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NTT、通信容量を2倍にする新技術やミリ波の弱点を克服する分散MIMOを公開

 NTTは、茨城県つくば市で「つくばフォーラム 2026」を開催した。同イベントは5月28日まで開催される。今回のテーマは、「アクセスネットワークで拓く未来 新たな価値創造とサステナブル社会への貢献」で、NTTグループ企業を含む113社が出展。本稿では、会場で展示されていた一部の展示を紹介する。

複数サイト間のビーム選択で「大容量化」を実現、分散MIMO技術

 NTTとNTTドコモ、NECは、25日に大容量ミリ波通信の実証に成功したと発表した。今回、その展示が行われていた。これは昨年度に展示されていた、最適なビームを迅速に見つけ出す技術を拡張し、複数のアンテナから同時に異なる信号を送信する仕組みを実証したもの。

 ミリ波は直進性が高く、ビルなどの障害物によって通信が容易に遮断される特性を持つ。ユーザーが移動した際、通常の基地局間のハンドオーバーでは切り替え処理に時間がかかり、通信が途切れる課題があった。これを解決するため、1つの基地局の配下に複数のアンテナを分散配置し、基地局内で瞬時にアンテナを切り替える技術が開発された。

 昨年度の展示では、端末の移動に合わせて複数のアンテナから最適なビームを瞬時に見つけ出す「分散アンテナ同時ビームサーチ技術」が発表されていた。今年度の展示では、この基盤技術に「大容量化」のポイントが追加されたのが最大の特徴だ。NECとの共同実験により、受信電力が極大となるビームを候補ビームとして選択する高度な仕組みが導入されている。

分散アンテナ同時ビームサーチ技術
複数サイト間ビーム選択技術

 新たに実装された技術では、選択された最適な2つのアンテナから別々の信号を同時に送信することで、通信容量が従来の2倍に拡大される。また、状況に応じて2つのアンテナから同じ信号を同時に送信し、干渉を防ぎながら通信の安定性を飛躍的に向上させることも可能だ。

従来は2アンテナの合成波を基準に選択していたため、片方のアンテナの最適ビームが選択されなかった。今回の提案技術では、今まで考慮されなかった空間方向における極大値を選択する

 実証実験では、高速で移動する環境下でも、この分散アンテナ技術を用いることで瞬時にビームが切り替えられ、途切れない通信が維持されるという。担当者は、鉄道などの直線的な移動だけでなく、多数の柱が存在するオフィスビルやショッピングモールなど、見通しの悪い2次元的な移動環境での活用も想定されると語る。

個人の遊休Wi-Fiを有効活用、通信の最適化機能も

 個人の所有するWi-Fiアクセスポイントをブロックチェーン技術で安全に共有するシステムの展示もあった。

 一般的に通信環境は、事業者が提供するセルラー回線や公衆Wi-Fiが利用されるが、個人が所有するWi-Fiアクセスポイントには利用されていない時間が多く存在する。この遊休リソースを他者と共有することで、通信環境を補完することが本技術の狙いだ。

 担当者は「虎ノ門周辺でアクセスポイントを検索すると、使われていないWi-Fiが数千件も表示される。こうした余剰リソースを活用したいというのが最初の動機だ」と語る。個人間のWi-Fi共有においてはセキュリティ面が懸念されるが、本システムではブロックチェーン技術を活用することで安全性が担保される。

 また、単にアクセスポイントが開放されるだけでなく、通信品質を維持するための最適化技術も組み込まれている。多数のユーザーが特定のアクセスポイントに集中して接続すると、リソースが枯渇して品質悪化が引き起こされる。これに対し、ブロックチェーン上の情報を基に、アクセスポイントごとの品質に合わせて自律分散的に端末の収容が最適化され、利用者の通信品質が向上する仕組みが導入された。

 会場では同技術の有用性を検証するため、Wi-Fiスタンプラリーが開催されていた。来場者に実際の共有Wi-Fiを利用してもらい、使い勝手や通信品質を検証する。

予測と圧縮で通信途絶を防ぐ、衛星回線も活用した新システム

 クボタやNTT、ドコモの3社は、山間部などの通信環境が不安定な地域でも、農業機械の遠隔監視やリモート操作を安定して行えるようにする新たな通信制御技術の共同実証を展示した。日本の農業地域の約4割は中山間地帯に位置しており、モバイル回線の電波が弱くリモート操作用の映像が途切れやすいという課題がある。この課題を解決するため、複数の通信回線を束ねる技術、映像の圧縮、通信品質の劣化予測を組み合わせる仕組みが紹介されている。

 本技術では、モバイル回線に加えてNTTグループが提供する低軌道衛星回線を組み合わせるマルチパス技術が用いられている。さらに、遠隔操作において重要な進行方向や人、障害物などの領域は高画質を維持し、それ以外の不要な部分だけを強く圧縮することでデータ量を抑える映像制御が実装された。最大の特長は通信品質の予測技術であり、担当者は「回線品質が悪化してから対処するのではなく、悪化を事前に予測し、先回りして映像を圧縮することで映像の途切れを防ぐ」と語る。

実証に使用したアンテナなど

 今後は農業分野にとどまらず、建設機械の遠隔操作や自動運転バスの運行など、通信の安定性が求められる社会インフラへの展開が検討されている。

安全かつ効率的な電柱の「建柱」作業に向けた重機操作ガイダンス技術

 NTTアクセスサービスシステム研究所は、通信ケーブルを支える電柱の建柱作業を効率化・安全化するための「重機操作ガイダンス技術」を展示した。電柱を立てる作業には、穴を掘るドリルと電柱を吊り上げるクレーンを備えた専用の「建柱車」が使用されるが、熟練の操作技術や周囲の安全確認を行う複数の作業員が必要となる。本技術は、将来的な作業員不足や安全性の向上を見据え、機械による自律的な操作や操作の簡略化を目指すものだ。

 現在の建柱作業では、クレーンで吊り上げた電柱が揺れないように作業員がロープで押さえながら、穴の真上まで誘導する必要がある。これに対し、本展示では「次世代建柱車」として、クレーンではなく複数の関節を持つアームで電柱を直接掴んで持ち上げるシステムが想定されている。しかし、複数の関節(展示では6つ)を持つアームの操作は複雑であり、周囲の障害物にぶつからずに目的の穴まで移動させるには高度な技術が求められる。

 そこで開発されたのが、「経路生成技術」と「操作ガイダンス技術」だ。作業前に、LiDARを用いて周囲の環境を点群データとして取得し、障害物を把握する。システムは障害物を避けて安全に穴まで移動できる経路を自動で計算し、操作画面に表示する。オペレーターは画面上のゲージに合わせてレバーを操作するだけで、複雑なアームの動きを意識することなく、安全な経路に沿って電柱を移動させることができる。

 デモンストレーションでは、オペレーターが画面の指示に従い、複数のレバーを順番に操作するだけで、アームが障害物を避けて目標位置まで移動する様子が実演された。これにより、熟練者でなくても安全かつ効率的に建柱作業を行えるようになる。

画面
左が操作する機械。画面とレバーが連動している
現状では動作経路のみ。目標位置に到達した後は、直接確認しながら下ろす操作を行う

 また、本技術は操作の簡略化だけでなく、作業の省人化にも寄与する。従来は電柱の揺れを抑える「振れ止め者」や周囲の安全を確認する「合図者」など、複数の作業員が必要だったが、システムが経路を計算しアームで直接保持することで、これらの役割をシステムや少人数の作業員で代替できるようになる。