【Mobile Asia Expo 2013】

TD-LTEの普及状況を語るソフトバンク、3.5GHz帯での実験も予定

 TD-LTE方式を推進する団体のGTIは、26日、中国の上海で開催されている「Mobile Asia Expo」で「GTI Asia Conference」を開催した。同イベントでは、TD-LTEを導入するキャリアの関係者や、同方式を国策として推す中国の要人が講演を行った。日本からは、ソフトバンクモバイルの特別顧問 松本徹三氏が登壇。日本におけるTD-LTEの導入状況を解説した。

ソフトバンクモバイルの特別顧問、松本徹三氏
講演の冒頭では、ソフトバンクグループについての“自己紹介”を行った

 日本の「AXGP」は、技術的には「TD-LTEと100%互換」と言われている。松本氏も講演の途中でこの件に触れ、「ライセンスがAXGPとして提供されているが、100%互換ということは、まさにTD-LTE」と述べている。また、厳密に言うと、AXGP方式はソフトバンク傘下のWireless City Planningが設備の建設やサービスの運用を行っており、ソフトバンクモバイルはMVNOで回線を借り受けているという位置づけとなる。講演ではこうした日本特有の事情も「ソフトバンクが完全にコントロールしているが、法律上はMVNOになっている」(松本氏)と語られている。

日本における、TD-LTE(AXGP)の提供形態を図示した

 こうした事情やソフトバンク自身の説明をしたあと、松本氏はAXGPの加入状況をスライドで紹介。先月末までに、加入者数が142万1200になったとし、次のように語っている。

 「ソフトバンクはiPhoneに集中してきたため、Androidがここに及んでいない。そしてiPhoneはTD-LTEをサポートしていない。それが、数字がそれほど大きくない理由だ」

 一方で、松本氏が「ただ、今年はおそらくこの数値が跳ねる。理由は言えませんが」と述べると、会場は笑いの渦に包まれた。この発言の裏には、TD-LTE対応iPhoneの登場を示唆する意味合いがありそうだ。

AXGPの加入者状況。5月には142万1200となった

 続けて松本氏はこれまで導入してきたAXGP対応端末と夏モデルを、対応ネットワークの視点で紹介。スマートフォンの夏モデルについては、「3モード(AXGP、W-CDMA、GSM)で、7つのバンドをサポートしている」と語った。また、AXGPの人口カバー率は「現在92%で、東京や大阪は密にカバーしている」として、都市部で小セル化を実現している現状を解説した。

昨年から今年にかけ発売した(する)AXGP対応モデルを紹介
人口カバー率や都市部での小セル化の事例。地方部は「基本的に3GとFDDのLTEでカバーする」という方針も語られた

 松本氏は、新たに獲得を目指す2.5GHz帯、25MHz幅の周波数についても「コンペティターのKDDIと競っているところ」とコメント。さらに、同氏は「3.5GHz帯の周波数はとても膨大。まだTDDとFDDのどちらになるのかは決まっていないが、中国移動の方はTD-LTEの方が周波数の利用効率がいいとおっしゃっていた。周波数の利用効率を最大化するのが政府や産業界の役割」と語り、将来的には3.5GHz帯の活用も視野に入れていることを示唆した。

現在、新たに獲得を目指す2.5GHz帯の状況を解説。一方で、3.5GHz帯には膨大な空きがあるとした

 同講演では、8月に3.5GHz帯を利用したTD-LTEのフィールドテストが、日本で行われることも明らかにされた。8月27日、28日に東京で開催される「2013 GTI Ad Hoc Seminar in Tokyo」において、「我々が3.5GHzを使ったTD-LTEのフィールドテストをお見せする」という。

8月に開催されるイベントの概要。フィールドテストも行われるという

 司会者からの質問でVoLTE(LTE上で音声通話を行う規格)の導入についてコメントを求められた松本氏は、「完全に4Gへ切り替えるための最終的な回答だと、誰もが知っている」とコメント。一方でソフトバンクの導入計画については、「いつ動くか。すべてはコスト次第で慎重に計算している。中国移動やVerizonがイニシアティブを取ることにはとても感謝している」と明言を避けた。加えて、「それによってコストが落ちるから」と述べ、聴講者の笑いとともに講演を締めくくった。

石野 純也