り組みが紹介された。

さらなる体験価値を高める組み合わせ

 本誌では既にお馴染みのスマートフォンブランドだが、その一方で「AQUOS」と言えばテレビのブランドとしても認知されている。シャープ自身も、「自社でディスプレイを製造するからこその強みがある」(AQUOS zero2の商品企画を担当するシャープの楠田晃嗣氏)とアピール。

AQUOS zero2のディスプレイの特徴

 シャープでは2018年夏モデルとしてリリースした「AQUOS R2」で「Dolby Vision」「Dolby Atmos」をサポート。2つとも搭載するスマートフォンは当時、国内で初めての機種だった。

 ゲーミングスマホとして訴求する「AQUOS zero2」は、その特徴のひとつに240Hz駆動の有機ELディスプレイがある。240Hz駆動は、途中に黒画面を挿入することでゲームプレイ時、滑らかな描画と残像感の低減を図るもの。「ハイレスポンスモード」で指定したアプリを起動するときに適用される。ちなみにゲームアプリ以外でもハイレスポンスモードに登録できるが、映像再生ではオススメしないそう。

 とはいえ、6.4インチのシャープ製有機ELディスプレイは、10億色の表現、先代モデルの「AQUOS zero」と比べて明るさが1.5倍になることといった実力を持つ。

高輝度
コントラスト
10億色表現
3つの要素がDolbyの規格にマッチ

 明るさ(輝度)の向上はパネル設計を最初から見直して実現。またコントラストは、有機ELディスプレイならではの強みのひとつで、黒の表現を活かし、100万:1というスペック。

 広色域でも、デジタルシネマ規格「DCI-P3」を100%カバーし、シャープの有機ELとして初めて10億色の表現を実現した。これらの特徴により、暗い場所の表現でも、黒で塗りつぶされるようなことはない。

 そうした表現する力に、Dolby Visionが加わることで、HDRコンテンツを楽しむ際には、明暗の差が激しい場面でも、暗がりにあるものが見えつつも、明るい部分は白飛びせずに表現する。

マスターモニターとAQUOS zero2で同じ映像を再生したところ

 シャープでAQUOS zero2のディスプレイを担当した関文隆氏によれば、製造にあたっては、マスターモニターや光学測定器を用いて、生産ラインにおいて、1台1台、有機ELディスプレイの調整が実施されているという。この取り組みは過去、液晶ディスプレイを搭載する機種でも採り入れられていたが、有機EL搭載のAQUOS zero2でも用いられることになった。

マスターモニターを用いたチューニング

 開発部門でDolby Visionのマスターモニターをもとに、有機ELパネルのチューニングを実施。そのデータをもとに、生産ラインにおいて、1台ずつガンマや色度を調整している。開発と生産でそれぞれ用いる光学測定器も、ズレが生じないよう、同一光源で校正し、より正確な色や階調特性の再現を目指している。

Dolbyの技術が広がる

 Dolby Japanの大沢幸弘代表取締役社長は、「エンタメ体験が次の段階へ入りつつある」と解説。たとえばDolby Vision、Dolby Atomosを採用する企業は4年前、わずか4社程度だったが、今は数え切れない規模に伸張。スマートフォンメーカーだけではなく、コンテンツ事業者、チップセットベンダーなどその範囲も多岐に渡る。

 「世界中、画質の向上は解像度の向上にやや特化してきたきらいがあった。今、その道は、これ以上どこまで必要かというレベルに達している。その一方で、HDRの画質はまだ途上。テレビもネットサービスも続々とHDRに向かっている。画質がますます良くなる」と大沢氏は語る。

各社が足並みを揃えて環境を整備

 スマートフォンユーザーが映像を楽しむ機会が増えてきたとはいえ、コンテンツそのものがDolbyの技術など、HDR規格に対応していなければ、その威力を体験できる機会は限られる。

 大沢氏は、「モバイルのコンシューマーの多くが、“こんな風になるのか”とまだ全員体験していない」と指摘。そうした中、今回コンテンツ配信を発表したU-NEXTと連携し、「AQUOS zero2」のソフトバンク版では、コンテンツ体験を紹介するアイコンがプリセットされている。タップすると、U-NEXTのWebサイトへ誘導し、コンテンツサービスの紹介する形となっている。

 大沢氏によれば映画など既存作品についても、Dolby Vision、Dolby Atmosの適用が進んでおり、「日常的に体験されるようになると以前には戻りにくい方が増えるのではないか」と語り、業界標準とも言えるポジションになりつつあることに自信を見せる。

コンテンツ、サービス、メーカーの3者が揃う
コンテンツパートナー
配信事業者
対応メーカー
2016年のDolby Visionパートナーは、NetflixやLGなどわずか4社
今や数え切れない企業が参画
こちらはDolby Atmosの対応企業

 U-NEXTでは、31日、国内配信事業者として初めて、「ハリウッド作品の4K Dolbyコンテンツ」の配信を開始した。まずはパラマウントピクチャーズの作品50本がラインアップされる予定で、31日時点では「ロケットマン」「バンブルビー」「ミッションインポッシブル:フォールアウト」の3作品の4K/DolbyVision 版の配信が開始された。ちなみにiPhoneは対象外で、対応機種に追加するか検討中とのこと。

ソフトバンク版AQUOS zero2では、U-NEXTへ誘導するアイコンをプリセット

 Dolby Atmosの対応も前提にしているとのことで、今後準備が進められるという。パラマウント作品の配信は独占ではなく、U-NEXTが先行的に配信しているとのこと。同様のコンテンツは国内ではひかりTVでも配信されており、シャープ側も「ハード、コンテンツ、技術が揃わなければいけない」として、配信事業者の拡大に期待を寄せる。