ニュース

シャープが2015年夏モデルを解説、新体制の方向性も明らかに

 シャープは、キャリア各社からスマートフォンなど2015年夏モデルが発表されたことを受けて、シャープ製端末の説明会を開催した。

 シャープ全体として2015年度からの中期経営計画とカンパニー制へ移行する事業再編が進む中、6月1日付けの人事異動を反映させる形で、登壇した顔ぶれも新体制でのものになった。

通信システム事業本部副本部長の川口登史氏。6月から執行役員 通信システム事業本部長に就任する予定
中期計画で明らかにされた事業統合とカンパニー制への移行

 まず5月14日に発表されているシャープの事業統合について触れておくと、2015年度からの中期経営計画では、10月よりデジタル情報家電事業、通信システム事業、健康・環境システム事業の3つの事業が、コンシューマエレクトロニクスカンパニーとして統合される方針が示されている。事業部だった組織の横のつながりを強くすることで、製品開発において技術の融合を図っていくかまえ。コンシューマエレクトロニクスカンパニーの事業方針は改めて説明される機会があるとしている。

 シャープの6月1日付けの人事異動では、通信システム事業を統括していた長谷川祥典氏が、統合後のコンシューマーエレクトロニクスカンパニーを統括する立場に昇進する。具体的には、現在の常務執行役員 通信システム事業統轄兼通信システム事業本部長から、専務執行役員 コンシューマーエレクトロニクス事業統轄に就任する形。

 代わって、現在の通信システム事業本部副本部長の川口登史氏は、執行役員 通信システム事業本部長に就任する予定で、25日に開催された説明会でも川口氏が登壇し挨拶を行った。

通信システムは新体制でも重要、スマホは「人に寄り添う存在」を推進

 説明会自体は完結にまとめられた。川口氏は、10月からカンパニー制に移行し、コンシューマエレクトロニクスカンパニーに通信システム事業が統合されることに触れた上で、「人と家電との新たなつながりを提供する中で、通信システムの果たす役割は極めて重要と考えている」と新体制でも中心的な役割を果たしていくかまえで、「革新的な製品の創出に向けて、シナジー効果を図っていく」と意気込みを語っている。

 2015年夏モデルについては、3つの重点的な取り組みとして、1)エモパーの進化、2)新世代ケータイの拡大、3)AQUOS EVERに代表される新ジャンルの提供、の3つを挙げた。

 スマホが話しかけてくる機能として搭載した「エモパー」は、進化により「一層愛着が感じられるパートナーになった」とする。川口氏が通信システムの事業部にかかわるようになってから、若手の社員と一緒に考えてきた答えという「人に寄り添う存在になる」という考え方が具体的に反映されたものとし、今後も開発を進めて進化させていく方針が語られた。

 Androidを搭載したフィーチャーフォンとして開発されている「新世代ケータイ」は、夏モデルでドコモ、auにそれぞれ1機種を提供し、はやくも合計3機種がラインナップされることになる。au向けに提供した「AQUOS K」は「大変話題になった」と手応えを語ったほか、「事業のもうひとつの柱とすべく、積極的に展開する」と意気込んだ。

 ドコモから発売される「AQUOS EVER SH-04G」は、価格が手頃であることもうたわれるなど、機能を絞って、明確にミドルクラスを狙った端末。川口氏は、「MVNOが広がりを見せる中で、価格志向のユーザー、“必要十分層”が増えている。AQUOS EVERを新ジャンルとして創出し、このジャンルにも積極的に取り組んでいく」と語り、ハイエンド一辺倒ではなくなることを示唆した。

 なお、メーカーによるSIMロックフリー端末の発売については、「今、そのような計画はない」とする一方、MVNO事業者向けの供給については「端末価格や販売手法が異なり、競合するとは思っていない」とし、供給を続けていく方針が示されている。

3キャリアにハイエンドモデル提供、ミドルクラスも揃えた夏のラインナップ

 夏モデルとしてラインナップされた端末の具体的な特徴については、通信システム事業本部 グローバル商品企画センター 戦略企画部 部長の中田尋経氏から説明された。

通信システム事業本部 グローバル商品企画センター 戦略企画部 部長の中田尋経氏

 中田氏からも、最初に解説されたのはエモパーの進化で、動画を交えながら、入力したキーワードに合った話題を提供してくれる進化や、話題の対象の増加、イヤホンを使えば外でも話しかける機能、聞き逃した時の「もう一回」やほかの話題を促すような呼びかけに応答する機能が紹介された。また、こうしたエモパーの進化を支える技術として、3マイクによる音声の取得、音声認識エンジンの拡充、エモパーの声を分かりやすく伝えるためのデジタルアンプとスピーカーといった取り組みにも触れられた。

 このほかにも、スーパースロー映像の再生に対応したカメラ機能や、リコー監修による「GR certified」の認証プログラムを取得したカメラ画質、ディスプレイのバックライトとカラーフィルターを新開発とした「S-PureLED」によるディスプレイの高画質、ドコモ向けでは「3日間」がうたわれるスタミナ性能などが紹介された。

 ラインナップ全体では、同社の分類として、ハイエンド層向けがドコモの「AQUOS ZETA SH-03G」「AQUOS Xx」「AQUOS SERIE SHV32」の3機種、ミドルクラスとして必要十分層向けがドコモの「AQUOS EVER SH-04G」、デザイン志向層向けがソフトバンクの「AQUOS CRYSTAL2」とした。

 また、ガラケー層向けという新世代ケータイの2機種については、待受画面から終話キーを押すだけでニュースや天気予報、占いなどをすばやくチェックできる「情報ライブ待受けホーム」を搭載することも紹介されている。

カンパニー制でのモバイルの役割、海外展開はアジア圏に

 説明会後に行われた川口氏への囲み取材では、カンパニー制への移行にともなって、通信システム事業の方向性や役割が改めて聞かれた。川口氏は、「IoTと言われているように、あらゆるものがネットワークにつながっていく。カンパニーの中でそういう方向を目指す時に、基盤となる技術が通信。そうした意味で、果たしていく役割は大きい」とした。スマホとの連携などの具体例を問われると、「IoTのコンセプトの中にはそういうものもあるだろうが、ユーザーにどんな価値を提供できるのかを主体に考えていく」とした。

 こうしたIoTでの取り組みに関連して、テレビなどシャープのほかの製品との連携を聞かれると、「これからカンパニー制になり、長谷川(※祥典氏)とともに、もっとそういうところで動いていけると期待している」と回答した。

 一方、カンパニー制により、ほかのカンパニーとの技術の融合が進まない、あるいはカンパニーごとの独立した開発によるコストの無駄の発生を懸念する声も聞かれた。川口氏は、「横連携をしっかりと図っていく。“自分のことだけ考える”とはならないようにしていく」とした。

囲み取材に応える川口氏

 2014年度において、シャープの通信システム事業の業績が好調だった要因についても聞かれた。「危機感をもって、構造改革にみんなで取り組んできた。どれが、ということではなく、全員が同じ気持で手を打ってきたことが、いい結果につながった。製品を積極的に買っていただいたキャリア、ユーザーにも支えられた」(川口氏)。

 経営再建を進めるシャープの中で、モバイルの事業(通信システム事業)はどういう位置付けになるのか。川口氏は、「現在も、モバイル事業は利益を出せる事業体。これから先、新しいカンパニーの中で、今のカテゴリーを離れて大きなところでネットワークやサービスを広げていくためにも、我々は力を発揮できる」と、改めてカンパニーの中で大きな役割を果たせるとする。

 海外展開については、「国内向けとの共通化や効率的な開発を進めながら、新規に開拓できるところは進めていく」(川口氏)。その具体的な地域については「中期計画で表明しているように、コンシューマエレクトロニクスカンパニー全体の大きな流れとして、日本およびアジアを主戦場とする方針で、通信システムもそれに沿った形になる」とした。

質疑応答で回答する川口氏(中央)

会場の端末の展示

夏モデルの機能・サービス

太田 亮三