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楽天モバイルが学生・新社会人に最大1.4万円還元、鈴木共同CEO「料金改定は考えていない」

 楽天モバイルは14日、都内で記者会見を開き、春商戦に向けた新たなキャンペーンを発表した。「楽天エコシステム」との連携を深め、「実質無料」をキーワードに、若年層を中心とした新規契約獲得を狙う戦略が示された。

経済停滞下で通信費は下落、楽天モバイル参入が競争促進

鈴木氏

 プレゼンテーションを行った楽天モバイル代表取締役共同CEOの鈴木和洋氏は、日本の経済成長が停滞する中で、通信費だけが下落している現状を指摘。その背景には、楽天モバイルの市場参入が大きく影響しており、携帯市場における健全な競争を促進し、料金の低下に貢献したと強調した。

 楽天モバイルは、完全仮想化モバイルネットワークを採用。競合他社と比べて低価格で、段階制での使い放題という料金プランを提供してきた。ここまでに契約者数は830万を突破しており、鈴木氏は「顧客満足度も2年連続でナンバーワンを獲得した」と、ユーザーから支持されているとアピール。

「楽天経済圏」のメリット強調

 鈴木氏は、今回のプレゼンテーションで「知っていただきたい新事実」として「楽天モバイルは永年無料」と語る。

 これは、楽天モバイルの料金プランだけではなく、楽天市場、楽天カードなど「楽天エコシステム」の利用でもたらされるポイントを使うことで、楽天モバイルを「実質無料」で利用できるという意味。

 鈴木氏が挙げた例のひとつとして、たとえば、楽天市場で月1万6000円程度の買い物をすると、1135ポイント還元され、これは、楽天モバイルの「Rakuten最強プラン」3GBまでの利用料である「968円」をポイントで相殺できる。

 また、楽天ペイを日常的に利用して月に2万円程度、楽天市場でペット用品などを購入しているとさらに2万2000円程度、あわせて4万2000円程度、日々の暮らしのなかで利用していると、2082ポイントの還元を受けられる。これは、10GB~20GBの料金である2068円をまかなえる、と鈴木氏は解説する。

 Rakuten最強プランの上限である月額3168円も、月間6万9000円相当の利用による3186ポイントで充当できる。楽天トラベルで旅行を手配したり、楽天ビューティを利用したりするといった使い方で「6万9000円」という金額も無理なく達成できるとした。

 こうした「楽天エコシステム」との連携もまた楽天モバイルの強みとして打ち出しつつ、入学や新社会人など、新生活を迎える時期であることから、携帯電話業界では年間でもっとも活況を呈する春商戦に向けて、「学生応援キャンペーン」「新生活応援キャンペーン」が提供されることになった。

 「学生応援キャンペーン」では、5歳~18歳を対象に、最大1万4000ポイントを還元する。もう一方の「新生活応援キャンペーン」は19歳~25歳が対象であり、同じく最大1万4000ポイントが還元される。どちらも、3GBまでの利用であれば、1年分の楽天モバイル利用料を実質無料にできることになる。

質疑応答で明らかになった戦略と課題

 質疑応答では、他社が値上げを示唆する中で、楽天モバイルの価格戦略についての質問などが挙がった。

 楽天モバイル側は、健全な競争によって価格が下がってきたと強調し、いたずらに価格破壊をしようとしているわけではないと回答した。また、適切な利益を載せて販売しており、採算を度外視しているわけではないと説明した。

 回答者は鈴木氏とマーケティング企画本部長の中村礼博氏。

実質無料の仕組みと対象ユーザーについて

――実質無料について教えてほしい。これはSPU(スーパーポイントアッププログラム)の楽天モバイルのアップ分で実質無料ということなのか。また、実際に実質無料になっているユーザーは契約者の中でどれくらいいるのか。

中村氏
 実質無料には2種類あります。

 1つは、SPUで還元されたポイントをご利用いただき、通信料を無料にするものです。

 もう1つは、今回のキャンペーンで、1万4000ポイントを付与し、それを充当することで1年間実質無料にするものでございます。

 また、実際にどれくらいのユーザーが実質無料になっているかにつきましては、具体的な数字は控えさせていただきます。

中村氏

――結構なユーザーが実質無料になっているということなのか。

中村氏
 月1万数千円のご利用で980円の通信料をまかなえるケースがあります。多くのお客様が対象になっていると考えております。

鈴木氏
 楽天IDの発行数は1億を超え、月に何らかの楽天サービスをご利用いただくユーザーは4000万人以上、楽天モバイルのユーザーは830万人です。

 ここから推測していただければ、実質無料になっているユーザーの割合がお分かりになるかと思います。

――楽天モバイルの契約でアップするSPUのポイントは上限が2000ポイントで、それだけでは実質無料にならないと思う。楽天カードや楽天ビューティなどの利用も加味されているのか? 競合他社も(料金プラン以外の還元で得た)ポイントであれば、無料(とアピール)できてしまうのではないか。

 また、総務省の有識者会合においてお試し割の導入を要望していたが、今回のキャンペーンはお試し割の一環と考えてよいのか。

中村氏
 ご指摘のとおり、楽天市場だけでなく、楽天カードなど他のサービスのご利用も加味しております。お客様の状況に応じて、3GBまでや20GBまでなど、実質無料の対象は異なります。

 詳細につきましては、ホームページで誤解のないように伝えてまいります。

鈴木氏
 今回のキャンペーンは、お試し割を上回る内容になっていると自負しておりますが、お試し割についても引き続き検討いたします。別のものと考えていただいて構いません。

楽天モバイルの料金戦略について

――KDDIやソフトバンクが料金の値上げの必要性を訴えている。楽天モバイルはこれをチャンスと捉えるのか、それとも電気代の高騰などで厳しい状況なのか教えてほしい。

鈴木氏
 一部で「官製値下げ」という言葉も使われておりますが、この5年間で通信業界に適正な競争が起きたと考えております。その結果、価格が下がってきた。

 楽天モバイルはいたずらに価格破壊をしようとしているのではなく、最新のテクノロジーを使い、通信サービスに適切な利益を載せて提供しております。採算を度外視しているわけではありません。

――電気代の高騰による影響はあるのか。

鈴木氏
 電気代につきましては、AIを活用して電力消費を削減したり、使っていない機器をスリープ状態にしたりすることで、20%の削減が可能だと考えており、対策は講じています。

――料金プランはここまでワンプランを特徴として打ち出してきた。一方で、3GB、20GBで料金が変わる。この区切りを変える、あるいは値上げについては、現状、どう考えているのか。

鈴木氏

 シンプルなワンプランで5年間やってきております。他社のように小刻みにプランを分けることも選択肢ですが、楽天モバイルには無制限プランという強みがございます。

 今のところ、プラン料金の変更は検討しておりません。

――3GB、20GBの区切りの変更も検討していないのか。

鈴木氏

 常にいろいろとシミュレーションをしています。将来的に区切りを変更する可能性がないとは言えません。

――鈴木CEOのプレゼンで「海外と比較して料金を下げる余地がある」という話があった。これは楽天モバイルとして、という意味なのか。

鈴木氏
 楽天モバイルとしては十分、値下げした料金プランだと認識しています。

 プレゼンテーションでは、(総務省の資料をもとに)日本の携帯電話料金が下がったとはいえ、インフレが進むパリやロンドンと比べてまだ高いという状況から、他社さんはまだまだ値下げする余地があるのではないかと推察を述べた次第です。

 各社の決算を見ても、非常に大きな営業利益です。国内市場全体では、まだ料金を下げる余地があるのかな? と考えました。

今回のキャンペーンと今後

――今回のキャンペーンは若年層にフォーカスした理由は?

鈴木氏
 確かに今回は若年層向けですが、2024年には「最強シニアプログラム」を発表しており、シニア層の獲得も目指しています。決して若年層だけにフォーカスしているわけではありません。

 具体的な獲得目標は開示していないのですが、現在、830万契約を突破し、次は1000万件を目指すことになります。そのために頑張ります。

中村氏
 普及率で見ると10%ですので、まだまだ若年層を獲得できる余地があります。

 また、競合他社もそうですが、若年層に契約いただくなら、春が良いというところがあります。

――競合他社は学生向けなど若年層向けキャンペーンを前年末には始めている。今回の楽天モバイルのキャンペーンが2月というのは遅い気がするが、なぜこの時期なのか。

鈴木氏
 検討の結果、この時期が適切だと判断いたしました。受験も終わり、新生活に向けて準備を始める人が増える時期です。タイミングとしては「ドンピシャ」だと思っています。

――過去の「最強家族プログラム」「最強青春プログラム」などで、一番効果があったのはどれか。

中村氏
 家族向けプログラムは年齢制限がなく、幅広いお客様にご利用いただいております。その他のプログラムは対象年齢を絞っておりますため、(キャンペーン対象の)母数が異なります。伸び率で考えると、どのプログラムも高い伸び率を示しており、全体的に効果があったと考えております。

――1000万契約達成に向けて、他社との競争激化が予想されるが、どのような戦略か。

鈴木氏
 一言で言うと、楽天グループ・楽天エコシステムの総合力です。フィンテックやEコマースは、競合に勝っているとも思っています。そういう点を含めて総合力と。

 総合力を引き出すためのAIをどう活用するか、というあたりになります。

――今回、「実質、永年無料」を訴求したは、エコシステムの総合力を示したいからか。

鈴木氏
 はい、その一環です。