ケータイ用語の基礎知識

第854回:ARPA とは

売上げの基準を「アカウントごと」に

 今回紹介する「ARPA(アーパ)」とは、KDDIが用いる、モバイル回線契約者(プリペイド/MVNO除く)1人あたりの月間売上高のことです。「アカウントあたりの平均収入」を意味する英語“Average Revenue per Account”の略からきています。

 かつてKDDIでは、一回線あたりの月間売上高である「ARPU」を使用していましたが、2015年からは「ARPA」で表現するようになっています。APRU(アープ)とは、携帯電話回線がどの程度、通信事業者の収益に繋がったかを示す「Average Revenue Per User」の略で、1回線あたりの売上高を示します。

 しかし現在では、携帯電話とタブレット、あるいはスマートフォンなど、複数の端末を1人で所有するユーザーも増えています。

 そこでKDDIが唱える「ARPA」では、台数あたりよりも、アカウント、つまり一契約者あたりの収益の方が評価の妥当性が高いとされています。ARPAでは、契約者一人についての売上げが数値となります。

「通信ARPA」と「付加価値ARPA」

 ところで、最近のスマートフォンなどの利用は、単に通話、インターネットの閲覧と言った単純な通信のみに留まりません。たとえばKDDIにとっては、飲食店やコンビニクーポン・アプリのダウンロード、ウイルスバスターなどが利用できる「auスマートパス」や、通販などで使える「auかんたん決済」「au WALLET」を使用した場合も一定の利益が得られます。

 そこで、KDDIでは、ARPAを「au通信ARPA」と「付加価値ARPA」に分けて、IR資料に掲載しています。「au通信ARPA」は、契約者1人あたりの通信量収入となります。一方「付加価値ARPA」の方は、先述のような通信以外の付加価値サービスによるARPAです。たとえばauかんたん決済やau WALLETの手数料、auスマートパス・物販などをユーザー数で割った数値と言えます。

 ちなみにドコモの場合はARPUを公開していますが、ここにはサービスでの売上げは含まれていません。ドコモのサービスはたとえばdTV、dデリバリー、dアニメストアのようにドコモ以外のアカウントでも利用できるサービスが多く、ARPUに含むのはそぐわないと考えられいるためです。

 国内の携帯電話会社は、通信回線だけではなく、動画や音楽、物販など、さまざまなサービスへその事業領域を拡げています。そうした事業の成長を測る目安として、ARPAやARPUといった数値は用いられていますし、その定義の違いが、私たち一般ユーザーに向けて提供されるサービスにおいて、今後もさまざまな面で違いを産み出してくれそうです。

大和 哲

1968年生まれ東京都出身。88年8月、Oh!X(日本ソフトバンク)にて「我ら電脳遊戯民」を執筆。以来、パソコン誌にて初歩のプログラミング、HTML、CGI、インターネットプロトコルなどの解説記事、インターネット関連のQ&A、ゲーム分析記事などを書く。兼業テクニカルライター。ホームページはこちら
(イラスト : 高橋哲史)