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800MHz帯のLTE、冬のラインナップ――KDDI田中社長の考え

 KDDIと沖縄セルラーは、10月下旬以降に発売する、auの2013年冬モデルを発表した。2日、都内で開催された記者会見で、KDDI代表取締役社長の田中孝司氏は、高速通信方式であるLTEのサービスエリアを、800MHz帯という周波数で整備して、繋がりやすく、高速な通信でスマートフォンを楽しめるとアピールした。

9月の“iPhone×3キャリア合戦”、auへの転入超過?

 冬モデルの紹介へ入る前に、田中社長は、まず9月に発売された新しいiPhoneのことから振り返った。

 「(ドコモ、au、ソフトバンクの)3社から発売され、各社から話題が提供された。ではauはどうだったのか。iPhone 5sの在庫が厳しいなか、ドコモやソフトバンクからの流入があり、非常に良い結果となった。(携帯電話番号ポータビリティ、MNPの利用件数が)来週にも発表されるだろう。楽しみにして欲しい」

 具体的な数値は避けつつも、iPhone 5sにこだわらず、iPhone 5やiPhone 5cといった機種を購入するユーザーへの売り込みもあって、3社間の競争で一定の結果を得たと述べた田中氏は、8月よりも9月のほうがポートイン(MNPによる転入超過)が多かったことも明らかにした。

“回り込む”800MHz帯、技術屋としては……

剛力彩芽や井川遥とのトークセッションでも“800”をアピール。手にしているのは金太郎飴だ

 ここ最近のauは、800MHz帯でのエリア整備を強くアピールしている。9月2日の会見で紹介された内容と同じく、今回も「どこでもつながる力」、「超高速でつながる力」「こだわりのつながる力」という3つのポイントと、Twitter上で見られたauユーザーの声をあわせて紹介し、エリアの充実ぶりを誇示した。

 800MHz帯の実人口カバー率は、2014年3月末、つまり今年度末には99%に達する見込み。

 今回、KDDIでは、ソフトバンクモバイルに続く形で、800MHz帯をプラチナバンドと呼び、“回り込む電波”と表現。ただし、田中氏は「技術屋としては(回り込むという表現は)使いたくないが」と述べ、簡略化した表現としつつ、800MHz帯は「人により添うように電波がくっついてくる」(田中氏)と述べて、隅々まで浸透しやすい電波であり、エリアの広がりに繋がっているとした。

LTEでは3つのポイントをアドバンテージに
回り込む、という表現に技術屋としては……と渋った田中氏だが、そのメリットを強調
基地局数
今年度末の実人口カバー率

下り150Mbpsのサービスも

 エリアの広さを800MHz帯で構築しつつ、より高速な通信サービスは2.1GHz帯で実現される。8月下旬には、一部エリアにおいて下り最大150Mbpsのサービスが利用可能になった、とされていたが、端末側で対応機種がない状況だった。今回発表された機種は、LTEのカテゴリー4に対応しており、基地局だけではなく端末が揃う10月下旬にも下り最大150Mbpsの通信サービスが実現することになった。

 なお、この下り最大150Mbpsのサービスは、20MHz幅もの電波が必要だが、2.1GHz帯は都心部において3Gサービスに利用されており、“150Mbps”というサービスのために20MHz幅を確保できるのは、3GからLTEへ、ある程度ユーザーが移行してから、ということになる。そのため、現時点では千葉県の木更津だけでスタートした下り150Mbpsのサービスが都心部で利用できるようになる時期は、未定となっている。

 なお、エリアの広さを表わす尺度について、総務省での検討が進んできたという。田中氏は「どちらかと言うと実人口カバー率っぽい方向に行くなと。KDDIとソフトバンクが利用しているが、両社の違いは、メッシュ内でどこまでエリアになれば実人口カバー率としてカウントするか。ソフトバンクは少し緩いかなという気はする。もう1つの課題は、エリアをどう判定するかということ。エリアの端を弱めに見るか強めにみるか、各社違う。またシミュレーターを使っているので、どうやって補正するか、という課題もある」とした。

ラインナップについて

 2013年度、KDDIでは3M戦略(マルチユース、マルチネットワーク、マルチデバイス)に基づき、「スマートリレーションズ構想」を打ち出して、ユーザーが一部の機能だけを使うのだけではなく、スマートフォンを自由に使いこなせるよう、体制を提供しようとしている。今年5月の発表会では、スマートリレーションズ構想を強く打ち出す一方、スマートフォンのラインナップは4機種に留まった。このとき「選べる自由とauは言うが、実際はあまり選べない」と指摘され、今回の冬モデルでは、そうした声に応えるべく、ラインナップの拡充を図ったのだという。

 2日の冬モデル発表会で、来春モデルを別途、発表する方針を示したのも、そうした姿勢をユーザーへ伝えるものだ。田中氏は「ラインナップが増えることで在庫過多になるとは思っていない。新サービスも発表したいし、春モデルを提供したい。ドコモからもiPhoneが発売されて、いろんなものが選べる状況になったほうがいい、今こそ頑張らなければと思う。(選択肢を用意しなければキャリアとしての)義務を果たしていないのではないかと思って、今回頑張った」と述べた。

 端末ラインナップにHTC製品がなかったことを囲み取材で問われた田中氏は「HTCね、今回ちょっとなかったんですよ。(取材陣:たまたまですか?)これで終わりになりませんので、頑張りましょうと。(取材陣:iidaの後継とか?)まぁ、いろいろとまた……(取材陣:主軸をHTCと継続してやっていましたが、今回からLGに移すと?)いえ、そうではないです」と回答。他の場面であればジョークも飛び出す田中社長だが、この場面は、言葉少なに慎重な受け答えに終始した。

 ソフトバンクモバイルの孫正義社長が、9月30日の発表会で、米Sprintと将来的に端末を共同調達する方針をあらためて示したことを受けて、囲み取材で問われた田中氏は、「はっきり言うと、よくわからない。安くなるのであれば脅威になるだろうが、安くならないのであれば……(孫氏は機種を絞ると発言していたが? という問いに)それはauと逆。いろんなものがあったほうが楽しいのでは」と語った。

単身世帯に向けた「auスマートバリュー mine」

 今回、WiMAX2+対応ルーターとともに発表された「auスマートバリュー mine」は、既存の高速データ通信サービスであるWiMAXの用途の1つが、単身世帯における固定回線代わりになっていたことを受けて用意されたものだ。特に女性の単身世帯では、固定回線を導入する際、工事スタッフが自宅に入ることを嫌がる傾向にあり、モバイルブロードバンドが受け入れられている、という話もある。

 その一方で、auでは固定回線とスマートフォンをセットで利用すると、割り引きする「auスマートバリュー」を展開し、一定の成功を収めている。ただ、モバイルブロードバンドを利用する単身世帯にとって、「auスマートバリュー」は利用できない割引、ということになっていたため、今回、WIMAX2+ルーターの登場にあわせて、新たに「auスマートバリュー mine」が提供されることになった。

20代女性、単身世帯での自宅でのPC利用率
固定回線とのセット割引であるauスマートバリューは単身世帯に響いていなかった
モバイルルーター利用率は24%
そこで11月よりauスマートバリュー mineが登場することに

 田中氏は、「女性の単身世帯におけるパソコンの利用率は92%。1人暮らしのアパートにネット回線があればいいが、ないこともあり、固定回線を引くのも大変」と述べて、「auスマートバリュー mine」とWIMAX2+ルーターの割安さを紹介した。

 ただ今回、「auスマートバリュー mine」で2年契約に加えて、4年契約という長期の期間拘束プランを用意したことについて、質疑で問われた田中氏は「インサイドストーリー(裏話)を話すと、女性はやっぱり固定回線を引くのがイヤで、モバイルルーターを使う人が多いということで、もともと大学入学にあわせ、4年間使えるサービスとして考えた。つまり4年が先にあった。指摘の通り、4年はちょっとハードルが高いよね、ということで、2年契約も用意することになった。4年契約を今後どうするか、検討課題としたい」と述べた。

auスマートパスの継続率は……

 auが進める「スマートリレーションズ構想」を支えるのは、固定回線との関係を支える「auスマートバリュー」のほか、コンテンツの使い放題やクーポンなどを含めた「auスマートパス」、そして有料サポートの「auスマートサポート」だ。

 今回の会見では、auスマートパスの契約数が9月末時点で800万契約を突破したことが明らかになった。なお、8月度はAndroidユーザーの99.7%、iOSユーザーの98.6%が前月から引き続き、auスマートパスを使い続けており、高い継続利用率を示している。

 一方、「auスマートサポート」は今回の発表にあわせてサービスの拡充を発表(※別記事を参照)。9月下旬に行ったバスツアーには、カスタマーサービス企画部長の木村奈津子氏がバスガイドの服装で、参加者をガイドしたことも紹介された。

サービス拡充の概要
auスマートサポート利用者の満足度は高い
auスマートサポートのコンセプト
バスツアーでの木村氏

 こうした有料サポートについて、田中氏は囲み取材において「スマートフォンはできるだけ自分たちが開発できるモデルとして、今回isaiを出す。スマートフォンはグローバル化が急速に進んでいる。ここで折れるとやっぱりダメかなと思っていて、少し付加価値を付けてLGと共同開発した。ネットワークも差別化要素だが、最後はサポート面。(有料サービスのauスマートサポートは)確実にスマートフォンをうまく使えない人には刺さっていると思う。そういう人はとことんサポートしようと思う」と述べて、ラインナップ、ネットワーク、そして有料サポートサービスで、他社と差別化する姿勢を示した。

1.7GHz帯の割り当てについて

 イー・モバイル(イー・アクセス)などが割り当てを求めている1.7GHz帯の追加割当への姿勢を問われると、「基本的に我々が選べるかどうか分からないが、頑張って提案したい。ともあれ先の話です」とコメントした。

剛力彩芽や井川遥も

関口 聖