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ソフトバンク宮川社長、「今こそAI時代の基盤へ刷新せよ」とSoftBank Worldで講演
2026年7月14日 21:52
ソフトバンクは14日、法人顧客向けのイベント「SoftBank World 2026」を開催した。
ソフトバンク代表取締役 社長執行役員 兼 CEOの宮川潤一氏は、特別講演で、AI時代のサイバーセキュリティとして「燃えない基盤」への刷新の重要性を論じた。
155年前のシカゴ大火
宮川氏はまず、一枚の絵を見せた。155年前に米国のシカゴで発生した大火災の様子を描いた絵で「たった3日間で焼け野原になった」と宮川氏は紹介する。焼失面積は東京ドーム170個分に相当し、米国でも史上最大級の都市災害になったといわれている。一方で、その後、「燃えない都市の基盤構築」を推進した当時のシカゴ市長ジョセフ・メディル氏と、近代高層建築の父といわれるウィリアム・L・B・ジェニー氏という2人の立役者により、耐火建築や区画整備、防火用水の確保が行われ、街のルールとインフラを根底から変えられた。建築では、耐火材料の使用やエレベーターの設置、大きな窓の採用など現代のビルにも採用されている意匠や技術が取り入れられた。これらのまちづくり構想は、その後のシカゴ万博を通じて世界各地へと受け継がれている。
宮川氏は、これを「既存の街並みを再現する」か「基盤から全く新しくする」2つの選択肢があったと指摘。シカゴは後者を選択したが、これが後の飛躍的な都市の発展につながったと語る。
ところで、現在の企業システムにも同様の課題があると宮川氏は述べ、「企業のシステムは、シカゴのような燃えない基盤になっているか」と目の前の経営者に語りかける。
実際、同社傘下のアスクルではサイバー攻撃を受けシステムが停止してしまう事件があった。宮川氏は「対岸の火事ではない」とし、続けて「業務が停止し売上が減少するだけでなく、信頼を失い、企業の存続に直結する問題だ」と説明する。企業に求められているのは「止まってから復旧する力」ではなく「企業システム全体を止まらない基盤に刷新すること」と指摘。講演で「モダナイゼーション」という言葉を知ってほしいと呼びかけた。
1年以内に「AGI」が登場
宮川氏は、AIがこの3年間で急速に普及してきていると語る。たとえば、3年前にはテキストしか扱えなかったAIは、現在では動画や音声などを理解できるようになっている。また、人間からの指示待ちだったAIが、エージェントAIとして自律的に行動するようになった。近年では、AIが搭載されたロボットも登場し、サイバー空間を超えて現実世界でも動くようになってきている。
人間の知能は、長い時間をかけて進化してきたが、AIは人間と全く違うスピードで進化を遂げてきており、「人類は、AIの処理能力には追いつけない」とコメントする。
人類の英知を超えた「AGI(Artificial General Intelligence)」について、「今後1年以内に宣言される」と論じ、1年以内には「Pre AGI」から「Post AGI」時代になると指摘。AGIの登場を境に「全く違う世界になる。AGIの頭脳を持った自動運転や産業ロボットは、もう目の前まで来ている」と指摘する。
3つの活用事例
宮川氏は、同社で実施しているAI活用事例として、「コミュニケーション」「コールセンター」「サイバーセキュリティ」の3つを挙げる。
「コミュニケーション」のテーマで宮川氏は、同社が開発する国産LLM「Sarashina」を紹介する。宮川氏は「日本語を一生懸命勉強させて、ずいぶんと進化してきた」とアピール。講演では、翻訳に特化された軽量化モデルを使用したデモが実施され、翻訳遅延が少ないリアルタイム翻訳が披露された。
翻訳特化モデルでは、話者の声に似た声で翻訳文が読まれるほか、「五月雨式」のような読み方が難しい言葉や歴史的な言葉、四字熟語、人名、地名などを誤読しないようにチューニングしている。同モデルでは、日本語だけでなく8カ国語に対応できているので、ワンクリックで言語を切り替えられるという。宮川氏は「実は海外の講演は苦手だったが、このモデルでとうとう可能になるかもしれないと思う」と技術の進歩をアピールする。
コールセンター業務では「Gen-AX」のモデルの進化とともに、AIコールセンター事業を展開する「SIERRA」との提携を発表した。ソフトバンクの通信ブランド「LINEMO」で実際に活用したといい、2週間の構築期間で「課題解決率97%」「ユーザー満足度93%」と高い実績を挙げられたとして「たった2週間の学習だけで、実用レベルに達している」と語る。
サイバーモデルのAIで攻撃が同時多発的に
サイバーセキュリティでは、AIが攻撃者と防衛者の2つの側面があると宮川氏は語る。一般ユーザーが利用できる「汎用モデル」では、サイバー関連の操作や分析には厳格な制限がかけられている。一方で、一定の安全管理のもと、条件付きで機能制限が緩和されている「サイバーモデル」というものがあり、宮川氏によると「脆弱性を見つけるだけでなく、攻撃までやってしまうものもある」という。脆弱性をチェックできるソフトウェアを扱える企業はいくつかあるが、攻撃までできる「GPT-5.5 Cyber」を扱える数少ない企業の1つがソフトバンクだといい、これにより「人間の設定ミスや脆弱な認証など、システムの穴をつなぎ合わせて想定される攻撃の道筋まで分析できるモデル」と宮川氏は説明する。
実際にこのモデルでソフトバンクのシステムをチェックしたところ、社内でコード管理している700のシステムのなかで、1万500件の脆弱性が発見されたという。同社外の企業でも1000万行のソースコードを持つシステムあたり平均280件の脆弱性が見つかったと指摘。このサイバーモデルが悪用されれば、企業内の防犯カメラが乗っ取られ、社内の重要な情報資産が狙われる可能性がある。
サイバーモデルに限らず、音声や動画に特化したLLMなどもこれまで登場してきており、一般ユーザーにも利用できるオープンモデルが登場した際、フィッシング詐欺やフェイク動画などが横行してしまうことがあった。オープンモデル化するまでの期間はだんだん短くなってきており、宮川氏は「半年後に出てくるかもしれない」と指摘。これに限らず「ちょっと賢いエージェントを組み合わせて、脆弱性をチェックできる程度の性能を備えたモデルが中国で発表されている。オープン化されたサイバーモデルの脅威は、絵空事でなくなったと宮川氏は危機感を募らせる。
宮川氏は実際にサイバー攻撃の模擬試験を実施。日本でも広く使われているECパッケージで作成したサイトを使い試験したところ、サイバーモデルがシステムを分析し、攻撃シナリオを作成、実行し、システムダウンまで実行できた。サイトにはファイアウォール機能(WAF)が備わっていたものの、それを突破する穴を見つけて、システム内部から個人情報を盗み出し、システムダウンまでできてしまったという。
企業のシステムには、VPNや認証などさまざまな防衛策が施されているが、同時多発的に実施できるAIのサイバーアタックの前には、これまで講じてきた防衛策は「AIにとって防衛にすらなっていないのかもしれない」と宮川氏はコメント。これから必要なのは「システムの総点検と最先端AIに対応したソースコードの入れ替えだ」と指摘する。
実際に、長年にわたり信頼されてきたシステムにおいても、サイバーモデルがこれまで発見されてこなかった脆弱性を見つけており、「AI時代のモダナイズ」、AI自身が構築してAI自身が守れるシステムへ根本から変えていくことが必要だと説いた。
また、金融機関を中心に、さまざまな企業システムがネットワークによってつながっていると指摘。先述のシカゴの例でも「燃えない構造の基盤へと作り替えた」とし、「AI時代の基盤へ根本的に作り上げていく必要がある。自社だけ守ればいいという時代ではもうない」と協力し合い、基盤全体を守り抜いて行く必要があると呼びかけた。



















































