ニュース
KDDIの2014年度決算、「ARPU」から「ARPA」へ移行
(2015/5/12 22:35)
KDDIは、2014年度(2014年4月~2015年3月)通期の決算を発表した。KDDIの2014年度連結業績では、営業収益が前年比5.5%増の4兆5731億円、営業利益は前年比11.8%増の7413億円、EBITDAは前年比9%増の1兆2926億円となった。
auスマートバリューの利用者は解約率が半分程度に
12日に都内で行われた記者向けの発表会では、同社の代表取締役社長である田中孝司氏が登壇し、2014年度の総括や2015年度の見通し、KDDIの成長戦略を解説した。
連結での営業利益においては、モバイル通信料収入の増加やau販売手数料の削減が好調要因となり、2期連続での2桁成長を達成した結果となった。田中氏は「auのモメンタムは、引き続き持続している」と自信を見せた。
MNPの純増数では第3四半期から第4四半期にかけて好調で、特に一年で最大の商戦期となる3月には、過去最高水準を記録したという。解約率では通期で前年同期比0.69%と改善し、純増数は前年比5.1%となる、296万契約の増加を記録した。
解約率の低下や、純増数の増加に貢献している要因が、auスマートバリューだという。スマートフォンと固定サービスをセットにして契約すると割引される同サービスは、auスマートフォン契約者のうち50%が加入するまでに浸透したという。
田中社長はスマートバリューについて、「auスマートバリュー利用者は、未利用者と比べ解約率が約半分程度と低い傾向にあり、安定した顧客基盤の確立に寄与している」と話した。
「3M戦略」のさらなる展開
KDDIでは、「マルチネットワーク」と「マルチデバイス」「マルチユース」からなる「3M戦略」を継続して展開している。田中氏は、「マルチネットワークでは、auスマートバリューを2012年に開始して以来、顧客基盤が拡大している。今年度は、顧客基盤をベースに、タブレットなど多様なデバイスを利用していただく『マルチデバイス』を推進していきたい。それと同時展開で、付加価値サービスを利用していただく、『マルチユース』を推進していく」と、方針を明らかにした。
KDDIでは、これまでARPU(契約回線1台当たりの売り上げ)を、経営における重点指標(KPI)として重視してきたが、ユーザーがスマートフォンとタブレットなどの複数の端末を使う「マルチデバイス」戦略の推進にあたって、新たに「ARPA」(Average Revenue Per Account)を導入する。
ARPAは、通信料収入や付加価値サービス収入を全契約者数で割ったもので、ユーザー1人当たりの売上が示される。
au通信ARPAの指標において、2014年度決算では5530円となった。これを2015年度の決算予想においては、1.4%増の5610円を見込む。一人当たりのモバイル端末数では、2014年度の1.37台から、2015年度予想で1.40台と、2.2%の増加を目指すという。
「マルチデバイス」戦略においては、タブレットの販売が好調で、累計契約数では前年同期比2.5倍の増加を見せ、100万台を突破したという。
「マルチユース」戦略では、「auスマートパス」や「au WALLET」などの付加価値サービスの売上拡大を目指す。これまで展開してきた「auスマートパス」や「ビデオパス」などのオンラインサービスに加えて、金融サービスとコマース事業を中心に強化していくことで、auの顧客基盤に対して訴求していく方針。
また、KDDIが持つ2つの決済プラットフォーム、「auかんたん決済」と「au WALLET」での流通総額のさらなる拡大を目指し、2014年度の総額0.38兆円から、2015年度では0.85兆円へ拡大する予想を示した。
そのほかの展開として、「Syn.」構想によるユーザー接点の拡大や、ミャンマーにおける通信事業の展望が示された。田中氏は2014年度について「au WALLETやミャンマーなど、国内外において新規事業を推進した1年だった」と総括している。
2015年度の予想
KDDIでは、従来日本会計基準を採用してたが、財務情報の国際的な比較可能性の向上などを目的として、2015年度より国際会計基準(IFRS)に移行する。2015年度の業績予想については、会計基準変更の影響を除いたうえで、営業利益の「3期連続2桁成長」を目指すという。
設備投資については、国際会計基準への変更によりUQコミュニケーションズ分が連結決算に加わり、総額6000億円となる。UQ分を除くと、LTEエリアカバーの拡大による設備投資費削減により、対前年比412億円(7%)減の5350億円となるという。
MVNOやSIMロック解除の影響
説明会終了後に行われた田中社長の囲み取材が行われた。
MVNO市場拡大の影響について問われた田中氏は「はっきり申し上げて、予想よりMVNOは増えている。KDDIの子会社のバリューイネーブラー(KVE)でやっているものなど、auのネットワークを利用したMVNOが、その一部として戻ってくるという構造ですね。業績のインパクトは大きいですね。ほとんど片方向での転出に近いものですから」と危機感を示した。
5月より開始されたSIMロック解除については、6カ月という解除期間を設定した意図を問われ、「総務省のガイドラインがそうなっていたので、それに合わせたっていうのが本音で、今後は、いろいろな状況の変化に合わせて見直していく必要があると思う」と語った。