レビュー
ゲーマーが試す! 「G8X ThinQ」の実力
~安い! 速い! 2画面! 普段使いもいける全部入り端末
2019年12月27日 06:00
2画面で注目される「G8X ThinQ」のゲーム性能は?
“2画面スマホ”として注目されているLGエレクトロニクスのスマートフォン「G8X ThinQ」。Snapdragon 855搭載のハイエンド機で、防水(本体のみ)やおサイフケータイ、フルセグといった国内向けの機能も持つ全部入りの端末でありながら、税込55,440円という低価格を実現している。
さらに本機には2画面を活かしたゲーム向け機能も搭載されている。果たしてゲーマーにとって幸せな端末なのかどうか、ゲーマー目線で実際に触って確かめていきたい。
なお本機はソフトバンクから発売されているが、一部の店舗では回線契約なしでも購入できるため、他キャリアの利用者でも購入は可能。SIMロックも即日解除できる。ただし対応するLTEバンド(周波数帯)がソフトバンク向けになっており、NTTドコモやauのSIMでは一部のバンド(いわゆるプラチナバンド)が使えないため、場所によっては電波の入りが悪くなる可能性がある。
それでは主なスペックを確認していこう。
項目 | 内容 |
チップセット | Snapdragon 855(2.9GHz+2.5GHz+1.7GHz) |
メモリー(RAM) | 6GB |
ストレージ(ROM) | 64GB |
通信機能 | IEEE 802.11a/b/g/n/ac |
カードスロット | microSDXC |
ディスプレイ | 6.4インチ有機ELディスプレイ、1,080×2,340ドット(2画面とも同等) |
スピーカー | ステレオ |
バッテリー容量 | 4,000mAh |
充電方式 | USB PD(別売) |
SIMカード | nano SIM |
重さ | 約193g(本体のみ)、約331g(デュアルスクリーン時) |
大きさ(高さ×幅×厚さ) | 約160×76×8.4mm(本体のみ)、約166×164×15mm(デュアルスクリーン時) |
OS | Android 9 |
価格(税込) | 55,440円 |
Snapdragon 855にメモリー6GBという、現在のハイエンド端末としては標準的な構成。ストレージは64GBで、他社のハイエンド端末に比べると少なめだが、microSDXCが使えるのでそれほど問題にはならないだろう。
デュアルスクリーン(2画面)は、専用の折りたたみ式カバーを装着して使う。カバーと言ってもディスプレイが1枚丸ごと入ったもので(カバーの外側にも時計などが表示できる簡易なディスプレイがある)、装着すれば2画面、外せば単体のスマートフォンとして使用できる。カバーは製品に標準で付属するため、別途購入する必要はない。
では普段からこのカバーを装着しておけばいい……と言いたいところだが、本体のみなら重さが約193gなのに対し、カバー付きだと約331gまで重くなるので、2画面の用途があるかどうかで装着の是非を考えればいい。また本体はIPX5/IPX8/IP6Xの防水・防塵機能を有しているが、カバー側には防水・防塵機能は一切ない。
ゲーム端末としてあらゆる面で優秀
早速、4つのゲームを試していく。基本的な性能を見るため、まずはスマートフォン単体(1画面)でテストした。
ドラクエウォーク
1つ目は「ドラゴンクエストウォーク」。気温11度の晴天時にプレイした。3D描画やGPSの精度など、ゲーム自体の動作には何ら問題はなく快適に遊べた。
冬場で気温が低いため、発熱のチェックには適していないが、発熱は裏面が微かに温かさを感じる程度。長時間手に持っていても違和感はなかった。
画面に直射日光が当たる状態では、画面の明るさを自動調整にしておけば、輝度100%となって問題なく見られる。逆に日陰になると40%程度まで下がり、どの状態でも快適に見える。
画面の色味は、RGBの発色は自然できつさは感じないが、明暗のコントラストはかなり強め。輪郭がくっきりした映像になり、メリハリが出て見やすく感じた。
バッテリー消費は1時間のプレイで約12%。4000mAhの大容量バッテリーのおかげで、位置ゲーには十分なバッテリー持続時間だと言える。
フォートナイト
2つ目は3Dアクションシューティングの「フォートナイト」。画質は自動で最高となっており、プレイ中の描画に引っ掛かる部分はなく快適だ。
高負荷になるゲームなので発熱が気になるところだが、プレイ中は裏面全体が広い範囲で温かくなる。一部が極端に熱くなるようなことはなく、うまく熱処理されているとは感じる。とはいえ横持ち時に熱を感じるのは確かで、人によっては気になるかもしれない。
バッテリー消費は、30分のプレイで約10%。フル充電なら4時間は遊べる計算になるので、必要十分と言っていいだろう。
またバッテリーが約30%の時点で、最大出力27WのUSB PD充電器を使い、充電しながらプレイしてみた。充電量は30分で10%ほど。端末は非充電時よりもさらに少し発熱するが、それでも温かいと感じる程度に留まっている。ストレスを感じるほどではなく、充電しながらのプレイも十分可能だ。
なお本作はGoogle Playからはダウンロードできず、通常は公式サイトからapkファイルをダウンロードする形なのだが、本機には最初から本作専用のインストーラが用意されている。公式サイトのapkファイルでは、本機ではインストール作業が途中で止まってしまうので、このインストーラを使う必要がある。この場合でも、提供元不明アプリのインストールの許可は求められる。
スクスタ
3つ目はリズムゲーム「ラブライブ!スクールアイドルフェスティバル ALL STARS」。こちらも標準設定で最高画質の「3D最高」になっており、ライブシーンでも美しい映像を楽しみながら、操作感も一切問題なくプレイできた。
サウンドは、左は端末上部のスリットから、右は端末右下の穴から出ている。左側面が下になるよう横持ちにした時、普通に持てば手で塞がれることはないので、ゲーム中はステレオで音が聞ける。ただし右側面が下になるように持つと穴を塞いでしまうので、横持ちの際の端末の向きには注意が必要だ。
音質はサイズなりの軽めな音で、低音はほとんど出ない。ただスマートフォン本体から出る音としては決して悪くはなく、高音やボーカルはそこそこクリアに出ており、ステレオスピーカーのおかげで広がりもある。音楽ゲームもヘッドフォンなしで十分遊べるクオリティはある。
ヘッドフォン端子を備えているので、より高音質で楽しみたいならヘッドフォンを使うといい。ヘッドフォンでの高音質も本機の売りの1つになっている。
バッテリー消費は30分で約7%となっており、長時間のプレイにも対応できる。
2画面でゲームは快適になるのか?
続いては本機の最大の特徴であるデュアルスクリーンを使い、ゲームで何ができるのかを見ていきたい。
最もわかりやすい使い方は、片方の画面をコントローラーとして使うパターン。カバーを開いた状態で横持ちにし、下画面(本体側)にコントローラーを表示させ、上画面(カバー側)にゲーム画面を表示するというスタイル。
このコントローラーは、Bluetooth接続による本物のゲームパッドをエミュレートした形になっているようで、ゲームパッドに対応するゲームアプリなら特に設定することなく使用できる。またコントローラーのタイプも、レースゲーム用や格闘ゲーム用など4種類用意されており、遊ぶゲームに応じて変更できる。
さらにゲームパッド未対応のゲームに関しても、自分でボタンを配置し、タップ位置を調整できるカスタムコントローラーも用意されている。その気になればほとんどのゲームでコントローラー操作ができる。
実際に使ってみると、スクリーンをスライドしたりタップしたりという操作は元々のゲームと変わらないため、本物のゲームパッドを使う時ほどの変化はない。メリットは「指で画面が隠れない」という点が大きい。またカスタムコントローラーを使えば、ボタンの配置を自分好みに変えられるという強みもある。ゲームによっては重宝するだろう。
ただ実際のゲームパッドほどに操作が快適になるとは言えない。筆者はゲームパッド対応の「フォートナイト」で試してみたが、旋回や武器の切り替えなどの操作が逆に煩雑になるため、これなら普通に操作した方がいいと思った。
本機にプリインストールされているレースゲーム「アスファルト9: Legends」も試してみた。ハンドルタイプのコントローラーを選ぶと、ハンドル部分を指で左右にスライドすることで操作できた。直観的かつ動きもアナログでわかりやすいと思う。ただ本作はゲームパッド操作以外に、ハンドル自動操作や傾き操作など3つの操作タイプが用意されており、そちらも優秀なので甲乙つけがたい。2画面を活かすゲームパッドは「好みに合えばありなのでは」というところだ。
総合的には、指で画面が隠れるのが大きなストレスになるゲームでは便利かもしれないが、本物のゲームパッドとは全く操作感が違うため、代わりになるとは思わない方がいい。ゲームごとに試してみて、好みに合うなら使うのがよさそうだ。
ゲーム向けの活用法としてはもう1つ、2画面を使って別のアプリを動かすというものがある。ゲームアプリも2つ同時に動かすことが可能だ。
2つ同時に動かして嬉しいゲームと言えば、やはり位置情報ゲームだろう。複数の位置情報ゲームを遊ぶために、複数の端末を持ち歩くというヘビーユーザーもいるかもしれないが、本機なら2種類のゲームを別々の画面に出して、スマートに同時プレイができる。
それ以外には何かないかといろいろ試してみた。音楽ゲームを2つ同時に動かしてみたところ、きちんと2つとも動作した。音も2つが混ざって出てくるため、実用的ではないのは予想していたが、まずは問題なく動かせたということを評価すべきだろう。
ソーシャルゲームなどでゲームの状態を注意して見ておきたいタイミングなどで、他のアプリを並行して動かせると幸せかなと思う。ただ普通に考えれば、やはりゲームは1つ動かしながら、ブラウザで情報収集なり、動画再生なりという使い方の方が適していると思う。
2つのゲームを同時に動かすと、処理も多くなるため、発熱も大きくなる。ただカバーのおかげで手が直接端末に触れないので、熱の伝わり方は緩和されている。またカバー付きで横持ちにすると、右側面が下になる持ち方になるため、左手でスピーカーを塞いでしまう。ただカバーの隙間から音が出てくるので、音の出にはそれほど影響しなかった。
2画面によるゲームの活用をまとめると、位置情報ゲームの同時利用などの限られた用途では便利ではある。ゲームを同時に2つ開くより、ゲームをしながら他のことができるという点で活用するのがいいだろう。
2画面がなくとも全部入りの端末として魅力的
本機を評価するにあたり、2画面という要素はどうしても外せない。しかしゲーム端末として見た時には、それほど魅力的な機能とは言い難い。縦持ちするには約331gという重量は重すぎるし、横持ちにしてもコントローラー機能は利便性が低い。ゲームをしながら別画面で他のことができるのは魅力的だが、そうでなければ大半のゲームプレイ環境において、カバーを外した方が快適だと思う。
しかしながら、ゲームにおける2画面要素を否定することが、本機のゲーム性能を否定することにはならない、ということは声を大にして言いたい。単体のスマートフォンとして評価すれば、処理能力・画質・音響・バッテリー・排熱の各要素が高い水準でまとまっており、ゲーム端末としての能力を十分に備えている。
加えて、国内向けスマートフォンに求められる機能はほぼ網羅しているのも魅力的だ。ゲームもしたいが普段使いもしたい、それでいて安価な端末が欲しいとなれば、本機の対抗馬となる端末はかなり限られてくる。2画面の要素を省いて考えても、本機は十分過ぎるほど魅力的なのだ。
気になるとすれば、本機がソフトバンクでしか発売されておらず、他のキャリアでは“プラチナバンド”(繋がりやすい周波数帯の電波)が使えないという1点のみ。ソフトバンク系、あるいはソフトバンクのSIMを借りたMVNOで使うなら問題ないが、それ以外のキャリアでは実質的に制限がかかる状態だ。
今回お借りした端末はSIMロックが解除されており、テストでは筆者所有のBIGLOBEモバイルのSIM(NTTドコモのMVNO)を使ったところ、高層ビルのない住宅街だったこともあってか、特に通信に困る状況は見られなかった。ここを割り切って使うというなら、他キャリアでの利用も検討していいと思う。