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ソフトバンク、第39回株主総会を開催 AI共存社会へ着実な歩み

 ソフトバンクは26日、第39回定時株主総会を開催した。AI(人工知能)との共存社会を支えるテクノロジー企業への変革を目指し、その着実な歩みと事業成果を報告した。

写真提供:ソフトバンク(以下同)

 宮川潤一社長は、「不便な人をゼロにしたい」「子供たちの可能性を広げたい」「ワクワクする未来を作りたい」という創業以来の理念を改めて掲げ、情報革命を通じて人々を幸せにするという同社の思いを強調した。

ソフトバンク代表取締役 社長執行役員 兼 CEO 宮川潤一氏

好調な業績と中期経営計画の前倒し達成

 2024年度の連結決算では、売上高が前期比8%増の6兆543億円、営業利益が同13%増の9890億円、純利益が同8%増の5261億円となり、全セグメントで増収増益を達成した。特に、2023年5月に発表した中期経営計画の目標を、売上高・営業利益ともに1年前倒しで達成したと報告。

 宮川社長は、AIへの積極投資を継続する方針を示しつつ、中期経営計画の財務目標を上方修正し、1兆円超の利益達成を目指すと表明。今期は過去最高の純利益を見込むと語った。

成長戦略「Beyond Carrier」とAIへの大規模投資

 ソフトバンクは、中核の通信事業の持続的成長を図りながら、情報・テクノロジー分野へ事業領域を拡大し、企業価値の最大化を目指す「Beyond Carrier」戦略を推進している。

 成長の柱として掲げるのがAIへの投資。宮川社長は、AIが人々の生活やビジネスを大きく変革する可能性を秘めているとし、「次世代社会インフラ」としてのAI技術の社会実装を進める考えを強調した。

 具体的には、子会社のジェナックスが、人のように思考・推論し、感情に寄り添った振る舞いができるAIエージェントの開発を進行。特にコールセンター業務を代行するAIエージェントは、会話を遮られても自然な対話が成立するほど高度な進化を遂げており、納品後も進化を続け、多数の引き合いがあるという。

 また、OpenAIと共同開発中の「クリスタル・インテリジェンス」は、企業内の各部門に存在するAIエージェントを自律的に連携させ、経営全体を最適化する仕組み。日本国内ではSB OpenAI Japanを通じて独占的に販売される予定。

 さらに、国外の法律やインフラに依存せず国内でデータを管理・運用する「ソブリンクラウド」「ソブリンAI」の準備も進行中。加えて、AI半導体をクラウド上で貸し出すGPU as a Serviceの商用化準備も進み、来期の成長ドライバーとして期待されている。

 このほか、NVIDIAと共同で、AIと通信を融合させユーザーの近くでデータ処理を行うことで低遅延・高セキュリティを実現する「AI-RAN」の開発も進行。モバイルネットワークをAIネットワークへ進化させることを目指している。

 AIによる膨大なデータ処理と電力消費への対応策として、大阪府堺市のシャープ旧工場跡地をAIエージェントの重要拠点とし、北海道苫小牧市ではグリーンエネルギーと冷涼な気候を活用した環境配慮型AIデータセンターの建設も進めている。

 さらに、空飛ぶ基地局「HAPS」は、飛行船タイプ(LTA、Lighter Than Air)の新機体導入により、商用化が前倒しに。当初2029年を想定していた商用化は、2026年からのプレ商用開始を見込む。直径200kmの通信提供が可能で、災害対策やドローン・空飛ぶ車向けの3次元通信を支える次世代インフラを目指す。

各事業セグメントの好調と社会課題への取り組み

 コンシューマ事業では、モバイル契約数が増加し、PayPayとの連携による顧客獲得も進展。スマートフォン累計契約数は3177万件、純増は104万件となった。通信品質の向上、5Gエリア拡大、基地局増強に加え、災害時の早期復旧体制整備にも注力。さらに、情報格差解消のため、2015年から全国で約100万回のスマホ教室を開催し、防災対策や詐欺防止の講座も実施してきた。スポーツ分野では、AIを活用した「AIスマートコーチ」を展開し、教育格差の解消にも取り組んでいる。

 エンタープライズ事業も増収増益となり、特にソリューション領域の売上高は前年比27%増。AIトランスフォーメーションを推進し、医薬品開発やスマートビル領域で新たなソリューションを提供している。

 メディア・EC事業では、LINE AIアシスタントの友だち追加が100万人を突破し、生成AIを活用した「LINE AI」や「トークサジェスト」の提供も開始。ファイナンス事業ではPayPayの登録ユーザー数が6900万人を超え、連結営業利益は300億円超を記録。PayPay銀行・PayPay証券の子会社化も完了し、米国市場も視野に入れた上場準備を進めている。

株主還元・企業統治・ガバナンスへの対応

 株主還元として、2024年10月に株式分割を実施し、PayPayマネーライトがもらえる株主優待も新設。その結果、株主数は136万人に増加し、特に40歳代以下の株主は2.4倍となった。配当はAIへの先行投資を優先しつつ、次期中計では増配も視野に入れる方針を示した。

 親子上場に対する株主からの懸念に対し、宮川社長は、ソフトバンクグループとは事業特性が異なるため利益相反の可能性は低いと説明。取締役の過半数を社外取締役とすることで少数株主の利益を保護する体制を構築していることも強調した。創業者でソフトバンクグループ会長でもある孫正義氏も「親子上場は反対するものではなく、大いに促進すべきだ」との考えを示した。

ソフトバンク創業者 取締役の孫正義氏(ソフトバンクグループ代表取締役会長兼社長執行役員)

 また、6月11日発表の業務委託先による個人情報漏洩事案については深く謝罪し、個人情報取り扱い業務の全面見直しと、今後はすべて自社直接管理下で運用する再発防止策を発表。

 質疑応答ではほかにも、AIに関する愛称の提案が株主からあり、宮川社長は商品名の重要性を認識しており、参考にすると応じた。また、PayPayの手数料が高いとの報道に対し、クレジットカードの約半額であり、集客効果の対価と説明。加盟店数も順調に増加していると述べた。