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価格は数千円前半目指す、iPhone連携できる「FeliCaカード」とは
フェリカネットワークス眞鍋社長は多様な形態を提案
(2014/7/18 16:15)
交通系ICカードやおサイフケータイなどに活用されている技術「FeliCa」の新たな未来像として、17日にさまざまな製品やソリューションが発表された。それらの中で、話題となっているのが、スマートフォンとBluetoothで連携できるコンセプトモデル「インタラクティブ・FeliCaカード」だ。
18日まで渋谷ヒカリエで開催されている「FeliCa Connect 2014」では、iPhoneと試作版のインタラクティブ・FeliCaカードが紹介されている。説明員が手にしていた試作版は、アプリこそ仮のものだが、実際にタッチ操作が可能なもの。ブースでは、架空の電子マネーアプリで買い物をして、残高が減る、といった一連の流れを体験できる。アプリの追加といった操作は、Bluetoothで繋がったiPhone側で行う。カードそのものは、いわゆるクレジットカードと同等の大きさで、なおかつ、厚みはIC対応の運転免許証の2倍になるとのこと。
今回は「こういった製品を提供できる」といったアピールとしての要素が強い。そのため販売形態などはまだ決まっておらず、携帯電話キャリアが販売するのか、あるいは家電量販店で取り扱われるかなど、詳細はまだ先の話になるようだ。価格帯についても未定だが、担当者は「数千円台の前半でなければ受け入れられないと思っている」とコメントしていた。
会場では、第3世代のモバイルFeliCaチップなども展示。このチップは、新たな暗号方式としてAESに対応するほか、NFCの仕様もサポートし、なおかつ小型化したもの。端末メーカーにとっては日本向けモデル、海外向けモデルと分けずに端末を開発できる。今夏量産され、はやければこの秋にも搭載したスマートフォンが登場する可能性もあるようだ。
おサイフケータイから10年
フェリカネットワークスは、これまでモバイルFeliCaチップの開発、製造と販売のライセンス、あるいはおサイフケータイのプラットフォームの運営を担当してきた。本誌でも、10年前におサイフケータイがスタートする際には、“縁の下の力持ち”として取材したが、その一方で、今回展示した「インタラクティブ・FeliCaカード」はスマートフォンとFeliCaを切り離すものであり、これまでの取り組みとは大きな転換を示すものだ。
この4月にフェリカネットワークス代表取締役社長に就任した眞鍋マリオ氏は、これまでビットワレット社長やソニーのFeliCa事業部長を歴任してきた人物で、FeliCaのビジネスに精通した人物だ。その眞鍋氏は、「2014年は次の10年に進むステップ」と位置付け、ウェアラブル機器などが注目されるなかで、モバイルFeliCaもさまざまな形状を提案する時期と説明する。
全国で交通ICカードが広まり、小売流通でも広がりを見せていく一方で、最近ではFeliCaを用いない、サーバー型電子マネーや、POSレジでの支払後に利用できるようになるプリペイドカード(POSA)、そしてauの「au WALLET」など、新たな手段が増えてきており、ユーザーにとっては、1つ1つの使い方が異なる形となって、眞鍋氏は「UX(ユーザー体験)がバラバラになってしまうのではないか」と述べ、、フェリカネットワークスとして、そうした状況をとりまとめるソリューションを提供できる、と胸を張る。
おサイフケータイのヘビーユーザーは約1000万人、母数となるFeliCa対応の携帯電話は約7000万台、稼働しているとの推定値を示した眞鍋氏は、Androidのみならず、iOSやTizen、Firefox OSなど、さまざまなOSの提供元とコミュニケーションをとっているとことを紹介し、状況の変化に対応していく姿勢を示す。
今後、新たな形状・ソリューションを提案していくとのことで、その一例として香港ではSIMカードにFeliCa機能を搭載し、現地の交通カード(オクトパス)として利用できる商用サービスが今春、スタートしたことも紹介された。昨年からトライアルサービスが提供され、現状、SIMカード型FeliCaは約5万台、利用されているとのこと。展示会ではmicroSDカード内にFeliCa機能を搭載するものも紹介されていたが、どちらもJavaのアプレットの1つとしてFeliCa機能を実装したのだという。
また同じくSIMカード型ながら、リーダーライター機能を搭載するものも用意して、NFC対応のスマートフォンに装着するとFeliCaのリーダーライターとして利用できるようにする製品も紹介された。これがあれば、より安価に、FeliCa対応の店頭リーダーライターを設置できるようだ。
携帯電話と離れて、ウェアラブル機器やカード型での提供といった新たな形状、そして二段階認証での活用や、SIMカード型、あるいは安価なリーダーライター用のソリューションの提供など、「FeliCa Connect」の開催にあわせて、多彩な提案を行うフェリカネットワークスとソニー。
その一方で、店頭販促でのクーポン配信ではビーコン(Beacon)技術への注目が集まり、LINEなどを使った企業とユーザーのコミュニケーションも盛ん。決済関連でも、コンビニ店頭で販売されるPOSA、あるいは大々的にサービス開始をうたう「au WALLET」など、いずれもFeliCaが関わることなく、多くのユーザーに利用されている、あるいは今後、利用されようとしているものだ。かつてFeliCaが提供できる、とアピールした形を、FeliCa抜きで実現したようにも見える現状だが、眞鍋氏は、モバイル通信で常にやり取りできるおサイフケータイの特性、そして7000万台もの対応端末が存在することが大きなメリットとして、そうした点をアドバンテージにしていく考えを示していた。