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ソフトバンク、増収増益の決算発表 PayPayは四半期ベースで初の黒字
2024年8月6日 23:25
ソフトバンクは、2025年3月期第1四半期決算を発表した。前年同期比で増収増益となった。
売上は1兆5357億2200万円、営業利益は3039億2700万円で、それぞれ前年同期比で7.4%、23.4%の増収増益を達成。税引前利益は2739億1200万円、四半期利益は2005億6900万円となった。値下げが大きく影響した停滞期を乗り越え、第1四半期単体では過去最高益だった。
全領域で増収増益を達成
全領域で増益を達成しており、主力のモバイル事業では前年同期比で76億円増の3923億円を売り上げており、増収基調が続く。営業利益は1564億円で6%増益した。法人を含む、全ブランドをあわせたスマートフォン契約数は3090万と前年同期比で4%増だった。
PayPayなどを含むファイナンス事業は631億円を売上げ、前年同期比で20%の増収を果たした。PayPayとPayPay カードとの連結売上は572億円で、前年同期比で19%増収。連結EBITDAは93億円で2年連続の黒字。四半期ベースで初の黒字化を達成した。ソフトバンク 宮川潤一社長は「ファイナンス事業はPayPayの連結後、赤字となっていたがついに黒字化。今後は収益の柱として大変期待している」と話した。
今後、次世代社会インフラ構築に向けた第一歩として、大阪府堺市にあるシャープ工場の跡地にデータセンターを建設する。AIを活用したデータセンターで、既存設備の転用により250MW規模のAIデータセンターの早期展開を目指すという。
このほか、LINEヤフーが含まれるメディア・EC事業では営業利益は、AIカンパニー事業をLINE WORKSへ承継したことでの事業譲渡益により74%増益で、これを除いても20%の増益となった。同社を取り巻くセキュリティリスクの懸念については総務省へ報告書を提出済みで、ソフトバンクも協力する。Aホールディングスは自己株式の公開買付を発表しており、プライム市場の上場を維持する。ソフトバンクとNAVERの議決権には影響しない。
エンタープライズ事業の売上高は前年同期比で10%増収、営業利益も同じく3%増益を達成した。
純利益は前年同期比で11%増で、通期業績予想に対する進捗率は営業利益と純利益はいずれも30%超え。宮川氏は「今期は思った以上に順調なスタート」と評価した。
質疑応答
――通信障害が7月末、8月初頭と続いているが原因は?
宮川氏
お客様に本当にご迷惑をおかけしてしまい、お詫びしたいと思います。本当に申し訳ございませんでした。3件立て続けに3つの通信障害がありました。この3つにつながりがあるのかというと、実はバラバラ。通信業界にはひとつ障害が起きると続くというジンクスがありまして、3つ立て続けに起きてしまった。
7月と8月の初頭のケースでは、音声通話のためのVoLTE交換機が再起動したり動作しなくなったりしてしまったんですが、2つはまったく別の交換機でした。7月28日におきた件は西日本の端末情報の管理認証、データを転送する経路の設定などを行う交換機が再起動しました。
太陽フレアや熱暴走じゃないかと言われていますが、実はそうではなくて我が社の夏ボケです。本当にもう少し緊張感を持ってやれば防げた要因だと思います。機械は壊れるものですが、その後の対処が遅かったということで現場にハッパをかけて総点検しようということでやっています。夏休み返上してくれということです。
――楽天モバイルが契約者数を伸ばしているが、どう受け止めているか。
宮川氏
デイリーの4社間のMNPの動きや純増数の推測を見ていると、春先くらいからエライがんばっているなと受け止めています。さすが三木谷さんだなと正直思ってまして、創業者というのはどこかにああいうエネルギーを持っているんだなと感じています。
ソフトバンクもいつかは来た道ではあります。24時間365日、寝ても覚めても純増をどうするか考え続けた時期もあります。おそらくそんな感覚で集中してやられてるんだなと。ですから、脅威か脅威じゃないかと言われたら脅威なんですよ。
そうは言っても、ソフトバンクの目線から言うと、当社に影響があるかというとほとんどない。どこからそういう純増が湧いて出ているのか……。あまり自分が見ていなかったマーケットがあるのかもしれません。キャリア同士が殴り合って取り合うような、ユーザーの数だけでは見えないところにいろいろな商機があるんだろうなと感じています。
引き続き頑張っていただいて、4大キャリアと言われるようなポジションに来ていただいたほうが、日本の健全な戦いになるんじゃないかなと思います。
――LINEMOでは新プランを投入しているが、この先の楽天モバイルへの対抗策は?
宮川氏
「LINEMO ベストプラン」は「楽天さん対抗なんでしょ?」ってよく聞かれますけど、実はそうなんですよ。ただ、そのなかでも本当の使い放題はいろいろなユーザーが来きます。
自分の経験値から言ってもアンリミテッドは慎重に考えて負います。ただ、中容量がほしいというユーザーがアンケートで多かったので、これを提供する商品を一度マーケットに投入しようということでやってみました。おかげさまで見込みよりも好調で、やってよかった商品です。CMを放送しているので引きがいいのかもしれませんが、順調な滑り出しだなと思います。
――NTTドコモが「ペイトク」に近いプランを出してきたが受け止めは?
宮川氏
経済圏の広さを競い合うようなフェイズに入ってきたのかと思います。ポイントの出し方は、我々はできるだけシンプルにしようとしていて、使っていただいた分の何割かを還元するというふうにしました。
いろいろと複雑な組み合わせをしないようにということで、個人的にはまだペイトクのほうが使い勝手がいいんじゃないかなと思っています。いずれにしてもKDDIも楽天モバイルも、それぞれの経済圏のなかで新しいサービスが出てくるというのはいいことでしょう。引き続き「第2ペイトク」みたいなものを模索していきたいです。
――解約率が上がっているように見える。要因を教えてほしい。
宮川氏
SIMのみ契約で短期で乗り換えるユーザーが一定数いるというのは事実です。端末の買い替えを伴わないので、電気通信事業法改正(回線契約に紐づく端末割引を規制するルールが盛り込まれている)の影響を受けにくいということです。獲得しやすい反面、解約率押し上げの要因にもなっています。
(料金水準の高い)ソフトバンクブランドのユーザーなどではないため、決算には数字として響きはありませんが行動的にSIMのみ契約して、インセンティブを享受するというのは、本当に大事にしたいユーザーからの利益を消化しているので、なんか手は打ちたいと正直思っています。
事業法の中ではSIM単体の契約は2万円のインセンティブが上限というルールになっておりますので、構造的にはできてしまうんですが、本当は(事業者)みんなでSIM単体のインセンティブを止めるというのが一番いいと思います。しかし、最初にやるっていうのは勇気がいるんです。営業部門に「なんとかならないか?」というと「我が社に最初にやめろというんですか?」と返されますので。様子を見ながら、対処していきたいと思います。
――モバイルが好調な要因にはペイトクの影響があるのか?
宮川氏
ARPUの高いサービスはやはりペイトクがあります。ポイント還元も行っていますがそれでもARPUは一番高いです。他ブランドもありますが、我々の業績はこのミックスでできあがっていて、ARPU×ユーザー数がすべての売上の源泉になりますし、ユーザーがさらに100万人増えたところで固定費はあまり変わりませんし、ユーザーが増えたら増えた分だけ収や純利益が上がります。
数もARPUの維持も必要で、そのためのベストミックスがペイトクもワイモバイルもありということなので、ペイトク(だけが)という話ではないです。
――ワイモバイルが10周年ということだが、契約数を教えてほしい。ワイモバイルからソフトバンクブランドへの乗り換えは現在も好調なのか?
宮川氏
1200万契約くらいです。いろいろなことで差別化要因を見つけてやっているので、ワイモバイルもソフトバンクもセットで常々向き合ってきたのがこの10年。特にワイモバイルでは低~中ARPUのユーザー、高ARPUユーザーはソフトバンクへということで容量などサービスを差別化してきました。
ソフトバンクとワイモバイル間では社内のMNPが起こっているんですが、今期ようやくトントンくらいになりました。期ごとに動きはありますが、今期はトントン。ペイトク含めてソフトバンクブランドもポジションができてきました。10年かかりましたが、形ができてきました。LINEやPayPayも入ってきてグループを上げていろいろな商品を作ろうとしています。今までの10年よりもこれからの10年のほうがやりやすい時期に突入していくのではと感じています。
――楽天モバイルがプラチナバンドを開始したが、1局くらいしかないようだ。受け止めを聞きたい。
宮川氏
他社さんの話なので大声だしてコメントはしたくありませんが、国から「MNO」として電波を割り当てられたのですから、その責務を果たすべく投資していただきたい。今はその部分がそんなに機能していないのかなと。もう少し踏み込んでいただくと、その責務が果たせるのではないかと思っています。
――OpenSignalの評価が高い。ドコモ・前田社長が1位を取るぞと言っていたりKDDIがSub6エリアを拡大したりしているがソフトバンクは勝てるのか?
宮川氏
ネットワークで「山手線周辺で……」とかなんかちょっと下品なCMをさせていただいておりますが、インパクトがあるかたちで訴求しようということで営業部門から話があり、OKという話をしました。
基地局がたくさんあり、そのキャパシティが都内では有効に動いていて、電波があっても動かないという環境ではないということで評価いただいております。ただ、キラーアプリが出てきたり、新しいスマホの使い方が出てきたりすると……。昔は下りの速度が優先でしたが、今は上り速度もある程度作らないといけない構造にガラッと変わっています。もっと上りのほうがもっとたくさん必要だとか、そういう時代が来るとネットワーク設計飲み直しタイミングはキます。
今、少しばかり成績がいいからと言って決して胸張っているわけではなくてヒヤヒヤでいつもやっております。KDDIさんがやられる良いことは我々も真似していこうと思いますし、ドコモさんもあれだけの企業です。いつまでも3番、4番と言われるつもりもないと思います。こういう競い合いが日本のためにもいいと思いますからぜひ、堂々と我々もその主戦場のなかで張り合っていきたいと考えています。
――PayPayの黒字化が思ったより早かったということだが、上場についての考え方を知りたい。単体黒字ということだが今後をどう見ているのか?
宮川氏
今期中の黒字化を考えていたが、第1四半期で黒字化できるとは思っていなくていい子に育ってくれたなと思っています。早めに黒字化できて良かったなと。ある程度の会員さんがいると、一度黒字化するとそう簡単に赤字転落はしませんので、ソフトバンクの収益の柱として引っ張っていってくれるだろうと考えています。
上場するなら黒字化してからだと言ってましたので黒字化を発表すると、それについて聞かれるかもと藤原(藤原和彦 取締役 専務執行役員 兼 CFO)が言っておりました。期待感は高まってきたかなと個人的には思っています。しかし、やはりPayPayの取締役会が決める話です。これはもう委ねようと思っていますけど、まだまだ成長できると思います。急いで今、資金調達する必要がありませんから、もう少し先が見えてきてから大きなIPOをしてもらったほうが、いろいろと組み立てやすいので「急がなくていいよ」とは言っておりますが、どうなるかはわかりません。
――KDDIではオンデバイスとクラウドの双方のAIの組み合わせが大事としているが、ソフトバンクとしてのAIの投資方針やサービス開発の方向性を教えてほしい。
宮川氏
デバイス側にAIが入ってもっと便利になると想像はしています。垂直統合型のAIインフラを作りたいと考えていて、そのためにコア側のデータセンターから作り、最後はエッジコンピューティングのところでAI-RAN(AI化基地局)ということで、基地局までは設計できています。
その先のデバイスまでやると本当の意味での垂直統合ということができて、GAFAなどとは違う構造でのAIとの向き合い方がオリジナルでできるんじゃないかなと思っています。エッジからコアまですべてのAIをさわれる会社になろうということでやっております。
――衛星電話をサービス終了させるということだが、復旧させないのはなぜなのか。
宮川氏
本当にこれもユーザーにご迷惑をおかけしました。まずはお詫びするところからお話したいんですが、スラーヤの静止衛星が壊れてしまい、ほかの衛星で日本をカバーするので待ってくれと言われているんですが、でもどう計算しても通信できるほど確保しきれないでしょうと。この議論を続けていてもユーザーに迷惑がかかるので、バサッと止めてほかの衛星に乗り換えていただこうということでお話をしました。
基本料金や端末のレンタル代金は減額して対応していますが、ズルズルやっていても仕方がありませんので、一旦ここはリセットして新たな方法で展開しようということです。宇宙の先の3万6000km先ですから我々が行くわけにもいかず、苦渋の選択でした。
――シャープ堺工場のデータセンター化はKDDIも発表している。両社の違いは?
宮川氏
堺のデータセンターは1月にキックオフして、3月くらいに法的に効力を持たない仮契約をしたんですが、議論しているうちに急にKDDIさんの話がでてきました。「約束と違う」と思い、仮契約では信用できないので契約を結んで発表しました。ソフトバンクが再利用しようと思ったのは液晶工場です。全体の6割くらいの大きな土地で、まだ4割くらいありましてそちら側をKDDIさんが利用されると聞いています。
ただ、堺市とシャープとの間での取り決めと違うところがあるようで、我々もそれを継続してできるものなのか本当はできないルールになっているのかを確認しており、できなければギブアップするかもしれませんが、前向きに取り掛かっています。
――NTT法に関する議論の今後について意見が聞きたい。
宮川氏
NTTは特別な資産を持ち、公共的役割を担う特殊法人。NTT法による規律は必要です。ほかの事業法でカバーすれば、という議論もあるが(結局、NTT法と)同じものならば、我が国のセキュリティ問題や根本的なインフラの話をすべきではないでしょうか。
総務省の今回の議論もNTT法廃止の論調はあまりないと理解しています。中立的な議論をすべきと思いますが(ソフトバンクとしては)今までの主張を変えるつもりはありません。