KDDI、2010年度第1四半期決算は増収減益に


KDDI 代表取締役社長兼会長の小野寺正氏

 KDDIは、2010年度第1四半期(4~6月)の連結決算を発表し、代表取締役社長兼会長の小野寺正氏が説明を行った。営業収益は前年同期比1.4%増の8660万1900万円、営業利益は8.8%減の1292億9700万円、経常利益は11.5%減の1225億8000万円、当期純利益は16.8%減の719億2100万円の増収減益となった。営業利益の通期見通しに対する進捗率は29.1%。

 移動通信事業では、営業収益は前年同期比0.1%増の6637億1100万円、営業利益は12.6%減の1333億2300万円、経常利益は15%減の1316億2800万円、当期純利益は21.7%減の750億5800万円となった。6月末時点での携帯電話の契約数は3209万件で、累計シェアは28.2%。また、800MHz帯の再編に伴なって巻き取りの対象となる「非トライバンド」端末数は769万台。小野寺氏は、販売台数が増加しているものの、音声ARPUの減収により増収減益となったとした。

 固定通信事業では、営業収益は前年同期比3.3%増、営業損失は約半減の54億円となり、ジュピターテレコムの処分信託株式の一部が売却され、特別利益57億円を計上している。損失を半減させることに成功し、営業損益では「まず第2四半期の黒字化を目指す」としている。

 また設備投資は引き続き新800MHzへの対応を中心としており、連結で1104億円、移動通信事業で793億円、固定通信事業で307億円の設備投資となった。移動通信事業への設備投資は通年で3600億円を予定する。

 小野寺正氏は、各事業の状況はすでにそれぞれの機会で発表しているとして、今後の取り組みを3つのポイントで示した。まず契約純増数については、決算発表において今後はUQコミュニケーションズのBWA(WiMAX)の契約数を合算したものとして表示することを明らかにした。これにより、第1四半期の純増数は、au+UQで28万3000契約、純増シェア17.7%とした。

 小野寺氏はこのほか、固定通信事業において、ジュピターテレコムとの提携や各種施策で連携していく時期を示した。その他のトピックとして挙げられた携帯端末向けマルチメディア放送については、7月21日に総務省にて開催された非公開ヒアリング後に小野寺氏がその取り組みについてコメントしており、今回の決算発表では簡単に触れるに留まった。

 

音声ARPUの減少は想定内もデータARPUが伸び悩む

 質疑応答の時間では、携帯電話の音声ARPUの減少に伴なって減収となった点に質問が及び、小野寺氏は、「データARPUはいろんな施策で上げようとしている。ミドル、ローエンドのクラスでどれだけ使ってもらえるかが重要になる」との考えを示した。また、音声ARPUの減少はシンプルコースの導入・拡大に伴なって必然的に起こる流れであるとし、「来年度も音声ARPUは下がると言わざるを得ない。問題はそれよりも大きなデータARPUの伸びが期待できるかどうかだが、通期予想でも(今期より)20円ぐらいしか伸びない」とし、データARPUが音声ARPUを上回るのは「2年間は無理ではないか」との見方を示した。また、他キャリアでデータARPU逆転が起こっている、あるいは1年以内と予想されていることとの違いを問われると、「シンプルコースを導入した時期の問題」とした。小野寺氏は一方で、「コンテンツ収入は20%以上の伸び。こういうトラフィック依存でないところにもっていかなければいけないだろう」と、ARPU以外の収入の重要性にも言及している。

 

 800MHz帯の再編をめぐっては、同社は“トライバンド端末”として新800MHz帯に対応した端末をすでに提供している。しかし、1X端末を中心に“非トライバンド端末”が6月末時点で769万台残っており、期限となる2012年7月までに移行を推進していく構え。第1四半期の移行数は98万件で、移行ペースについては「今のペースか、もう少しペースを上げないとだめだろう」との認識を示し、アナログやPDC、1.5GHz帯など過去に実施してきた移行施策を、今回も同様に実施していく方針を明らかにしている。

 質疑応答ではこのほか、総務省が進める「光の道」施策に関する質問が多く寄せられた。小野寺氏はこの中で、「すべて光ならコストも高くなる。最後の部分をWiMAXにして100%にするという考え方もある。我々として検討しないと、対案の提示ができない。やる、やらないの前に提示して検討しないと」と光の道構想に対する同社のスタンスを示した。また、「携帯電話では国や自治体の資金で回線設備の一部を負担している地域もある。こういう仕組みを固定でも使えばいいのではないか」との考えを示したほか、NTT経営形態の再検討などは「まだまだ議論しなければいけない部分が残っている」と十分に議論する必要があるとした。

 



(太田 亮三)

2010/7/23 18:46