ニュース
auのネットワーク品質はこれからどうなる? 田中社長が会見
(2013/9/2 14:04)
KDDIは2日、4月に発生した通信障害の後に進めていた対策が完了したことを受けて、報道関係者向け説明会を開催した。代表取締役社長の田中孝司氏がプレゼンテーションを行い、障害対策に加えて、LTEに代表される、これからのauのネットワーク品質に関する取り組みも紹介された。
今後については「あたらしいau 4G LTE」として、「どこでもつながる力」「超高速でつながる力」「こだわりのつながる力」と3つの項目を掲げ、対策を進める。その結果として、田中氏は「LTEのエリア競争は、KDDIがダントツで勝てる」と宣言した。
LTE基地局の制御装置、6月から3倍増
今回対策を終えたのは、4月下旬と5月下旬に発生したLTEの通信障害を受けて進められたもの。この障害の原因は、auのネットワークのなかでLTE基地局の制御装置「MME(Mobile Management Entity)」のソフトウェアにバグ(不具合)があったためで、さらに障害発生後の復旧手順に時間がかかったことなどから、KDDIでは設備増強を進めるとともに、全社的に作業手順を見直し、ネットワーク品質の設計思想をあらためて確立するなど、これまで対策を進めてきた。
その結果、ソフトウェアのバグ修正だけではなく、作業手順の再確立などを完了。通信障害を引き起こしたMMEは、60台に増設して、前回、通信障害関連の会見を行った6月10日時点の19台と比べて約3倍となった。また検証・訓練環境も新たに追加された。田中氏は「(誤作動、不具合発生時でも被害を最小限にする)フェイルセーフの考え方で、ユーザーに安心して利用してもらえる通信環境を提要したい」と語った。
またエリア品質対策の具体例として、本誌インタビューでもお伝えしたようにTwitterなどに投稿されたユーザーの声を拾い、スピーディに対策するという手法を紹介。これは特に花火大会や野外フェスなどで実施されたもの。また「(通信事業者にとって)一番厳しいのがコミケ」と田中氏が語るように、数多くの人が東京ビッグサイトを訪れる「コミックマーケット」で、人気コンテンツのイラストをあしらったLTE対応基地局を展開したことも紹介。Twitterなどで寄せられたコメントを紹介して「3日間快適にLTEを利用できた、といった嬉しいコメントがあった。本当によくできたんじゃないかと思う」と誇らしげに胸を張った。
「LTEのエリア、auがダントツ」
auのLTEサービスがスタートしてから1年を迎え、田中氏は「あたらしいau 4G LTE」というメッセージを掲げ、「つながる力」をアピールしていく、と語る。
先述したように、これは「どこでもつながる力」、「超高速でつながる力」「こだわりのつながる力」という3点のこと。とくにエリア、スピードの2つについては、複数の周波数帯、つまりマルチバンドでのエリア展開が大きな鍵になる。
KDDIのLTEサービスは、800MHz帯(10MHz幅)、2.1GHz帯(5/10/15/20MHz幅)、1.5GHz幅(10MHz幅)と3つの周波数帯を使う。「iPhone 5」は2.1GHz帯のみ対応だが、今夏に発売されたAndroidスマートフォンはこの3つのバンド、“トリプルバンド”対応機種だ。特に800MHz帯によるエリア構築はスピーディに進められたこともあって、8月末時点の実人口カバー率は97%、2014年3月末には99%になる。
複数の周波数帯を利用することで、KDDIでは、混雑しているエリアでは空いている周波数帯へ切り替えるという仕組みも導入。これは今夏のAndroidスマートフォンで利用できる。
田中氏は、総務省が示すLTE基地局の免許数を元に、auの基地局は他社の免許数(ソフトバンク/イー・モバイルが3万8000件、ドコモが3万5000件)を大きく上回り、6万1000局に達していると紹介。東海道新幹線でもLTEの電波が届かず、3Gに切り替わるのは100回調査した結果、片道で平均2.1回になることを紹介。また主要屋内施設、地下鉄でもLTEエリア化が済んでおり、繋がりやすさをアピール。
エリア面、スピード、隅々まで行き届かせるエリアという3つポイントで、「LTEのエリア競争で、KDDIがダントツでやっていけるのではないか。ダントツで、(他社を圧倒して)勝ちで収束できるのではないか」と述べた。他社でも2013年度内にエリアを強化する方針を示しているが、そうした点を囲み取材で指摘された田中社長はあらためて、当面は他社より優れたエリアでリードできる、と自信を見せた。
2.1GHz帯、下り最大150Mbps提供へ
毎年、進化する携帯電話のサービスで、通信速度は増大するトラフィックを処理するための主要な手段の1つであり、他社との競争軸の1つでもある。たとえばNTTドコモでは、10月にも1.7GHz帯を使って東名阪の一部エリアにおいて、下り最大150Mbpsのサービスを提供する。これはLTEのカテゴリー4に対応した機種で、1.7GHz帯、20MHz幅を使ったエリアで利用できるものだ。
対するKDDIの取り組みはどうか。今回、田中氏は周波数幅(1つの周波数帯で利用する電波の幅)ごとの実人口カバー率(8月末時点)を明らかにした。周波数幅は、携帯電話を利用する上で意識することがない部分だが、一般的により多くの周波数幅になるほど高速なサービスが実現できる。LTEの場合、周波数幅と、LTEのカテゴリーによってスピードが大幅に変わる。
田中氏が示した資料によると、5MHz幅は72%、10MHz幅が31%、15MHz幅が6%となり、20MHz幅は8月より開始された。この20MHz幅のエリアであれば下り最大150Mbpsという通信速度になる。またドコモが1.7GHz帯で展開することは「現実的には端末がついていかないのではないか」とコメントした。
首都圏では横浜や大宮周辺では10MHz幅になっているものの、20MHz幅のサービスは2.1GHz帯で導入されているが、都心部で2.1GHz帯は3Gサービスに利用されている。ただしエリアは非公表で、開始された直後とあって、広さという面ではまだまだというレベルとのこと。そのため田中氏は「3GユーザーがLTEへ移行するほど、(20MHz幅のサービスが)早くなる」と説明。ユーザーの移行度合いに応じて進展するため、具体的なスケジュールは明らかにできないとした。田中氏は「150Mbpsエリアは順次広げていくが、現在のエリアも相当広くなり、どこでも繋がるようになってきた。また、カテゴリー4対応機種は秋以降登場する。メディアは面白がるかもしれないが、体感上、あまり(他社との比較で)論点にならないのではないか。ユーザーとしてはデパートの階段で繋がるようにして欲しい、といった要望のほうが強いのではないか」と述べ、これ以上の高速化では他社との競争するポイントにならず、サービスエリアを隅々まで構築するほうが重要との見方を示した。
またグループ会社であるUQコミュニケーションズに対して、7月下旬、2.5GH帯の免許が新たに割り当てられ、電波が追加されたことに関しては「LTEにはTDD(時分割方式、TDとも)、FDD(周波数分割方式)の2つがあるが、技術的には差が大きくなく、スマートフォンへの適用を考えたい。しかし、いつからどういった形で、というのは決まっていない。チップセットは既にある」とする。これは、UQへの免許が交付された際、取材陣に回答した内容と同等のもので、その内容に変化はないものとなったが、次期iPhoneでTD-LTEへの対応が噂される中で、TD-LTE対応スマートフォンの登場についてノーコメントを貫いたものと見ることもできそうだ。
もしiPhoneが800MHz帯に対応したら……?
LTEのエリア展開に関して、複数の周波数を利用するマルチバンドを説明する際、田中氏が「この秋のiPhoneはどうなるんだと……ちょっとここでは言えない」とコメントする場面もあった。基本的に今後登場するであろうiPhoneについては、ノーコメントを貫いた田中氏だが、既存の「iPhone 5」ユーザーについては「2.1GHz帯のエリアは、6月10日の会見において2013年度末に80%としていたが、現在は、80%台半ばにするこを目指している」と説明。今後のiPhoneが800MHz帯に対応するかどうかわからない、としつつも、もし対応した場合、すぐ機種変更したい現在のiPhone 5ユーザーに向けて「何らかの施策を考えなければいけないという認識」と述べた。ただ具体的な施策についての説明は避けた。
エリア圏内ながら、通信が滞る、いわゆる“パケ詰まり”について問われた田中氏は、「定義が各社違うと思うが、電波が来ているのに流れがよくない、という状況だと回答する」と前置きした上で、iPhone 5の発売後、一時期、通信しづらい状況になっており、さまざまな問題があったものの、ほとんど解消したと説明。「今はほとんど発生していない」とパケ詰まりが解消されたした。
ドコモからiPhoneが発売されることを前提に準備を進めている、とした田中氏は、3キャリアが同じ機種を扱う状況になったとしても「auがダントツだと思う。エリア競争は、もしiPhoneが800MHz帯に対応すれば、今回ピリオドを打てるとまで思っている。(基地局の数と800MHz帯対応ということで優位なのか? という問いに)両方です。我々の800MHz帯の基地局は3G用の基地局にLTEの装置を導入することで実現している。いずれ3Gと同等のエリアになる。今後が楽しみ」と語った。
さらにTD-LTE対応のiPhoneがソフトバンクから登場しても大丈夫か? との問いにも「もし出されるということであれば、いろんな対応軸ができて面白いのでは。当然ながら私は大丈夫だと思っている」と笑顔で語った。