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ソフトバンクの2025年度第1四半期は増収、宮川社長は「AIなくして次はない」

 ソフトバンクは5日、2026年3月期第1四半期決算を発表した。売上高は1兆6586億円(前年同期比+8.0%)、営業利益は2907億円(-4.3%)、四半期純利益は1823億円(-9.1%)だった。利益の減少については、子会社の支配喪失や関係会社の再編など“一過性要因”だとしており、この影響を除いた営業利益は前年比で+6%、純利益は+1%の増収増益とアピールする。通期業績予想に対する進捗も、25%を超え“順調”としている。

全セグメントで増収

 代表取締役社長執行役員兼CEOの宮川潤一氏は、決算説明会で「全セグメントで増収、特にディストリビューション事業とファイナンス事業で20%を超える成長」と説明。過去に料金値下げの影響が続いていたコンシューマー事業も+5%の7178億円の売上高となっている。

 コンシューマー事業のなかでも、モバイル分野では、前年同期比+1%の3975億円で、通期増益の目標まで順調に推移。スマートフォン契約数も前年同期比+3%の3195万件で、特にワイモバイルブランドを中心に伸ばした。

 エンタープライズ事業でも、売上高は2338億円(前年同期比+8%)、営業利益は488億円(+18%)と増収増益。メディア・EC事業の売上高は4069億円(+2%)、営業利益は707億円(-26%)と増収減益となったが、一過性要因を除いた営業利益を見ると+6%の増収増益だという。

 ファイナンス事業の売上高は913億円(+23%)、営業利益は181億円(+137%)の増収増益となった。PayPayの連結決算取扱高(GMV)は4.5兆円(+24%)、連結EBITDAは219億円(+87%)と増収増益に貢献した。

 エンタープライズ事業では、AIを活用したソリューションを展開。たとえば、5月に発表した三井住友カードとの包括業務提携では、三井住友カードのコールセンターでAIオペレーターを開発し導入を支援する。これにより、24時間365日AIオペレーターが応対し、コスト削減とユーザー利便性の向上に寄与する。

 ファイナンス事業では、PayPayブランドでグループシナジーを大きくする取り組みを進めている。たとえばPayPay銀行では、キャッシュレス決済サービスのPayPayアカウントとの連携を強化し、特典の優遇や口座開設を促進。また、ソフトバンクの料金プランを契約するユーザー向けに、住宅ローンの金利を優遇するプランを提供している。

 資金調達関連では、7月に同社初の外債を発行。幅広い投資家層にアクセスすることで、資金調達の手段を多様化。AI時代の設備投資などに対する資金調達手段の拡充を図ったとみられる。

質疑では、料金関連に集中

 説明会冒頭で宮川氏は「株主総会やSoftbank Worldで戦略についてはしっかり話した直後なので、今回は業績中心の説明にしたい」と話し、従来よりも短めにプレゼンは終了。その後の質疑では、業界にある「各種料金の値上げの流れ」などへの質問が集中した。

――NTTドコモが手数料を改定した。ソフトバンクも手数料を改定したが、ドコモと異なりWebでの手数料を有料にしたが、受け止めを。

宮川氏
 Web手数料について、セキュリティ対策の強化や本人確認の厳格化、決済システム関連費用の上昇などによるコスト増を踏まえて、有償化した。サービス向上に努めるために、やむなく。理解いただきたい。

――プラン料金よりも、各種手数料を先に値上げした理由は?

宮川氏
 手数料に関わるコストが上昇している。店舗のスタッフも昇給していかなければならない。

――ソフトバンクとドコモは手数料を上げたが、KDDIは据え置くようだ。業界でばらつきが出ていることへの受け止めは?

宮川氏
 市場の動向を見ながら、適切な時期に適切な価格にすることを判断しているが、今本当に(値上げに)踏み込むべきかどうか、本当に悩んでいる。各社横並びである方がいい、とは思っていないので、ユーザーに理解してもらい、ソフトバンクを選んでもらえるようなものにしていきたい。

 (プラン料金の値上げについても)本当に今議論中。既存の料金プランを値上げするのか、新しいサービスを出していくのかについても、今考えている方向は決まっているが、今は話せる時期ではない、というスケジュール感で動いている。

宮川氏

――低価格プランについて、他社では短期間での解約が多いと聞くが、ソフトバンクの状況はどうか?

宮川氏
 我々も他社同様に、ワイモバイルやLINEMOの低価格プランは同じような状況(SIMホッピング、契約時のインセンティブを目的に契約し短期間で解約する)で、特にSIM単体のものは狙われやすい。それに対する対策を打って、少しは改善しているが、状況はあまり変わっていない。

――低価格プランの今後の展開はどうするか?

宮川氏
 我々が「ト金プロジェクト」と呼んでいるものがあり、まずはユーザーを集めやすい商品から使ってもらい、ユーザーが大容量のデータ通信をするにつれて、ソフトバンクブランドなどに移行してもらう施策がある。これによる移行が増え続けており、この構造を変えるつもりはない。

――他社が料金プランを大幅に刷新したが、ソフトバンクの顧客動向は?

宮川氏
 MNPは好調。獲得の増減の主要因について、ネットワーク品質という声があるが、本当は料金だと思う。我々も値上げしたい気持ちがすごくあるが、それがユーザーに受け入れられるかどうかがすべて。ユーザーが納得してもらえる適正価格を今慎重に議論している。

――店舗の在り方について。

宮川氏
 店舗を減らすことは考えていない。ユーザー接点という観点で見ると、店舗は非常に重要。スマートフォン教室などを通じて、高齢者を含め誰一人取り残すことのない日本のデジタル化をやり遂げるために、これからもAIエージェントの使い方講座など、講座自体も進化していくと思う。

 もう少し先になれば、ロボットや自動運転車などを売る時代に来るかも知れない。

――他社の低容量プランがなくなったが、ワイモバイル好調の要因になっている?

宮川氏
 元々MNPは強い方だったので、これが原因だとはあまり思っていない。もっとも、料金の話となると、もっと強敵は楽天モバイル。楽天モバイルと戦っていく風になると思う。

――料金プランの値上げ、何を悩んでいるのか?

宮川氏
 ユーザーが本当に受け入れてくれるのか? が1つ。ネットの声を自分自身も細かく見ているつもりだが、あまり満足度の高い意見が少ない印象。

 2つめは、ドコモもauも強敵だが、楽天モバイルも忘れてはならない存在。3大キャリアが同じ方向に走ってしまうと、(楽天モバイルが)漁夫の利を得てしまうことにならないか、この隙間をきっちり埋めないといけないと思っているので、よく検討しているところ。

――HAPSについて、気球型になったのはなぜ?

宮川氏
 気球型で許可が取れることがわかったので。これまでは許可を取るのが大変だという話だった。

 航空法は、最初にサービスした順番で権利の優先順位が決まってしまう。これまでの飛行機タイプだと、飛行機の上空の空域をまたぐことが商用化するのに相当時間がかかる(2029年と予測)。

 一方で、アメリカで飛行船タイプの許可が下りたという話があり、日本でも可能かを確認すると、国土交通省からも“イエス”の返答があったので、踏み切った。今後、ソーラーパネルやモーター、バッテリーなど“三種の神器”の置き換えなどを踏まえ、性能を上げてサービス提供まで進めている段階。

――ラピダスへの追加投資はあるか?

宮川氏
 まず10億円投資してあるが、第2ラウンドの声かけはされている。私はできるだけのことはやりたいと思っている。一度やりかけたことを途中で投げ出すのはよくないと思っている。

 もっとも、取締役会があるので、私の一存では決められないが、志としては応援したい。

――今期の決算を見ると、この後通信料金の値上げなどを踏まえると、通期目標の達成は「楽勝」と見えそうだが、受け止めは?

宮川氏
 楽勝だと言うほどではない。1つずつ経費の削減に努めながら出してきた結果だと思う。来期から、中期経営計画の2期目に入っていくので、前任の宮内氏から引き継いだものを完成させ、次の10カ年計画を立てる段階だったので、クラウド環境やAI-RANのソフト開発、HAPSなどいくつか手を打ってきたつもりでいる。

 次の中期経営計画では、「AIなくして次の中期経営計画はなし」だと思っているので、まずはAIを拡大していく。AIデータセンターは、今手持ちのもので約50メガワットくらいもっており、ほぼ稼働している。2027年には300メガワットまで持ち上げていきたい。携帯電話基地局と同じように、小刻みに投資していき、刈り取り(収益化)の方向に向かっていきたい。AI-RANもハードウェアの製造も含め、チャレンジしていきたい。通信キャリアとは違った分野の数字が出てくると思い、来期以降に新しいセグメントが追加されるくらい、会社の大改革を進めたい。