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「宇宙とAIがモバイルのゲームチェンジャー」、楽天モバイルが描く次の一手
2025年8月1日 00:00
衛星通信とAIに集中する楽天モバイル。2026年にはスマートフォンと衛星の直接通信が、近い将来にはAIと対話して契約できるソリューションの展開など、ユーザーに接するAIの拡大も見込む。100%の地理面積をカバーする衛星通信で「IoTもビジネスも自然も大きく変わる世界が、1~2年で来る」と、楽天モバイル 代表取締役社長の矢澤俊介氏が同社のイベント「Rakuten AI Optimism」で語った。
衛星通信でブロードバンド
楽天モバイルでは4月、「Rakuten 最強衛星サービス」を発表した。米AST SpaceMobileとの取り組みで、衛星経由でのブロードバンド通信を可能にする。国内でもスマートフォンと衛星の直接通信はすでにサービスが始まっているが、テキストメッセージなど一部の機能の利用にとどまる。
先行する他社の衛星と比較して、およそ36倍の大きさを誇るというAST SpaceMobileの人工衛星。ここにブロードバンド通信を可能にする秘密があると矢澤氏。楽天モバイルでは、4月に衛星経由でのビデオ通話の実証に成功しており、商用導入を急ぐ。矢澤氏は、日本が災害が多い国であることに触れ、衛星がモバイル通信に組み合わされることで「(災害に関する)データを集める方法が変わる」と展望を示す。
地理的に100%のカバレッジが可能な衛星通信により、海上や離島、僻地でもブロードバンド通信を実現することで、人のいる場所もそうではない場所も、すべてがエリア内となる。矢澤氏は「IoTと自然、ビジネスが大きく変わる。この時代があと1~2年で来る」と語った。
4月時点では、2026年末の開始予定とアナウンスされていた楽天モバイルの衛星通信サービス。矢澤氏は「今、社内ではもう少し前倒しできるように頑張っている。来年の早い時期に楽天モバイルユーザーに対して、最強衛星サービスを提供したいと思う」と話した。
楽天モバイルのネットワーク支えるAI
現状、楽天モバイルの4G人口カバー率は99.9%だと矢澤氏。契約回線数としては900万回線を突破した。来る1000万回線突破に向けて、基地局設備の増強を進める。
4Gと5Gをあわせた屋外基地局数の合計は9万4000局。2025年末までに1万局以上を追加で設置する。東京都心では5G基地局を増やして、混雑時のつながりやすさ改善を目指す。さらに地方でも、基地局の電波出力改善で沖縄県では5G(Sub6)エリアをおよそ2倍に、福岡県では同じく1.1倍に拡大した。5G向けの設備のみで構成される「5G SA」については、2026年にも運用体制を整え、その後に商用展開を見込む。
楽天モバイルのネットワークを支えている技術のひとつがAI。矢澤氏は、前出の都内での電波改善で「混雑時、4Gと5G基地局でトラフィックをどう住み分けるかをAIで自動的に我々のOpenRANシステムに載せていく」と混雑対策の一環について説明した。
楽天モバイルでCTOを務めるシャラッド・スリオアストーア氏によると、同社ではAIをネットワークの監視やAIエージェントでのカスタマーサービスなど幅広い分野で取り入れている。AIによる監視で「ほとんどの場合、(問題を)自動解決できる」とスリオアストーア氏は説明。通常、実際に基地局に向かわなければならない問題についても自動修復ができるという。ほかに5G基地局を省エネ化するAIなども取り入れている。
サービスへのAI導入もさらに拡大
円安や世界情勢の影響を受けて物価が高騰する反面、通信費は低下している。楽天モバイル 共同CEOの鈴木和洋氏は「楽天モバイルの参入により健全な競争が起きて携帯電話料金全体が低下した」と自負する。
料金プランとともに楽天モバイルが提供するのは、AIの進化。同社のアプリ「Rakuten Link」では、楽天グループのサービスと連携して回答する機能が追加されるなど機能を強化している。現状ではチャットでのやりとりが一般的なAIエージェントだが、鈴木氏は「今後、AIがコンシェルジュになる」と展望を示す。
さらに、ユーザーコミュニケーションでもAIを進化させる。現状ではWebサイトでチャットボットがすでに提供されているが、将来的にはAIアバターによる接客や「自動契約SIM自販機 最強くん」としてAIと会話しながらSIMを発行する仕組みを導入する。
1000万回線の大台も見えてきた楽天モバイル。鈴木氏は「No.1キャリア」に向けて「通信品質やサービスの改善を続ける。衛星通信、宇宙とAIが恐らく携帯電話市場全体を変えていくゲームチェンジャーになる。そこで、我々が勝者になるということが、ナンバーワンキャリアへの道だと思う」と語った。





































